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笹山 尚人さん(弁護士)

セクハラ・パワハラ、いじめは許されないこと――メモに残すなどして、毅然と拒否しましょう

写真 今回拝見した書き込みの中に、セクハラ、パワハラ、いじめに遭ったというものがありました。いじめによって19歳にして職場に行くのが怖いというコメントや、胸を揉まれたり、キスをされたり、といった具体的なとんでもない行為の告発など、いたましいコメント等が寄せられています。

セクハラ・パワハラ・いじめとは

 セクシャルハラスメントは、意に反する性的言動です。パワーハラスメントについては、明確な定義がなされていないものの、職場の地位等の力関係の存在を背景にした労働者に対する不利益な取り扱いや人格権侵害行為を指しています。いじめは、セクハラ、パワハラと重なり合う場合もありますが、職場における労働者に対する何らかの意図的な人格権侵害行為を言っています。

誰でも尊厳を持って働ける

 労働者は、一人の個人として、尊厳を持って生き、働くことが出来ます。憲法は、そのような個人の人格的自律と生存について、これを人権として尊重すべきことを定めています(13条)。ですから、誰でも働くに当たって、性的にも、またその他の場面でも、不快な思いをしたり、自らの尊厳を傷つけられたりしないようにしなければならないのは当然です。

 労働法では、これを受けて、使用者は、労働契約上、労働者の労働環境を安全で働きやすいものに整える信義則上の義務を負っていると考えられています。この考え方の発露として、男女雇用機会均等法や労働者派遣法では、セクハラ禁止の条文があります。パワハラやいじめについては、これをしてはいけない式の直接の法律はありませんが、上記の職場環境調整義務から行われてはならないのは当然です。

毅然と中止の要求と、メモする癖とを大事にして

 セクハラ等に対しては、これを行う本人に対して毅然と抗議し拒否するとともに、これを防止する措置をとるよう使用者に対し要求することが重要です。抗議や使用者に対する要求は文書で行うようにして、また、自分が行われた行為は、できるだけ具体的にメモして残したり、他人に相談したりして、何らかの足跡を残し、なされた不当な行為の具体像を形にして残すように心がけて下さい。


プロフィール

ささやま・なおと

1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。

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