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日本共産党

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赤旗

2017総選挙/各分野の政策

13、マイナンバー

社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危険にさらすマイナンバー(共通番号)制度の中止・廃止を求めます

2017年10月


 マイナンバー(共通番号)制度とは、日本に住むすべての国民・外国人に生涯変わらない12ケタの番号をつけ、さまざまな機関や事務所などに散在する各自の個人情報を、その番号を使って簡単に名寄せ・参照できるようにし、行政などがそれらの個人情報を活用しようとする制度です。

 2013年に可決・成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(通称マイナンバー法)に基づいて、2015年10月に付番が行われ、マイナンバーと氏名・住所・生年月日・性別が一体に記載された「通知カード」が、全国民に送付されました。2016年1月からは、希望者に対し、顔写真やICチップの入った「個人番号カード」の交付が始まりました。

 法律が施行された現在も、「通知カードが届かない」「従業員から集めたマイナンバーが盗難にあい流出した」などのトラブルや、マイナンバーを口実にした詐欺などが頻発しています。確定申告や年金の扶養親族等申告書などにマイナンバーの記載欄ができたことで手続きが複雑化・煩雑化し、国民は無用な混乱を押しつけられています。

日本共産党はマイナンバー制度の廃止を求めます。

狙いは社会保障の給付削減

 もともと、国民の税・社会保障情報を一元的に管理する「共通番号」の導入を求めてきたのは、財界でした。日本経団連は2000年代から、各人が納めた税・保険料の額と、社会保障として給付された額を比較できるようにし、“この人は負担にくらべて給付が厚すぎる”などと決めつけて、医療、介護、福祉などの給付を削減していくことを提言してきました。社会保障を、自分で納めた税・保険料に相当する“対価”を受けとるだけの仕組みに変質させる大改悪にほかなりません。社会保障を「自己責任」の制度に後退させ、「負担に見あった給付」の名で徹底した給付抑制を実行し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことが、政府・財界の最大のねらいです。

 日本共産党は、社会保障を民間の保険商品と同様の仕組みに変質させ、国民に負担増・給付削減を押しつけるたくらみに反対します。社会保障を“自己責任”に変える策動を許さず、国民の権利としての社会保障を守ります。

プライバシー権の侵害の危険

 政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけ、多分野の個人情報を紐づけして利用できるようにすること自体、重大な問題を持つものです。

 本来、個人に関する情報は、本人以外にむやみに知られることのないようにすべきものです。プライバシーを守る権利は、憲法によって保障された人権の一つです。とくに、現代の高度に発達した情報化社会では、国家や企業などに無数の情報が集積されており、本人の知らないところでやりとりされた個人情報が、本人に不利益な使い方をされるおそれがあります。そのため、どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利(自己情報コントロール権、情報の自己決定権)も、プライバシー権として認めるべきだと考えられるようになっています。

 マイナンバーは、それまでにあった「住基ネット」などとは比較にならない大量の個人情報を蓄積し、税・医療・年金・福祉・介護・労働保険・災害補償などあらゆる分野の情報を、一つの番号に紐づけしていくことが狙われています。公務・民間にかかわらず多様な主体が、この番号を取り扱い、活用することになります。他人に自分の情報の何を知らせ、何を知らせないかコントロールできる「自己情報コントロール権」が、著しく侵害されることになります。

 政府は「マイナンバー情報は一元管理されるのではなく、分散管理のままだから、どこかから漏れても芋づる式に他機関の個人情報が漏れることはない」と説明しています。しかし、生涯同じ番号を使う限り、漏れた情報が蓄積されていけば、膨大なデータベースが作られる可能性が常にあります。一つの番号で名寄せできる情報が多いほど、詐欺やなりすましなどの犯罪に利用される恐れも高まります。

 日本弁護士連合会は、「『社会保障番号』制度に関する提言」(2007年10月)で、「米国の社会保障番号(SSN)がプライバシーに重大な脅威を与えていることは広く知られている」「あらゆる個人情報がSSNをマスターキーとして検索・名寄せ・データマッチング(プロファイリング)され、個人のプライバシーが『丸裸』にされる深刻な被害が広範に発生している」「SSNの身分証明性を悪用されて、『なりすまし』をされたりする被害も広がっている」と指摘し、日本への「社会保障番号」導入に反対を表明しています。

 実際、アメリカでは、「社会保障番号」の流出・不正使用による被害が全米で年間20万件を超えると報告されています。同様の制度がある韓国でも、06年、700万人の番号が流出して情報が売買され、大問題となりました。イギリスでは、労働党政権下の06年に導入を決めた「国民IDカード法」が、人権侵害や膨大な費用の浪費の恐れがあるとして、政権交代後の11年に廃止されました。

