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林真由美さん(弁護士)

契約社員でも、残業の割増賃金を請求できる

 「契約社員は年俸制なので残業代は出ない」というのは間違いです【24】。法定外労働に割増賃金が発生しないことがあるのは、農業など労基法41条に規定された職務に従事する者や、事業所外の労働又は裁量性の強い労働についてのみなし労働時間制が採用される場合に限られます。「年俸制」であることは残業代が出ない理由にはなりません。

 では「契約社員は労働者でないから残業代は出ない」と言われたらどうでしょう。確かに「労働者」でなければ労基法の保護は受けられません。ただし、ここに言う「労働者」は、形式的に雇用契約かどうかではなく、「使用従属関係」と給与の支払いの有無という実態により判断されます。したがって、契約社員であっても、会社の指揮監督下で働いていれば、労基法の保護は受けられ、残業に対応する割増賃金も請求できると考えられます。

 労働者による年次有給休暇の行使に対し、使用者が時期の変更を請求できるのは、その時期の休暇が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られますので、【21】のような場合に有給を使わせないことは許されません。

また、会社が暇な時に休ませるというのは、不況による生産調整のための休業(いわゆる自宅待機)のことだと思われますが、そうであれば使用者は民法536条2項により賃金全額を支払わなければなりません。この点から見ても「欠勤扱い」というのは不当な措置です。

 こうした残業代・年休といった権利は、正社員のみならずパート、アルバイト、派遣労働者などにも認められます。社会保険(健康保険、厚生年金)についても、正社員の4分の3以上の所定労働時間及び日数であれば加入手続きが必要です。労働内容が同じであれば賃金差別は認められないこと、雇用期間の更新が繰り返されれば期間終了による雇い止めも解雇同様に厳しく制限されることも、既に述べたとおりです。前述の、労働者の実態を持つ契約社員も同様です。

 なお、派遣労働は職種により期間が1年以内又は3年以内と定められており、派遣先事業主がこれを超えて使用したいときには、労働者に対する雇用契約申し込み義務が発生します(労働者派遣法40条の4)。【28】はこの規定の脱法のために一旦派遣終了の形を取るのだと思われますが、雇用契約申し込み義務の趣旨を台無しにするもので、大変不当です。


プロフィール

はやし・まゆみ

1975年岐阜県生まれ
2003年弁護士登録
岐阜合同法律事務所勤務
中国残留孤児国賠請求(東海訴訟)、じん肺根絶訴訟、県内の解雇事件等の弁護団に参加。

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