各分野政策(2017年)

2017総選挙/各分野の政策

11、介護―特養ホーム、介護保険料・利用料、介護労働者、認知症対策

介護保険の連続大改悪を許さず、高齢者も現役世代も安心できる公的介護制度をめざします

2017年10月


 家族の介護のために仕事をやめる「介護離職」が十年間で105万人を超え、「介護難民」と呼ばれる“行き場のない高齢の要介護者”が数十万人規模にのぼるなど、介護をめぐる問題が、高齢者はもちろん現役世代にとって重大な不安要因となっています。

 こうした事態を受け、安倍政権はにわかに「介護難民ゼロ」などといいだしましたが、この5年間、同政権が実際に行ってきたのは、公的給付の削減や利用料の引き上げなど、“介護を受けにくくする制度改悪”の連打でした。

 このままでは、介護をめぐる危機的事態は深刻化するばかりです。日本共産党は、安倍政権による介護切り捨ての改悪に反対し、現役世代も高齢者も安心できる公的介護制度に転換する改革をすすめます。

 

安倍政権の際限なき介護保険改悪とたたかいます

 安倍政権は、2014年(「医療・介護総合法」)と2016年(「地域包括ケア強化法」)の2度にわたって介護保険の改定法をとおし、国民に負担増・給付減を押しつける改悪を強行してきました。

 要支援者の保険給付外し……2014年の法改定により、「要支援1・2」と認定された人の訪問介護(ホームヘルプ)・通所介護(デイサービス)が介護保険の給付から外されました。要支援者には、保険給付に代わって自治体から“代替サービス”が提供されますが、そのサービスを担う「新総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)の予算には上限がつけられ、各自治体は大幅な給付費の抑制を求められます。

 厚生労働省は、「新総合事業」の「ガイドライン」で、▽利用者を“報酬単価の低い無資格者のサービス”に誘導する、▽新規の申請者は簡単なアンケート(基本チェックリスト)で状態を判断し、要介護認定はなるたけ“省略”する、▽利用者に「自立」に向けた目標を持たせ、介護サービスの「卒業」をめざす――などの手法を使い、「給付の効率化」をめざすよう自治体に求めています。

 政府・厚労省はこれまでも、要支援者向けの在宅サービスの給付を白眼視し、ヘルパー派遣の回数制限や1回あたりの介護時間の短縮など給付抑制の改悪を繰り返してきました。安倍政権が強行した制度改変は、そうした保険制度の枠内での給付抑制を踏み越え、要支援者を丸ごと保険の枠外に追いだすことで、給付費の抜本的削減を図ろうとするものです。文字通りの“要支援者切り”にほかなりません。

 自治体に介護の切り捨てを競わせる「インセンティブ改革」……安倍政権は、2017年の通常国会で通した「地域包括ケア強化法」で、各自治体の「自立支援」「給付効率化」の達成度を国が“採点・評価”し、“成果”に応じて予算を加算する仕組みを導入しました(2018年度施行)。

 政府・厚労省は、この間、各地の自治体に、要支援者や「軽度者」(要介護1・2)に対して「自立支援」を働きかける“モデル事業”を実施させてきました。そのなかで“模範例”とされた自治体では、▽介護サービスを申請する人を、「基本チェックリスト」だけで「サービスの必要はない」と門前払いする、▽自治体が設置する「地域ケア会議」が“給付の門番”となり、サービス縮小の方向で、ケアプランの見直しがせまられる、▽すでに介護サービスを受けている人が「卒業」の名でサービスを打ち切られる――などの事例が次々と生まれています。そうした強引な“介護切り”は、要支援者サービスの「新総合事業」への切り替えでさらに加速・拡大し、利用者の重度化や家族の困難など、重大な問題を引き起こしています。

特養入所の「要介護3」以上への限定……2014年の法改定により、2015年度から特養ホームへの入所は原則「要介護3」以上とされ、10万人を超える「要介護1・2」の待機者は、「受け皿」の準備もないまま“待機者の列”から排除されました。要介護者から特養入所の申請権を奪うことで、見かけ上だけ待機者数を減らし、「介護難民」のまま放置するという、最悪の責任逃れにほかなりません。

