日本共産党

2002年1月10日(木)「しんぶん赤旗」

政府・与党が大合唱

「有事法制」と書いて「米軍有事」と読む

その心は…


 小泉内閣は、21日召集の通常国会で有事法制の策定を狙い、昨年起こった米国での同時多発テロや奄美大島沖の不審船事件を持ち出して、その必要性をしきりに宣伝しています。いったいなんのための有事法制なのでしょうか。


いったい何のため

写真
米海兵隊の実弾演習のため、市街地を走る米軍車両=99年1月、大分市

 政府はこれまで、有事法制について「わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した場合(おそれのある場合も含む)に必要な法制」と説明してきました。

 その内容は、外国からの侵略を口実に、自衛隊や米軍の軍事行動をなによりも優先させ、民間人の動員や土地、家屋、財産の取り上げなど、国民の権利と生活を制限するものです。

 ところが、中谷元・防衛庁長官は「国際テロのように多数の人が犠牲となる事態は『有事』になると思う」(「読売」一日付のインタビュー)といい、自民党の山崎拓幹事長も「テロに対する対応措置は法制上十分ではない」(六日放映のNHKインタビュー)と述べるなど、テロ対策のために有事法制が必要だといわんばかりです。

 また、小泉純一郎首相は、不審船事件について「理解に苦しむような不可解な意図、装備、能力をもって日本に危害を与えるかもしれない」とし、有事法制の「法整備を進めていきたい」(同日、年頭記者会見)と表明しています。

「テロ」「不審船」は別問題

 しかし、テロというのは、「国際法上の戦争ではなく国内法上の犯罪」(松井芳郎名古屋大学教授、『世界』二〇〇一年十二月号)です。

 テロという犯罪を取り締まり、万一、それが起きた場合には容疑者を逮捕して裁き、再発を防ぐというのは、警察と司法の基本的任務です。

 自民党関係者も「有事法制とは(日本に武力攻撃があった場合の日米共同対処を定めた)日米安保条約第五条を発動できるようにするための国内法整備の問題。テロへの対処は警察権の行使が含まれ、有事法制とは別問題だ」といいます。

 領海や排他的経済水域での不審船に対する警備も警察活動であり、海上保安庁の仕事です。

 中谷長官は、「あくまでも沿岸海域の警備については、海上保安庁が第一義だ」(昨年十二月二十五日の記者会見)とし、「有事法制とは別の世界の分類」(一月八日の記者会見)とのべています。

 戦争のさいの非常時体制とはまったく次元のちがう問題をもち出して、有事法制が必要だというのは、非常に危険な議論です。

攻撃される?

「想像できない」と防衛庁長官

 それでは、有事法制がもともとの口実にしてきた日本に対する武力攻撃の危険は現実にあるのでしょうか。

 中谷長官は国会で「想像ができないかもしれない」と答弁しています。(別項1)

 自衛隊元最高幹部(統合幕僚会議議長)の西元徹也氏は、昨年五月の論文で「今日から見通し得る将来において、我が国に対する本格的な武力攻撃が生起するとは見られない」と断言しています。

浮かびあがるアーミテージ報告

 そうなると、有事法制はいったい何のために必要なのでしょうか。

 二〇〇〇年十月、米国で「アーミテージ報告」と呼ばれる対日政策の報告書が発表されました。

 現在、ブッシュ米政権の国務副長官を務めるアーミテージ氏をはじめ、国務、国防の要職を担う人物らが中心になってまとめたものです。

 同報告は、日本に、海外での本格的な武力行使を可能にする集団的自衛権の採用を求めるとともに、一九九七年に改定された「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の実施として「危機管理法の立法措置」=有事立法を要求しています。(別項2)

 ガイドラインは、九七年の改定のさい、米軍がアジア太平洋地域でおこす介入・干渉戦争に、日本が自衛隊はもちろん自治体や国民を総動員して協力・参戦することを取り決めたものです。

 「アーミテージ報告」の作成者の一人で、現在、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)日本・韓国部長を務めるグリーン氏は、日本人研究者との共同論文(昨年四月発表)で「協力に消極的な民間機関や地方公共団体に対し、必要な協力を行うよう強制できる権限を総理大臣に与えるよう、さらに立法措置が必要」と主張しています。

 有事法制は、ガイドライン発動=米軍「有事」のさいに、日本の自治体や国民を総動員する狙いが込められているのです。


(別項1)

現実には言えない

 吉岡吉典議員(日本共産党) かつて日本に直接侵略の可能性があるかどうかが議論になったときに、当時の福田(赳夫)総理は「万万万万が一だ」と「万」が4つ並んだことがあった。私は、ロシア、中国、北朝鮮も過去においても現在も、そういう能力をもっていないと思うが。

 中谷元・防衛庁長官 3年、5年のターム(期間)では想像ができないかもしれない。現実にどこが攻めてくるとか、そういうことはいうことはできない。(2001年5月31日の参院外交防衛委員会)

(別項2)

立法措置の実施を

 「アーミテージ報告」から 「日本が集団的自衛権を否定していることが、(日米の)同盟協力を束縛するものとなっている。これを撤回することは、より緊密で効果的な安全保障協力を可能にする」「われわれは合衆国と英国との特別の関係を日米同盟のモデルとみなす。この取り決めは以下の要素を必要とする。(中略)危機管理法の立法措置を含む改定米日防衛協力指針のしっかりとした実施」

 


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