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原和良さん(弁護士)

仲間と一緒に変えていくために連帯するチャンス
――ピンチをチャンスにかえて写真

1 今回の相談事例には、正規採用になれない、職場でのいじめ、休みが取れない、職場の上司や同僚との人間関係のもつれ、など働く上で若い人たちがぶつかっている困難が数多く見受けられました。

 中には、このような企業社会からの村八分状態から、体調を崩しこころの病にかかったという深刻な悩みも寄せられています。私たち弁護士の抱える労働事件でも、リストラやセクハラなどから病気になるケースが激増しているのが特徴です。

2 憲法は、「すべて国民は勤労の権利を有する」(27条1項)、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(25条)と働く権利や生存権を保障しています。今の若者の現状(若者だけではありませんが)は、この憲法の保障する人権が踏みにじられているということです。

 健康でいきいきと働くための労働条件の整備は、個々の企業の社会的責任と同時に、政府のやるべき一番大切な仕事の一つですが、それをサボタージュしていることが問題です。

3 では、どのようにすれば現状を解決できるのでしょうか。1人で悩んでいては何も解決しません。あなたなちの悩みは、大多数の周りの青年に共通する悩みです。

 まずは、語れる仲間をつくること、ネットワークをつくり連帯を広げることです。ネットワークをつくるには、自分が行動しなければなりません。自分のできることから連帯の環を広げていきましょう。

 憲法では、労働基本権(28条)といって、失業者を含めて働く者が労働条件を改善するためにつくった組織である労働組合には、特別の保護を与えています。労働者は1人で悩んでいては企業と対等に渡り合うことができないので、憲法がみなさんに援助を与えることにしたのです。

 ですから、連帯を広げる中で、自分たちを守る労働組合づくりができたら一番いいですね。

4 みなさんの置かれている状況は厳しいものがありますが、それは社会と自分との関わりを考える絶好のチャンスであり、また、それを仲間と一緒に変えていくために連帯するチャンスでもあります。

 是非、青年のみなさんが、ピンチをチャンスにかえる取り組みを始められることを希望しますし、そのお手伝いができればと思います。

プロフィール

はら・かずよし

弁護士、東京法律事務所所属
(略歴)1963年12月 佐賀県有田町生まれ
    1989年3月  早稲田大学法学部卒業
    1992年    司法試験合格
    1995年    東京弁護士会登録〜現在にいたる
(主な事件)
 労働事件(労働側)、公害事件、マンション紛争、痴漢えん罪その他刑事事件、交通事故(民事、刑事)、不動産、家事(離婚・相続)、債務整理・破産事件その他民事一般

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