 厚労省は、▽虐待の被害者、▽知的・精神障害、▽認知症で常時見守りが必要――などの事情がある場合は、「要介護1・2」でも「特例入所」を認めるとしていますが、「毎日」が実施した特養全国アンケートによれば7割超の施設は「特例入所」を実施しておらず、“救済策”として機能していないのが実態です。それにとどまらず、施設介護の現場では、利用者の要介護度が「改善」したときに「退所」をせまる状況を回避するため、「要介護3」の人まで入所を敬遠する動きが起こっています。

 まさに、要介護者を特養から排除し、「介護難民」の放置と増大を促す大改悪です。

2割負担・3割負担の導入、「補足給付」の打ち切り……要支援者や軽度者からの介護の取り上げを強行する一方、安倍政権は、利用者への負担増を次つぎと強行しています。

 2014年に可決された「医療・介護総合法」により、2015年8月から、「所得160万円以上」(単身で年金収入280万円以上)の人の利用料が、1割負担から2割負担へと引き上げられました。さらに、「地域包括ケア強化法」により、2018年8月から、「年金収入340万円以上」の人の利用料は3割負担に引き上げられます。

 これらの負担増について、政府・厚労省は「所得に応じた負担」と強弁していますが、2割負担の対象には、高所得とは到底いえない人が多数含まれ、介護と医療の両方で自己負担を強いられている人、施設に入所して食費・居住費の負担をしている人などには、きわめて過酷な負担増となっています。2割負担・3割負担に該当するかどうかは前年所得によって判定されますが、「昨年は働いて収入があったが、今は要介護で無収入」というケースに対応した“救済策”はなく、低所得の人が負担増に苦しむケースも発生します。

 低所得の高齢者が、特養ホームやデイサービスなど施設サービスを受ける際に、食費・居住費を補助する「補足給付」についても、①世帯分離をしている配偶者が住民税課税である場合、②単身で1000万円以上などの預貯金がある場合、③非課税年金(障害年金・遺族年金)を一定額以上、受給している場合――には対象から除外し、食費・居住費の大幅な負担増を求めることになりました(①②は2015年8月から、③は2016年8月から)。

 この負担増の実施により、特養に入所していた低所得者が退所を余儀なくされたり、食費・居住費を捻出することで、配偶者や息子・娘の生計も破綻して“共倒れ”になったりするなど、悲惨なケースが各地で起こっています。

 また、この改悪に連動して、「補足給付」を申請するすべての人に、「貯金通帳のコピー」など、自分の資産を明らかにする書類の提出が義務づけられました。こうしたプライバシーを“丸裸”にするやり方に、利用者・家族からは憤りの声が上がり、介護の現場が大混乱するなどの事態も生じています。

 「補足給付」は、2005年の制度改悪で、もともと保険給付だった施設の食費・居住費を全額自己負担にしたときに、低所得者の利用の道を閉ざさないため導入されたものです。貧困な入所者・待機者が激増するなか、拡充こそ求められています。制度を後退させること自体、重大な逆行にほかなりません。

 高額介護サービス費についても、2015年度と2017年度、負担上限の引き上げが連続的に行われています。

 まさに、際限のない負担増です。

 介護報酬の大幅削減……安倍政権は、社会保障費の「自然増」削減のため、2015年度、介護報酬の大幅削減を強行しました。報酬全体で▲2・27%、介護職の「特例加算」を除いた報酬本体は▲4・48%という空前の報酬カットにより、介護事業所の倒産・撤退が各地で激増し、“施設入所の制限”“利用者の放置”“食事や年中行事のカット”“利用者からの追加負担徴収”など、利用者や家族が犠牲となる事態も起こっています。

 際限のない介護制度の改悪をやめさせます……安倍政権の介護保険改悪は、これで終わりではありません。財務・厚労両省は、「要支援1・2」に続いて「要介護1・2」についても、在宅サービスの保険給付外しを「検討」することに「合意」しています。

