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中田進さん(関西勤労者教育協会講師)

いじめやパワハラ、ロストゼネレーションの悔しさ――あなたたちには落ち度はないのです

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派遣・契約社員・アルバイトなど非正規のみなさんのメールから、職場の実態がさらに深刻になっていることがわかりました。

毎日いじめが、パワハラが

Aさん「ある社員の人から毎日いじめにあっています。周りの社員には、このことを伝えたのですが全然、改善してくれず、あなたがやめるしかないね。と言われました。誰、一人話をきちんと聞いてくれません。アルバイトより社員の方が大事みたいで毎日つらい日々を過ごしています。私がやめようか考えてますと話をすると今は、人がいないから頑張って働いてくれ!と言われます。本気で相談する人がいません。助けてほしいです」

Bさん「派遣で気に入らない人がいると、みんなの前で堂々と、気持ち悪いと暴言を吐く。 だいたい、同じ人間なのに、なぜ、派遣というだけで、社員の奴隷みたいになっているおかしい状況がまかり通っているのだろうか。なぜ、社員にどなられ、トイレで泣く女性派遣社員を会社は放っておくのだろうか」

Cさん「私が辞めた理由は、『職場環境』でした。それこそ、同僚(パート)どうしでのつぶし合いや、それに伴うパワハラも受けて来ました。ここに書ききれないのが残念な位に」

 いま職場に、「正規が非正規をいじめる」「パート同士がいがみあう」という悲惨な現状があります。自分の「安全」のためにはとりあえず、目の前の弱い立場の人を「いじめる側につく」という子ども世界とそっくりの人権侵害がくりかえされています。改善しようとせず「あんたがやめるしかない」と逃げ、話も聞いてくれないとはなんとひどいことでしょう。会社のこと、上司のこと、社員のことをまず気をくばらないと、「自分が大変なことになる」と本能的に構えてしまう弱々しい労働者の姿が目に浮かびます。労働者どうしを競争させたり、いじめあいをさせることで、団結を妨げ、支配しようとする会社の卑屈で巧妙なやり方に心から憤りを感じます。

いじめている人を含め、職場の人間がいま異常な現状にあることを広くとらえ、日本中で同じことが繰り返されているこの社会のしくみと背景を冷静にとらえてみませんか。そして自分に何の落ち度もないことに自信をもち、毅然と不正と不当性をあばき対処しましょう。

もちろんそんな心の余裕もなく追いつめられた気持ちでいっぱいなら、Cさんのように心が病む前に退職しましょう。人がいないといわれてもあなたの責任はまったくありません。勇気を出して辞表を提出しましょう。ほんとうにあなたを必要としているのなら、責任者が本気で「いじめ」の解決に動きだすはずです。

郵政民営化の実態

「ゆうメイト」の賃金ダウン、解雇が広がりの告発、ありがとうございます。郵政民営化の本質は、利益優先、労働者犠牲、サービス低下であったことがメールではっきり示されています。郵産労という労働組合に加盟し、反撃にたちがるゆうメイトの仲間も広がっています。解雇されたあと大変でしょうが、なんとか仕事について生活の保障をかちとることを願っています。

賃金と労働時間の違法

「『言えばクビになるから・他に行くところがないから・使ってもらってるから』と1日10時間労働はもちろん、1日16時間を月30日、それで文句も言わずに月13万で使われてる奴もいる。どこにでもいる。もううんざりだ」

ここに二つの違法がありますね。時給で地域包括最低賃金を下回り、時間では1日8時間、週40時間を超えていて違法そのものです。「文句もいわずに」というところが確かに問題ですね。違法であることも、どうたたかえば解決できるのかも知らない労働者が多すぎますね。まずは学習して違法であることに確信もち、直接改善要求をしたり、労働基準監督署に訴えるなど、行動をはじめるよう呼びかけましょう。

ロスト・ジェネレーション

30代の「ロスト・ジェネレーション」の雇用不安は深刻で、いま社会問題になっています。

「30歳を超えた求職者はパート、アルバイト、派遣、請負などの非正規求人でも『門前払い』を食らわされるのが現実です。 ハローワークの職員に相談しても、『こればかりはどうしようもない』と冷笑されるだけ」という実態をなんとしても解決すべきです。

いま「即戦力」を優先雇用するか、学卒新規採用かの企業が多くロスト・ジェネレーションの正規雇用の枠がますます狭くなっています。

派遣法を1999年段階に戻し、限られた業種に制限し正規雇用を拡大することと、あらゆる方法で雇用の促進と生活保障つき職業訓練を政府の責任ですすめ、ロスト・ジェネレーションへの緊急支援をすべきですね。

偽装食品
 Dさん「不二家でも問題になった賞味期限原料の使用も最近当社でも問題になり、本来回収しなければならないのにその動きがないです」

ミート・ホープ、白い恋人、比内地鶏(ひないじどり)、赤福とつづく「偽装食品」など、内部告発が発端の場合も多く、現場の労働者の奮闘が期待されています。このままでは必ず会社の破綻がくることをみんなで話し合い、緊急に改善を迫りましょう。告発をおそれる会社は受け入れることも考えられます。食品安全法違反として、厚生労働省、保健所、そして最後はマスコミに直接情報をという方法も。「命」の問題です。がんばってください。

偽装請負・女性差別

Fさん「事実、現在働いているところは、偽装請負です。すでに、半年契約を6度更新し、3年が経過しました。 派遣での就労でネットなどで、いろいろ検索して、偽装と認識しました。 派遣で働く若い人達は、そういう知識があるのか無いのかわかりません」

Fさんのいう通り偽装請負です。3年を超えて同じ人を同じ業務で使い続けようとする場合には、派遣先は直接雇用をその派遣労働者に申し込む義務があります(労働者派遣法40条の5)。直接雇用とするよう派遣先に申し入れましょう。解決しなければ労働局に指導を要請しましょう。弁護士に依頼して交渉をすることをおすすめします。

Gさん「12年前、短大卒業と同じに入った今の会社。私の入社した年から女性一般職は契約社員採用でした。今同じ部署でペアを組んで働いている1期上の先輩は、最後の正社員採用で入っているので、100%全く同じ仕事をしてますが、給料は私の2・5倍」

まず女性一般職を「契約」雇用にすることで賃金はじめ労働条件に大きな格差をつけることは、明らかに男女雇用機会均等法の「性別を理由とする差別の禁止」に抵触し違反です。また、まったく同一の仕事で差別するのも労働基準法4条「男女同一賃金」の原則に違反しています。実質差別であるにもかかわらず「雇用形態のちがい」を隠れみのに差別している現実とたたかい、このような間接的な差別も禁止させ、同じ仕事をしている正社員と均等な待遇の労働条件を実現させるたたかいが重要ですね。


プロフィール

なかた・すすむ

1937年、京都に生まれる。関西勤労者教育協会講師。京都府立大学卒業後、大阪の中学校教諭を経て、勤労者教育に専念。労働学校、労働組合、民主団体、青年女性団体、公民館、高等学校、各種団体で講演、 政治経済情勢、哲学、「暮らしと経済」「二一世紀どう生きる」「学ぶこと、生きること」「働くこと、生きること」「自分らしく輝いて」「学ぶことは生きる道しるべ」 などをテーマに、分かりやすく語りかける。

主な著書「働くこと生きること」(学習の友社)。「自分らしさの発見」(新日本出版)。 「人間らしく自分らしく」(学習の友社)

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