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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

若者が将来の日本を担うことは、どんな権力者でも動かせない事実。次代の主人公として学習し、行動を

 ホームページに寄せられた7人の方の声を読ませてもらいました。「仕事がみつからない」「正社員になれない」「残業代が出ない」状況が広がり、若者が「いつリストラされるか」という不安感や「死んだ方が楽ですね」という悩みをかかえて生きていることを考えると本当に胸の痛む思いです。しかし、一方で3番の声のように、青年の雇用と労働の現状を改善するための政策提案が当事者から具体的に出てきていることに希望を感じました。

 今回は1番、2番、4番と労働時間に関する問題が多く寄せられています。労働時間は、労働基準法第32条で「1日8時間、週40時間」と規制されており、「これを超えて働かせる場合は労使協定を結んで届けること」(第36条)、「割増賃金を払うこと」(第37条)と規定されています。これらの条項は、戦前からの多くの労働者の犠牲とたたかいによって勝ち取ったものであり、働く人の健康や家庭・地域生活に使える時間の確保を通じて日本社会の発展をもたらす基本的かつ重要な規定です。ところが、買い手市場を背景に労使協定を結ばない超勤、割増どころか賃金を払わないサービス残業など違法行為が横行しています。しかし、この問題ではここ数年の国会内外のとりくみによって、厚生労働省に「使用者に勤務時間の管理を義務づける」通達を出させ、労働基準監督署に告発すれば調査に入るという状況を作り出し、不払い分の賃金を払わせるという事例も増えています。

 2番の店長さん、まず言いましょう。「決まり事をはっきりさせなくては、仕事に支障が出る」「全員が知らなくては、運営できない」と言うことは店長の責任でもあると思います。はっきりさせて、次にその内容を点検しましょう。4番の人、そのハローワークに「求人票にウソがある」と申告しましょう。係員がまともに対応しなかったら「民青同盟や全労連に持ち込む」と言い、実際にそうしましょう。

 5番にあるように、「若者の人間力を高めるための国民会議」というのは、「若者は人間力が低い」から「高めてやろう」という論理で、若者に責任を押しつける発想であり、人間を「人材」としてしか見ない考え方です。しかし、今日の若者の雇用と労働の問題に若者は責任はありませんし、人間は企業に利益をもたらすための「材料」ではありません。そして、財界は確かに大きな力を持っていて自民党などを通じて日本の政治を動かしていますが、一番強いのは国民です。国民の大多数が事実と解決の道筋を知れば選挙などを通じて政治を変えることが出来ます。さらに、今の若者が10年後、20年後の日本を担うということは、どんな権力者であっても動かすことのできない事実です。たいへん厳しい労働と生活の日々ですが、次代の主人公として学習し、行動していきましょう。あなた達を応援し、支える大人たちもいますから。


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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