日本共産党

2002年1月25日(金)「しんぶん赤旗」

イスラエル・パレスチナ紛争
エルサレムにみる

「交渉もなく暴力だけが支配」

危機打開へ新たな努力も


 イスラエルによる占領・報復政策の継続とパレスチナ過激派の無差別テロとは、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)の相互承認とパレスチナ暫定自治を定めたオスロ合意そのものの危機を深めています。

 今回の緊張の引き金になったのは昨年十二月十六日のアラファト自治政府議長の“テロ禁止”宣言をまったく無視して自治区攻撃をつづけてきたイスラエル、シャロン政権の対応です。そうした中で二十二日夕方に西エルサレム中心街で起きたパレスチナ過激派の男による銃乱射事件は、イスラエル国民が常にテロの危険と隣り合わせていることを改めて示すものとなりました。国民の多くが「いつどこでやられるか分からない」と不安を語り、パレスチナ側への不信感を募らせています。

相次ぐ惨事

 パレスチナ自治政府を「テロ組織」と規定し、パレスチナ自治区への侵攻を指揮するシャロン・イスラエル首相も高い支持率を得る結果となっています。

 英字紙エルサレム・ポストのベテラン記者は「十六カ月に及ぶ戦争で、国民はテロ放棄というパレスチナ側の約束をもはや信じず、まず自分の身を守ってほしいと考えている。ここに対パレスチナ強硬策を取るシャロン首相が受け入れられる背景がある」と分析します。

 イスラエルによる三十五年に及ぶ占領と自治政府そのものをテロ支援組織に決めつけておこなう自治区への報復攻撃は、パレスチナ人の怒りと、絶望感をつのらせる原因となっています。

 「治安維持」を理由にした道路封鎖やイスラエル軍が各地に設けた検問所が原因で、占領地の主要道路は渋滞し、検問所で二―三時間待たされることは日常茶飯事。渋滞や道路の破壊で救急車が移動できず、患者が亡くなる惨事も続いています。「テロを生み出すインフラの破壊」と称して家を破壊された人々はテント生活を余儀なくされています。検問所などでのイスラエル兵らの横暴なふるまいは自治区住民の憤激をかきたてています。

 テロ許せない

 パレスチナ人民党のアブドゥル・マジッド・ハムダン氏は「どんな理由があろうとも、テロは許せないし、テロとは距離を置いている」とした上で、「道路封鎖などで起こる日々の惨事、イスラエル軍による侮辱などがパレスチナ側の人々に復しゅうの心理を形成している」と述べています。

 「最大の問題はイスラエル側もパレスチナ側も相互信頼を失ってしまっていることだ。交渉もなく暴力だけが支配している」―イスラエルの平和団体「ピース・ナウ」のジャネット・アビアドさんは語ります。

 しかし、注目されるのは、まさにそうした対立激化の下で信頼回復のための対話の新たな努力も始まっていることです。「ピース・ナウ」が促進者となって進める「平和のためのイスラエル・パレスチナ連合」もその一つです。双方の政治家も加わって非公式のフォーラムなどを開催し、和平交渉再開へつながる世論形成に役立てようというものです。

 エルサレムではイスラエルの占領地からの撤退を訴え、無差別テロも糾弾する平和集会が昨年十二月から毎週実施されています。こうした運動はまだまだ小さいとはいえ、対立激化の中で危機打開への新たなきっかけとなることが期待されます。

 (エルサレムで島田峰隆)

 


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