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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

切実な実態の中でも、みなさんの高い意識と当事者の迫力を感じました

 

 28通のメールを読ませてもらいました。20才代から50才代までと年齢層も幅広く、就活中の人やアルバイト、パート、派遣、契約、正社員、「名ばかり役員」まで立場も様々で今の日本の雇用問題の縮図を見るようです。

 本来なら自分自身の成長・発達と日本社会の発展を重ね合わせて明るく元気に働いているはずの若者たちが、「月40時間以上も残業しているのに残業代は定額5000円。低賃金の上にわずかなボーナスまでなくなりそうです。辞めれば何の保障もなくただの無職。続けるにも役員・上司の嫌がらせで生き地獄です」「毎日悲しい思いで働いています。上司も頼りにならず、不満を言うとかえって立場が悪くなりそうで誰にも相談できません」と厳しい労働と低賃金、将来への不安と悩みの中で日々を過ごし、中には「私はもう人生終わったのでしょうか?今は自殺の手段しか思い浮かびません。助けてください。まだまだ生きたいです」とまで追い詰められていることに胸が痛みます。しかし、みなさん相談できるところはあります。共産党の事務所は全国各地にありますし、全労連の労働相談ホットライン(0120-378-060)は各都道府県の事務所につながります。少し勇気を出して電話してみてください。協力してくれる議員や弁護士もいます。しっかり相談して立ち上がれば、事態を解決・改善できる道はあります。

 今回は政権交代後の民主党政権に対する批判・要望のメールがたくさん寄せられています。特に、派遣法改正案については民主党政権の政府案が選挙公約に反して製造業派遣では常用型を、登録型では専門26業務を例外とするなど大きな問題点が指摘されています。「専門26業務の定義をもっと明確にし周知徹底させよ」「派遣から正社員への切り替え手順を明確にせよ」「現在5年以上働いている者はすぐに正社員にせよ」等々、派遣法改正案の内容や国会論戦の状況をふまえた声が多く、政治を自分の問題と結びつける高い意識と当事者の迫力を感じます。

 また、障害者の雇用についても「ハローワークに行っても障害者求人は数が少なく、自力では受かりません」「民主党は障害者になんにもしてくれない印象があります」との声が寄せられています。障害者雇用はスローガンだけでは進みません。実際に前進させるためには、障害者雇用率の目標と未達成時のペナルティを引き上げるなど政府の強力な意志と施策が不可欠です。

 今回は、「非正規増加は国民所得を減少させ、税収減を招き、デフレからいつまでたっても脱却できない負のスパイラルだ。まず大企業から率先して正社員化を牽引すべきだ」「企業のトップが目先の利益ばかり考えずにでなく日本の将来を考えないと、他のアジア諸国に追い抜かれるのは時間の問題だ」「国が早急にすべきことは、国民ががんばろうと思える条件の整備と意識の形成だ」「少子化は今の日本の優先課題だと思うが、その改善には雇用の安定が不可欠だ」等々、日本のあるべき姿にまでふれた声も多く寄せられています。今の民主党政権は、後期高齢者医療制度や派遣法改正案に見られるように国民への選挙公約よりも財界・大企業との関係を大事にしているように見えます。無力感も一部にありますが、政治を前へ進めるかどうかは選挙の投票をはじめとする国民の声と行動で決まります。夏の参議院選挙も近づいています。大企業の横暴を規制し、働く者を守る政治を実現し、元気に働ける明るい日本をめざして、大きな展望と少しの勇気を持って声を上げていきましょう。


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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