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日本共産党

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赤旗

2017総選挙/各分野の政策

10、年金―無年金・低年金の解決、年金積立金の運用、最低保障年金、「消えた年金」、「一元化」・「積立金方式」

年金削減をストップし、無年金・低年金の解決に足を踏みだして、今も将来も信頼できる年金制度を確立します

2017年10月


安倍政権の“際限なき年金削減”に反対します

 安倍内閣は、発足以来、▽「特例水準の解消」(過去の物価下落時のスライド停止分を取り戻す)の名による年金の2・5%削減、▽「マクロ経済スライド」の初めての発動による年金の0・9%の引き下げ、▽物価・賃金の低迷を理由にした年金のマイナス改定など、年金支給の削減を繰り返してきました。その結果、この5年間で、年金の支給水準は、物価指標の▲4・7%という大幅な目減りとなっています。

 消費税増税と「アベノミクス」で物価をつり上げながら、年金は減らし続ける、悪政のなかで、高齢者・国民の家計は激しく痛めつけられ、それが消費不振や地域経済の落ち込みの原因となるなど、社会全体に深刻な影響が出ています。

安倍政権の年金削減は、これで終わりではありません。

 安倍政権が2016年の臨時国会で強行可決した「年金カット法」により、ふたつの新しい年金削減の仕組みが導入されようとしています。

 第一が、現行の、物価の上昇率と、現役世代の賃金変動率(名目手取り賃金上昇率)にもとづくスライド制を改悪し、賃金指標がマイナスになった場合は、ひたすら“低い方”にあわせて年金を削り続ける「賃金マイナススライド」です(2021年度施行)。

 第二が、物価や賃金が上がらず、各年度の「マクロ経済スライド」で“削り残し”が出た場合、その分を翌年度以降に繰り越し、物価・賃金が上がる年度にまとめて年金を目減りさせる、「キャリーオーバー」です(2018年度施行)。

 安倍首相は、2019年に消費税率10%への引き上げを行うことを、この総選挙で公約していますが、消費税増税は、物価の上昇と実質賃金の低下をもたらし、「マクロ経済スライド」や「賃金マイナススライド」の発動に連動していきます。2019年に消費税増税が強行されれば、増税と「年金カット法」の仕組みが一体となり、2020年代、“物価は跳ね上がったのに、年金は大幅削減”という「悪夢」が起こりうることが、日本共産党議員の国会論戦で明らかとなっています。

 また、安倍内閣は、現在、65歳となっている年金の支給開始年齢を「67歳」「68歳」「70歳以上」などに引き上げていくことを「検討」し、所得が一定額を超える人の年金を「一部支給停止」にする法案や、年金課税を強化し、新たな高齢者増税を行なう法案などを、今後、国会に提出していくことを閣議で確認しています。

 まさに、“際限なき年金削減”です。

 日本共産党は、あらゆる年金削減に反対し、「年金カット法」の発動中止を求め、安倍政権の年金切り捨ての大暴走を阻止するため力を尽くします。支給開始年齢の先延ばし、年金の「一部支給停止」など、安倍政権が「検討」する年金改悪の阻止に全力をあげます。

 

年金制度の2段階の改革で、今も将来も安心できる年金制度を実現します

 日本の年金制度の最大の問題は、低年金・無年金者が膨大な数にのぼることです。

 現在、基礎年金の満額は月6・5万円、国民年金のみを受給する人の平均受給額は、月5・1万円です。厚生年金も、女性の平均受給額は、基礎年金分も含めて、月10・2万円という水準に過ぎません。

 “年金ゼロ”の無年金者は、現在、政府の推計で26万人、現役世代の低賃金と雇用破壊が深刻化するなか、将来さらに膨大な無年金者が生まれかねないことへの懸念が広がっています。政府は、今年10月から、これまで「25年」とされていた、年金の受給資格を得るための保険料支払期間(受給資格期間)を「10年」に短縮し、これまで無年金だった64万人に、新たに年金を支給します。これ自体は、長年、国民が要望し、日本共産党も提案してきた、重要な制度改善ですが、たとえば、国民年金の保険料を10年納付してきた人の受けとる年金が月1・6万円に過ぎないなど、「ようやく無年金を脱しても、年金の支給は超低額で、貧困の打開にはほど遠い」というのが多くの受給者の実情です。そうした超低額の年金まで、「マクロ経済スライド」や「賃金マイナススライド」によって削っていくというのが、安倍政権の方針です。

 国民の家計を立て直し、将来不安を解消して、経済の好循環を取り戻すには、“際限なき年金削減”にストップをかけるとともに、年金の増額・充実を図ることが必要です。

 日本共産党は、年金削減政策を中止し、低額年金を底上げして「減らない年金、頼れる年金」への転換をすすめます。最低保障年金の導入による、無年金・低額年金問題の根本的解決をめざします。

<日本共産党の2段階の年金改革案>

 第1段階として「減らない年金」を実現し、低額年金の底上げを図ります。

 「マクロ経済スライド」の発動や「キャリーオーバー」の導入をやめさせ、この仕組みを撤廃します。物価・賃金にもとづくスライド制度についても、「賃金マイナススライド」の導入を中止し、年金引き下げにつながる、仕組みを全面的に見直して、「減らない年金制度」へと転換していきます。

