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赤旗

2017総選挙/各分野の政策

19、原発問題――再稼働・輸出反対、即時原発ゼロ、賠償打ち切りの撤回、除染の徹底

原発のない日本に――無謀な原発の再稼働と輸出をやめ、即時「原発ゼロ」の政治決断を

2017年10月


 安倍内閣は、原発を「重要なベースロード電源」として将来にわたって維持・推進し、「再稼働を進める」とした「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)に続き、2030年度の電力需要の20~22%を原発で賄うとする「長期エネルギー需給見通し」を決定しました(2015年7月)。そのためには「30基台半ばの原発」(2015年6月10日衆院経産委での宮沢洋一経産大臣答弁)が必要だとして、原子力規制委員会が定めた「新基準」をテコに、東京電力・柏崎刈羽原発を含め大半の原発を再稼働させようとしています。さらに現在見直し中の「エネルギー基本計画」では原発の新増設も視野に入れた議論が行われています。安倍首相は、国内の再稼働で日本の原発の「安全性」を装いながら、原発メーカーやゼネコン、経団連と連れ立って、トルコや中東、東欧諸国へ原発輸出の「トップセールス」に奔走し、核兵器保有国のインドとも原発輸出のための原子力協定を結びました。

 福島原発事故で、原発が抱える危険性と事故被害の深刻さが明らかとなり、「原発安全神話」は完全に崩壊し、再稼働反対が国民多数の世論となっています。2年近い(2013年9月~15年8月)「稼働原発ゼロ」も経験し、日本社会が原発なしでやっていけることが明らかとなりました。福井地裁は、「生存権を基礎とする人格権」が奪われる可能性があるとして、大飯原発(関西電力)の運転差し止めを命じました(2014年5月。高裁係争中)。高浜原発3号、4号は、再稼働直後に大津地裁の仮処分決定により運転を停止しました(2016年3月。後日高裁等で仮処分取り消し)。いま日本は、原発を再稼働させ原発依存社会を続けるのか、再稼働を許さず「原発ゼロの日本」にすすむのか、大きな分かれ道にあります。原発の再稼働と輸出という無謀な道をやめさせ、「原発ゼロの日本」へ政治決断を行うべきです。

 

原発事故は「収束」とは程遠く、事故被害は深刻化

 福島第一原発は、「収束」とは程遠く、事故の真っただ中にあります。放射能「閉じ込め」にむけた懸命の努力が行われていますが、溶け落ちた核燃料の位置や状態はいまだ把握できず、破壊された原子炉建屋への地下水などの流入により、核燃料から溶け出した放射性物質を含む汚染水が増え続けています。政府は、地下水を「近づけない」(「汚染水問題にかんする基本方針」2013年9月)として「対策」をとってきましたが、汚染水の増加を抑制できず100万トンを超えて増え続けています。ここまで事態が悪化してきたのは、政府も東京電力も、汚染水をいずれ海に流せばよいとする安易で許しがたい発想で、場当たり的で無責任な対応に終始してきたためです。

 一方で、安倍政権は、「『本格的な復興』のステージを迎える」(原子力災害対策本部2017年3月10日)として、事故から6年余りで、大熊町、双葉町と帰還困難区域を除き避難指示を解除しました。いまなお6万8千人(避難区域2万4千人、解除区域4万4千人。「毎日」9月9日付)が避難生活を余儀なくされています。避難指示が解除されても、暮らしを支える商店や病院がなかなか整わないなど帰還と復興を進める上での課題は山積です。ところが被害者への賠償は避難解除と連動して打ち切られようとしています。全面的な賠償をはじめ暮らし・地域の再建まで、政府と東電が責任を果たすべきです。

 

「世界最高水準の安全基準」で再稼働という方針は「破たん」しています

 安倍首相が当初のべていた「世界最高水準の安全基準で、安全が確認された原発は再稼働する」という方針は根底から破たんしています。安倍首相は、厳しい批判におされて、原発に、「絶対安全はない」ということを認めざるを得ませんでした。

 「新基準」は、福島原発事故の原因究明もないまま、再稼働を急ぐために「スケジュール先にありき」で決定したものです。重大事故(「炉心の著しい損傷」)への対策は部分的で、EUで義務づけているコアキャッチャ(溶融炉心を受け止めて冷やす装置)はなくてもよいとしています。活断層があっても表に出ていなければ、その真上に原発を建ててもよいなど、きわめてずさんなものです。火山対策も、火山学者が無理だと指摘しているのに、巨大噴火を予知できると強弁して、川内原発を「合格」させる始末です。しかも、九州電力は、川内原発を再稼働させたとたん、緊急時対策所としての免震重要棟建設を撤回しました。新基準適合審査の前提を平然と覆す、再稼働さえすれば何でもありという身勝手は許されません。他の電力会社も免震重要棟計画撤回を相次いで表明しましたが、事故当時の東電社長は、「あれ(免震重要棟)がなかったらと思うとゾッとする」と証言しています。福島原発事故の教訓を無視して再稼働に突き進むことは、あまりにも無責任です。