 2018年度の介護報酬は、「自然増」削減のための総額削減と同時に、要支援者や「軽度者」の「サービス卒業」を促すための報酬が導入される予定です。

 要支援者・「軽度者」へのサービスを保険給付から外し、介護の縮小や打ち切りに追い込んでいく改悪は、高齢者の尊厳と人権を脅かし、状態悪化による重度化を招き、かえって給付費の膨張につながるなど、「百害あって一利ない」ものです。

 全高齢者に保険料を負担させながら、保険給付を受けられなくする改悪には、介護保険制度の創設を主導した元厚労省高官も“このままでは、介護保険は「国家的詐欺」の制度になる”と危惧の声があげています(堤修三・元厚労省老健局長、「シルバー産業新聞」2015年11月10日号)。

 日本共産党は、介護保険の公的給付を際限なく切り縮め、利用者・家族負担を引き上げていく、安倍政権の制度改悪に反対します。

 要支援者サービスを保険給付に戻し、「要介護1・2」を特養の入所対象に戻して、給付の拡充と基盤の整備を進めることを求めます。

 利用料の2割負担・3割負担を撤回し、施設の食費居住費の改悪を全面的に見直すよう、政府に要求します。

 介護報酬の削減路線をあらため、削減された報酬を元の水準に戻して、介護職員の賃金の引き上げ、職員配置基準の改善、長時間・過密労働の是正につながる報酬体系への転換を求めていきます。

 

「介護の危機」を打開するため、介護・福祉・医療制度を立て直します

 会社などで働いている人が、家族の介護・看護を理由に仕事をやめる「介護離職」は、毎年8~10万人、直近十年間で105・5万人にのぼります(総務省「就業構造基本調査」)。経済誌やビジネス誌が「介護特集」を連打し、「介護独身」がメディアの話題となるなど、介護問題が、高齢者はもちろん現役世代の大きな不安要因となっています。

 国の施策で病院を出され、介護施設に入れない高齢者が、「お泊りデイサービス」などの脱法施設を利用したり、ホームレス用の宿泊施設を転々とするなど、メディアが「介護難民」「老人漂流社会」と呼ぶ深刻な状況も広がっています。「シニアマンション」などの看板で大量の高齢者を収容していた脱法的な住居施設が、多くの入居者を拘束・拘禁状態にしていたという悲惨な事件も報じられました。

 「独居老人」や「老老介護世帯」が急増し、高齢者の貧困・孤立が進行するなか、65歳以上の「孤立死・孤独死」も年間2万人にのぼると推計され(ニッセイ基礎研究所調査)、介護を苦にした殺人・殺人未遂が、年間に約50件、1週間に1件のペースで起こる状況も続いています(警察庁調査)。

 安倍内閣は「介護離職ゼロ」を言い出しましたが、介護保険を「サービスを受けにくい制度」にする改悪を連発し、介護報酬の削減を強行しながら、「介護離職ゼロ」を叫ぶなど欺まんでしかありません。

日本共産党は、安倍政権が推進・検討する介護制度の連続大改悪に反対するとともに、いまや日本社会の大問題となっている「介護の危機」を打開するため、介護・福祉制度の再建・充実をすすめます。

 

〔特養ホームの待機者をゼロに――国策転換で「介護難民」を解消します〕

 介護保険導入後の13年間に、全国の特養ホームのベッド数は1・7倍に増えましたが、入居希望者はそれをはるかに上まわる規模で増え続け、待機者が、2014年時点で52万人、「要介護1・2」を除いた2016年の数でも39万人を超える状況となっています。

このように特養待機者が爆発的に増え続ける大本には、“高齢世代の貧困化”があります。現在、国民年金のみを受給する人の平均受給額は、月5・1万円、厚生年金も、女性の平均受給額は基礎年金部分を含めて、月10・2万円です。こうした低年金の人が要介護状態になったとき、最期まで入居できる施設は特養ホームしかありません。

 ところが、政府は、給付費抑制のために特養ホームの増設を抑え、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、利用料の平均で月12~15万円かかる、“低所得者には利用ができない施設”の整備ばかり応援してきました。

