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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

勇気を出して告発を。それが、まともな社会を作る一歩に

  29人の方の声を読ませてもらいました。今回は、年齢層も幅広く、学生や就活中の人から様々な働き方の人まで幅広い人から声が寄せられています。

 政府が発表する数字は改善しても、まだまだ若者の雇用と労働は厳しい状況にあることが、3番の「スポット派遣に名前を変えた日雇い労働、ネットカフェで生活する若者」、6番の「多くの不安を抱えて生きて行かなければならないのが現在の日本」、9番の「一人で2人分、3人分の仕事をこなすようになる」など、多くの声で裏付けられています。7番の「片方では長時間労働・過労死が出て、もう片方では無職や低賃金労働者が出るなんて異常ですよ。この国は。」には、まったく同感です。一国の総理大臣が「再チャレンジ可能な社会を」と言っていても、実際には「新卒限定採用」(13番)「新卒で就職が決まらなかったらかなり不利になる現況」(14番)「経験を積みたくても積めなかった人は一生、非正規で浅い実務経験のまま仕事をしていろというのですか」(15番)という状況にあり、「再チャレンジできる環境には到底遠い」(21番)のが現状です。

 しかし、一方では、この1年間、偽装請負の告発・摘発が大きく進みました。厚生労働省も指導を強めており、あのコラボレート社は事業転換を余儀なくされました。数年前から摘発・指導が進んでいるサービス残業問題と合わせて、是正の流れを私たちが作り出していることに確信を持ちましょう。最低賃金も、全労連と連合の要求が「時給1000円」でそろい、若干ですが改善の動きも出ています。3番の声にあるように、「一人の人間が文化的な生活が出来る、子供を一人ぐらい育てられる最低賃金」目指して、声を広げていきたいものです。次は、派遣問題です。強い立場を利用して「雇ってやっている」「代わりはいくらでもいる」とばかりに、ルールを軽視・無視する横暴な業者が絶えません。「派遣会社を取り締まる法律の罰則を強化してほしい」(23番)「人材派遣という雇用を規制してほしい」(16番)「人材派遣なんてとにかくおかしいシステムです。規制してほしい」(18番)の声は当然です。このような会社を、法令に基づいて厳しく規制していくように求める声を広げましょう。

 今、全国各地で、問題を抱える若者自身が声を挙げ、行動し始めています。4番の人、勇気を出して「是正を訴え」ましょう。「労働時間をごまかされている」10番の人、「サービス残業をさせられていた」25番の人、勇気を出して告発しましょう。それが、まともな社会を作る一歩であり、社会を変えていく原動力になるのです。

 今回は、正規と非正規の関係に悩む声や管理職の悩みも寄せられています。まず、このように「働く人を分断して喜ぶのは誰か」ということを考えましょう。分断策にのらず、同じ職場で働く者として、まず話をしてみませんか。お互いに見えていないことがきっとあると思います。その中から、解決の道も見えてくると思います。

 労働法制を連続的に改悪して、今日の事態を作ってきたのは5年半の自公政権です。すべての世論調査で不支持が支持を上回っている内閣が、3分の2の国会議席を持っているという「民意と議席の乖離」をただす絶好の機会が目の前です。「財界の政治への介入を減らす」(20番)ためにも、「憲法9条を守る」(25番)ためにも、4月のいっせい地方選挙と7月の参議院選挙で、若者の声を国会に届けられる議員を増やしましょう。


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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