日本共産党

2002年2月5日(火)「しんぶん赤旗」

そもそもけいざいワールド

郵便振替口座ってなに?


 小泉内閣が四月から、ペイオフ(一定額までの預金保護)の解禁を強行しようとしている中、「郵便振替口座」が、がぜん注目の的になっています。あまり知られていないこの制度を調べました。(今田真人記者)

上限なく全額保護

 「郵便振替口座」とは、全国各地の郵便局で扱われている郵便口座の一つ。さっそく、近くの郵便局にいきました。

 「どんなものですか」ときくと、職員が「郵便貯金の総合通帳『ぱ・る・る』のことでしょう」と、パンフレットをもとに、ていねいに説明してくれました。

 「この総合通帳をつくると、利息のつく郵便貯金は上限が一千万円ですが、それを超えると、超えた預かり金は自動的に『郵便振替口座』に移し替えられます。この上限を超えた預かり金は、利息がつきませんが、いくらでも預けることができ、国が全額保護しています。『ぱ・る・る』としてではなく、単独の『郵便振替口座』としても同様な口座を開設できます」

 ところで、四月からのペイオフ解禁では、民間金融機関の当座預金や普通預金は当面一年間、全額保護されますが、それ以外の預金は、一千万円とその利息しか保護されなくなります。

 ペイオフ解禁で貯蓄をどう守るかは、いまや国民的関心事。倒産やリストラで失業し、退職金を含めて一千万円超の貯蓄だけが一家全員の生活の糧などという中高年層には、とりわけ深刻です。この「郵便振替口座」に人気があるのもうなずけます。

送金手段として昔から

 この制度をもっと知りたいと思い、全国の郵便局を所管する総務省の郵政事業庁(旧郵政省)を訪ねました。

 担当者は開口一番、次のようにいいます。

 「郵便振替口座はもともと、口座から口座への送金手段として、明治三十九年(一九〇六年)に発足した、昔からある制度です。小口の貯蓄手段として限度額がある郵便貯金とは制度の趣旨がまったく違います」

 送金手段だから、通販会社などの企業の口座には、全国から何億円と集まるといいます。だから当然、口座の残高に上限を設けていません。個人向けというより、もっぱら企業向けの制度。「送金及び債権債務の決済の手段」(郵便振替法一条)ですから、いわば、銀行の当座預金と似た制度です。

 ペイオフ対策として注目され始めたことには「本来の目的以外で利用したとしても、実際には区別しようがない」と話します。

宣伝されない背景には

 ところで、利用口座数も残高も増加して国民に喜ばれているというのに、政府や郵政事業庁が、この制度をほとんど宣伝しようとしていないのも事実です。

 この問題に詳しい関係者は「郵便局が民間金融機関と競合するという問題が背景にある」と指摘します。

 銀行業界の全国団体、全国銀行協会(全銀協)はこの口座残高が急増していることについて「事態を把握していないので、なんともいえない」(企画部)といいます。同時に、昨年一月に発表した見解では「金融システム不安が生じた場合等には、国営郵便貯金の信用力が過度にクローズアップされること等により、民間金融機関から大量の資金シフト(移動)が発生する」と、郵便貯金制度の縮小と民営化を主張しています。みずからは七十兆円枠の公的資金で国に保護されていることを棚に上げた身勝手な議論です。

 この銀行業界と同じ「郵貯の民営化」を主張し続けているのが、いまの小泉首相です。政府の奇妙な姿勢の背景には、どうやら国民より銀行業界にばかり顔を向ける小泉内閣の逆立ちした「改革」路線がありそうです。

 


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