 「介護難民」を解消するには、特養ホームの抜本的な増設に舵を切るしかありません。日本共産党は、待機者解消の「5カ年計画」を策定し、国の責任で特養ホームの抜本的増設を図ることを提案します。廃止された特養建設に対する国庫補助を復活させ、都市部での用地取得を支援するなど、「待機者ゼロ」の実現に向けて、あらゆる施策を動員することが必要です。この間、資材高騰や人手不足で「入札不調」が相次いでいる各地の特養建設も速やかに着手できるよう、国からの支援を行います。

 「介護難民」増加の引き金となっている、病院や老人保健施設からの“追い出し”政策を中止します。強引な退院や、老健施設からの“早期退所”を誘導・促進する診療報酬・介護報酬のあり方を抜本的に見直し、「漂流高齢者」を生まない仕組みに改善します。

 小規模多機能型施設、グループホーム、宅老所など特養ホーム以外の多様な施設についても基盤整備を進め、食費や部屋代への公的補助など、低所得者が利用できるよう改善をすすめます。

 

〔サービスとりあげ中止、利用料・保険料減免――「必要な介護が保障される制度」に〕

 介護保険制度は、17年前、「家族介護から社会で支える介護へ」というスローガンをかかげて導入されましたが、実際には、要介護度に応じてサービス内容や支給額が制限され、スタート当初から「保険あって介護なし」と言われてきました。

 さらに、歴代政権の社会保障費削減路線のもと、負担増やサービス取り上げの制度改悪が繰り返され、「介護保険だけで在宅サービスを維持できない」状況はますます深刻化しています。給付削減の改悪は、利用者・家族を苦しめるとともに、“いざというとき使えない制度”という国民の不信を高め、制度の存立基盤を危うくするだけです。利用者からサービスを取り上げる改悪や機械的な利用制限の仕組みを撤廃し、介護保険を「必要な介護が保障される制度」へと改革していきます。

介護とりあげの改悪の中止……軽度者にたいする訪問介護・通所介護・福祉用具などの厳しい利用制限、「介護とりあげ」をやめさせます。2012年の介護報酬改定で導入された、生活援助の基準時間の「60分」から「45分」への短縮など、この間、続けられてきた在宅サービス切り捨ての改変を抜本的に見直します。「給付適正化」の名を借りて、国と自治体がすすめている利用抑制、国の基準にてらしてもいきすぎた、自治体の「ローカル・ルール」による給付制限をただちにやめさせます。“究極のローカル・ルール化”ともいうべき要支援者サービスの保険給付外しを中止させます。

利用料・保険料の減免制度を確立……高齢者のサービス利用をはばむハードルとなっているのが自己負担の重さです。低所得者の利用料を減額・免除する制度をつくり、経済的な理由で介護を受けられない人をなくします。施設の食費・居住費負担の軽減をすすめ、自己負担から保険給付へと戻していきます。2割負担・3割負担の導入や、「補足給付」の縮小など、もってのほかです。

 高齢者の3人に2人は住民税非課税であり、65歳以上の介護保険料(第1号保険料)の負担が生活圧迫の大きな要因となっています。高齢者本人や家族の貧困が深刻化するなか、保険料が「年金天引き」の対象とならない年金が月1万5千円以下という人の保険料滞納が急増しています。国として実効性のある保険料の減免制度をつくります。

 国保料(税)や後期高齢者医療保険料に比べても過酷な、介護保険料の滞納へのペナルティを見直します。

国庫負担引き上げで安心できる制度に……現在の介護保険は、サービスの利用が増えたり、介護職の労働条件を改善すれば、ただちに保険料・利用料の負担増に跳ね返るという根本矛盾をかかえています。厚労省の見通しによれば、給付削減の改悪がこれだけ繰り返されるもとでも、現在、全国平均で月5,300円である65歳以上の介護保険料は、2025年には月8,200円にまで引き上がります。保険料・利用料の高騰を抑えながら、制度の充実や基盤の拡充を図り、本当に持続可能な制度とするには、公費負担の割合を大幅に増やすしかありません。

