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笹山 尚人さん(弁護士)

労働法の見直しと罰則規定

写真1,今こそ労働法の見直しを−突破口としての労働者派遣法

 今回のかき込みの中には、「非正規切り」にあった、仕事が見つからない、正社員になれない、と言った声が多数見受けられました。また、労働法が順守されず、企業がやりたい放題だということを指摘する声も見られました。

 私がこれまで仕事を扱ってきたケースでも、労働法を順守せず、やりたい放題行っていると感じるケースは数多くありました。労働法の規制自体を強化し、その順守を徹底させるしくみ作りの必要性は、私も痛感するところです。

 その突破口として、労働者派遣法問題に注目していただきたいと思います。労働組合のレベルでは、連合も、全労連も、一致して、「99年改正」の時点に引き戻す改正をとの要求が出されています。つまり、一般的に派遣を許容し、例外的に派遣を禁ずるのではなく、一般的に派遣を禁止し、例外的に派遣が可能な業界業務を提示するという手法に戻すことです。また、マージン規制や、登録型派遣の禁止、派遣期間を超えた場合派遣先と派遣労働者との間で直接雇用関係があると見なす旨の規定を設けるといった要求も、労働者側の派遣法改正要求としてはほぼ一致しているところだと思います。

 しかし、政府与党が現在国会に提出している派遣法改正案は、30日以内の派遣を禁ずるといった不十分な内容にとどまっており、上記要求はほとんど盛り込まれていません。

 労働法を見直す突破口として、ぜひ派遣法改正の要求を、大きな声にしていく必要があると考えます。

2,罰則規定について−総合的な手だての1つとして

 労働法を順守させる手だてとして、罰則規定を厳しくすべきだというご意見もありました。罰則規定の強化も、確かに有効な手段となり得ますが、一般に刑事事件として立件することには非常にハードルが高く、労基法違反について司法警察の権限を持つ労基署も十分に対応し切れていないのが実態です。私は、労働法を順守させるためのしくみとして、現在派遣法に定められている企業名の公表や、法違反の事実を労働者が立証できた場合、多額の損害賠償義務を使用者に負わせるといった、多様な順守のためのしくみが必要ではないかと考えています。罰則規定も、こうしたしくみの1つとして、考えていくべきだと考えます。

3,私たちの声を大きくしていくことが肝心

 こうした私たちの声を、できるだけたくさんの人達の「世論」としていくことが大切ではないかと考えます。みなさんはいかがお考えでしょうか。

 


プロフィール

ささやま・なおと

1970年生。1994年中央大学法学部卒。2000年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる活動分野として活動中。著書に,『最新 法律がわかる事典』(石井逸郎編の共著,日本実業出版社)、『「働くルール」の学習』(共著、桐書房)、『人が壊れてゆく職場 自分を守るために何が必要か』(光文社新書)。

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