日本共産党

2002年1月15日(火)「しんぶん赤旗」

機密費流用事件発覚1年

小泉首相は「聖域」扱い

解明せずヤミに葬るのか


 昨年一月の機密費流用事件の発覚から一年。「政権の裏金」といわれる機密費をめぐり、権力中枢の腐敗ぶりが国民の注目の的となりました。しかし、小泉内閣は、若干の機密費減額と引き換えに、依然として真相解明をヤミに葬る構えです。

次々と露呈 腐敗の数々

 発端となった機密費流用事件は、外務省職員が、首相の外国訪問にかこつけて、首相官邸の機密費を水増し請求し、数億円を詐取したもの。内閣官房がフリーパスでこの職員に機密費を支出していた実態の一端が露呈しました。

 ところが、逮捕者を出した外務省は、当初から、元職員「個人の犯罪」(河野洋平前外相)と開き直り、外務省、内閣官房が関与した組織的犯罪の真相解明は捜査当局まかせのままでした。

 この流用事件も疑惑のほんの一部。核心は、首相官邸の機密費が、国会議員の海外旅行への「せんべつ」や野党工作などの国会対策、選挙費用にまで流用され、“政権維持費”として使われている国政の腐敗問題です。

 日本共産党は、古川貞二郎・現内閣官房副長官が書いた官邸内部文書を暴露。消費税導入が問題となった八八年から八九年、十億円もの官邸機密費が国会対策費として使用されていた実態が記載されており、外務省機密費が官邸に毎年十数億円も「上納」されていることも明らかになりました。

 しかし、小泉内閣は、この“権力の恥部”にかたく口を閉ざし続けています。

 これだけの事実をつきつけられても、官邸機密費を管理する福田康夫官房長官は、内部文書についての調査を拒否。機密費の使途を証言していた塩川正十郎財務相も、自分の証言を「忘れた」と沈黙したままです。

 外務省「改革」を叫ぶ田中真紀子外相も、「上納」疑惑では「事務方も過去の首相や官房長官も、ないとの結論に達している以上、ないといわなければならない」と及び腰です。

腐敗政治につかみ金が

 しかし、機密費のつかみ金ぶりは、会計検査院が実施した調査(二〇〇一年九月二十七日発表)でも明白になっています。

 それによると、総額十五億千八百九十五万円(二〇〇〇年度決算額)にのぼる官邸機密費は、取扱責任者である官房長官から支出され、通常、領収書の整理など補助事務が行われています。

 ところが、この中に、取扱責任者・官房長官から官房長官自身に支出され、その後、官房長官が外部に支払う機密費があるのです。

 機密費は、支払いが一度行われた時点で公金ではなくなるため、このルートを通れば、受取人・官房長官が支払人・官房長官に対して切った領収書以外、支払いに関する資料を残す必要はなくなります。あとは、領収書も不要で自由に使える金となるのです。

 実際、首相官邸は、機密費のこの部分に関し、「高度な政策的判断に基づき執行されるとくに機密性の高い経費」と説明。領収書の整理もせず、帳簿もないとしています。会計検査院も、この部分には本格的にメスを入れていません。外務省機密費からの「上納」分と合わせ、腐敗政治の財源にはもってこいのつかみ金となっているのです。

 小泉首相は、自民党総裁選で機密費問題に切り込むと公言していましたが、「総裁候補だったときと、総理になってからでは立場が違ってくる」(田中真紀子外相、二〇〇一年十二月二十一日)といわれるほど、「改革」は口先だけ。「聖域なき改革」を掲げる小泉内閣ですが、機密費疑惑の真相解明はまったくの「聖域」となったままです。(小林俊哉記者)

 


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