 自民党と公明党は、消費税増税の実施前、“増税で財源を得られたら1兆円の国費を投入し、介護保険の公費負担割合を現行の50%から60%に引き上げる”と主張していましたが、増税が決まったとたん、その公約は反故にされました。消費税増税で得られる財源の一部を使い、第1号保険料の低所得者軽減をおこなうという措置も、ごく一部が実施されただけで、本格的な実施は増税延期を理由に先送りされたままです。仮に、この軽減策が実施されても、保険料がうなぎ上りに上がっていくことには変わりはありません。

 日本共産党は、介護保険の国庫負担割合をただちに10%引き上げ、将来的には、国庫負担50%(公費負担75%)に引き上げることを提案します。その財源は、国民生活にも日本経済にも大打撃となる消費税ではなく、①富裕層や大企業への優遇をあらためる税制改革、②国民の所得を増やす経済改革――という「消費税とは別の道」で確保します。

 こうした公的介護制度への国庫負担の引き上げとあわせ、65歳以上の介護保険料を全国単一の所得に応じた定率制にあらためる、要介護認定や利用限度額など機械的な利用制限の仕組みを撤廃して、現場の専門家の判断で適正な介護を提供する仕組みに転換するなど、制度の根本的改革をすすめていきます。

 

〔介護・福祉労働者の労働条件改善、介護報酬の増額――提供体制を強化します〕

 介護労働者の平均賃金は全産業平均を月10万円も下回っています。こうした異常な低賃金と長時間・過密労働のまん延、「福祉の初心」を生かせない劣悪な労働環境などにより、介護現場は深刻な人手不足におちいり、それが、制度の基盤を脅かす重大事態となっています。特養ホームなど施設介護の現場では、「ベッドは空いているのに、人手が足りないために、入所者を受け入れられない」という状況が深刻化しています。

 歴代政権は、介護を“新たな雇用創出分野”などと宣伝しながら、介護従事者の劣悪な労働条件や低すぎる社会的評価などの問題を放置してきました。「福祉は人」と言われるように、介護・福祉の提供体制を強化するには、労働条件の抜本的改善、担い手の育成・確保が不可欠です。

国費の投入で賃金アップを実現……保険料・利用料の引き上げに連動させることなく、緊急かつ確実に介護・福祉労働者の賃金アップを図るため、介護報酬とは別枠の、国費の直接投入による賃金引き上げの仕組みを創設します。第一歩として、この間、野党共同で提出してきた、国費による介護職員の賃上げ法案の成立をめざします。

介護報酬の削減反対、抜本的な底上げを……劣悪な労働条件の根本原因は、介護報酬が低すぎ、しかも、削減が続いていることです。

 日本共産党は、自公政権が削減してきた介護報酬の抜本的な増額・底上げを推進します。それが保険料・利用料の負担増とならないよう、国庫負担割合の引き上げ、保険料・利用料の減免に同時に取り組みます。

介護職の常勤化、人員配置基準の改善をすすめる……歴代政権の介護報酬抑制路線のもと、多くの事業所は経営難に苦しみ、介護分野は低賃金の非正規労働が主流となっています。介護報酬を引き上げながら、事業所の雇用管理や法令順守を図り、正規化・常勤化の流れをつくります。サービス残業の根絶、長時間労働の是正をすすめます。

 高齢者の尊厳を大切にした介護を行うためにも、介護職の人員配置基準を改善し、介護報酬で評価することが必要です。現在は利用者3人につき職員1人(3対1)となっている特養ホームや老健施設の職員配置基準を、実態にふさわしい「原則2対1」に引き上げる、24時間・365時間の介護体制を確立するため、夜間の訪問介護を職員が安心して働ける「2人体制」にするなど、改善をすすめます。

 介護保険導入前にいくつかの自治体で実施されていた、施設や事業所の職員確保、人員配置に対する公的助成制度をつくり、労働環境の改善を支援することも重要です。

介護職の地位向上に逆行する改悪に反対……介護現場の深刻な人手不足を受け、安倍政権も「介護人材の確保」を言いだしましたが、その主な内容は、規制緩和によって無資格者や外国人を登用するなど“安上がりな労働力”をかき集めようというものです。

