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林萬太郎さん(大阪府立高等学校教職員組合副委員長)

「申告は匿名でも、家族からでもできます」「休職復帰での不利益扱いは許されない」

  みなさんのメールを読ませてもらいました。今回は正社員で働いている人の声が多かったので、この点について書いてみます。昨年末に私たちアドバイザー4人で出版した『仕事の悩み解決しよう』の本でも「やっと正社員になっても、サービス残業、休日出勤などで一人で2人分の仕事をさせられている。黙っていては、自分の時間も健康もなくなっていく」と書きましたが、今回の声でもこの状況が告発されています。

 北海道の社会福祉法人では、もともと業務の割に職員数が少ないのに、独裁的な本部事務局長によって残業や休日出勤を命じられています。しかも、「予算がない」と言って残業手当を付けず、振替休日もないという2重3重に不当な運営がされています。また、面接時に「残業はほとんどありません」と説明しておきながら、月100時間ほど残業があり、残業を申告すると叱責するという会社で、退職時に訴訟覚悟でサービス残業代を請求し90%分を払わせたという声も寄せられています。サービス残業がこれだけ社会問題になっているのに、改善しないところが多いのは残念なことです。これまでの取り組みで、サービス残業については労働基準監督署に告発すれば調査に入り、不払い分を支払うよう指導される体制ができています。告発は家族でも匿名でも可能ですから大いに利用しましょう。

 働かされすぎて体をこわす例も少なくありません。今回も、市役所の福祉課長をしていた家族が、休日出勤、残業、持ち帰り仕事で体調を悪化させ、ついに脳出血で障がい者になってしまったという声が寄せられています。生活の糧と生きがいを得るための仕事で体をこわすというのでは本末転倒です。使用者には、従業員の労働時間を管理し、心身の健康に配慮する義務があります。自分自身でも健康管理するとともに、上司などに管理責任を果たすよう求め、問題が出たら労働災害の認定を求めましょう。

 休職して復帰するときに不利益な扱いを受けるという例もあります。出張健診の事務職をしていたが身体をこわして休職中の人から、復帰の面接で「今までの職場に戻すのは無理。事務職なら非常勤で」と言われたという声が寄せられています。心身の状況や会社の都合で職場異動はあり得ても、正社員から非常勤へは明らかに労働条件の不利益変更ですから、十分たたかえます。信頼できる弁護士や共産党の人に相談してみましょう。

 苦労して正社員になっても問題だらけで、このままでは日本の将来はないとも思える雇用状況ですが、「貧困と格差の是正」「自立し、結婚し、子供を産み育てられる社会」「若者が自分自身の将来に希望を持てる社会」を求める声はだんだん大きくなり、今や与党もさまざまな「対策」を打ち出さざるを得ないところまできています。若者自身が声を挙げ、学習し、なかまと連帯していくことが、この流れをいっそう大きなものにします。あきらめず、少しづつでも前を向いて進みましょう。

 


プロフィール

はやし・まんたろう

大阪府立高等学校教職員組合副委員長。
「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」(略称:就職連絡会)前事務局長

1948年大阪生まれ。
1973年立命館大学理工学部卒業、1978年立命館大学文学部卒業。
1967年大阪府に実習助手採用、1973年教諭採用。
1967年より大阪府立高等学校教職員組合の実習助手部・青年部・支部・本部役員を歴任。
2001年度より日本高等学校教職員組合(日高教)中央執行委員、2003年度から2004年度まで中央執行副委員長。
2005年度より現職。

「新規学卒者への就職保障の運動と課題」(雑誌「月刊全労連」)、「インターンシップ問題を考える」(雑誌「技術教育研究」)、「今日における高校生の就職保障問題」(雑誌「人権と部落問題」)など、論文多数。

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