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平井哲史さん(弁護士)

まずは自分にどんな権利があるのか知って、行動することが大切

今回もいろいろな声が寄せられていました。「なんとかしてくれ!」という切なる想いが伝わってきます。派遣の問題が大きくクローズアップされていますが、有期社員もパートやバイトも、「非正規」という枠組みの中で不安定な雇用と低賃金に苦しんでいる方が大勢います。「どげんかせんといかん」と絶叫して県知事になった人が自民党から国政選挙に出馬かと報じられましたが、自分のことしか考えない政治家が今の状況をつくっています。いまは政権交代を唱える民主党も99年の派遣法改悪に賛成した張本人です。ですから、この状況を変えるためにみなさん自身が自分にできる政治変革のための行動、すなわち共産党を大きくしていただくことが根本的解決への王道だと私は考えています。10月5日におこなわれた青年の集会には5000人近く集まり、あちこちで元気よく権利擁護を求めてたたかっていることが報告されていました。青年の力の結集を期待しています。

さて、10年働いてるのに雇用保険にも加入していないし、1日9時間で週6日働いてるのに残業代が払われたことはないという訴えがありました。零細企業ですと、雇用保険、労災保険、健康保険(組合)、厚生年金など使用者の社会的責任に属する保険等に加入していないことがしばしばあります。しかし、普通に働き賃金を得て生活している方であればこうした保険類はすべて適用になるでしょう。労災保険は強制適用ですし、雇用保険は、正社員ならもちろん有期やバイトの方でも週20時間以上勤務でかつ1年以上の雇用が見込まれる場合には使用者に加入義務があります。厚生年金や健康保険も1日の所定労働時間と月の所定労働日数が概ね正社員の4分の3以上であれば使用者に加入義務があります。したがって、こういう会社で働いている方は給与明細等そこで働いていることを示す証拠をもって労働局に是正指導するよう求めてみてください。なお、短期の健康保険で出産一時金が行政から支給されるか?という質問がありましたが、それは行政のほうに問い合わせてみてください。

また、この方の場合、週54時間労働となっていますから完全に労働基準法32条違反です。この場合、週40時間をこえる部分について割増賃金を請求できますから、お近くの労働基準監督署に是正指導を求めて相談にいくとよいでしょう。もっとも、零細企業では実際問題として払いたくとも払えないというのもあるようです。権利があるんだという前提で任意に払ってもらうようまずは交渉してみたらどうでしょうか。一人じゃ心細ければ、職場がある地域の一人でも入れる労働組合に相談してみてください。

それと、4月に正社員として採用されたのに、7月に準社員になってしまったけれども3年経てば正社員になれるのかという相談がありました。「準社員」というのがどういう身分なのかよくわかりませんが、もし有期であるとか、バイト扱いだとかになったとすると、それは雇用区分の変更になりますから本人の同意がなければ法的には無効です。東武スポーツというところがゴルフ場のキャディさんたちの雇用区分を勝手に変えたことを争った裁判もあります。ですから、「また正社員になれるか?」を考える前に、まず雇用区分の変更が有効なのかどうかを検討してください。専門的な判断が必要になりますから、近くの弁護士に相談してみてください。まずは赤旗新聞の電話相談でもかまいません。とにかく早く法律家のアドバイスを受けてください。


プロフィール

ひらい・てつふみ

1969年生。1994年早稲田大学法学部卒。2001年弁護士登録。東京法律事務所所属。登録以来,労働事件と労働運動を主たる分野として取り組む。個人加盟組織の出版情報関連ユニオン顧問。日本弁護士連合会憲法委員会幹事、第二東京弁護士会人権擁護委員会委員、自由法曹団事務局次長。一児の父。

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