 安倍政権は、「一億総活躍プラン」で「経済連携協定(EPA)に基づく専門的介護人材の活用を着実に進める」と宣言し、「外国人技能実習制度」の対象に介護分野を加える出入国管理及び難民認定法改定を成立させました。介護は、高度な専門性を要する知的労働であり、利用者とのきめ細かなコミュニケーションを抜きに適確なサービスは提供できません。介護の質を二の次にし、安い労働力への置き換えをねらった“外国人への開放”は、国民の願いに逆行し、介護職の低賃金、労働条件の悪化に拍車をかけるものです。

 また、安倍政権は、介護の質と介護職の社会的地位を向上させるため、2007年の法改定で決められた介護福祉士の資格取得方式の「一元化」(すべての養成ルートにおける国家試験の義務化)を累次にわたる法改定で“棚上げ”にし続けています。その背景に、社会保障予算の抑制のために、介護職の賃金・待遇を“安上がり”にとどめようという意図があることは明瞭です。

 介護労働の専門性の確保、介護職の社会的地位の向上、それを正当に評価する処遇改善がはかられてこそ、介護分野への入職意欲も高まり、人材確保も前進します。

 日本共産党は、介護の質を担保する規制を弱め、介護職の低賃金や劣悪な労働条件を放置しながら“安上がりな労働力”に置き換えていく、あらゆる改悪に反対します。介護の質を高め、介護職の技能と社会的地位を向上させるため、資格取得「一元化」の早期実施、研修事業の充実と機会保障、介護職のキャリアアップに向けた職員・事業所への支援をすすめます。

介護職による医療行為の代替は見直しを……たん吸引、経管栄養など医療行為が介護職の業務として解禁されました。政府の意図は、本来、医療従事者が行うべき業務を介護職に担わせることで給付費の抑制を図ることにあります。現場からは、患者の安全や介護職の不安・負担などを指摘する声が引き続き出されています。再検討・見直しを求めます。

 

〔現行制度の不合理をただし、介護保険・介護報酬の改善をすすめます〕

 ヘルパーの生活援助の時間短縮、「7時間以下」のデイサービスへの報酬削減、特養ホームの「多床室」やベッドの回転が遅い老健施設に対する報酬削減など、この間、繰り返されてきた、サービス利用制限のための報酬改悪を見直します。

 安倍政権が検討するケアプランの有料化に反対します。高齢者の身近な相談相手・専門家としてケアマネジャーの育成をすすめ、介護報酬での評価や研修の保障などを行います。

 介護報酬の制限などにより、介護施設では医療が十分に提供できず、医療を多く必要とする高齢者が特養ホームやショートステイなどを利用できない事態が問題となっています。介護施設でも、医療行為については医療保険の適用を認めるなど、どこでも必要な医療と介護が受けられるように改善します。介護従事者が医療制度にかかわる知識を持つための研修や、高齢者の退院時におけるケアマネジャーの相談などを介護報酬で評価し、医療・介護の円滑な連携を推進します。

 いわゆる「院内介助」の規制が、自費サービスなどを生み、高齢者の医療を受ける機会を阻害しています。医療機関内での介助は「院内のスタッフにより対応されるべき」という国の通知を撤回させ、必要ならば、利用者の受診時に介護職が医師の指示を一緒に聴くことなどを含め、要介護者の通院介助を保障するようにあらためます。

 現行の地域計数と人件費率をかけあわせる介護報酬の算出式は、とりわけ、大都市部の物価や賃金水準からかけ離れたものになっており、地域の物価や賃金水準を反映した介護報酬にあらため、中山間地でも大都市部でも安心して介護が提供できるようにします。

 「コムスン事件」のような“儲け本位”の営利企業による不正の発覚、廃業が相次ぎ、そのたびに利用者が犠牲となっています。問題が起きた後に事業者を処分するだけの「事後規制」の仕組みをあらため、適切な介護を提供できるかを事前に審査する「事前規制」へと、参入規制の在り方を転換します。

