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原 和良さん(弁護士)

あきらめてやめてしまうことは簡単ですが、その繰り返しでは何も変わりませんよね

写真 新年あけましておめでとうございます。政府は、景気は回復しつつあると盛んに宣伝していますが、皆さんの悲痛な訴えを見ると、青年の実態には政府の目は全く向いていないといわれても仕方ありませんね。儲かっているのは、大企業と一部エリート層だけ、昨年は「勝ち組み」「負け組み」という言葉が流行りましたが、勝手に「負け組み」にされて、人間らしい生活も保障されないという冷たい政治がまかり通っています。所得の格差がどんどん広がっているのを実感します。

 今回も、正規従業員と派遣・アルイバイトなどの非正規従業員との労働条件の差別、法律違反の数々が告発されていました。

 まずは、自分の雇用条件を書面でしっかりと確認することが大事です。契約期間、正規か契約か、時給制か月給制か、一日の始業時間と終業時間、残業代についての決まり、等労働基準法では、雇い入れ時に雇用条件について労働者に通知する義務がありますし(第15条1項)、また常時10人以上を雇用する使用者には就業規則の作成(第89条)と掲示・備え付け又は交付が義務付けられています(106条1項)。

 月給制であれば、休みをとってもそのことによって月給(基本給)が一日分引かれることはありません。また、残業代についても、労働基準法上は、一時間あたりの平均賃金の1.25倍の割増賃金を支払わなければならないことになっていますので、自分の平均賃金を知っておく必要があります。

 また、保険については、週に30時間以上働いていれば社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険)に加入でき20時間以上であれば雇用保険に加入できます。右の基準を満たしているにもかかわらず就業中職場で大怪我をしたのに労災保険が受けられない、雇用保険に会社が加入させてくれなかったため、退職後、失業保険がもらえないという相談をよく受けますが、労災保険や雇用保険加入は会社に加入義務がありますので、手続きをとれば事後的にでも保険適用が認められるケースがありますのであきらめることはありません。

 これまで勝ち取られてきた労働条件も長い年月をかけた粘り強い要求運動の結果実現してきたものです。今の労働条件に対する不満や不備についてもあきらめずに、粘り強く改善を求めていくことが必要です。あきらめてやめてしまうことは簡単ですが、その繰り返しでは何も変わりませんよね。同じような冷遇を受けている職場の仲間にも、声を掛けて改善方法を一緒に見つけていく運動を全国の職場で広げていけば、全体として日本の労働現場の労働条件は向上することになるでしょう。

 そんなリーダーシップを若い人たちがとってくれることを期待してやみません。

 


プロフィール

はら・かずよし

弁護士、東京法律事務所所属
 (略歴)1963年12月 佐賀県有田町生まれ
     1989年3月  早稲田大学法学部卒業
     1992年    司法試験合格
     1995年    東京弁護士会登録〜現在にいたる
 (主な事件)
  労働事件(労働側)、公害事件、マンション紛争、痴漢えん罪その他刑事事件、交通事故(民事、刑事)、不動産、家事(離婚・相続)、債務整理・破産事件その他民事一般

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