 電源が失われ燃料を冷やせなくなれば、1時間半程度で放射能が漏れだします。「万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する」(「エネルギー基本計画」)としながら、避難対策は自治体任せであり、実効性の保障もありません。アメリカでさえ住民の避難対策は稼働の前提とされています。「世界最高水準の安全基準」という安倍首相の言明は完全に破たんしています。

 

プルトニウム利用計画(核燃料サイクル)は破綻している

 安倍政権は、「エネルギー基本計画」に「核燃料サイクル政策の推進」を明記し、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して核燃料として再利用するとしています。すでに国内外に47トン近くのプルトニウムを保有しており、プルトニウムを取り出すための六ヶ所再処理工場も、稼働に向けて原子力規制委員会で審査中です。しかし、プルトニウムを利用する高速増殖炉「もんじゅ」は事故・不祥事続きで廃炉に追い込まれました。既設の原発でプルトニウムを利用するプルサーマルも稼働実績は4基しかありません。プルトニウム利用計画の破綻は明らかです。

 プルトニウムは核兵器の原料でもあります。六ヶ所再処理工場がフル稼働すれば、取り出されるプルトニウムは年間8トン近くになります。日本は、すでに47トン近くのプルトニウムを保有しています。使う当てのないプルトニウムをさらに大量に抱えることになれば、世界から疑惑を持たれるだけでなく、核拡散防止の国際的努力の支障にもなりかねません。

 

「原発のない日本へ」――日本共産党の提案

 危険な再稼働をきっぱりとやめ、「即時原発ゼロ」への政治決断を行うことこそが、もっとも現実的で責任ある道です。

①「収束宣言」と賠償打ち切りを撤回し、収束と廃炉、除染と賠償を、日本の英知を結集した国の一大事業として位置づけやりぬく

 政府は「収束宣言」(2011年12月)を誤りと認め、きっぱりと撤回すべきです。放射能汚染水の海への放出は、環境汚染や水産業への打撃をもたらし、絶対にやってはなりません。事故の収束と廃炉を、日本の英知を結集した大事業として位置づけ、国と東電は総力をあげるべきです。収束作業に従事する労働者の安全と健康の管理に万全を尽くし、労働条件を可能な限り良くすることを要求します。

 安倍内閣は、避難指示解除とセットで賠償を打ち切り、福島原発事故を終わったことにしようとしていますが、絶対に認めるわけにはいきません。賠償と除染、生活支援、復興支援で、不当な「線引き」をせずに、いわゆる「自主避難者」を含むすべての被災者・被害者を対象にすることを求めます。生活と生業(なりわい)が再建され、希望する人が故郷に帰り、命と健康を守る医療や介護、子どもたちの教育を保障し続け、「安全・安心の福島県」をとりもどすまで、そのすべての過程で、国の責任で復興を支援します。

 除染の目標となる放射線量を緩和しようという安倍内閣の企てに反対し、政府と東京電力の責任で除染を進めさせます。福島県内の住宅等の除染はおおむね完了した(帰還困難区域除く)とされていますが、放射線量が十分下がらず再除染を求める声が少なくありません。再除染を含め除染の徹底とスピードアップをはかります。森林についても生活圏に限定せず住民要求をふまえて除染をすすめます。危険手当の支払いなどすべての除染作業員の権利を守り、除染事業が確実、迅速にすすむようにします。

 原子力損害賠償審査会の「指針」を見直し、全面賠償を行います。東電、経産省の賠償打ち切りを許さず、精神的損害への賠償を含め被災者が納得できるまで賠償を行わせます。長期にわたる原発事故被害には「時効」などあってはなりません。賠償金はすべて非課税とします。

 福島県の18歳以下の子どもの医療費・検査料は国の負担で無料とします。「子ども・被災者生活支援法」を生かし、子どもの成長と権利を守るよう施策をすすめます。

 福島原発事故の廃炉・賠償・除染等の費用は、汚染者負担原則にもとづき、事故原因者・加害者である東京電力が第一義的責任を果たすべきです。同時に、国の法的責任をも認めた今年三月の原発避難者訴訟の前橋判決を踏まえ、原発を推進してきた歴代自民党政府、国が根本的な反省を行い、「原発ゼロ」への政策転換を明確にしたうえで、国が責任をとることが不可欠です。

 21兆5千億円にも膨れ上がった巨額の事故処理費用を電気料金に上乗せし、賠償費の「過去分」と称して将来世代にまで負担させ、さらに税金投入によって際限なく国民へツケを回す仕組み(原賠・廃炉等機構法及び福島復興加速化基本指針(昨年12月閣議決定等))は根本的に見直します。東電の経営陣、株主、メガバンク、原子炉メーカー、ゼネコンなど「原発利益共同体」に応分の負担をもとめ、国民負担を最小化します。

