各分野政策(2017年)

2017総選挙/各分野の政策

45、少年法

少年法の適用年齢引き下げに反対します


 政府・自民党が、少年法の適用年齢引き下げへの動きを強めています。自民党政務調査会は2015年9月17日、少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げることを内容とした「成年年齢に関する提言」を公表しました。18歳選挙権が実現したのにあわせて「国法上の統一性」「分かりやすさ」という口実をたて、突破を図ろうとしています。

 これを受けて、岩城光英法相(当時)の指示で法務省内に「勉強会」がつくられ、法改定に動き出しました。現在は、法制審議会に少年法・刑事法部会が立ち上げられ、そこで検討が進められています。

 しかし、いま少年法の適用年齢を引き下げることは、日本社会にとって弊害があまりに大きく、現行少年法が少年の更生に有効に機能していることに鑑みれば引き下げるべきではありません。日本弁護士連合会、刑事法研究者、全司法労働組合など、少年事件・少年非行にかかわっている関係者からも、適用年齢引き下げに対する強い反対・懸念の声があがっています。

 日本共産党は、下記の理由から、少年法の適用年齢引き下げに反対します。

 

 18歳、19歳を少年法適用から外すことは、少年の更生を妨げ、少年本人の利益に反するだけでなく、再犯(再非行)の危険を増大させ、社会の安定をそこなう

 現行少年法は、すべての事件を家庭裁判所に送致し(全件送致主義)、家裁や少年鑑別所における科学的な社会調査と資質鑑別の結果をふまえ、一人一人の少年に対する処遇を決定することとしています。年間の少年被疑者は約12万人で、うち18歳、19歳は約5万人、約4割を占めています。

 少年法の適用年齢が引き下げられれば、これだけの規模の若年者が少年司法手続から外れ、「成人扱い」となることになります。

 非行少年は、その多くが生育環境や資質・能力にハンディをかかえています。「大きくない事件でも、審判で親が『少年院に送ってくれ』といい、少年院に来る子もいる。家族関係に大きな葛藤を抱えている。18~19歳だからといって『自分でやりなさい』では、将来の更生を考えたら得策ではない。家族の問題はとても大きい」(元東北少年院長・真田安浩氏)といった切実な指摘が、現場からはあがっています。こうした少年たちが更生し、社会に適応して自立していくうえでは、刑事訴訟的判断だけでなく、“人間科学”に基づき、個々の少年の要保護性を審判する福祉的・教育的手続きと処遇が必要です。そして、現行少年法のもとでの全件送致主義は、そのための有効な仕組みです。

 しかし、少年法は2000年以降、少年審判への検察官関与制度の創設、重大事件を犯した少年を原則として検察官送致とする「原則逆送」(※)の創設、警察調査の導入、少年院送致年齢の引き下げなど、4度にわたる改悪が繰り返され、刑事訴訟化が進行してきました。このもとで、少年法の本来の理念である「少年の健全育成」や「成長発達権の保障」よりも、社会の処罰感情・応報感情を満足させることが優先される傾向が強まってきています。

 「少年だからといって甘やかすな。罪を犯した者は厳しく罰する方がいい」という意見も少なからずありますが、「少年法は少年を甘やかすもの」というのは、大きな誤解です。少年事件の多くを占めるのは、「万引き」「自転車泥棒」「ケンカによる傷害」「交通違反・過失運転致死」などです。それらが「成人並み」に扱われれば、被害金額の多寡や示談の成否などが酌量され、不起訴処分や略式命令による罰金刑によって終了するか、せいぜい執行猶予付きとなります。少年法適用年齢の引き下げは、実際は、罪を犯した18歳、19歳を「厳しく罰する」どころか、むしろ反省と再犯防止・立ち直りに向けた十分な処遇を行わないまま放置することとなってしまうのです。ここで更生のチャンスを逃したばかりに、あとあとの大きな犯罪を防げなかったということにも、なりかねないのです。

 また、「ぐ犯」(将来罪を犯すおそれがある少年。少年法では、①保護者の正当な監督に服しない性癖がある、②正当の理由がなく家庭に寄り附かない、③犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入する、④自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖がある、の4点をあげている)での少年院送致によって、しっかりとした指導を受け立ち直りの契機となる場合が多いのですが、これが成人扱いになれば、18歳、19歳の少年は放置されることになります。とくに女子少年の場合は、このことで犯罪者や犯罪被害者になる懸念が強いのです。

