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日本共産党

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➡各分野の目次

3 医療

高すぎる国保料(税)と窓口負担を引き下げ、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度を確立します

2019年6月

 社会保障費の「自然増削減」を基本方針とする安倍政権のもと、国民健康保険料(税)の大幅値上げにつながる「国保の都道府県化」、患者負担の引き上げ、後期高齢者医療保険料の値上げ、保険外診療・混合診療の拡大など、医療制度の連続改悪が続いています。貧困と格差が広がり、地域・社会の荒廃も深刻化するなか、これらの改悪は、国民生活に打撃を与え、命と健康を脅かすものです。

 日本共産党は、国民・医療関係者と共同し、安倍・自公政権の医療制度改悪をやめさせるとともに、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度への改革をすすめます。

高すぎる国民健康保険料(税)を引き下げ、住民と医療保険制度を守ります

 市町村が運営する国民健康保険は、加入世帯主の4割が年金生活者などの無職、3割が非正規労働者で、低所得者が多く加入する医療保険です。ところが、平均保険料は、4人世帯の場合、同じ年収のサラリーマンの健康保険料の2倍になります。しかも、安倍政権が2018年度から開始した「国保の都道府県化」によって、今でも高すぎる国民健康保険料(税)の負担がさらに引き上げられようとしています。

 全国知事会、全国市長会、全国町村会など地方団体は、加入者の所得が低い国保が、他の医療保険よりも保険料が高く、負担が限界になっていることを「国保の構造問題」だとし、これを解決するために、公費投入・国庫負担を増やして国保料(税)を引き下げることを国に要望し続けています。

 日本共産党は、1兆円の公費投入増で国保料(税)を抜本的に引き下げ、国保制度を立て直す改革をすすめます。

公費1兆円の投入で国保料(税)を協会けんぽの保険料並みに引き下げる

 高すぎる保険料を引き下げ、国保の構造的な問題を解決するには、公費を投入するしかありません。もともと、現行の国保制度がスタートした当初、政府は、「国民健康保険は、被保険者に低所得者が多いこと、保険料に事業主負担がないこと…などのため…どうしても相当額国庫が負担する必要がある」と認めていました(社会保障制度審議会『1962年勧告』)。

 ところが、自民党政権は、1984年の法改定で国保への定率国庫負担を削減したのを皮切りに、国庫負担を抑制し続けてきました。国保加入者も構成も、かつては7割が「農林水産業」と「自営業」でしたが、今では「無職」と非正規労働者などの「被用者」であわせて8割近くになっています。国保に対する国の責任の後退と、国保加入者の貧困化・高齢化・重症化がすすむなかで、国保料(税)の高騰が止まらなくなったのです。

 国保財政への公費負担は、国と都道府県で4・6兆円、そのうち国が75%、都道府県が25%を負担しています。これを1兆円増やせば、国保料(税)を協会けんぽ並みに引き下げることができます。財政力の弱い県には交付税措置などを検討します。財源は、大株主や大企業への優遇税制をただすことでつくりだすことができます。

「人頭税」と同じ「均等割」「平等割」を廃止します

 国保料(税)が、協会けんぽなどの被用者保険と比べて、著しく高くしている大きな要因は、世帯員の数に応じてかかる「均等割」、各世帯に定額でかかる「平等割」という、国保独自の保険算定式です。

 低所得者には一定の減額があるものの、子どもの数が多いほど国保料(税)が引きあがる「均等割」には、「まるで人頭税」「子育て支援に逆行している」という批判の声があがり、全国知事会などの地方団体からも「均等割」見直しの要求が出されています。

 “人間の頭数”に応じて課税する人頭税は、古代につくられた税制で、人類史上もっとも原始的で過酷な税とされています。この時代錯誤に仕組みを廃止して、“逆進的な負担”をなくしていきます。

 全国で「均等割」「平等割」として徴収されている保険料(税)額は、およそ1兆円です。公費を1兆円投入すれば「均等割」「平等割」をなくすことができ、多くの自治体で協会けんぽ並みの保険料(税)にすることができます。

 そのうえで、「所得割」の保険料率の引き下げや、低所得世帯に重い「資産割」がかかる問題の改善などを行い、各自治体の負担軽減の取り組みともあわせて、所得に応じた保険料(税)への改革を進めます。

「国保の都道府県化」を利用した保険料値上げを許しません

 安倍政権は2018年4月から、それまで市町村ごとに分かれていた国保の財政を都道府県に集約する「国保の都道府県化」をスタートさせました。この制度改変の最大のねらいは、市町村が一般会計から国保会計に繰り入れて行っている、自治体独自の保険料(税)軽減をやめさせ、その分を住民の負担増に転嫁させることです。そのために、「標準保険料率」という新しい制度が導入されました。

 「標準保険料率」は、国が示す算定式にもとづき、都道府県が市町村に“あるべき保険料(税)の水準”を示す仕組みですが、市町村独自の一般会計から国保会計への公費繰入(法定外繰入)は行わないことを前提に計算されます。これに合わせて国保料(税)を改定すれば、公費繰入で保険料(税)の値上げを抑えたり、自治体独自の減免を行なったりしている自治体は、国保料(税)の大幅な値上げとなってしまいます。

 安倍政権は、「法定外繰入の解消」の号令をかけ、実際の国保料(税)を「標準保険料率」にあわせることを求めています。今年3月に日本共産党が試算をしたところ、全国の市町村が「標準保険料率」どおりに国保料(税)を改定した場合、8割の自治体で大幅値上げとなることが判明しました。

