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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

一人ひとりは無力でも集まれば無視できない力になる

  17人の方の声を読ませてもらいました。今回は年齢層も幅広く、さまざまな立場の人から声が寄せられており、内容的にもサービス残業問題から労働者保護法制などの学習・教育の問題、メンタルヘルスの問題、セクハラ・パワハラ問題、正社員になれないなどなど、働く人たちを大切にしない日本の政治のひどさを告発し日本の将来に警鐘をならすものとなっています。こんなにも多くの若者が、本来は自己実現であり社会参加であり自分が成長していく場である労働で苦しめられ、生活や人生についての深刻な不安をかかえて生きていることを思うと、胸が痛みます。

1番の人、まずは周りの人たちと話をしてみましょう、何人か一緒になって部長と交渉すれば改善できるかもしれません。また、いざという時に備えてタイムカードのコピーをとっておきましょう。明確な証拠を持っていれば、サービス残業していた分を取り返せる可能性が十分あります。3番の人、全労連(0120-378-060)をはじめいろいろな団体が相談を受け付けています。使ってみましょう。5番の人、相当にひどい経営者ですね。あなたの地域の共産党か民青同盟、労連などに相談してみませんか。相談してみれば、何か方策が見つかるかもしれません。 

 人間を「使い捨て」るかのようなあまりにひどい現状からか、日本社会の将来について悲観的な声が多いように感じました。たしかに、買い手市場に便乗してひどい会社や経営者が増えていることは事実ですが、変化のきざしも見えてきています。2007年問題もあって製造業のライン要員を中心に求人が増えており、都市部の工業高校では「以前の状態に戻った」という声もあります。ただし、いつまで続くかという心配もありますが。また、我々の粘り強い運動もあって、政府が「再チャレンジ可能な社会」をめざすという施策も始めました。これも、実際にどんなものになっていくか心配ではありますが。

 政治情勢をあわせて考えてみると、この1年間ぐらいは小泉自公政権による国民いじめの悪政がきわまった時期のように思えます。これから、9月の自民党総裁選・民主党代表選挙、来年4月のいっせい地方選、7月の参院選と大きな政治的動きが続きます。この時期に、私たちが声を挙げ、運動を広げていけば、この問題でも情勢が大きく動く可能性があります。毎日の仕事と生活がたいへんで、先のことなど考えられないという状況の人も多いでしょうが、声を挙げていきましょう。若者の雇用と働くルールの改善を求める運動に参加してみましょう。一人一人では無力でも、集まれば無視できない力になり、たくさん集まれば状況を変えることができます。若者のことを心配し、応援したいと思っている大人たちもあちこちにいますから。


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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