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日本共産党

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赤旗

2017総選挙/各分野の政策

49、ヘイトスピーチ

ヘイトスピーチを許さない社会に

2017年10月


 この間、在日韓国・朝鮮人などを排除・攻撃することを目的としたデモや集会が全国各地で開かれ、聞くに堪えない差別表現と扇動活動がくりかえされてきました。韓国・朝鮮出身者やその家族が多く居住する地域や、繁華街などで、「韓国人は出ていけ」「ソウルを火の海にしろ」「いい朝鮮人も悪い朝鮮人もいない、皆殺しにしろ」「ゴキブリ、ウジ虫」などの罵詈雑言(ばりぞうごん)を叫び、関係者と周辺住民の不安と恐怖心をあおってきました。インターネットなど一部のメディアにも、そうした言葉が横行しています。

 特定の人種や民族にたいする常軌を逸した攻撃は「ヘイトスピーチ」と呼ばれます。差別をあおるこうした言葉の暴力は、「ヘイトクライム」(人種的憎悪にもとづく犯罪)そのものであり、人間であることすら否定するなど、人権を著しく侵害するものです。憲法が保障する「集会・結社の自由」や「表現の自由」とも、相いれません。

 法務省が2016年3月に結果を公表した実態調査によると、2012年4月から15年9月までに、ヘイトスピーチを伴うデモは1152件、確認されました。年間の発生件数は、12年が4月以降で237件、13年は347件、14年は378件で、15年が1~9月で190件でした。また、動画投稿サイトに掲載されたデモの様子を撮影した72件、約98時間分の映像を分析したところ、ヘイトスピーチに該当する「日本から出て行け」など特定の民族を一律に排斥する発言が最も多く、1355回ありました。生命に危害を加える発言は216回、蔑称などで誹謗(ひぼう)中傷する発言も232回ありました。

 日本共産党は、2014年総選挙の各分野政策で「ヘイトスピーチを許さない」の項をたて、①人種差別禁止の理念を明確にした特別法の制定をめざす②ヘイトスピーチの温床である極右勢力と政権与党幹部との癒着を断ち、政府が毅然とした対処をするよう求める③地方自治体がヘイトスピーチに毅然と対応し、ヘイトスピーチを繰り返す団体に対して適切な対応をとることを求める―との立場を表明し、2015年1月に開かれた第3回中央委員会で「民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる立場にたつ」ことを日本の政治がとるべき基本姿勢として提唱しました。国会・地方議会でも、積極的にヘイトスピーチ根絶に向けた論戦を行ってきました。

日本でもヘイトスピーチ解消法が成立

 当事者の切実な訴えと関係者の努力が実を結び、2016年5月、与党が提出したヘイトスピーチ解消法案が、自民、公明、民進、おおさか維新、生活、日本共産党などの賛成多数で可決・成立しました。同法は、ヘイトスピーチは許されないと宣言し、ヘイトスピーチ防止に向けた啓発・教育活動や、被害者向けの相談体制の拡充などを柱としています。罰則は設けていません。日本共産党は、▽与党案の「適法に居住する本邦外出身者」を対象とするという骨格が、人種や民族を理由とする差別は許されないという憲法と人種差別撤廃条約の趣旨を曖昧にするのではないか▽「不当な差別的言動」という用語が明確性を欠くのではないか▽ヘイトスピーチの違法性を明確にしていない―などの問題点を指摘し、修正を求めつつ、ヘイトスピーチの根絶に向けた立法府の意思を明確にする理念法としての意義を評価し、賛成しました。質疑の過程で、▽「不当な」や「差別的」という曖昧な用語がそれだけで要件とはならない▽政府や在日米軍を批判する言動は対象たり得ない▽アイヌ民族や難民認定申請者など在留資格の有無、争いにかかわらずヘイトスピーチは許されない▽道路使用許可など行政処分あるいは司法判断において理念法が根拠規範となり得る―などをただし、答弁で確認されたことも前向きに評価しました。

 同法の付帯決議では、①「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」以外であれば、いかなる差別的言動も許されるとする解釈は誤りである②ヘイトスピーチが地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方自治体は、国と同様、その解消に向けた施策を着実に実施する③インターネット上でのヘイトスピーチの解消に向けた施策を実施する(以上、衆院・参院共通)④ヘイトスピーチのほか、不当な差別的取扱いの実態把握と、その解消に必要な施策を検討する(衆院のみ)―ことが確認されました。

法成立後の、日本と世界での前向きな動き

 法成立後、日本と世界で前向きな動きがありました。

 2015年以来、「敵国人に死ね、殺せというのは当たり前」などと叫びたてるヘイトデモを、在日韓国・朝鮮人が多く暮らす神奈川県川崎市の桜本地区で主催してきた人物が、「川崎発!日本浄化デモ第三弾!」と題するヘイトデモを2016年6月5日に開催するとインターネットで告知し、川崎区の二つの公園の使用許可を申請したのに対し、市長が「(ヘイトスピーチ対策法が定める)不当な差別的言動から市民の安全と尊厳を守るという観点」から、不許可処分を出しました(同5月30日)。