 「都道府県化」された国保は6年サイクルで運営されますが、政府は、今後4~5年かけて、国保料(税)を「標準保険料率」に「統一」していくことを自治体に要求しています。今でも高すぎる国保料(税)がさらに上がれば、住民の命と健康、くらしが脅かされるだけでなく、国保制度そのものの存立さえ脅かすことになります。この道は絶対に止めなければなりません。

 「国保の都道府県化」では、「標準保険料率」以外にも、都道府県と市町村の「繰入解消」や「医療費削減」の取り組みを政府が“採点”し、“成績の良い自治体”に予算を重点配分する「保険者努力支援制度」、都道府県が市町村の「繰入解消」や「収納率向上」の取り組みを“指導”する「赤字削減・解消計画」など、住民負担増や給付削減につながる仕組みが新たに導入されました。

 日本共産党は、「国保の都道府県化」による国保料(税)引き上げに断固反対し、自治体を住民負担増・給付削減に駆り立てる仕組みを撤廃します。

 「国保の都道府県化」のもとでも、自治体の判断で公費繰入ができることは、厚労省もたびたび答弁しています。そもそも、地方自治体が条例や予算で住民福祉のための施策を行なうことを、国が「禁止」したり、廃止を「強制」したりすることは、憲法が定める地方自治の本旨と条例制定権を侵す行為です。だから、安倍政権も、「標準保険料率」は「参考値」で、「自治体に従う義務はない」と答弁せざるを得ません。国保の運営主体である市町村と都道府県が、政府のやり方を一緒になって推進するのか、住民を守る防波堤になるのかが問われています。

 住民生活の生活破壊をくいとめ、国保危機の加速をとめるために、自治体独自の負担軽減の取り組みを維持・拡充するために力をつくします。

国による保険料の免除制度をつくります

 現行の国保制度には、災害などで所得が激減した人の保険料(税)を“一時的・臨時的”に免除する仕組みがありますが、常設の免除制度はありません。“一時的に困った人は助けるけれど、ずっと困っている人は助けない”という矛盾した制度となっています。

 ドイツやフランスでは、所得が一定基準を下回り、医療保険料の負担が困難とみなされる人は、保険料を免除し、国庫でその財政を補う制度が整備されています。貧困と格差が広がる日本でこそ、国保料(税)を免除する仕組みが必要です。

 生活に困窮する人の国保料(税)を免除し、その費用を国庫で補う国の制度をつくります。

無慈悲な保険証の取り上げや強権的な差し押さえをやめさせます

 滞納者からの保険証の取り上げは、国民の批判が高まり、減少していますが、正規の保険証が発行されない世帯は引き続き90万を超え、受診抑制による重症化・死亡事件が全国で発生しています。

 国保料(税)滞納者にたいする差し押さえは、2005年、国が「収納対策緊急プラン」などで取り立て強化を指示して以後、激増し、10年間で3倍、約35万件にのぼります。生活が苦しくて国保料(税)を滞納した人が、銀行に振り込まれた給与や年金を差し押さえられ、さらなる窮迫に追い込まれる事例が各地で起こっています。

 失業や病気、事業の不振などで国保料(税)が払えなくなった加入者に行政が追い打ちをかけ、さらなる貧困に叩き落すようなことがあってはなりません。

 保険証取り上げの制裁措置を規定した国保法第9条を改正し、保険証の取り上げをなくします。

 強権的な取り立てを奨励する国の行政指導をやめさせます。

 滞納者の生活自治体をよく聞いて親身に対応する相談・収納活動に転換します。

住民負担増の改悪をストップし、保険料・窓口負担の軽減をすすめます

 国保料(税)の負担上限の引き上げに反対します。保険料が年収2000万円程度まで上がり続ける健保と違って、国保の場合、多くの市町村で、保険料(税)は所得600万円前後で上限(頭打ち)に達してしまいます。そうした状況下で保険料(税)上限を引き上げれば、高額所得とはいえない中間層に、いっそう重い負担を課すことにつながります。国保と被用者保険との保険料格差もさらに拡大します。負担上限を引き上げる前に、公費投入増による「均等割」「平等割」の廃止など、保険料水準の引き下げを進めます。

 国は、子どもの医療費を無料化(現物給付)する自治体に、国保の国庫負担を減額するペナルティを科しています(地単カット)。粘り強い住民の運動と世論の批判を受け、2018年度から、就学前児童への医療費助成についてはペナルティが廃止されましたが、小学生以上の子どもについては、今も予算カットが続いています。全国知事会などの地方団体からは、小学生以上の子どもと同時に、障害者・障害児、ひとり親家庭などについても、ペナルティを廃止することが要望されています。

 日本共産党は、自治体独自の医療費助成にたいする、あらゆるペナルティを撤廃し、住民の窓口負担を減免する自治体の取り組みを推進・応援します。

 国保法第44 条の規定にもとづく、生活困窮者の窓口負担(一部負担金)の減免を積極的に推進します。

国保組合の独自給付と国庫補助を守ります

 2010年代初め、一部メディアが、建設国保が取り組む入院費無料化などの「独自給付」を非難するキャンペーンを開始し、安倍政権は2015年、それに便乗する形で、一部の国保組合の国庫補助率削減を実行しました。建設国保の補助率は維持されましたが、引き続き、国保組合の国庫補助を見直していくというのが、政府の方針です。

 国保組合への国庫補助率は、市町村国保より低く、建設国保などに「手厚い国庫補助」が出ているという攻撃は事実を偽るものです。建設国保の「独自給付」は、加入者が割高の保険料を負担することで実施されており、その部分に国庫補助は入っていません。国保組合が、被保険者の負担軽減をはかるのは、医療保険としての当然の役割発揮です。

