2010年11月22日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

お墓どうしますか

跡継ぎ不在 管理できない

エコ背景に 広がる樹木葬


 いずれ自分もと、葬儀や墓の問題がさまざまなところで議論されています。宗教ジャーナリスト・柿田睦夫氏の「最近墓事情」と、仲間と一緒に眠りたいと共同墓所をつくった茨城県つくば市の全日本年金者組合のとりくみを紹介します。


 墓と墓地はいま、二つの課題に直面しています。「継承」と「環境=自然保護」です。

 「田舎の墓をどうするか」で悩む人もいれば、「分譲墓地を買ったけれど、一人息子は海外暮らし」という人も。継承者不在の分譲墓地は、更地にして返却しなければなりません。かつて墓は「イエの継承」の象徴的存在でした。人口の都市集中や少子化と、それに伴う意識の変化で状況は激変。跡継ぎ不在の墓が急増しています。

 夫婦それぞれの実家の墓を移し、購入した墓地にいれ、墓石に両家の家名を入れる「両家墓」や永代使用料とは別に永代供養料を納める「永代供養墓」と、さまざまな試みがされてきました。

 家名のない墓碑も増えています。「憩」「やすらぎ」から「ありがとう」「がんばれよ」

 そんな墓事情の中で注目を集めているのが運動団体による「共同墓」。生活と健康を守る会や年金者組合が全国各地で建立しています。映画人や映画を愛する人の共同墓や医療・福祉施設が運営する共同墓もあります。

 跡継ぎがいなくても団体が墓を守り、追悼行事もしてくれるし、費用も安い。高齢者の新しい共同と連帯の運動のテーマになりつつあります。

 もう一つの課題は、墓地造成と自然保護。とりわけ大都市周辺部では深刻な問題です。そんな中で誕生したのが「樹木葬」です。遺骨は直接土中に埋め、墓石の代わりに木を植える。墓地と里山再生を兼ねるという発想です。全国に広まりつつあり、横浜市営墓地の中にも樹木葬区域ができています。

 自然に返るという意味で樹木葬に似ているのが「散骨」です。墓地埋葬法に従って行われる樹木葬とは違い、散骨には適用法規がなく、いわば「法の外」の行為ですが、すでに市民権を得ています。

 散骨運動団体は、遺骨は粉にしてまく、人里近くにはまかないなどの自主的ルールをつくっていますが、法的規制がないことに目をつけた無秩序な「散骨ビジネス」の横行も懸念されています。

 その他、遺骨(灰)をペンダントや置物に埋め込み、仏壇代わりにもする「手元供養」などの葬法も生まれています。(柿田睦夫)

終の住み家は共同墓所

茨城・つくば市の年金者組合

地図

 「激動の時代(とき)生きぬいた人びと永遠(とわ)に」

 茨城県の「全日本年金者組合つくば共同墓所『紫峰の郷』」の墓碑です。つくば市の筑波山を眺望できる風光明美な丘陵地に今年7月に完成しました。きっかけは、ある組合員が加入の際、「東京都足立区の年金者組合には共同墓所がある。つくばでも」といった一声でした。妻を亡くして一人暮らしの役員、故郷は遠いという人もあり、具体化しようと墓所候補地探しが始まりました。

 お墓を持たない“新住民”も多く、子どものいない夫婦、一人暮らしの年寄り、個人で墓を建てるには費用がかかりすぎる…それならいっそのこと、ともに活動し、それを支えてきた仲間と終(つい)の住み家で一緒に眠る共同墓所をと賛同する8人ほどでスタートしました。

 議論は墓の広さをどうする(遺骨何体分)、納骨の方法、入会資格(家族はどこまで)、1人の負担額、墓碑に刻む文字など、当初予想された以上の検討課題が多いのには驚かされました。

 7月31日に、市内の民主団体代表や日本共産党の山中たい子県議も参加して落成式を行いました。懇親会では「終の住み家がこの目で確認できたので安心した」「これで安心して活動できる」との声とともに、これまであまり交流のなかった人からも「こういう人たちと一緒なら安心」という声も聞かれ、会員間のきずなもいっそう深まりました。

 墓の面積は6平方メートル、組合員およびその家族で埋葬を希望し、「紫峰の郷」利用申し込み納入金(1人15万円)を納めた人が有資格者(会員)です。管理運営費は年間2000円です。現在のところ埋葬者はなく、会員は18人です。

 地域では珍しいとりくみでもあり、地元の新聞が1面トップでとりあげて反響も徐々にひろがりつつあります。

 墓だけでなく葬儀も、生きざまを反映したその人らしいものが追求されるようになってきました。

 年金者組合=高齢期運動つくば連絡会とも相談しながら「葬儀のあり方」「遺書の書き方」など、高齢者をめぐる人生最終のいろいろなテーマで学習会を開きたいと考えています。(共同墓所運営副委員長・茅野徳治)

 問い合わせは茅野さん電話029(857)6593


用語メモ

分譲墓地

 所有権の売買ではなく、使用権の分譲。無縁墓化による墓地荒廃を防ぐためです。永代使用料を納めて入手し、その後は管理料を払う仕組み。継承者がいないと返却しなければならず、納めた永代使用料は戻らない。使用権の転売は不可。寺の檀家(だんか)になるのが条件。墓に入れられるのは何親等までかなど。分譲には多くの条件がつきます。即日契約はせず、契約書を精査しましょう。

大切な「書類」

 役所に死亡届を出すと「火葬埋葬許可書」が交付され、火葬場がこれに火葬済みの証明をします。これが将来の「埋葬許可書」の役割を果たすため、大切に保管しましょう。

分骨と改葬

 分骨には最初から複数の墓に入れる方法と、埋葬後に改めて分骨する方法があります。改葬は墓自体を移転すること。いずれも所定の手続きが必要で、まず最寄りの役所に相談を。境内墓の改葬では「閉眠供養」などを要求されることがありますが、寺との関係は考慮するとしても、法律上の改葬手続きとは一切関係ありません。





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