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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

勇気をだして企業に是正を要求し、行政機関に通告・告発を

  32人の方の声を読ませてもらいました。今までよりもさらに多くの若者から、「仕事がみつからない」「生活できる賃金が出ない」「あまりの長時間労働に体をこわした」などの声が寄せられており、若者の雇用と労働の状況がいっそうひどくなっていることが実感できます。本来は未来に対する希望とともに働いているはずの若者が、「いつまで耐えればいいのでしょうか」とか「もう死んだ方がいいでしょうか」という悩みをかかえて生きていることを考えると本当に胸が痛みますし、このような事態を作り出した人たちに怒りを覚えます。しかし、一方で、こんなに厳しい中でも自らの人生のあり方を真剣に考えたり、企業や政治のあるべき姿について考えている若者が少なからずいることに、希望を感じました。

今日の事態のスタートとなった財界戦略「新時代の日本的経営」が出て10年、「雇用の流動化」すなわち「正規労働者を減らして非正規不安定雇用労働者を増やし、総人件費を減らして利益を上げる」ことが日本中に広がりました。この結果、雇用に関しては一番弱い立場にある若者に矛盾が集中し、正規であっても非正規であっても「若者を使い捨てる」状況が広がっていますが、このことは企業と日本の将来にも大きな問題になりつつあります。「人員を削減し正規を非正規に置き換えていけば当面の利益は上がるが、技術力・競争力が低下して製品の品質が低下し、ひいては日本の国力が低下する」という19番の指摘は私もまったく同感です。JR西日本の事故などはその良い例でしょう。製造業でなくても、「従業員に希望、やりがいを持たせない企業」(1番)や「次の世代のことを考えない企業」(2番)では、企業の活性化はできず、企業の将来もないでしょう。このことに気づく人がだんだん増えています。雇用流動化政策は日本資本主義の基本戦略ですから撤回させることは簡単ではありませんが、いずれ一定の手直しを迫られると思います。今は、その時へ向けて若者自身が声をあげ、行動していくことが求められています。

 何に向けて行動するか。まず、あまりにひどい例に対しては勇気を出して改善を要求しましょう。企業に是正を要求し、行政機関などに通告・告発しましょう。5番の人、アルバイトでも実質的にフルタイムで1年以上継続して働いていれば正社員登用の可能性があります。信頼できる人に相談しましょう。24番の人、労働基準監督署に行きましょう。今は厚生労働省の「使用者に勤務時間の管理を義務づける」通達もあり告発すれば監督署が調査に入りますし、不払い分の賃金を払わせた事例も増えています。

 仕事と将来への不安・悩みを一人でかかえるのは大変です。厳しい労働と生活を共有できる仲間がいれば、気持ちが楽になるでしょうし、問題解決の道筋が見えてくるかもしれません。今は、「青年ユニオン」や「地域労組」などフリーターや非正規労働者を対象にした組合も広がっていますし、民青同盟もあります。身近にそんな人はいませんか。インターネットで探すこともできます。働きやすい職場、住みやすい社会を実現するためには、声を出し、一歩踏み出すことが必要です。


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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