 日本共産党は、偽りの宣伝と卑劣な分断攻撃に反対し、国保組合への国庫補助をまもり、拡充します。

高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の“窓口無料”をめざします

 「現役世代=3割、高齢者=1~3割」という窓口負担に国民が悲鳴をあげ、深刻な受診抑制が起こっています。ところが、安倍政権は、70~74歳の窓口負担の引き上げ、入院時の食費・水光熱費の負担増、高額療養費の負担上限引き上げなど、窓口負担をさらに増やす改悪を繰り返してきました。

 日本共産党は、あらゆる窓口負担増の改悪に反対し、軽減を求めます。子ども(就学前)の窓口負担は国の制度で無料とし、現役世代は国保も健保も2割負担に引き下げ、高齢者(70歳以上)は「現役並み所得者」とされている人も含めて1割負担とするなど、窓口負担の軽減を実行します。

 ヨーロッパ諸国やカナダでは、公的医療制度の窓口負担はゼロか、あっても少額の定額制です。日本も1980年代までは「健保本人は無料」「老人医療費無料制度」でした。応能負担の原則にそって保険料や税の負担を求めつつ、患者負担は低額に抑えて、重症・軽症にかかわらず必要な医療を給付するのが、公的医療制度の本来のあり方です。将来的には、安定した財源を確保し、“窓口負担ゼロ”の医療制度に前進していきます。

後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げをやめ、差別制度の撤廃をめざします

 後期高齢者医療制度は、国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に強制的に囲い込んで、負担増と差別医療を押しつける稀代の悪法です。2008年の制度導入以来、5回にわたる保険料値上げが実施され、高齢者の生活を圧迫する重大要因となっています。

 2008年の制度導入時、差別制度に怒る国民世論に包囲された自公政権は、低所得者の保険料を軽減する措置(「特例軽減」)を導入しましたが、安倍政権は、その「特例軽減」を打ち切り、保険料を値上げする改悪を、2017年度から実行に移しています。

 また、財務省や財界からは、75歳以上の窓口負担を現行の「原則1割」から「原則2割」に引き上げることがたびたび提言され、国民のなかに不安が広がっています。

 日本共産党は、安倍政権が推進する、後期高齢者医療制度の保険料・窓口負担の引き上げに断固反対します。差別と負担増の制度を廃止し、元の老人保健制度に戻します。

   差別制度を廃止したうえで、減らされてきた高齢者医療への国庫負担を抜本的に増額し、保険料・窓口負担の軽減を推進します。

混合診療の拡大、医療の営利産業化を許しません

 安倍政権は、「混合診療」の解禁や、医療分野への営利企業参入など、医療の市場化・産業化に向けた制度改悪を推進しています。

 2016年4月からスタートした「患者申出療養」は、「患者からの申出」を起点にさまざまな保険外の治療法と保険診療の併用を認めていくものですが、国会での法案審議をつうじ、「患者の同意」を口実に、安全性・有効性の不確かな治療法を、野放図に保険外併用療養の枠にいれていく、制度の実態が明らかになりました。「混合診療」解禁の“水路”というべき、危険な改悪にほかなりません。

 また、政府は、米国の医療ホールディングスカンパニー(持ち株会社)を念頭に、医療法人と社会福祉法人を統合した新型法人の創設を構想し、新しく「地域医療連携推進法人」を導入することを決めました。

 「医療の産業化」を“前のめり”で推進する安倍政権のもと、医療の非営利原則をまもる取り組みは正念場を迎えています。

 日本共産党は、保険外治療の拡大、「混合診療」解禁にむけた、あらゆる策動を許さず、「必要な治療はすべて保険で給付する」「安全・有効な治療法は速やかに保険適用する」という原則にそって保険治療の拡充を進めます。差額ベッド料などの自費負担をなくし、安全で質の高い治療を保険で受けられるようにします。

 社会保障と相容れない経営原理の持ち込みや、株式会社による医療経営解禁を許さず、非営利原則をまもります。医薬品の対面販売の原則など、患者の安全を守る規制の撤廃に反対します。

「医療費適正化計画」による給付削減の改悪に反対します

 「医療費適正化計画」はもともと、医療給付費の総額管理(「キャップ制」導入)という財界の提言に押されて2006年に法定化された仕組みですが、安倍・自公政権による法律の改定で、2018年度から、医療給付費の「予測」ではなく「目標」が明記されることになり、都道府県には、病床再編、後発医薬品の使用促進、給付費の効率化など、「目標」達成に向けた努力が義務づけられることになりました。「適正化計画」が定める医療給付費の「目標」と、「地域医療構想」による病床削減、「国保運営方針」による国保の財政運営を「整合」させることも、法文に明記されています。

 また、安倍首相は、都道府県による医療給付費の「格差」が大きすぎるとし、医療給付や医療提供体制を「効率化」して、すべて地域の給付費を“全国の低いレベル”に合わせていくべきだと叫んでいます。そのために、財務省や財界からは、2006年の法改定で導入していた、都道府県によって診療報酬を「1点=9円」などにしていく仕組みを発動することが提起され、一部の県がこれに呼応する姿勢を示して大問題となっています。住民の命と福祉を守るはずの自治体を、医療切り捨ての先兵に使うなど許されません。

   日本共産党は、「医療費適正化計画」による強権的な給費削減の推進に反対し、都道府県・市町村を医療切り捨てに動員する仕組みの撤廃をめざします。

患者「追い出し」・病床削減をやめさせ、必要な治療を保障します

 自公政権は、「早期退院」の誘導を狙った診療報酬の改定、療養病床の削減、国公立病院の統廃合と病床機能の淘汰など、入院患者の“追い出し”を強化する制度改変を累次にわたって続けてきました。これらの連続改悪は、患者や家族の困難を増やし、「介護難民」「療養難民」を増大させる重大要因となっています。

