2002年1月29日(火)「しんぶん赤旗」
外務大臣の答弁を、事務次官が国会の場で正面から否定―アフガニスタン復興支援非政府組織(NGO)国際会議への一部NGOにたいする出席拒否問題で自民党の鈴木宗男衆院議運委員長の関与があったかどうかをめぐって二十八日、閣僚と事務方トップが対立するという前代未聞の事態がおきました。
鈴木氏が圧力をかけてNGO排除したと主張する田中真紀子外相、関与を否定する野上義二外務事務次官がお互いに相手の言い分を真っ向から否定。どちらかが虚偽の答弁をしているという異例の事態に、衆院予算委は、審議中断を繰り返し、最後は与党による補正予算案強行採決という暴挙という事態に発展しました。
田中外相VS重家局長―「記憶が定かでない」
第一幕は、田中外相と外務省・重家俊範中東アフリカ局長の“対立”です。
田中外相は、同日の予算委での答弁で、二十一日朝の重家局長との電話でのやりとりを、自分のメモをふまえて紹介。
田中外相 (一部NGOの参加を拒否したという)話を聞いたが本当かと聞いた。そのときにそういう(鈴木氏の)名前を出して「これは事実だ」と(重家局長が言った)。なぜ私にいわなかったのかと聞いたときに、具体名が出た。
重家局長が鈴木氏の関与に言及したことを明言したのです。ところが、当の重家局長は、最初の答弁で「鈴木先生の名前を含めてお話ししたということは、私の記憶に関する限りない」と鈴木氏の関与を否定。ところが、引き続く野党の追及に答弁を若干修正しました。
重家局長 いろいろ会議もやっていて、記憶が定かでない。(田中)大臣がそういうふうに言っているので、そういうこともあるかもしれない。
これをみて田中外相は「局長はよくやっている。しかしまだ迷っている」と“評価”しました。
田中外相VS野上次官―鈴木氏関与否定「それ以上の会話はない」
第二幕は、田中外相と野上事務次官の対立です。
田中外相は、同日の答弁で、二十一日午前十一時すぎの野上外務事務次官との電話のやりとりを紹介。「野上さんは非常に不機嫌になって『鈴木さんは難しい人だ。前からの経緯もある。鈴木さんの言うことを聞かないわけにはいかないので、絶対に出席させられない』と(言った)。野上次官は『どうしてもそれ(一部NGOの出席)はできない』と電話で言った」と野上次官が言及したことを再度強調しました。
野党側は、真相解明のために、野上次官と鈴木氏を委員会に参考人として招致するよう要求。同日夜に再開した委員会に急きょ参考人として出席した野上次官は、今度は鈴木氏の関与を全面否定したのです。
野上次官 田中外相からは「たいへんなことをしでかしてくれたわね」といわれました。私は「なんのことですか」と聞いたところ、(田中外相から)「排除したNGOを会議に出席させなさい、あなたの職をとしてやりなさい」と言われた。私は、経緯もあるようだから、難しいかもしれないが、やってみようと答えたと明確に記憶している。
野上氏は、会話の詳細まで紹介し、「それ以上の会話はしていない」と断言したのです。
しかし、田中外相は、野上次官とのやりとりをメモした紙片を片手に、再度答弁。
田中 この紙にたまたま走り書きした。「鈴木氏は難しい」「前からの経緯があり…」ということを(野上次官が)言ったことは、私は走り書きしている。(野上氏は)自分の言ったことは何も正確に伝えていない。
外相と事務次官が真っ向対立する前例のない事態になったのです。
福田康夫官房長官は「同じ省内で意見が食い違うことは誠に遺憾。政府として統一見解が出せるように努力したい」と発言し、委員会は二度目の休憩。同日の委員会に「政府見解」を提出する事態となりました。
ところが、政府が深夜提出した「見解」は、理由も示さず、「特定の議員の主張に従ったことはない」とのべ、田中外相と野上次官との食い違いも「事実関係の確認に努める」というだけのものでした。
野党が納得せず、各党に持ちかえっていたところで、与党側は予算委での審議時間を二時間あまりも残しながら、第二次補正予算案の採決を強行するという暴挙に出たのです。
政府が二十八日夜の衆院予算委員会理事会で示した非政府組織(NGO)拒否問題に関する統一見解は次の通り。
一、昨年来NGOの在り方については与党も含め各方面の議論がなされ、その過程で外務省に対してもさまざまな意見表明がなされたことはある。
一、アフガン支援国会議へのNGOの参加決定にあたり、特定の議員の主張に従ったことはない。
一、本件に関して、一月二十四日の予算委員会における田中外務大臣の答弁と外務省事務当局の答弁との間に相違があるが、政府としては、引き続き関係者の申述等を聴取し、事実関係の確認に努める。
一、よって、現下の経済状況にかんがみ、第二次補正予算の一日も早い成立をお願いしたい。
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