※検察官への「原則逆送」は、16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合で、裁判員裁判の対象にもなっている。逆送の割合は少年事件全体の0.6%、18歳、19歳では1.3%(2013年)。

 

18歳、19歳を少年法適用の対象外とすれば、それを口実に少年犯罪の防止と少年の更生にとりくむ体制が大幅に弱体化されかねない

 この間、少年犯罪は少子化を上回る規模で減少しています。凶悪犯罪も、昭和30年代半ばに殺人や殺人未遂で検挙された少年は400人台でしたが、近年は40~50人と減少しています。「凶悪な少年犯罪が増えている。だから厳罰化が必要だ」という意見は、多分に印象によるものであり、客観的根拠はありません。

 もちろん、だからといって、「少年犯罪は深刻な問題ではない」ということにはなりません。少年犯罪をとりまく環境は、貧困と格差の広がり、それにともなう家庭・地域の脆弱化、いじめや虐待の深刻化などから、困難さを増しているのも事実です。「人を殺してみたかった」という動機で、「優秀」とされていた高校生や大学生が突然殺人を犯すといった「不可解」な少年事件も起きています。

 こうしたもとでは、犯罪・非行の外形的な事実だけではわからない、一人一人の成育歴・成育環境や親の監護力などの事情を調べ、少年本人の更生と将来の犯罪予防に役立てることが、いよいよ重要となっています。

 そのときに、少年法の適用年齢を引き下げたら、どうなるでしょうか。“重大な犯罪の芽を小さなうちにつむ”機会が大きく失われるばかりでなく、事件の背景を調査し、再犯や似たような犯罪の発生を抑止し、少年の更生を支える体制・機能が、ますます弱体化しかねません。

 すでに、この間の4度にわたる少年法改悪で、少年審判の刑事裁判化と厳罰化がすすめられてきましたが、こうした中でも、少年法ではすべての保護事件について家裁調査官の科学的調査に基づくケースワークが行われ少年の立ち直りに向けた援助が行われています。子どもの育つ環境がいっそう困難なものになっているいま、少年法の理念と、それを支える体制は、決してこれ以上後退・弱体化させてはならず、むしろ充実させることが必要です。

 

年齢制限は、それぞれの制度や法の目的、社会環境などによって異なる基準があってしかるべきであり、「選挙権が18歳になったのにそろえる」というだけの理由で、少年法の適用年齢を引き下げるべきではない

 自民党は適用年齢引き下げの理由として「国法の統一性や分かりやすさ」をあげていますが、この論理はすでに破たんしています。選挙権は18歳以上に引き下げられましたが、同じ参政権に属する被選挙権は、現行の衆院25歳以上、参院30歳以上のままです。飲酒・喫煙については当初「18歳以上」に揃えようとしましたが、党内外から強い反対意見が出て立ち消えとなりました。

 さらに、少年法自体についても、自民党の提言でも「罪を犯した者の社会復帰や再犯防止といった刑事政策的観点からは、満18歳以上満20歳未満の者に対する少年法の保護処分の果たしている機能にはなお大きなものがある」とその意義を認め、「若年者のうち要保護性が認められる者に対しては保護処分に相当する措置の適用ができるような制度の在り方を検討すべき」としています。実現性も定かでない「分かりにくい」制度を、提示せざるを得なくなっているのです。

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 この問題では、日本弁護士連合会が、会長とともに、47都道府県・52の弁護士会すべてで反対の声明を出しています。すべての弁護士会が反対声明を出すというのは異例のことです。現場の弁護士が、この間の相次ぐ少年法改悪によって少年法の理念がゆらぎ、激しい矛盾を引き起こしていることに、強い危機感を持っていることの反映です。

 幅広い学者・研究者、家庭裁判所の調査官をはじめ、少年事件・少年非行に日常的に携わっている現場の専門家の方々も、こぞって年齢引き下げに反対を表明しています。法相の「勉強会」でも、ほとんどの有識者から反対の声が出されています。

 こうした世論と運動に、日本共産党も連帯し、適用年齢の引き下げに反対して、たたかいます。

 

 (c)日本共産党中央委員会