 さらに、安倍政権は2014年の法改定で導入した「地域医療構想」をてこに、都道府県に病床削減の計画をつくらせ、2025年の病床数を、本来必要とされる152万床から119万床に、33万床削減していく計画を推進しています。

 日本共産党は、病床削減、患者“追い出し”の強化をねらった制度改悪を中止・撤回させ、必要な医療体制の維持・拡充を図ります。

診療報酬の増額、医師・看護師の増員で地域医療を立て直します

 削減されてきた診療報酬を元に戻し、地域医療の底上げを進めます

 2002年度から2019年度までの診療報酬改定をトータルすると、消費税補填部分を除いた実質改定率は▲10・5%、給付費ベースで3・6兆円、引き下げられた計算となります。こうした診療報酬の総額削減こそ、2000年代に全国で「医療崩壊」を引き起こし、現在も、医療現場に混乱と疲弊をもたらしている元凶です。

 日本共産党は、削減されてきた診療報酬の水準を元に戻し、病院も診療所も、在宅も入院も、地域医療全体を底上げする医療政策に転換します。

医師数を抜本的に増やし、地域の医師確保をすすめます

 地方でも都市でも、医師不足が引き続き重大な社会問題となっています。地域医療を守り、再生するために、医師の増員・確保を進めます。

 2020年度から、国の法改定による新たな「医師確保策」が始まりますが、その内容は、国が示した数式にもとづいて、各都道府県が「偏在指標」を算出し、「偏在解消」の立場から「医師確保計画」を策定・実行していくというものです。

 地域・診療科による医師偏在は、医師本人の自主性を尊重しつつ解消をはかっていくことが必要ですが、医師数の絶対的不足を解決しないまま、ただ、自治体に「偏在解消」を号令しても、地域間の“医師の取り合い”になるだけです。

 日本の人口当たり医師数(1000人当たり/2・3人)は、OECD加盟国の平均より10万人も少なく、データが示された29カ国中26位という水準にとどまっています。ところが、厚生労働省・社会保障審議会の「医師需給分科会」は、“将来、医師数は過剰になる”という報告を出し続け、「医師確保策」をもっぱら「偏在対策」にとどめる態度に終始してきました。

 こうした路線をあらため、医師の養成数を抜本的に増やし、計画的にOECD加盟国平均並みの医師数にしていきます。医学部定員を増やし、教育・研修体制の充実を図ります。

勤務医の労働条件の改善をはかります

 命や健康を守るべき医師が、長時間労働を強いられ、健康破壊や過労死・過労自殺に追い込まれる事件が後を絶ちません。医療現場の疲弊はすでに臨界点を超えており、勤務医の長時間・過密労働の解消は、医療安全の確保、医療事故の防止のうえでも、一刻の猶予も許されない課題となっています。

 政府・厚労省も「医師の働き方改革」を言いだし、今年3月、検討会の報告書をまとめましたが、その中身は、地域医療に携わる医師・研修医については「年1860時間」(月換算155時間)という、過労死ラインの2倍の残業時間を認めるというものです。「インターバル規制」も導入するとしていますが、時間は「9時間」で良いとされ、しかも、実施できない場合は、“後日に代償休暇を与えれば良い”とするなど、事実上の“抜け穴”も盛り込まれています。医療関係者からは、「かえって過労死を助長しかねない」「改革の名に値しない」という批判の声が上がっています。

 勤務医の労働時間の短縮を図りつつ、医療体制を維持するには、医師数の抜本的な増員、診療報酬の引き上げ、地域医療を底上げする公的支援が不可欠です。日本医師会の会長も、「医師の働き方改革」と「社会保障費の毎年の伸びに抑制をかける政策」は両立しえないと指摘しています。

 医師数の計画的な増員を進めつつ、医療従事者の労働条件改善、医療の安全・質の向上、地域医療にかかわる診療報酬を抜本的に増額します。

 地域の医療資源の確保に向けた国の公的支援を抜本的に強化します。地域の医療体制を守る自治体・病院・診療所・大学などの連携を国が支援します。

 勤務医の過重労働を軽減するため、薬剤師、ケースワーカー、助産師、医療事務員、スタッフの増員をはかります。院内保育所や産休・育休保障など家庭生活との両立をめざします。女性医師の働きやすい環境づくり、産休・育休・現場復帰の保障などを国として支援します。

 より良い医師を育てるという臨床研修制度の主旨をまもり、研修の内容の充実、受け入れ病院への支援強化、研修医の待遇改善をすすめます。

 日本医師会や四病院団体協議会など医療団体からの懸念の声を受けて、導入が1年延期され、2018年度からスタートした「新専門医制度」について、新制度が、プロフェッショナルオートミー(医師の専門性と自律性)にのっとり、国民の理解を得られる制度になるかどうかを引き続き注視し、問題提起をしていきます。同制度を医師・医療現場の統制に利用することや、フリーアクセスの制限に結びつける動きなどに反対します。

 看護師不足を解消し、安全でゆきとどいた医療を実現します

 政府は、2000年代に「患者7人に看護職1人」(「7対1」)を配置した医療機関に報酬を加算する仕組みを導入するなど、手厚い看護体制を促す方向へと一度は舵を切りましたが、その後、「7対1」報酬の取得の厳格化を実施し、要件を絞り込む改変を繰り返しています。こうしたなか、「7対1」から撤退し、看護体制を後退させる病院が各地で続出しています。

