2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」
「これ以上値上げすれば国立大学の意味がない」。山形大学工学部一年生の男子学生(19)が話します。二十日、小泉内閣が発表した二〇〇五年度予算の財務省原案。国立大学授業料のベースとなる標準額が一万五千円引き上げられて五十三万五千八百円となることがもりこまれ、怒りの声があがっています。
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山形大工学部の今年の学費は五十二万円でした。同大生のA君(19)はアパート暮らしのため月々の仕送りが約三万円。入学金をあわせると今年度の父母の負担は百数十万円。孫請けで働く父親の給与は上がりません。母親がスーパーのパートで深夜まで働き家計を支えますが、今以上の仕送りは望めません。
自分自身、生活費をかせぐため、週三回のラーメン屋のバイトをしています。平日は午後五時から十一時まで。休日は午前十時から午後四時まで。疲れて午前中の授業はとれません。「それでも、月々貯金もできず、高い教科書は買わないですましています。高校生の弟が進学することになればどうなるのか…」と不安げです。
今年四月の独立法人化で、各国立大学は標準額の110%を上限に授業料を自由に決められるようになりました。大学の判断で授業料を据え置くことは可能ですが、国から大学に支給される運営交付金は標準額にもとづいて計算され、大学は授業料値上げを迫られることになります。
全日本学生自治会総連合(全学連)では、学費値上げストップを求める署名を広げ、一橋大学、東京大学、名古屋大学、信州大学などでは大学自治会と大学との交渉によって、当局側が“来年度の学費値上げはおこなわない”と言明する動きも生まれています。
全学連の千葉達夫中央執行委員長は、値上げ案に「今でさえバイトに追われ、勉学や課外活動に時間がさけない学生の生活をさらに厳しいものにする。進路選択の自由を狭め、憲法で保障された『教育を受ける権利』『教育の機会均等』に反する」といいます。
値上げは高校生を直撃します。日本高等学校教職員組合の林萬太郎副委員長は、「高校卒業後の就職は大変厳しい。資格や専門性を求め大学に進む学生が少なくない。お金がないために就職や進学の道を閉ざされる若者をさらに生み出すことになる。本人や家庭にとってはもちろん、日本社会にとっていいことではない」と批判します。