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笹山 尚人さん(弁護士)

写真派遣先に対する規制強化をするべきです

1,ホームページに寄せられたコメントを拝見しました。今回も、いずれも深刻な労働実態が寄せられていました。また、仕事がない、面接で関係のないことを聞かれる、侮蔑的な発言をされるといった、仕事の入り口の段階の問題も多く寄せられていました。

 これらのコメントを拝見していて私が思うのは、労働者派遣における派遣先の規制強化が必要だ、ということです。派遣先に対する法規制が不十分なことが、派遣や契約社員を活用すれば良いと企業が安易に考え、雇用を創出しなくなる一つの原因を作っていると考えるからです。今回はその点についてお話しします。

2,現代の労働現場においては、かつて正社員が担っていた仕事を、派遣社員が担っているという実態が多くあります。しかし、派遣社員からしてみると、自分が正社員と同じ仕事をしているのに、自分にはボーナスもない、退職金もない。一般臨時派遣であれば3年で切られてしまう。ややもすると、本当は3年で終わるはずなのに、3年以上も派遣で働き続けているということも珍しくありません。私はこのままこの職場で働き続けることはできないのか。正社員となって、ボーナスや退職金ももらえるようにしてもらいたい。そう願うことがどうして罪と言えるでしょうか。

3,労働者派遣法においては、法規の違反があった場合、厚生労働省は当該事業主に対し是正を指導し、場合によっては業務停止命令や、事業主名の公表措置などをとることができるとされています。ただ、労働者派遣法に違反する雇用の実態があっても、派遣先が派遣労働者を直接雇用することを義務づける規定は存在しません。期間制限に違反した場合に派遣先が派遣労働者の雇い入れ努力を払うこと、一定の場合に派遣労働者に対し派遣先が雇用の申し入れ義務を負うこと、という条文がわずかに存在するにとどまっています(労働者派遣法40条の3,4,5)。そして、財界は、これらの条文さえも、派遣先が労働者派遣を利用しづらくするものだとして撤廃を意図していると伝えられます。

4,しかし、労働者の権利の実現、そして雇用の創出ということから考えれば、労働者派遣法違反を行った派遣先については、当該派遣労働者が希望する場合は、その派遣労働者を直接雇用する義務を負わせるとの法規制を行うべきです。労働者派遣という働き方は、職業安定法が原則的に禁止する労働者供給事業の一つとして、本来アブノーマルな手続きです。労働者派遣法が厳格なルールを定めることにより、そのルールを守ることを前提に、例外的に利用を解禁しているのです。そうであるなら、法が定めた厳格なルールによらない限り、労働者派遣という働き方そのものを認めるべきではありません。ルール違反に対しては、原則に戻す、つまり、直接雇用にする、とのルールを定めるべきなのです。

 こうしてこそ、労働者派遣の蔓延という異常事態が解決され、そのことによって、直接雇用が原則ということが社会に徹底されれば、雇用は正社員できちんと行うべきだというモラルが社会の中に醸成されます。そのことが、雇用を創出することにつながっていくと思うのです。

5,この意味で考えると、現在の労働者派遣法の規制は、派遣先事業主に甘いと言わざるを得ません。これを正すことを労働者の要求とすることが、雇用を生み出し、労働者の権利の実現にもつながるのです。

6,11月2日のこと。最高裁判所は、派遣労働者が派遣先に対する直接雇用を求めた一橋出版=マイスタッフ事件で、派遣労働者の請求を認めない不当な判決を下しました。裁判所さえも、甘い派遣先に対する規制の不備を、正すどころか、追認してみせたのです。大変不当な判断だと思います。そうであれば、私たちの要求と運動で正していくことがことのほか肝要です。


プロフィール

ささやま・なおと

1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『フリーターの法律相談室−−本人・家族・雇用者のために』(共著、平凡社新書 05年10月発行 760円)、『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)。

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