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平井哲史さん(弁護士)

あきらめずに動けば道を開くことは可能

1 非正規代替を推し進める政策の転換が必要

  相変わらず「就職できない!」という声が多かったです。こうした声がたくさん出ているにもかかわらず、政府の統計では失業率は回復してきた、景況は上向きだという発表がされています。なぜでしょう?

そのカギは、企業と政府の雇用政策にあります。企業は、賃金コスト削減のために、人減らしをして従業員一人当たりの仕事量を増やし、成果主義賃金制度を導入して競争をあおっています。そして、正社員を有期契約や派遣やパート・アルバイトといった非正規従業員に置き換える「非正規代替」政策をとっています。これにより、表面的には求人数が増え、企業はもうけを増やすようになっているわけです。しかし、非正規雇用では独立して生計を立てるのは困難なことが多く、この雇用形態の増加を反映して賃金は下落傾向にあり、少子化にも歯止めがかかりません。正社員も過大な仕事に追われ、世界的には非常識な過労死が後をたちません。

  そして、政府は、基本的にこうした企業の雇用政策を後押しする「規制緩和」政策を推進しています。1999年に派遣対象業務を原則解禁したことにより派遣労働者は急激に増えてきています。加えて、今、どれだけ働いても残業代を払わないでよい労働時間規制の適用除外制度や違法な解雇でも一定額の金銭を払えば雇用契約を打ち切れる制度をつくろうとしています。こうして労働契約関係の規制を外しながら、同時に、全国の労働監督行政に携わる職員数をどんどん減らし、監督をしない方向に進んでいます。違法な残業を是正させ、残業をしないですむような人員体制をとるようにさせれば、100万人単位での雇用が創出できるとの試算もあるのにです。

  ですから、雇用を増やし、労働条件をよくしていくには、ジョブカフェのような小手先の施策ではなく、「規制緩和」という根っこの政策の転換が必要で、そういうことをする政治に転換させる必要があります。また、職業訓練の枠を拡充し、あわせて失業給付を受けられる期間を延ばすことも必要だろうと思います。

2 あきらめない

  「政治なんてそう簡単にかわるもんじゃない」という声が聞こえそうですが、しかし、黙っていれば絶対に状況はよくはなりません。先ごろフランスで若年労働者について解雇を自由にできるようにしようとして労働組合や学生が大騒ぎして撤回にいたったことが報道されていますが、あきらめずに動けば道を切り開くことは可能です。日本でも03年に解雇は原則自由とする法改正を阻止したことがあります。私自身、国会に何度も足を運びましたが、道理と世論があれば政治は動かせるというのが実感です。残念ながらこういう国民の側での動きを知らせる報道は商業新聞ではほとんどないので、ぜひしんぶん赤旗を読んでみてください。

3 嫌味には一呼吸おいて対応を

  もう一つ、面接についてですが、「面接で落とされる」と泣いてきた大学の後輩の擬似面接をしたことがあります。彼女も相当嫌味を言われ続けていましたが、面接担当者は、応募者が嫌味に対してどう対応するかを見るためにわざと嫌味を言うことが多いようです。嫌味に対してむきになって反論したり、黙り込んでしまったりした場合には、協調性がないとか柔軟性がないと評価するためでしょう。ですから、「そういう質問が来るもんだ」と予想していくつかの嫌味のパターンに対し、笑って受け流して自己PRできるような回答パターンを用意してみてはどうでしょうか。その用意したパターンが当たるかどうかというよりも、自分の気持ちに少しゆとりが生まれて面接にのぞめると思います。そして、面接で嫌味を言われた場合は、意識的に一呼吸おいてからしゃべりましょう。嫌なこといっぱいあるでしょうが、あきらめず頑張ってみてください。


プロフィール

ひらい・てつふみ

1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。

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