日本共産党

2002年1月31日(木)「しんぶん赤旗」

これほど醜悪な政治はない

政治部長 小木曽陽司


 「今回、政府内の問題で国会審議が紛糾し、大変迷惑をかけたことに責任を感じている。この事態を一日も早く打開して、第二次補正予算、来年度予算の審議を正常化したいと思い…」

 小泉首相は三十日未明の記者会見で、田中真紀子外相罷免の理由をこうのべました。

 「国会正常化のため」というのは、歴代自民党政権が、金権スキャンダルなどで国会が紛糾し、事態を収拾するときに、決まって持ち出してきたいい分です。それでも、疑惑政治家の証人喚問に応じるなど、形の上では、国会に「真相究明」の舞台を提供したものです。

 同じ事件の幕引きでも、NGO(非政府組織)排除問題で、小泉首相がとったやり方はきわめて悪質です。

 族議員としてNGO排除で外務省に圧力をかけた鈴木宗男議員をなんらとがめないばかりか、衆院議運委員長辞任の申し出を「潔い」といってかばう一方、圧力の事実を知ってNGO出席のために動いた田中外相を、鈴木氏の圧力に屈した外務省の野上義二次官と一緒に辞めさせる―「両成敗」の形をとりながら、あきらかに、NGOを排除した族議員と外務官僚の立場にたった、白黒をうやむやにする真相隠し。これは、国会から真相究明の場そのものを奪うやり方です。

 こうしたやり方のなかに、今回の問題についての首相の認識の程度が示されています。「政府内の問題」であり、「大騒ぎするほどじゃない」、田中外相の涙ながらの主張も「涙は女性の最大の武器だからね」とけろっといってのけた感覚…。そこには、NGO排除問題が重要な国際会議の権威を傷つけた国際問題だという認識もなければ、族議員による外交私物化を許していいのかという、政治の根本問題が問われているという認識もありません。

 ただただ、くさいものにふたをし、政権を維持することにきゅうきゅうとするのであれば、これまでの自民党政権といったいどこが違うというのか。

 「自民党をぶっ壊す」「政治を変える」が、小泉首相の一枚看板だったはずです。小泉内閣がいまだに高支持率を維持しつづけるのも、利権と汚職、ムダと浪費、政治の私物化という自民党政治の醜悪な部分にメスを入れてほしいという、国民の期待の表れです。

 しかし、小泉首相は今回のNGO排除問題で、そこにメスを入れるどころか、外交を私物化する族議員の立場に立って、それを正そうとした外相を罷免するという逆立ちした手法で、真相隠しをはかったのです。古くて醜悪な自民党政治そのものです。

 大企業中心と国民いじめ、アメリカ一辺倒の自民党政治をよりむき出しにした小泉政治。それをカムフラージュし、自民党政治を延命させるために強調したのが、族議員政治や利権バラマキ政治にまみれた自民党を「ぶっ壊す」でした。

 内閣発足から九カ月。このスローガンが、いまや小泉内閣の足かせになりつつあります。(こぎそ・ようじ)

 


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