 日本共産党は、看護体制を後退させる改悪に反対し、看護師不足の解決に全力をあげて、看護師200万人体制を確立します。

 「7対1」報酬を取得できる病院を限定・選別するのをやめ、施設基準を満たす全病院が継続・取得できるようにします。「7対1」以外の配置基準を満たす、あらゆる病院に対しても診療報酬を引き上げ、人員体制の確保を応援します。

 看護師の労働条件を改善するための公的支援、診療報酬改革をすすめ、「夜勤は複数、月8日以内」という人事院判定の早期実現、産休・育休の代替要員確保、院内保育所の設置、社会的役割にふさわしい賃金への引き上げなどをはかります。

 国として「緊急計画」を策定し、看護職員の大幅増員へ抜本的対策を講じます。看護学校の切り捨てをやめ、授業料の半額化を実現し、自治体独自の看護師増員対策を応援します。

 退職した看護師の再就労を、国が予算を大幅に増やして支援します。

 安倍政権が導入した看護師による「特定医行為」の実施は、看護師の負担を増やし、チーム医療の現場に混乱や矛盾を持ち込みかねません。見直し・再検討を求めます。

自公政権による改悪をただし、安心できる医療制度への改善をすすめます

協会けんぽの改悪に反対し、中小企業の労働者の医療を守ります

 協会けんぽへの国庫補助を緊急に法定上限の「20%」に引き上げ、協会けんぽの財政再建、労働者・中小企業の負担軽減にむけた、国の支援を強化します。自公政権によって導入された、保険料引き上げや給付費抑制の仕組みを撤廃し、中小企業の労働者・家族に国の責任で医療を給付するという、旧政管健保の本来の目的・役割をまもる立場から、制度の改革をすすめます。

 協会けんぽの財政を根本的に立て直すためにも、中小企業支援と一体の最低賃金の引き上げ、大企業と中小企業の公正な取引ルールの確立、国の中小企業振興策の抜本的拡充など、経済改革を推進します。

健診をゆがめる制度改悪に反対し、改善・充実をはかります

 40〜74歳の国民に「特定健診」を受けさせ、メタボリック症候群の有無を判定する仕組みが導入されて10年以上がたちますが、「メタボ対策」への特化による検診項目の偏りや、旧制度になかった自己負担の徴収など、さまざまな問題が発生しています。さらに、政府はこの間、各人の健診結果と受診履歴をマイナンバーによって“紐づけ”し、“健康づくり”の強要や保険者へのペナルティをいっそう強化することを検討・計画しています。

 「医療の産業化」をすすめる安倍内閣のもと、健診事業に健康機器業界やフィットネス産業が参入し、保険財政が食いものになることへの懸念も広がっています。

 日本共産党は、「自己責任」の名で健診をゆがめ、国民の健康保持に対する国・自治体の責任を後退させる改悪に反対します。病気の予防・早期発見という本来の主旨にたって健診の改善・充実をはかります。

医科でも歯科でも、国民に安全・安心の医療を保障するために

異常な高薬価構造にメスを入れます

 日本の医療費総額に占める薬剤費の比率は3割を超え、イギリス・フランスの約2倍、ドイツの1・3倍など、国際的にも突出した高水準となっています。

 この間も、2014年に承認された抗がん剤「オプジーボ」が、アメリカの2・5倍、イギリスの5~10倍という高値で薬価算定されたことや、今年5月に中医協が承認した白血病治療薬「キムリア」が、1人当たり3349万円という高額で薬価算定されたことにも、各界から疑問・批判の声が上がってきました。

 こうした異常な高薬価がまかり通る、最大の要因は、新薬価格の高騰と先発品薬価の高止まり、それを容認・促進する薬価制度(仕切価格制、新薬創出等加算など)にあるというのが医療団体の指摘です。新薬価格の算定原案を作成する、厚労省の「薬価算定組織」の議論がすべて非公開とされるなど、薬価の算定過程が国民の目から隠されていることも黙過できません。不透明な薬価ルールによる異常な高薬価は、いまや医療保険財政を圧迫する重大要因となり、その是正は避けられない課題となっています。

 ところが、安倍政権は「成長戦略」の一環として「創薬イノベーションの推進」をかかげ、新薬開発へのさらなる優遇を進めています。そうしたなか、「画期的新薬等の迅速な実用化を図る」として政府が導入した「先駆け審査指定制度」による脊髄損傷治療薬「ステラミック注」の承認について、国際的な科学雑誌『ネイチャー』が、“日本では、従来の手続きと違うやり方で、有効性のない医薬品が承認されている”と批判記事を出す事態まで起こっています。これでは、薬価構造のゆがみは拡大するばかりです。

 日本共産党は、不合理・不透明な薬価制度やその根底にある政官業の癒着構造にメスを入れ、薬価構造を根本的に見直します。新薬価格を2割引き下げるだけでも、1兆円の財源が出てきます。高薬価の是正によって得られた財源を、医療の充実や患者の負担の軽減に振り向けます。

高額療養費制度を改善します

 低所得者や治療が長期間にわたる患者の過重な医療費負担を軽減するため、応能負担の原則にたった、高額療養費制度の改善を進めます。

 高額療養費制度の所得区分をふやし、負担限度額の上限を、現役世代も高齢者も、通院も入院も大幅に引き下げます。重い病気の患者ほど患者負担が自動的に高くなる、「1%」の定率部分をなくします。

 限度額の設定を“月ごと”から“治療ごと”にあらため、「治療が月をまたぐと高額療養費が適用されない」という矛盾を解決します。世帯の所得区分ごとに年間をつうじた負担上限額を設け、「同一世帯でも、保険がちがうと医療費を合算できない」問題などについても解決をはかります。

