[閉じる]

笹山 尚人さん(弁護士)

「実際の仕事が事前の説明と違うときは?」「病気になったときは?」

写真 1,実際の仕事が事前の説明と異なる場合は

 今回も多数のコメントを拝見させていただきました。

 今回寄せられた声の中で、相変わらず多いなと感じたのは、事前の説明と実際の仕事に差異があるというものです。

 「契約内容のご確認を。」サラリーマン金融会社のテレビCMでよく見かける内容です。それ自体違法な約束をさせておきながらよく言うものだと、サラ金会社がCMで発言するのには大変腹立たしいものがありますが、標語それ自体は労働契約の場合にもあてはまる大変重要な内容です。

 労働契約は、あくまで契約の締結の際に約束した内容に拘束され、その約束が文書になっている必要はありません。ですから口頭で、「あなたには○○をしてもらう。」と業務の内容が特定されているのであれば、それ以外の業務に従事する義務は契約上ははないということになります。

 ただし争いになった場合に備えて、会社が渡した文書はとっておいたり、説明された内容をメモしておくといったことは自衛策としては必要かと思います。

2,病気を発症した場合の手続き

 また、今回のコメントの中には、社内の状況から病気に、それもうつ病等心の病になってしまったというケースが多く見られました。近時は、劣悪な職場環境が、このように精神疾患に結びつくケースが非常に多くなってきています。

 職場環境や業務それ自体を原因として、精神疾患を発症した場合も、労働災害の対象となります。労働災害とは、業務に起因して労働者が疾病や障害を負う結果になった場合、治療費や障害に対する見舞金等を国が支給する制度です。支給のためには、当該労働者を雇用していた事業主を管轄する労働基準監督署に対して、必要書類を整えて請求することになります。必要書類ということでいえば、医師の診断書や、かかった費用の領収書等が必要になってきます。

 職場環境等を原因とする精神疾患の場合、「業務起因性」があるといえるのかが問題になるケースも多かろうと思います。このように難しい問題がある場合は弁護士にご相談下さい。


プロフィール

ささやま・なおと

1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。

[閉じる]