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林真由美さん(弁護士)

求人票に記載された労働条件は、これと違う合意をしない限り、労働契約の内容になる

 「声」4について
 ハローワークに備え置かれた求人票に記載された労働条件は、実際の労働契約を結ぶ際にこれと違う合意をしない限り、労働契約の内容になると考えられています。したがって、契約の際に求人票の条件と違う合意をしたのでない限り、使用者に対して、求人票記載の条件での労働を求めることができます(他の求人広告にはそこまでの拘束力はなく、ハローワークの求人票という公的性質が重視されているようです)。

 具体的には、直接交渉する、労働組合を通じて交渉する、労働委員会のあっせん等行政の紛争処理制度を利用する、訴訟や仮処分といった裁判手続を行う、などの手段があります。明らかに使用者に非がある話ですから、泣き寝入りせず、個人加盟の労働組合などの協力も得て是正させてほしいです。

 なお、求人票の虚偽記載に特にペナルティはないようです(だからこそ求人票の条件を守らせる方向でたたかってほしい)。ただし、不適切なことは間違いないので、職安に通告し、指導してもらうよう働きかけることはできます。職安としても全ての職場の実態を把握することは不可能ですから、利用者の側から声を寄せるほかありません。

 そのほかにも、残業代が全く支払われないという労基法無視が相変わらず横行しています。労働者派遣法制はどんどん規制緩和され、正社員を増やしてほしいという国民の願いに逆行し続けています。全ての働く人々が、自らの権利を守るために行動を起こすことを願わずにいられません。


プロフィール

はやし・まゆみ

1975年岐阜県生まれ
2003年弁護士登録
岐阜合同法律事務所勤務
中国残留孤児国賠請求(東海訴訟)、じん肺根絶訴訟、県内の解雇事件等の弁護団に参加。

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