 グループホームでの火災事件などを受け、すべての高齢者施設にスプリンクラーなどの初期消火設備や、自動火災報知装置の設置が義務づけられました。これらを実効ある措置とするため、国の補助を抜本的に拡充します。「そもそも火事を起こさない」「緊急時には入所者をすみやかに避難させられる」など、高齢者施設の安全確保に向け、夜間の職員配置の改善などをすすめます。

 利用者と介護事業者に手間と困難を押しつけ、介護現場の矛盾を広げる、マイナンバーの使用の押しつけに断固反対します。

 各分野の政策 13、「マイナンバー」参照

 

〔貧困・病気・孤立など高齢者の困難を解決する福祉・医療体制を構築します〕

  「介護の危機」を打開するには、介護保険制度の改善にとどまらず、さまざまな制度・施策を総動員することが必要です。

 政府・厚労省はこの間、「身近な地域で、住まいを基本に、医療や介護、生活支援サービス、介護予防が切れ目なく提供される体制」をめざす、「地域包括ケア」の構想をかかげ、介護・医療・福祉などの制度改変をすすめています。しかし、その看板のもとで安倍政権が提出した「医療・介護総合法」「地域包括ケア強化法」は、社会保障費抑制のため、公的介護給付の対象を限定し、病院や介護施設をできる限り使わせず、提供するサービスを“安上がり”なものに置きかえる改悪法でしかありませんでした。

 給付費削減を前提にした「連携」「再編」では、介護をめぐる危機的状況は解決されず、逆に、矛盾が深まるだけです。2025年の高齢化のピークに備えるというなら、医療・介護は「自然増削減」ではなく、抜本的拡充が必要です。

 日本共産党は、介護・福祉・医療の拡充と連携を国の責任で推進し、地域全体で高齢者を支えられる体制づくりをすすめます。

自治体の高齢者福祉(措置福祉)を立て直す……虐待、貧困、社会的孤立など「処遇困難」の高齢者の救済は本来、老人福祉法にもとづく自治体の仕事ですが、介護保険導入後、多くの自治体で福祉事務所や保健所が担っていた高齢者福祉は縮小され、“介護保険任せ”にされてきました。福祉職員の削減、保健所の統廃合、養護老人ホーム運営費の一般財源化など、国の制度改変もそれに拍車をかけています。

 貧困が日本社会を覆い、生活・病気・家族関係など複雑な問題をかかえた高齢者が急増するなか、自治体の「措置控え」がメディアでも問題視され、厚労省も「指導」せざるを得ない状況となっています。今こそ自治体の福祉・保健・公衆衛生の再生が必要です。

 自治体の福祉職を増員し、介護保険や民間では対応しきれない困難をかかえた人を自治体が直接救済して、支援や介護を提供する体制を再構築します。地域の高齢者の実情をつかむ拠点として、地域包括支援センターを老人福祉法に位置づけ直し、国の責任で人員・体制の構築を図ります。“立ち枯れ状態”になっている各地の養護老人ホームに財政支援をおこない、機能を回復・拡充させます。

高齢者の「住まいの人権」を保障する……日常生活は自立しているが体調に不安がある高齢者を低廉な費用で住まわせる「軽費老人ホーム(ケアハウス)」の増設、低所得者・高齢者・障害者などが住み慣れた町でくらせるよう、国と自治体の責任で住宅整備・家賃補助を実施する「地域優良賃貸住宅」の拡充など、“孤立高齢者”“漂流高齢者”をつくらない施策を推進します。

 公的保障の“肩代わり”ではなく、地域福祉の本来の役割発揮を応援する……「独居老人」や「老老介護世帯」が急増するなか、ボランティアや民生委員による訪問活動、自治会による行事や交流、社会福祉協議会による様々な支援活動が、高齢者に張りあいを与え、孤立を防ぐ貴重な役割を果たしています。

 安倍政権は「医療・介護総合法」で、要支援者への介護サービスに代わる“代替サービス”をこれらの多様な実施主体に任せることにしました。しかし、地域の高齢者を支えるボランティアやNPO、民生委員や自治会、社会福祉協議会などは、慢性的な予算・人手の不足、担い手の高齢化、後継者の不在などに悩まされており、過重負担の押しつけは新たな疲弊の要因となりかねません。実際、一部の自治体では、老人会が要支援者サービスを担うことに伴い、行政から、これまで取り組んできた年中行事に予算や人手が割けないようになるなどの“本末転倒”が起こっています。国・自治体の公的保障への責任を後退させ、それを住民の自主的活動に転嫁するやり方は、利用者の願いにそむき、福祉の現場に混乱と矛盾をもたらすだけです。