 現行では3疾患(血友病、HIV、人工透析の腎臓病)に限られている「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」を拡大し、療養が長期にわたる場合に対応した「長期療養費給付制度(仮称)」を創設します。

 対象が限定され、当事者が申請しないと適用されない、高額医療・介護合算制度を抜本に見直します。

無料低額診療への支援をすすめます

 各地に広がってきている無料低額診療への支援を強めます。現在、無料低額診療では、院外処方による薬局での調剤が制度の適用とならず、患者が自己負担を強いられる問題が起こっています。薬剤費への制度適用をすすめ、この問題を解決します。

子どもの医療費無料化を推進します

 全国一律の子ども医療費無料制度の創設は、全国知事会などの地方団体も要望する喫緊の課題です。

 日本共産党は、「くらしに希望を――3つの提案」の一環として、小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度をつくります。その共通の土台の上に自治体の助成制度を加え、小・中・高校生への無料化を推進します。

 子どもや障害者・児への医療費無料化(現物給付)を実施する自治体に、国保の国庫負担削減のペナルティを科す「地単カット」の全面撤廃を進めます。小学生以上の子ども、障害者・児、ひとり親家庭、妊産婦、生活困窮者、高齢者など、住民の医療費負担軽減に向けた自治体の努力を推進・応援します。

診療報酬の改革を進めます

 診療報酬は、国民に平等に医療を保障し、“もうけ本位の医療”を許さないための大事な仕組みです。ところが、歴代政権は、医療にかかる国の予算を減らすために診療報酬の仕組みをゆがめ、「医療費削減」の道具にしてきました。現行の診療報酬は、医療従事者の労働を不当に低く評価しており、そのことが、中小病院の経営難や、医療従事者の労働条件悪化の大きな原因となっています。急性期患者の強引な退院を誘導する報酬改定、高齢者・長期入院の“追い出し”を促進する報酬削減、長期リハビリに対する保険給付の制限など、医療給付費の削減をねらった報酬操作が、医療現場の矛盾を拡大し、医療従事者と患者の両方を苦しめています。

 日本共産党は、医科でも歯科でも診療報酬の抜本的な増額を求めるとともに、「国民皆保険」をまもり、拡充する立場で診療報酬の改革に取り組みます。

 “安上がり医療”をねらった「包括払い(定額制)」の導入・拡大に反対し、「出来高払い」による給付をまもります。薬・医療機器にかたよった報酬評価のあり方を見直し、医療従事者の労働を適正に評価する診療報酬に改革します。

 基本診療料である初・再診料、入院基本料を適正に評価し、引き上げます。

 高齢者や長期入院患者の給付費削減をねらった差別的な診療報酬を廃止します。

 地域医療・救急を支える病院を大幅な減収に追いこみ、病院に「保険外併用療養」の採用をせまる、「総合入院体制加算」を撤回させます。

 標準算定日数を超えたリハビリを「保険外併用療養」とする制限をやめ、制度の再構築を進めます。

 政府はこの間、難病患者や肢体不自由者を「平均入院日数」の計算から除外する「特定除外制度」を廃止し、脳卒中や認知症の患者を受け入れる「特殊疾患病棟」「障害者施設」の報酬を引き下げるなど、重症患者を狙い撃ちにした“追い出し”を進めてきました。これらの非情な改悪を是正し、難病患者、障害者、長期の治療が必要な重症患者が、安心して療養に専念できる報酬・体制をととのえます。

 人工透析の「夜間・休日加算」の引き下げで、外来の夜間透析が受けにくくなり、患者の困難が続いています。患者負担の軽減をすすめながら、適切な報酬へ引き上げを図ります。

 入院中の患者が他の医療機関で受診した場合に、患者・医療機関の双方に困難をもたらす、▽入院医療機関への報酬削減、▽他医療機関の報酬算定範囲の制限、▽包括払い病床の患者に対する投薬規制などの不合理な仕組みを改めます。

出産一時金の引き上げと改善を行います

 出産に要する費用は年々高騰しています。それに見合うように、出産一時金の金額を、大幅に引き上げます。

歯科医療の充実、国民の口腔の健康づくりを進めます

 国民の口腔の健康をまもり、「保険でよい歯科治療」を実現するため、歯科の診療報酬の抜本的な増額と改革、歯科医療の充実にむけた支援を進めます。

 歯科の初・再診料の水準を抜本的に引き上げ、医科・歯科間格差を是正します。

 歯周病の治療・管理や義歯に関わる包括的・成功報酬型の診療報酬を撤廃し、治療行為を適正に評価する報酬に改定します。画一的な文書提供業務の押しつけをやめさせます。

 国民の歯科医療への需要の高まりや、治療技術の進歩に対応し、保険治療の大幅な拡大と保険外治療の解消をはかります。金属床の部分入れ歯など、実績もあり、広く用いられている治療法を、長らく自費負担にとどめるなどの施策を改め、安全・有効で実績のある治療法は保険給付の対象としていきます。現在、保険で給付されている補綴物の保険給付外しに反対し、「混合診療」となっている欠損・補綴の保険移行をすすめます。

 歯科衛生士の役割を、適正に評価する診療報酬にあらためます。

 歯科技工士が安心して仕事を継続でき、歯科医と連携して「よい入れ歯」を保険で給付できるよう、歯科技工物にたいする診療報酬の改善をすすめます。海外技工物の輸入・使用・安全性の実態を調査し、材料・製作者・技工所などの基準を設けて規制をおこないます。

