日本共産党

2002年2月6日(水)「しんぶん赤旗」

主張

明石歩道橋事故

雑踏警備怠った信じ難い無謀


 歩道橋で群衆がなだれをうって倒れ死傷者二百五十八人の惨事を招いた昨年七月の、兵庫県明石市の花火大会事故で、市の事故調査委員会が報告書をまとめました。

 死亡した十一人のうち、九人が十歳未満の子どもであり、二人が七十歳以上の女性です。なぜ、楽しいはずの夏まつりで幼い子どもや高齢女性がいのちを落とさなければならなかったか。

事故は予見できた

 報告書は、明石市、警備会社、明石警察署の三者がともに「事故を容易に予見できた」にもかかわらず、具体的措置を講じなかったために惨事を招いたと断定しています。

 事故が起こった朝霧歩道橋は、最寄駅から会場への直近の通路である上、人が滞留しやすい“ボトルネック”構造になっていました。

 会場に通じる階段の幅が歩道橋幅の半分しかないのに、階段の踊り場は絶好の見物場所であり、さらに階段を下りた地点から両側に夜店が並んでおり、滞留を激しいものにしました。

 こうした構造がもたらす事故は予測がついたというのが、報告書の結論です。

 とくに、七カ月前の二〇〇〇年大みそかには同じ場所で新世紀イベントがおこなわれていました。このとき、花火打ち上げの終了前後に、歩道橋上で群衆の圧力がぶつかりあい、混雑混乱が生じたことは、警察も警備会社担当者も認知、認識していたものです。

 ところが、この経験をそれぞれの組織内で「共有認識として活かされた形跡は見当たらず」、今回の夏まつりの事前準備にも盛り込まれることはありませんでした。

 「危ぐの念を抱くこともなく」事前の必要な対策を怠り、歩道橋に無制限に群衆を流入させたことは、「信じ難いほどの無謀さ」(報告書)といわなければなりません。

 雑踏警備が手薄であったことも明らかにされています。明石警察署が作成した雑踏警備計画書では、雑踏警備に配置された警備要員は全体のわずか一割であり、歩道橋にはまったく配置されていませんでした。

 雑踏警備に責任を負うべき警察がいかに無責任であったかを端的に示しています。

 報告書が事故の技術解析に力を注いだことも注目されます。

 ピーク時の来場者は八万三千人、花火打ち上げ終了時刻に歩道橋に滞留していた見物客は約六千四百人と推定しました。一平方メートルに十三人〜十五人がいたことになります。

 事故について、一方向に倒れる「将棋倒し」ではなく、倒れる方向がいくつもあり、弱いところに向かって周囲から倒れ込むこともある「群衆雪崩」だったと分析しています。「群衆雪崩」は極限を超えた過密状態で起こるのが特徴です。

 被害者はこのとき、一人当たりおとな三人分の体重に相当する圧迫が加わったといいます。

報告書を受け止めよ

 報告書は、法曹、危機管理、災害・救急医学、建築人間工学、都市防災の専門家六人が、十五回にわたって検討してきたものです。

 事故が起こるかもしれない認識と事前の備えがあれば、惨事を防止することが可能であった――。報告書はこう判断しています。

 「原因と責任究明」という被害者の願いにこたえ、二度とこのような惨事を起こさないために、警察や市が、この報告書を重く受け止めることが求められます。

 


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