 日本共産党は、地域の高齢者を支える自主的組織に対する、要支援者サービスの“肩代わり”の押しつけをやめさせ、多様な実施主体の本来の役割発揮を応援します。これらの取り組みを、地域のコミュニティを支える社会的資源と位置づけ、連携の促進、財政的な支援、後継者づくりへの協力などを推進します。

医療・介護の連携をすすめる……「介護難民」増大の引き金となっている、病床削減・「患者追い出し」政策を中止し、すべての患者に必要な医療・介護を保障する体制を確立します。介護保険と医療保険の“併給禁止”のルールが現実にあわず、必要なケアが受けられない問題などの改善をすすめます。

 2006年の「医療改革法」で廃止が決められ、実施が「延期」され続けてきた介護型療養病床は、2017年の「地域包括ケア強化法」で、「介護医療院」に改編されることが決まりました(2018年3月末で廃止、経過期間6年)。現行の介護型療養病床を、▽介護型相当(利用者48人に医師1人)、▽「老人福祉施設相当」(利用者100人に医師1人以上)に区分し直し、医療機関に併設した“医療を外から宅配するタイプ”の施設も認めていくとしています。現場からは、人員配置やサービス基準の緩和で、介護・医療の質が低下することや、新たな施設が“病床削減の受け皿”になりかねないことへの、懸念・不安が出されています。サービスの切り下げを許さず、医療的ケアを必要とする要介護者の“受け皿”としての機能・役割をまもることを求めます。

 在宅医療を担う診療所や訪問看護に対する報酬を改善し、在宅生活を支える拠点として公的支援を強めます。

 政府が鳴り物入りで導入しながら、多くの自治体で整備が滞っている24時間体制の「定期巡回・随時対応訪問介護看護サービス」の普及にむけ、報酬の改善や人員体制への支援を行います。

認知症対策を促進する……いまや認知症の高齢者は462万人とされ、軽度認知障害のある人も400万人いると推計されています(2012年時点・厚労省調査)。高齢者の3~4人に1人は認知症か、軽度認知障害という状況です。ところが、現行の介護保険では利用できるサービスに限度があり、“認知症のお世話はもっぱら家族任せ”という高齢者が膨大な数にのぼっています。

 徘徊症状のある認知症の男性(愛知県在住)が電車にはねられて死亡し、JR東海が、「監督が不十分」と遺族を訴えた訴訟については、最高裁判所でJR東海側の訴えを退ける判決が確定しましたが、認知症の高齢者を支える家族が、同様の状況に追い込まれる危険は、依然として解消されていません。

 認知症の高齢者に対応する公的介護サービス・介護基盤を抜本的に拡充するとともに、認知症の早期の発見・診断、初期の相談と家族への支援から、終末期のケア・看取りまで、切れ目なく治療と支援を行う、医療・保健・福祉の連携体制の構築をすすめます。

 2012年9月、厚労省が、認知症の初期対応の重要性を強調する「認知症施策推進5ケ年計画(オレンジプラン)」を発表したことが、関係者から歓迎されています。その一方で、同プランが、精神科病院に入院している5万2000人の認知症の人を「できる限り短い期間での退院をめざす」と強調し、「ある月に入院した人」の50%を退院させる目標期間を、現在の「6ケ月」から「2ケ月」に短縮したことに、「受け皿もないままの追い出しになるのではないか」という不安、疑問が広がっています。

 給付費削減のための「追い出し」ではなく、安価に利用できるグループホームや介護施設の計画的増設など、認知症の人が地域でくらせる基盤の緊急整備をすすめながら、在宅復帰をすすめていきます。

認知症対策に真っ向から反する、“要支援者切り”“軽度者切り”“介護とりあげ”の制度改悪に反対します。

 

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