 歯科健診の充実など、国民の口腔の健康をまもる取り組みを国の責任で推進します。

感染症の発生・拡大・重症化を防止する施策を国の責任で推進します

 欧米諸国では「命脈がつきた」と言われる、はしかの患者が毎年10万人以上も発生し、風疹の患者数も世界ワースト4位(2012年・WHO調査)、毎年のようにインフルエンザが流行して、HIV・エイズ患者も増加傾向にあるなど、日本は先進国のなかで屈指の「感染症大国」です。

 西アフリカを中心とするエボラ出血熱の国際的な感染拡大、中南米を中心とするジカ熱の流行、韓国でのMERS(中東呼吸器症候群)の感染の広がり、デング熱の国内感染などを受け、感染症に対する国民の不安が高まっています。

 ところが、国の感染症対策の中心として研究、ワクチン開発、流行状況の調査・監視などを行う国立感染症研究所では、国による定員削減の押しつけで、特定の専門家が定年退職をしても新規採用がされず、研究機能の弱体化が問題となっています。

 感染症が発生・流行した場合、実際の治療・予防の拠点となるのは地域の専門医療機関や保健所ですが、「医療費削減」「採算重視」を求める政府の路線のもと、感染症指定医療機関は100施設・3400床も削減され、保健所も、地域保健法改定前(1994年)の847カ所から472カ所(2019年)へとほぼ半減させられました。

 空港・海港などでの水際検疫の体制も、この間、検疫官の定数増がはかられましたが、海外渡航者の激増には追いついていないのが現状です。

 日本共産党は、感染症の研究・ワクチン開発体制の抜本的拡充、地域の医療・保健体制の再建、水際検疫体制の抜本的強化をすすめます。予防接種の推進、正確な知識の普及など、感染症の発生をくいとめ、重症化を防止する施策を国の責任で推進します。国際的な感染症対策に対する人的・財政的支援を強めます。

 エボラ出血熱、デング熱、MERS、ジカ熱など、再興感染症・新興感染症の発生・拡大などにそなえ、国立感染症研究所の予算・体制を抜本的に拡充します。

 世界的規模で拡大する感染症を予防するため、水際検疫体制の強化、ワクチンや治療法の研究・開発の促進、発生時に備えた専門医療機関と保健所の体制確保、一般医療機関への情報提供と国民への知識普及などを、緊急にすすめます。国際社会と共同し、感染国に対する支援の強化をはかります。感染国から帰国した邦人に対する調査・予防の措置は、人権を守る立場から行うようにします。

 強毒性の新型インフルエンザ流行に備え、ワクチン製造システムの確立、抗インフルエンザ薬とプレパンデミック・ワクチンの備蓄量の大幅増などを推進します。

 はしか・風疹対策をすすめます。国の責任でワクチンを備蓄し、追加接種が必要な人には公費助成をおこなうなど、感染・流行を防ぐ、あらゆる手立てをとります。

 HIV、梅毒、クラミジアなど性感染症の予防・治療をすすめます。教育・保健の連携による性にかかわる正しい知識の普及と、HIV・エイズの予防法の周知、「無料・匿名」のHIV検査の体制強化、一般医療機関への情報提供による早期発見の推進、患者の人権をまもる取り組みの強化など、HIV・エイズ対策を推進します。

 保護者・住民の長年の運動によって実現した「ヒブワクチン」「小児用肺炎球菌ワクチン」の公費接種事業について、保護者の負担軽減・無料化など制度のさらなる充実をめざします。

 子宮頸がん予防が重要課題となっていますが、この間、公費接種の対象となったワクチンについては、副反応の訴えが相次ぎ、重い症例もあることが問題となっています。接種勧奨は再開せず、原因の徹底究明、被害者への補償・支援、情報提供など救済策をすすめます。

 自治体から、疾患への理解を促し、HPVワクチンが定期接種であることの情報提供を行ないます。ワクチンの有効性・安全性、国際社会の動向、疫学調査の結果など、最新の知見を国民にしらせ、接種の在り方について議論をすすめます。

 おたふくかぜ、ロタウィルスワクチンの定期接種化をすすめます。

 今後も予想される、さまざまな感染症の発生・流行にそなえ、閉鎖・削減してきた感染症指定医療機関の復活、拠点病院への専門医・看護師の配置、公立病院の強引な統廃合の中止と体制強化、医療機器の整備、保健所の体制強化、ワクチンの研究・製造システムの確立をすすめます。

医療の安全、患者の権利の確立

 日本共産党は、医療事故の検証と再発防止に取り組む第三者機関の設置を早くから提案してきました。2014年の「医療・介護総合法」で医療事故調査の「第三者機関」が設置されたことは一歩前進ですが、▽公費負担の確保、▽遺族の費用負担の問題、▽医療機関が事故を認めなかった場合に遺族から調査請求できるようにすること――など、さまざまな課題が残されています。真に実効ある制度となるよう問題提起や改善をすすめていきます。

 分娩時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう「産科医療補償制度」について、現行制度の抜本的見直しをすすめつつ、諸外国のような幅広い医療事故に対応できる無過失補償制度の創設をめざします。

 患者の権利を明記し、医療行政全般に患者の声を反映する仕組みをつくる「医療基本法」の制定をすすめます。

 医療内容のすべてを反映せず、患者のための情報開示というニーズを満たさない一方で、医療現場に負担をしいるだけとなっている、現行の「診療明細書の発行」を見直し、患者に医療の内容をわかりやすく知らせる、情報開示の仕組みを整備します。

がん対策の推進

 日本国民の死因の第1位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、歴代政権は、窓口負担の引き上げや国保料(税)滞納者からの保険証とりあげ、がん検診にたいする国庫補助の廃止など、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。がんの治療・予防の地域格差も深刻な問題となっています。

 がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる、医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。

 「高額療養費の支給特例」の改善・拡充、公費助成の導入など、長期治療が必要ながん患者に、自己負担の心配なく給付を保障する公的制度の確立を急ぎます。

薬害・肝炎対策をすすめます

 薬害(肝炎、MMRなど)の解決と被害者救済に全力をあげます。

 血液製剤による薬害C型肝炎について、現行の救済法(2008年成立、2012年改正)で指摘されている、▽カルテのない被害者の救済が困難、▽対象となる血液製剤が限定される、▽先天性疾患の治療や“血液製剤以外の経路で感染した被害者”は救済対象から外される――などの問題点の改善をすすめます。すべての被害者の一律救済を図り、製薬企業に謝罪・補償・再発防止を行わせるなど、全面解決にむけた努力を続けます。

 注射針の使いまわしなどによる薬害B型肝炎についても、2011年の「基本合意」と特別措置法の成立、2016年の法改正を経て、国の責任追及や給付金支給などが図られていますが、救済のスピードアップや被害者の“線引き”の解消が、引き続き急務となっています。国の体制整備の遅れを打開し、全被害者の救済をすすめるとともに、差別・偏見解消の取り組みなど、全面解決にむけた努力を行います。

 薬害肝炎原告・弁護団と国が結んだ「基本合意」、薬害肝炎検証委員会の『最終提言』にもとづき、薬害防止を目的に医薬品行政を監視する第三者機関の早期設置を求めます。

 350万人とも言われるウィルス性肝炎患者の治療推進と生活支援にむけ、肝炎対策基本法のさらなる充実、ウィルス性肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成制度の早急な創設を求めます。C型肝炎に対する肝がん予防を目的としたインターフェロン投与や、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤の使用などの有効性をすみやかに確認し、必要な検査・治療は迅速に医療費補助の対象としていきます。

 ウィルス性肝炎を「高額長期疾病にかかわる高額療養費の支給特例」の対象に追加し、患者負担を軽減します。「肝炎ウィルス無料検査」の拡充、「肝疾患診療連携拠点病院」の整備、「肝炎情報センター」の機能拡充など、陽性患者の早期発見と治療に向けたフォローアップの施策を推進し、情報提供、研究体制の充実をはかります。

医療機関への消費税ゼロ税率適用、事業税非課税・租特法26条の存続

 保険診療などの医療費は消費税非課税とされていますが、病院や診療所が購入する医薬品・医療機器などには消費税が課税されています。これによって医療費の負担も増え、医療機関の経営も圧迫されています。保険診療には「ゼロ税率」を適用し、医薬品などにかかった消費税が還付されるようにします。

 社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置を継続します。租税特別措置法第26条等に規定された、医療機関の概算控除の特例を存続させます。

救急医療の拡充

 救急医療の確保は、人の生死を左右する重大課題です。ところが、救急医療の現場では、出動件数の急増に隊員数の増加が追いつかず、患者の命が脅かされる状況が続いています。救急患者の搬送先が見つからないという問題も引き続き深刻です。

 日本共産党は早くから国会でドクターヘリ導入を提案するなど、救急体制の充実を要求してきました。救急隊員の抜本増、地域医療の再生とあわせた救急・搬送体制の整備・拡充をすすめます。救急車の有料化、通報段階で患者の「緊急性」を選別して切り捨てる「トリアージ」の導入など、救急医療の改悪に反対します。

 国の責任で小児救急体制を整備し、新生児特定集中治療室(NICU)を増やします。

助産師・助産院への公的支援

 助産師・助産院の役割はますます重要となっています。

 みんなが安心してお産のできる環境を確立し、助産院ならではの、喜びと満足のある質の高いお産を普及・発展させるため、助産師の養成数を増やし、助産院に対する公的支援をすすめます。助産院を地域の周産期医療ネットワークに位置づけ、「院内助産所」の設置をすすめるなど、助産師と産科医の連携を国の責任で推進します。

 はり・きゅうの保険適用の改善を求める

 戦後、歴代の厚生行政は、「はり・きゅう」を「非科学的な療法」とする見解をとり続け、「はり・きゅう」の保険適用について、①「現物給付」でなく「療養費払い」とする、②「はり・きゅう」の保険適用に医師の同意書を必要とする、③保険適用の対象疾患等を限定する、④診療報酬の技術料もきわめて低く抑える――など、一般医療とは異なる、さまざまな制限を加えてきました。

 日本共産党は、このように「はり・きゅう」を「健康保険制度と別建て」に扱うやり方は、患者の願いにも反していると主張し、鍼灸師や視覚障害者の団体とも共同しながら保険適用の改善を政府に要求してきました。長年の運動がみのり、「はり・きゅう」の受領委任払いが今年1月から始まりましたが、施術者・患者からは、いまだ多く残る制限の撤廃を求める声が出ています。

 「はり・きゅう」については、国際医学会やWHOでも医療上のエビデンスが広く認められており、保険適用を妨げることの不合理は明らかです。

 「同意書」のあり方や対象疾病の範囲を再検討し、診療技術料の引き上げなど、「はり・きゅう」の保険適用の改善・拡充を求めます。

在宅医療・介護における駐車問題の解決

 在宅医療、訪問看護、訪問介護の分野では、一定時間の駐車が避けられませんが、その仕事に従事している人たちは、駐車禁止で取締りを受けることに不安を感じながら仕事をしなければならないのが実態です。 駐車許可を得るには煩雑な手続きが必要で、実態に合わない基準が業務の障害となっています。そうした現状を改め、柔軟で実態におうじた道交法上の配慮がなされるよう求めます。

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