[閉じる]

林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

厳しい労働と生活の日々でしょうが、あなた達を応援し支える大人たちとともに学習し、行動していきましょう

 ホームページに寄せられた20人の方の声を読ませてもらいました。まず、若者の間に「仕事がみつからない」「学歴・性別で就職差別がある」「労働時間が長い」「残業代が出ない」状況がいっそう広がっていることを実感しました。多くの若者が「毎日平均で15時間、残業代なしで働かされているパチンコ店の店員」「休日出勤を含め月平均80時間もの時間外労働をしている教育委員会事務局職員」など長時間労働や、「休日が何日あるかわからない」「人間をモノのように扱う会社」など無権利な状態で働かされており、「もう限界です」「うつ病にむしばまれ、家にいるのも地獄で、落ち着ける場所がない」などの不安感や悩みをかかえて生きていることを考えると胸が痛みます。
 しかし、一方で、今回は若者の雇用と労働の問題の原因と本質を正確についた声がいくつかありました。5番の「企業が正社員雇用を減らし間接雇用を増やしていることが原因。しかし「その場しのぎ」雇用は当面の利益にはなっても、企業の将来は危うくなる。」、
12番の「社会的責任の大きい大企業が率先して、人を雇用し、育成し、長時間労働をなくすべき。それを出来るのにやらない大企業ひいては日本社会に未来はない。」、18番の「若者をニートにさせてしまっている社会」などの分析と指摘はまさにその通りです。過酷な状況で働かされていることを告発するだけでなく、若者の雇用と労働の問題の原因を若者自身が正確につかみ始めていることには大きく励まされます。
今回は人間関係の悩みがたくさんありました。人間関係の問題は個々の状況が違うのでむつかしい問題ですが、同じ職場で一人でも話せる人を作れればずいぶん違います。同期の人や先輩で話せそうな人はいませんか。自分自身を出していくことを含めて努力する価
値はあると思います。
「学習しなければ」という声もいくつかありました。その通りです。「知は力」です。最近は本も少し出てきました。インターネットでも、いろいろなサイトがあります。民青同盟や労働組合などで学習する方法もあります。
 学習したら行動しましょう。7番の人、「月平均80時間」は過労死認定基準ですよ。教育委員会事務局なら相談窓口か苦情受け付け窓口があるはずです。そこへ届けましょう。10番の人、「いちいち小さな事案には付き合えない」という労働基準監督署なんて、とんでもない話です。各都道府県労働局には相談窓口がありますし、全労連にも相談窓口があります。(いずれもホームページから入れる)また、未払い賃金問題の解決のためには簡易裁判所の「少額訴訟」(いわゆる簡易調停)という方法もありますよ。
若者の雇用と労働の問題は日本の将来に関わる大問題という点だけでなく、被害を受けている若者の数の多さから見てもまさに国民的課題です。「雇用の流動化」は財界の基本戦略ですから、簡単には変わらないでしょう。しかし、若者が声を挙げ、行動を始めたら、これを聞いた国民の大多数が事実と解決の道筋を知れば、彼らも姿勢を変えざるを得なくなります。厳しい労働と生活の日々でしょうが、あなた達を応援し支える大人たちとともに学習し、行動していきましょう。
 

プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

[閉じる]