②原発再稼働の方針を撤回し、輸出政策を中止する

 事故の原因もわからず、収束すらできず、「安全基準」づくりでも破たんした政府が、原発を再稼働させるなど論外です。「稼働原発ゼロ」の約2年間(2013年9月~2015年8月)、原発なしでも電力不足にはなりませんでした。節電や再エネ導入がすすんだ結果、「稼働原発ゼロ」の2014年度以降、エネルギー起源の二酸化炭素排出量は減っています。日本社会は原発なしでも十分やっていけます。原発再稼働方針を撤回することを求めます。建設許可済みのものや計画中のものも含めて、新たな原発の建設は認めません。

 自国で大事故を起こし、国内では原発に「絶対安全はない」と言いながら、他国には「世界一安全な原発技術を提供できる」と原発を売り込むことほど罪深い所業はありません。無責任な原発輸出政策をただちに中止すべきです。

 福島事故の原因究明と大事故にいたるすべてのプロセスを解明する科学的検証をしっかりおこなうため、東京電力や経産省から独立し、調査権限を持った第三者機関と研究機関を確立します。

 政府は東京電力と一体となって、「稼ぐことが福島事業への貢献」(経産省東電・1F委員会「東電改革提言」2016年12月)だとして柏崎刈羽原発を再稼働させようとしています。事故被害者に対する賠償などの責任を原発再稼働の口実とするなど、事故被害者を愚弄するものです。原発推進のために事故被害者の気持ちを踏みにじる安倍政権を許すわけにはいきません。

③「即時原発ゼロ」「核燃料サイクルから撤退」の政治決断をおこない、再生可能エネルギーの大幅導入へ抜本的に転換する

 原発事故から5年余の体験は、原発と人類が共存できないことを示しています。とりわけ日本は地震大国です。この間、規制委員会の専門家チームは、敦賀原発、志賀原発の直下の断層を活断層と認めました。ずさんな評価で原発が立地されてきたことが改めて明らかになりました。東海地震震源域にある浜岡原発はもちろん、日本で大地震が起きないといえる場所はなく、原発は直ちにやめるべきです。

 原発の使用済み核燃料は、各原発と六ヶ所再処理工場で約1万8千トンが貯蔵されており、平均すればあと6年で貯蔵能力の限界に達します。原発を動かせば使用済み核燃料の置き場所がなくなる状況です。再処理しても、使う当てのないプルトニウムと処分場の目途がない高レベル放射性廃棄物という、いっそう厄介な荷物を抱え込むだけです。

 「即時原発ゼロ」の政治決断をおこない、再生可能エネルギーの大幅導入への抜本的転換の計画を立てて、実行していくよう推進します。再生エネルギーは、普及が進めば進むほど安定します。また、太陽光、小水力、バイオマス、風力、地熱といった多様なエネルギーを組み合わせれば安定します。日本の多様で豊かな再生エネルギーの潜在力を生かし、自然エネルギー大国に切り替えます。

 高速増殖炉「もんじゅ」の廃止にとどまらず、新たな高速実証炉開発も中止し、再処理工場を廃止し、核燃料サイクルからただちに撤退します。来年7月で30年の期限切れとなる日米原子力協定は、延長せず終了します。

 「原発ゼロ」を実現した後も、原発の廃炉、使用済み核燃料の管理・処理など原発関連の「負の遺産」の後始末を安全に実施しなければなりません。政府は、核のゴミの最終処分場について国土の65%が「好ましい」特性を持つとする「科学的特性マップ」を公表し、「国が前面に立って」立地調査を自治体に押し付けようとしています。しかし、地殻変動の活発な日本で「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」と日本学術会議は警告しています(2012年9月)。使用済み核燃料の処分の手段・方法については、既定路線にとらわれず、専門家の英知を結集して研究・開発をすすめる必要があります。その結論が出るまでは、政府の責任で厳重な管理をおこないます。こうした事業に取り組むためにも、原子力に関する基礎研究とこの仕事を担う専門家の確保・育成をすすめます。

 原発の廃炉にいたるプロセスの管理、使用済み核燃料の管理などを目的とし、従来の原発推進勢力から独立し、強力な権限をもった規制機関を確立します。

 原発立地地域の多くは経済的に原発に依存していますが、そのように誘導した国と電力会社の責任は重大です。大きな成長が期待される再生可能エネルギーと関連する新産業の誘致・育成、原発廃炉によって可能性が広がる漁業、農業と関連産業の育成など、本格的な地域経済再生に国として取り組み、「原発ゼロ」と一体に立地自治体の住民のくらし、地域経済再建の支援をすすめます。

 

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