2002年1月10日(木)「しんぶん赤旗」
ブッシュ米政権はいま、新たな核戦略を策定しており、その中で、みずからも調印した包括的核実験禁止条約(CTBT)をふみにじって、地下核実験を再開する意向であることが明らかになりました。核兵器廃絶の国際世論を無視し、核兵器に固執する核兵器使用戦略を追求するブッシュ政権の本質、一国覇権主義の実像を改めて浮き彫りにするものです。
ブッシュ大統領は、二〇〇〇年の大統領選挙戦のころから、包括的核実験禁止条約(CTBT)は核兵器の安全を保障するものではないなどと批判してきました。そして、政権発足後には、同条約の死文化を目指す構えを何度か示唆してきました。今回の報道は、ブッシュ政権が新しい核戦略の方針のもとで、本格的に実験再開を狙い、CTBTを反古(ほご)にする構えであることを明らかにしています。
CTBTは、核兵器廃絶の世界的な潮流の高まりのなか、核実験を全面的に禁止せよという国際世論の広範な一致のもとで、米政府も同意して調印されました。実験再開は、この世界の世論に挑戦し、この国際的合意の過程を完全にひっくり返そうとするものです。
それは、国際的な協力の枠組みや合意を平気で無視して、自国の利益だけを追い、さらに他国に同調を強要するブッシュ政権のユニラテラリズム(一国覇権主義)そのものです。同時テロへの対処を口実に一方的に報復戦争を開始するのと同じ論理にほかなりません。
核実験再開計画の裏にある米国の新しい核戦略にかんする秘密報告書「核態勢の見直し」(NPR)はすでに米議会に提出されているとみられます。しかし、ブッシュ政権は同文書の一般への公表を避けています。ラムズフェルド国防長官は昨年末の会見で、近く公表すると語っていましたが、今年五日の会見では、一般への公表についてはそのやり方も含めて検討中などと言いはじめ、全文は公表しない可能性すら示唆しています。
ブッシュ政権がそんな秘密主義をとるのは、米国内外での批判を避ける狙いからとみられます。報告書が、実験再開の時期についてあいまいに記述しているのも、またラムズフェルド国防長官が八日、当面は“凍結する”などと言って実験再開が遠い先のように印象づけようとしたのも同じ思惑からでしょう。こうしたブッシュ政権の姿勢には、議会や専門家からは厳しい批判の声が上がっています(『アルバカーキ・ジャーナル』一月五日号「核兵器政策依然として秘密」)。
実験再開計画でさらに重大なのは、ワシントン・ポストによると、新戦略についての検討が、核実験再開計画の理由の一つとして、「新型(核)兵器の開発と製造の能力」をもつ必要を提起していることです。米政府が新しい小型核兵器開発・所有の計画をすすめていることはこれまでにもさまざまに明らかにされてきていますが、ポスト紙の報道は、その計画がまさに新しい核戦略の重要な柱となっていることを物語っています。クリントン前政権以来米政府は、CTBTに違反しないと称して実験室内の未臨界核実験を繰り返してきました。それがここにきて、ついに地下核実験再開というのは、未臨界実験では対処しきれない本格的な核兵器開発にブッシュ政権は乗り出そうとしていることを示しています。
ラムズフェルド国防長官はこれまでに、「核態勢見直し」の特徴は核兵器の削減にあるなどとしてきました。しかし、新戦略で仮に戦略核兵器やその核弾頭数が一部削減されるとしても、米国の核戦力そのものが減るわけではありません。それどころかブッシュ政権は、新たな小型核兵器の開発、製造、保有し、使用するという新たな核戦略を具体化しようとしていることを今回の報道は、明らかにしています。
ブッシュ政権はすでに、ABM(大陸間弾道弾迎撃ミサイル)禁止条約について破棄し、一方的に「ミサイル防衛」構想をすすめようとしていますが、これも新たな核戦略と一体のものです。
ブッシュ政権が準備する核実験再開は、まさにそうした危険な核戦略を具体化するためのものであり、新たな核軍拡競争を引き起こす恐れがあります。(夏目雅至、三浦一夫記者)
一九六三年に部分的核実験禁止条約(PTBT)が調印されましたが、これには地下核実験の禁止は盛り込まれず、核兵器保有国は地下核実験によって、既存の核兵器の貯蔵管理や新型核兵器開発のためのデータを得ることが可能でした。また七〇年に発効した核不拡散条約(NPT)でも五大核保有国が地下核実験を行うことは容認されていました。
核爆発実験を一切禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)は、ジュネーブ軍縮会議で九四年に開始され、九五年のNPT再検討・延長会議で採択された文書「核不拡散と軍縮の原則と目標」で九六年内に交渉を完了することが明記されました。同条約は同年九月に国連総会で採択され、昨年十二月時点で百六十四カ国が署名しています。条約発効には核開発能力のある四十四カ国の批准が必要ですが、このうち米国、中国など十三カ国が未批准で、インド、パキスタン、北朝鮮の三カ国は署名もしていません。
同条約は、核爆発を起こさないとされる未臨界実験を容認しており、米国は九七年七月以降これまでに十五回にわたって、未臨界核実験を繰り返しています。条約採択後、九八年にインドとパキスタンが地下核実験を強行しましたが、五大核兵器保有国の地下核実験は自制されてきました。
1963年8月 米、英、ソ連(当時)が部分的核実験禁止条約に調印
68・7 米英ソなど62カ国が核拡散防止条約(NPT)に調印
74・7 米ソが地下核実験制限条約調印
95・5 中国が地下核実験を再開
9 仏が南太平洋で地下核実験を再開
96・1 仏が地下核実験の終了宣言
7 中国が地下核実験を凍結
9 国連で包括的核実験禁止条約(CTBT)採択
97・7 米国が未臨界核実験を開始
97・7 日本がCTBTを批准
98・5 インド、パキスタンが地下核実験を実施
99・10 米上院がCTBT批准案を否決
2002・1・8 米国が地下核実験を再開へ、との報道
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