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平井哲史さん(弁護士)

みんなで希望ある社会を取り戻そう―「最低賃金法」に反する時給もらってませんか

 今回の「声」は泣けました。いくら探してもなかなか仕事がなく、あっても派遣の仕事しかなく、待遇は悪い。将来に不安を抱えていて、それを口にすると余計に不安になるからあまり考えたくはないけど、どうしても考えざるを得ない。でも、どうしたら状況がよくなるのか、一人の力ではいかんともしがたい。そんな姿が浮かんできて、中には死にたいなどという切羽詰った訴えもあり、とても切ない気持ちにさせられました。

誰がこんな世の中にしたのか。「ワーキングプア」や「格差社会」が社会問題になっていますが、労働分野の規制緩和により「非正規」という雇用形態が激増させられてきたことに起因しています。ですから、「非正規」という形態を原則禁止にする必要があります。そのためには、企業献金をもらい、国民の税金から政党助成金をもらって料亭政治をやっている政党を政権から引きずりおろし、派遣法を廃止するか抜本的に改正しなければなりません。今はネットの時代ですから、みなさん一人ひとりが、たとえば10人の知り合いや友人に、若者の雇用の問題で奮闘している共産党への共感を訴えてくだされば、大きく広がり、政治を変える大きな力となりえます。投票権は正規も非正規も関係なく平等に一人一票です。今度のいっせい地方選挙と夏の参院選がちょうどいい機会です。一緒に希望ある社会を取り戻す努力をしてみましょう。

もうひとつ、当面の問題としては、やはり基本的な知識を労働者自身が身につけることが大事だと思います。

求人情報と全然違う労働条件だったという声がけっこうありましたが、たとえば、採用面接時に示された給与額と実際の支給額が違う場合には、面接時に示された給与額が労働契約の内容になっているのですから、差額を請求できるというのが判例です。また、求人情報と実際の条件があまりに違う場合には、ハローワークにそのことを報告してください。ハローワークは悪質な企業の求人募集は紹介しませんから、そういう悪徳企業は求人募集を出せないようにしてやりましょう。

関連して、「時給が600円」という声がありましたが、地域別の最低賃金で、一番低い青森、岩手、秋田、沖縄の4県でも、610円ですから、これは最低賃金法違反が濃厚です。待遇改善をはかるために労働組合に速やかに相談してください。

クビになったうえで「ボーナスを返せ」と言われて取られたという声がありましたが、これは賃金として支払われたものだから返す義務などなかったものです。使用者は返してもらったボーナスを不当に利得していますので、改めて賃金請求をすればよいでしょう。まずは、地元の労働組合や弁護士に相談してみてください。

こういったことについて、どこへ相談に行けばいいのかという声もありましたが、今は政党だけでなく、労働組合や法律事務所もホームページを開いています。日本労働弁護団は毎週火曜と木曜に電話による無料法律相談を受け付けていますし、労働組合でも駆け込みの相談に対応する体制をとっている個人加盟組織も増えています。「おや?」と思ったら、意外と近くに味方がいるのですから、相談してみてください。


プロフィール

ひらい・てつふみ

1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。

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