日本共産党

2002年2月6日(水)「しんぶん赤旗」

解説

有事法制の「全体像」

自衛隊の行動最優先で
国民の権利と自由侵害


 五日、与党の国家の緊急事態に関する法整備等協議会が合意した「武力攻撃事態への対処に関する法制整備の全体像のイメージ(案)」によって、政府が今国会に提出を狙う有事法制の骨格が明らかになりました。

 その内容は、「安全保障基本法」には与党内に異論があることから、すでに研究がすすんでいる「第一分類」「第二分類」の法制化を優先するもので、法体系の整合性もお構いなしに「まず有事法制ありき」を貫こうとしています。

 しかも、政府・与党が有事法制の口実にしてきた「大規模テロ」や「武装不審船」への対処については、「別途必要な検討を進める」ことで合意。結局、日本が外部から攻撃を受けた場合の「武力攻撃事態への対処」だけを対象とすることになりました。

 しかし、日本に対する武力攻撃の危険については、政府自身が「想像ができないかもしれない」(中谷元・防衛庁長官)と言っています。テロや不審船への対応が目的でもない、「日本有事」も想定できないとなれば、結局のところ、米軍のおこなう戦争に日本が参加した場合の武力攻撃を含む対処を想定したものとなります。

 しかも「全体像」に盛り込まれた「個別法」のうち、すでに具体化されているものは、いずれも憲法に明記された国民の権利と自由を侵害し、国民生活に重大な影響を与えるものばかりです。

 防衛庁所管の法令にかかわる「第一分類」は、民間業者や各職種の勤労者を強制的に動員することや、財産や土地の強制収用を可能とする自衛隊法改定をたくらんでいます。同庁以外の官庁所管の法令にかかわる「第二分類」は、自衛隊部隊移動のための道路補修や海岸・河川などでの陣地構築など、自衛隊の作戦行動に対する特例措置や法律の適用除外を盛り込んでいます。

 いずれも自衛隊の行動を最優先にして、国民の権利と自由を損なうもので、有事法制の危険は明白です。(山崎伸治記者)


 政府が、5日の与党協議会に示した有事法制の「全体像のイメージ(案)」は次のとおりです。

 武力攻撃事態への対処に関する法制整備の全体像のイメージ(案)

【全般】
 I 総則的規定
 ○武力攻撃事態への対処に関する基本構想
 ○国の責務
 ○武力攻撃事態に対処するための国の意思決定
 ○国と地方自治体との関係
 ○武力攻撃事態への対処に関する法制の整備に関する基本方針
 U 武力攻撃事態への対処に関する法制の整備項目
 1、自衛隊及び米軍の行動の円滑化に関する項目
 (1)自衛隊の行動の円滑化
 (2)米軍の行動の円滑化
 2、国民の安全確保、生活の維持等に関する事項
 3、国際人道法の遵守に関する事項
【個別】
 ▼自衛隊の行動の円滑化(U−1・(1))
 自衛隊法の改正(第1分類)
 ・物資の収用、土地の使用、業務従事命令等
  自衛隊法による関係法の改正(第2分類)
 ・法律の適用除外、特例措置(自衛隊)
 ▼米軍の行動の円滑化(U−1・(2))
 米軍支援のための法制
 ・米軍の行動に必要な施設、物資等の確保等
  関係法の改正
 ・法律の適用除外、特例措置(米軍)
 ▼国民の安全確保、生活の維持等関係(U−2)
  警報/住民避難/各種応急措置/復旧
  船舶、航空機の安全確保
  経済関係諸措置
 ▼国際人道法関係(U−3)
  傷病者、衛生要員等の取扱い
  捕虜の待遇
  武力紛争の影響を受ける一般人の保護
  戦争犯罪人に対する処罰

 


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