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大木寿さん(全労連・全国一般労働組合 中央執行委員長)

写真労働者は一人では弱いですから、力を合わせるには労働組合が必要です

 私はみなさんと同じ問題で労働相談を受けていますので、気持ちが痛いほどわかります。ほんとにひどい扱いをされています。100社以上も面接した32歳男性は「おまえみたいな奴は生きているだけ無駄。社会の害悪」、37歳の男性は「中年ニート、社会のくず」と言われ続けました。25歳の女性は「社会不適格」と烙印を押され、「自分は社会生活に向いていないのでは?社会に必要とされていないのでは?」と悩んでいます。みなさんのメッセージで共通しているのは、「仕事が見つからない」「就職差別がある」、仕事についても「リストラされる不安」「給料が安い」「休暇・休日が取れない」「社会保険に入れない」です。この問題は多くの人の共通した悩みです。

 なぜ、このようなひどい扱いを受けるのでしょうか。この10年間、財界と政府による「構造改革」で企業のやりたい放題が可能になり、弱肉強食の企業間競争が行われ、競争に勝つために人件費削減競争が行われてきました。経営者も労働者も激しい競争に追い込まれ、人心も荒廃してきました。

 激しいリストラが行われ、大量の正規社員が解雇され、新規採用も非正社員が多数となり、大量の失業者と非正規雇用がつくりだされ、使い捨て部品のように扱われています。

 若者の失業者は10人に1人、非正規雇用で働く人は労働者3人に1人で、女性と若者(24歳以下)の2人に1人となっています。「下流社会」という本がベストセラーになっていますが、生活が困難な人が急増し、貧富の差が拡大しました。 

 先進諸国はどうなっているでしょうか。EUの主要国は賃金、医療や教育、住宅、失業などの最低保障は、日本とけた違いによい条件です。正社員と同じ仕事をする非正社員は雇用、賃金・労働条件、社会保障は均等待遇になっています。

 ひどい扱いをやめさせ、安心して働き、暮らせる職場と社会にするにはどうすればよいかです。毎日新聞の昨年12月に実施した世論調査では、日本が格差社会になりつつあるが6割を超え、所得格差が拡大すると7割が答えています。同新聞の1月のアンケートで「同じ内容の仕事でも、正社員と非正社員の給与に格差があることをどう思いますか」との質問に、「仕事の内容が同じなら、給与も同じにすべきだ」が8割です。多数の人が格差社会はおかしいと思っています。

 現状を変えるには、みんなと力を合わせて、経営者と政府のやり方を改めさせなくてはなりません。労働者は一人では弱いですから、力を合わせるには労働組合が必要です。一人でも入れる労働組合があります。一人で悩まず、一歩踏み出してまず相談してください。連絡先は「0120−378(みなは)−060(ぜんろうれん)」です。


プロフィール

おおき・ひさし

(略歴)
1943年 東京生まれ。5人兄弟の末っ子
1971年 電子部品メーカーSMKの神奈川工場で組合結成。委員長に選ばれる。
会社は組合つぶしのために、私を配転命令拒否を理由に解雇。組合員の脱退や6年半のたたかいで勝利し、私は労働組合の仕事(専従)につく。
1987年全国一般労働組合神奈川地方本部の副委員長に選出される。労働相談・組合づくり、解雇や倒産、経営危機などの対策とたたかいに明け暮れる。
1989 年 全労連・全国一般労働組合が結成され、中央本部書記長に選ばれる。
2002年 中央本部委員長、全国労働組合総連合(全労連)副議長に選ばれる。
(家族)妻:保育士、子ども:2男2女
(趣味)山登り、スキー、旅行

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