2021年12月10日(金)
独ショルツ新政権発足
3党連立 閣僚の半数が女性
【ベルリン=桑野白馬】ドイツ連邦議会は8日、首相指名選挙を行い、社会民主党(SPD)のオラフ・ショルツ氏(63)を首相に選出しました。環境政党・緑の党と企業寄りの自由民主党(FDP)との3党による連立政権が正式に発足しました。16年にわたり首相を務めたメルケル氏は退任し、政界も引退しました。メルケル氏が率いたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)も16年ぶりに与党の座を明け渡しました。
中道左派主導の連立政権は、1998~2005年のSPD・緑連立のシュレーダー政権以来となります。ショルツ氏は格差是正や最低賃金の引き上げといった政策を実施し、社会的公正の実現をめざすとしています。
緑の党のベーアボック共同党首は外相に就任。メルケル政権は対中政策で経済関係を優先してきましたが、新政権は人権問題をめぐり中国に厳しい姿勢で臨む構えです。もう一人の共同党首ハーベック氏は副首相となり、閣僚として気候変動と経済政策を統括する新設の省を担当。脱炭素政策で意欲的な目標を掲げ、成長戦略として位置づける姿勢を鮮明にしました。
FDPのリントナー党首は財務相に就任。23年からの財政均衡を目指しており、SPD、緑の党が選挙中に掲げた社会的公正の実現に向けた分配政策や積極的な気候対策投資に「待った」をかける存在となり得るとの指摘もあります。連立協定では、SPDと緑の党が主張してきた富裕層への増税が盛り込まれておらず、FDPの主張が通った形です。
国防相、内相には女性が就任。ショルツ氏を除く閣僚の半数が女性となりました。今後はまず、新型コロナウイルスの感染拡大への対処に臨みます。
連立政権は、来年3月にウィーンで開かれる予定の核兵器禁止条約第1回締約国会議へのオブザーバー参加を表明しています。ただ、新政権は国内に配備されている米軍の戦術核兵器をドイツの戦闘機で運用する仕組みは維持する方針。核兵器を搭載できる戦闘機も更新していく方針を示しています。
コロナ対策で評価を高める ショルツ氏
オラフ・ショルツ新首相は、旧西ドイツのオスナブリュック出身。弁護士から政界入りし、社民党幹事長などを歴任。2011年から北部ハンブルク市長、18年からは第4期メルケル政権の副首相兼財務相を務めました。新型コロナ禍では国民や事業者への大規模で素早い支援策を実施し、評価を高めました。(ベルリン=桑野白馬)