 マイナンバー制度をしゃにむに推進する日本政府の姿勢は、世界の流れにも逆行しています。

際限なき利用拡大

 マイナンバー制度は2015年10月からスタートしましたが、法が施行される直前の9月に、マイナンバー法の拡大法案が自民、公明、民主などの賛成多数で可決・成立しました。プライバシー性の極めて高い個人の預貯金や特定健診情報なども利用対象にするもので、日本共産党は、より深刻なプライバシー侵害や犯罪を招く恐れを増加させると批判し、反対しました。

 政府は今も、マイナンバーの利用拡大に前のめりです。「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太の方針2015)には、金融資産の保有状況と医療保険・介護保険の負担額を連動させること、固定資産にも個人番号を紐づけし、税・社会保険料の徴収強化に役立てることなどが盛り込まれ、同方針2016でも、「マイナンバーをキーとした仕組みを早急に整備するとともに、税・社会保険料徴収の適正化を進める」と明記されています。各省庁では、戸籍事務、旅券事務、預貯金への付番、医療・介護・健康情報、自動車登録などにも、番号の利用範囲を拡大していく検討が進められています。

 また「個人番号カード」については、2016年1月から国家公務員の身分証とするのを皮切りに、地方自治体の職員証や民間企業の社員証、民間のポイントカードなどとしての利用を促進しようとしています。実際には普及が遅れ、2017年8月末時点で普及率は9.6%ですが、政府は、健康保険証との一体化などをめざし、2020年までには国民8700万人に個人番号カードを持たせる構想を描いています。「個人番号カード」を取得する際には顔認証システムにかけられ、顔写真のデータは15年間、カード関連事務を担うJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)という機関に保管されます。このデータと、市中に設置された防犯カメラを連動させれば、特定の個人の行動を追跡することも可能になります。「防犯」「治安」を口実に国民のプライバシーを著しく侵害することもいとわない、超監視社会の誕生です。

 「個人番号カード」の取得は現在は任意ですが、もし健康保険証と一体化されれば、ほとんどの人が持たざるを得なくなってしまいます。マイナンバーと個人番号カードの利用拡大をストップさせ、この制度を廃止する運動を、ともに広げていきましょう。

巨大なITハコモノ利権

 マイナンバー制度には、巨大なITハコモノ利権という側面もあります。

 制度の導入のために必要な「基幹システムの構築」「カード発行経費」「広告費用」として、国の予算として3400億円以上の税金が投入されています。制度スタート後も、制度の維持費として、毎年数百億円がかかっていくことが見込まれています。

 さらに自治体にとっても、システム改修はじめ、さまざまな業務の増大がありますが、カード交付の一部をのぞき、それらの費用への国の補助はありません。自治体等の費用負担も、相当の額にのぼることが予想されます。

 この巨額の税支出に加えて、さらに広範な民間の負担も発生します。番号制度のもとでは、従業員を雇用する事業者は、税務署に提出する源泉徴収票などの法定調書に個人番号を記載することが求められるため、従業員やその家族の個人番号を集めて、安全・厳重に管理することが求められます。専門家の試算では、従業員100人、支店数カ所の企業の場合、初期費用で1000万円、その後も毎年400万円の支出が発生するとされます。ここに対しても、国からの補助はありません。

 こうしてみると、マイナンバーをめぐって動くお金は巨額です。その市場は1兆円とも3兆円とも言われています。ここに、IT企業やコンサルタント会社がむらがり、利益をむさぼっている構図があります。

 マイナンバー制度の準備段階の2011年、政府は大手電機企業の幹部らが委員に名を連ねる検討会議「情報連携基盤技術ワーキンググループ」を設け、マイナンバーの制度設計を行いました。メンバー21人のうち、13人が企業関係者で、日立製作所、富士通、NTTデータ、沖電気工業、大和総研ビジネスイノベーション、野村総合研究所、NECなど、大手電機の幹部が加わりました。「しんぶん赤旗」の調べによると、2013年以降、行政機関が発注したマイナンバー関連事業27件(226億円)中、22件を、この会議に参加していた企業7社が受注していました。その金額は判明分だけでも178億円と、発注額の8割を占めています(2015年10月15日付)。

 さらに2015年11月8日付「しんぶん赤旗」は、日立製作所、富士通、NEC、NTTデータが自民党の政治資金団体に、2009年から2013年にかけて、2億4千万円を超える献金をしていたことを報じました。

 まるで絵にかいたような政官財癒着の構図です。マイナンバー制度が続く限り、一部の企業が「IT特需」にわき、癒着する官僚・政治家が甘い汁を吸う一方、国民には負担がのしかかり続けるのです。

 

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