 さらに同6月2日には、横浜地裁川崎支部(橋本英史裁判長)が、川崎市桜本地区にあり、在日コリアンの男性が理事長を務める社会福祉法人の申し立てを受け、同法人から半径500メートル以内でのヘイトデモを禁止する仮処分決定を出しました。

 ヘイトスピーチの解消をうたった法律が日本で初めて成立したことにより、自治体や司法がヘイトデモの試みに対し、毅然と対処しやすくなったことを示しています。6月5日、前述したヘイトデモは川崎市中原区に場所をかえて実施されようとしましたが、かけつけた市民数百人の抗議を受け、中止されました。

 欧州では2016年5月31日、欧州連合(EU)の欧州委員会とフェイスブック、ツイッター、ユーチューブを運営するグーグル、マイクロソフトの4社が、インターネット上でのヘイトスピーチの拡散を防ぐための行動指針に合意しました。EU諸国が難民問題や連続テロ事件に直面する中、ネット上のヘイトスピーチが激化していることを受けたものです。欧州委員会の司法担当委員は、「ソーシャルメディアは残念ながら、テロリスト集団が若者を過激化させ、人種差別者が暴力と憎悪をまき散らす道具として使われている」との見解を表明し、「この協定は、インターネットがヨーロッパの価値と法を尊重し、自由で民主的な表現の場であり続けるための重要な一歩だ」と、その意義を述べています。今後は各社とも体制を強化し、ヘイトスピーチ削除を求める通報について、その内容を24時間以内に確認し、必要なら削除または閲覧不可とすることとしています。また、市民団体などと協力し、ヘイトスピーチに対する「対抗言論」の育成にも努めるなど、啓発活動も強めていこうとしています。

法成立も力に社会からヘイトスピーチの一掃を

 ヘイトスピーチの根絶に向かうことは、日本国憲法の精神にそっており、日本も批准している人種差別撤廃条約の要請でもあります。ヘイトスピーチ対策法の成立も力に、実際にヘイトスピーチを社会から根絶していくために、政府、自治体、国民全体が、あげて取り組んでいくことが大切です。

 とりわけ日本政府と政治家の責任は重大です。

 ヘイトスピーチをくり返してきた団体や「ネオナチ」など極右勢力の幹部と政権与党幹部との〝癒着〟が、過去に何度も指摘されてきました。安倍政権で閣僚を務めた高市早苗氏、稲田朋美氏らが、2011年にナチス・ドイツの主義主張を信奉する「ネオナチ」(新ナチズム)の団体の代表とともに、「日の丸」をバックに写真に納まっていたことが明らかになりました。高市氏は、ヒトラーをたたえる本に推薦文を寄せていたことも判明しています。

 同じく安倍政権で閣僚を務めた山谷えり子氏は、2009年2月に在特会(在日特権を許さない市民の会)関西支部長らとならんで写真を撮っていたことが判明しました。2014年9月、山谷氏は国家公安委員長・拉致問題担当相として外国特派員協会で会見をしましたが、本来のテーマが拉致問題であったにもかかわらず、質問の大半が在特会との関係に集中。外国人記者からは、「在特会やその理念を否定するべきでは」などの質問がくりかえされたにもかかわらず、山谷氏は「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」などとのべるだけで、一度も正面から在特会を否定、批判しませんでした。

 国際社会では、こうした団体・人物との親密な関係が発覚すれば政治生命が絶たれるほどの大問題となりますが、安倍政権はことをうやむやにしてきました。ニューヨークタイムズ前東京支局長のマーティン・ファクラー氏は、「民主主義国家なら政府はヘイトスピーチに対して毅然とした態度をとる責任があるが、安倍政権はあいまいにしている。これでは、安倍政権がこうした動きを利用しているかのように見られても仕方がない」と指摘しています(『女性のひろば』2016年7月号)。

 国連の人種差別撤廃委員会が2014年8月に出した総括所見では、日本政府に対して「(d)ヘイトスピーチの発信及び憎悪への煽動を行う公人及び政治家について、適切な制裁措置を実行する」と勧告しました。

 日本共産党は、ヘイトスピーチを一掃するためにも、政権与党幹部ら一部政治家が極右勢力や反動勢力との関係を反省し、きっぱりと関係を断ち切ることを求めます。また、日本政府に対し、憲法と人種差別撤廃条約の精神にのっとって、ヘイトスピーチの根絶へ、真剣な努力を行うことを求めます。

 

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