2020年6月10日(水)
主張
ひとり親家庭
貧困を防ぐ対策と支援を急げ
コロナ禍のなかで、突然の学校一斉休校や補償なしの休業要請、給付金の大幅な遅れなどが、国民生活を困難にさせてきました。とりわけ深刻な苦難に直面しているのが、全国400万世帯にのぼる、ひとり親家庭です。
よく出る「死」の言葉
シングルマザー世帯からの生活相談に応じ、毎月食品などを届ける活動を行っている大阪のシンママ応援団には、「学校休校で給食もなく、お米がなくなるところだった」「仕事がなくなり、次も見つからない」「できればもう少し食料を送っていただけないか」など、今日、明日、食べるものにも事欠いているとの悲鳴が寄せられています。応援団は、「このところママたちから“死”という言葉がよく出される」「公的な支援が急務だ」と訴えています。
沖縄大学地域研究所や沖縄タイムス社などが5月に、沖縄県内に住む小中高生のいる保護者を対象に行った調査では、コロナ禍で収入が5割以上減った世帯は全体の23%、手取り200万円未満では41%と、低所得世帯ほど深刻です。収入減となった人のうち、まったく収入がなくなった人は200万円未満では19%にのぼり、600万円以上の人の3倍以上です。「もともと所得が低い世帯で、生活がより厳しさを増している」「非正規など不安定な雇用状況にあるひとり親への影響の大きさが明らか」(沖縄タイムス5月19日付)と分析されています。
そもそも日本の子育て世代の貧困率は、夫婦と子どもの世帯では15%、シングルマザー世帯では39%にもなります。年間就労収入は母子家庭では、平均200万円です。各地の労働相談には3、4月、母子家庭の母親を含む非正規女性からの相談が急増しています。シングルマザーたちは子育てや経済的困難、女性を正規で働きにくくしている職場のジェンダー差別など二重三重の困難を背負い、必死に生きています。
政府は第2次補正予算案に、ひとり親世帯に対する臨時給付金の支給を盛り込んでいます。児童扶養手当を受給している世帯には、子ども1人の場合5万円(第2子以降は3万円を加算)、さらに減収が確認された場合は5万円を追加支給するとしています。児童扶養手当を受給していなくても、減収が確認された場合は5万円支給の対象とします。支援の拡充自体は重要ですが、支給が8月以降とあまりに遅く、1回の給付にとどまるなど不十分です。
国民1人10万円の特別定額給付金もほとんどのところで未支給です。一刻も早く具体的な支援を急ぐべきです。
ジェンダー平等の視点を
日本は児童手当や児童扶養手当の額が少なく、ひとり親家庭では、母親がダブルワーク、トリプルワークで必死に家計を支えていることが珍しくありません。そこにコロナ禍が直撃し、失業したり休業を余儀なくされたりして、収入が落ち込み、いきなり命と健康の危機にさらされています。
コロナ危機がもたらす経済の低迷は今後、長期にわたり、経済的に脆弱(ぜいじゃく)なひとり親家庭にさらなる困難を及ぼす危険があります。一時的な支援策にとどめず、子どもの権利とジェンダー平等の視点に立った抜本的で総合的な対策がいまこそ求められています。