2002年2月4日(月)「しんぶん赤旗」
三日放送のNHK「日曜討論」で、日本共産党の筆坂秀世書記局長代行は、田中真紀子前外相更迭問題、小泉内閣の「構造改革」の評価などについて、各党の幹事長と討論しました。他党の出席者は、自民党・山崎拓、公明党・冬柴鉄三、保守党・二階俊博、民主党・菅直人、自由党・藤井裕久、社民党・福島瑞穂の各氏。司会は山本孝NHK解説委員。
初めに、田中真紀子前外相の更迭について議論されました。山崎氏は、補正予算、本予算成立のため「国会の正常化・国会運営の円滑化の観点から人事を行わざるをえなかった」と小泉首相から聞いていると発言。筆坂氏はこれに対し次のように述べました。
筆坂 旧来型の自民党的手法そのものだと思います。今回の措置については三つの問題があると思います。一つは、三人の更迭と辞職という形ですが、結局は真相はヤブの中に閉じ込める、いわば真相隠し、臭いものにはフタをするというのが今回の措置の一つの問題です。
二つ目は、悪いのはNGOを排除しようと圧力をかけた鈴木(宗男)代議士だし、それに屈服した情けない外務省の事務当局ですよ。田中さんは今回の件に関していえば、この誤りを正した、いわば日本外交の恥を正したわけですよ。正しいことをやった方が事実上の罷免をされる、これはやり方がまったく逆立ちをしているということだと思うんです。
三つ目には、さっき冬柴さんが田中さんの発言がウソだったと、八人がそんな話はなかったというふうにおっしゃったけれど、これは八人は全部外務省の事務当局ですよ。完全に口裏合わせをやっている可能性の方が客観的に見れば高い。ウソが国会でまかり通る、こういうことを許してはいけない、こういう三つの点で今度の小泉さんのやり方というのは問題があると思います。
田中前外相を辞めさせるべきでなかったという指摘について、山崎氏は、「今度の国会の混乱は『言った、言わない』の水掛け論だ。本人が国会で言ってしまったことを『間違ってました』というはずもない。外交体制の再建ということが肝心だ。外務大臣と次官以下の事務当局との間に意思疎通がないということが象徴的に現れているのが今回の事件だ」と発言。山本氏の「大臣と事務当局との対立にこの際、一気に決着をつけようとのねらいがあったのか」との質問に、「あったことは否めない」と述べました。これに対し筆坂氏は次のように述べました。
筆坂 「言った、言わない」の中身が問題なんですが、この問題の本質は、いわゆる“族議員”によって日本の外交がねじ曲げられる、例えば、今度のNGOの問題でいえば、当初は出席を決めていたわけですよ。それが出席拒否に変わっている。ここに鈴木さんの圧力があった。簡単に外務省が(圧力に)屈服すると、こんなことで日本の外交はできるのかという、日本の外交のあり方が根本的に問われているという問題ですね。「言った、言わない」の背後にはそういう問題がある。そこをえぐり出さなきゃ、問題の解明はできないと思いますね。
政府が一月二十八日、田中氏と外務省の発言に相違がある問題について提出した「政府見解」が議論となりました。このなかで、冬柴氏が「筆坂さんもいろいろおっしゃるが、鈴木さんがいつどこでだれにどういうふうにいったのかということをいえるのか」と発言。筆坂氏は次のように述べました。
筆坂 だから、それを解明する必要があるんです。小泉さんが参院予算委員会で認められたのは一般論じゃないんですよ。こんどのNGOの出席拒否について鈴木議員の発言が影響を及ぼしたと、はっきりと民主党議員とわが党議員の質問に答えている。一般論じゃないんです。明らかに小泉さんの答弁というのは「政府見解」の時点から、国会の答弁がもう変わってきているんです。
族議員と役所の関係に議論が移り、その中で筆坂氏は次のように述べました。
筆坂 「政府見解」で特定の議員の意見に従ったことはないとあったでしょう。族議員と役所の関係というのはそうではないんですよ。従う関係なんですよ。拒否することがありえない関係なんです。なぜかというと、持ちつ持たれつなんですよ。その省庁の予算を獲得するために族議員が働く、あるいは法案を通すためには族議員が働く、したがって族議員から何か頼まれたときには省庁はいうことを聞かなければいけない。つまり外務省と鈴木議員の関係というのはそういう関係だったんですよ。
「外交通」といわれる政治家はこれまでいましたけれど、「外交族」といわれる議員は彼一人だといわれています。実際今回の国会でも、中東アフリカ局長はいっているんですよ。「鈴木先生はNGO予算・ODA予算を実施する上で大変関係の深い人」。中東アフリカ局長がこの前参院の予算委員会でこういっているんですよ。
つまり、ODA予算、NGO予算の執行、これに鈴木さんは大変力を持っているということを認めているんですよ。ですから、例えばこのことの問題にしろ何にしろいろいろ疑惑が出てくる。こういうことをきちっと解明するというのがこの問題の本質です。それをやれば「言った、言わない」だって、どっちが真実かおのずと明らかになってきますよ。
田中前外相更迭後、急落している小泉内閣への支持率について、山崎氏は「一時的な現象だ。人事について国民的人気の高い田中前外相が更迭されたということに関する反発反感が国民の中に広くあることの反映だ」と発言。筆坂氏は次のように述べました。
筆坂 われわれはもともと小泉流の「構造改革」には反対です。山崎さんは(構造改革推進は)「超党派」とおっしゃったけれど、まったくそんなことはありません。
この特徴というのは簡単にいえば「強きを助け、弱きをくじく」というのが小泉流の改革ですよ。
例えば、競争力をつけるというのでリストラをどんどん進める。あるいは不良債権処理を二、三年で一気にやってしまう。その結果が失業と倒産の増でしょう。これはいま、円と株と債券がトリプル安になっていますが、やはりその経済危機をつくったのがいまの小泉さんのやり方だと思うんです。小泉「構造改革」のいわば破たんが始まっている。
そういう点では今度あの一件(NGO排除と外相更迭問題)をもとにして支持率が30%ぐらい下がるという世論調査結果が出ていますが、わたしは小泉「改革」の破たんがどんどん進みつつあるというのがいまの局面だと思いますね。
山崎氏が、「筆坂氏の議論は、不良債権処理をだらだらやれということだ。だらだらやれば、中小企業の苦しむ期間が長引くだけだ」とのべたのにたいし、筆坂氏は次のように反論しました。
筆坂 まず、不良債権処理でいえば、やはり実体経済を立て直すというところへ本気でとりくまなければ。あなた方、いくら公的資金を(銀行に)投入してやったって、それ以上に(不良債権が)増えているでしょう。だから、あなたがたの不良債権処理のやり方の失敗というのは、明白になっている。
もう一つは、一方で金融緩和をやったというが、(銀行の)窓口に行ってごらんなさい。中小企業へは「貸し渋り」「貸しはがし」ですよ。トヨタの会長だって言っているじゃないですか。これをあらためなければ、駄目ですよ。
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