 あわせて、低年金の重点的な底上げを行います。現行の基礎年金は、受給額の2分の1を国が税財源で負担する仕組みとなっています。この仕組みを拡充し、受給者全員に定額(基礎年金満額の2分の1)の税財源を投入する仕組みにあらためます。これが実現すれば、現在、月4万円の年金を受給している人は、受給額が月5・3万円に増額されます。

 改革の第2段階で、全額国庫負担による最低保障年金制度の確立に進みます。第1段階の低年金の底上げを発展させ、保険料納付にかかわらず月5万円の最低保障額を設定し、その上に、支払った保険料に応じた給付を上乗せする制度をスタートさせます。これにより、国民年金で40年間、保険料を納めた人は、月8・3万円の年金を受給できるようになり、厚生年金も、給付水準の低い人から底上げがされていきます。

 公的年金制度のなかに、最低保障の仕組みがないのは、先進国では日本だけです。国連の社会権規約委員会からも、「最低年金を公的年金制度に導入すること」がたびたび勧告されています。最低保障年金の導入に足を踏みだせば、低年金・無年金の増大、年金制度の「空洞化」、サラリーマン世帯の専業主婦の「第3号被保険者問題」など、今日の年金制度が抱えるさまざまな矛盾を抜本的に解決する道が開けます。

 これらの改革に必要な財源は、消費税増税と別の道――①「応能負担の原則」に立った税制の改革、②国民の所得を増やし、日本経済を成長軌道に乗せる経済の改革――によって確保します。

 税制の改革では、富裕層・大企業への優遇税制をただして応分の負担を求めるとともに、最低保障年金の導入にむけ、所得税の累進課税の強化など、応能負担の原則にのっとった改革を段階的にすすめていきます。

経済の改革で、非正規雇用を正規に転換し、賃上げや中小企業支援、農林水産業の再生をすすめることは、年金保険料の未納者・滞納事業所を減らし、年金財政の支え手を増やす決め手にもなります。「少子化」問題の克服は、安定した年金制度を確立するうえでも重要です。

 年金制度を2段階で充実させる改革、その財源を確保する税制の改革、「ルールある経済社会」に転換する経済の改革により、今も将来も信頼できる年金を実現していきます。

 

年金積立金の株式運用反対―過大な積立金は計画的に取り崩して給付保障に

 「アベノミクス」の名で株価つり上げに狂奔する安倍内閣のもと、2014年10月、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、運用の基本となる「資産構成(ポートフォリオ)」を変更し、それまで12%(±6%)とされていた国内株式の比率を25%(±9%)へと大幅に引き上げました。

 これまでも、年金積立金の一部は株式運用され、「実体上、PKO(株価維持策)に使われている」と批判されてきましたが、歴代政権は曲がりなりにも“年金積立金は安定運用が原則”と説明し、株式運用の比率を抑制していました。ところが、安倍首相は、ロンドンの金融街で外国投資家に“日本株買い”を呼びかけながら「年金資金の改革」を宣言するなど、年金積立金を株価つり上げに使うことを公然と宣言し、年金積立金の株式市場への投入枠を一気に20兆円分も拡大したのです。

 年金積立金の原資は国民が払った保険料です。その目的は、老後の年金を保障することにあり、安定運用が当然の原則です。高リスクの株式運用で損失が出れば、そのつけは、年金削減や保険料引き上げとなって国民に押し付けられます。

 公的資金投入による株価吊り上げは、市場をゆがめ、株価の乱高下を招きます。そうなれば一般投資家は損をし、各企業で働く労働者も苦しむ一方、ヘッジファンドなどの投機筋、銀行・証券会社は巨額の利益を得ることになります。そうした重大な問題があるからこそ、金融大国の米国ですら、公的年金の積立金で株を買うことはしていません。

 この間、日本共産党議員の追及で、GPIFの「ポートフォリオ変更」後、GPIFから委託を受けた信託銀行が、「海外投資家が日本株を売り越す局面で、大量に日本株を買い越す」など、海外投資家と真逆の動きを続けていることが明らかになりました。海外投資家が株を売り越し、株価が下がっている局面で、年金積立金が「買い支え」をしていることを示すものです。こうした動きは、年金積立金が“株価つり上げの道具”とされていることを事実で証明しています。

 国民には「年金財政が苦しい」といって支給削減や保険料引き上げを押しつけながら、その年金の積立金を、金融業界や大企業の利権拡大のために大量投入するなど本末転倒です。日本共産党は、年金積立金の株式運用の拡大に反対し、高リスクの投機的運用をやめさせます。

 ヨーロッパ諸国では、公的年金の積立金は、給付費の数カ月分しか用意されていません。国民年金・厚生年金あわせて約150兆円――給付費の3年分という日本の“貯めこみ”は異常です。この巨額の積立金についてはこれまでも、グリーンピア(大規模年金保養基地)に代表される浪費型事業、厚労官僚の事務費や接待費、「天下り」法人に対する不透明支出などに「流用」され、国民の年金不信を高める一因となってきました。

 日本共産党は、利権と腐敗の温床ともなっている過大な年金積立金を計画的に取り崩し、報酬比例(2階部分)の給付水準を維持するために活用していきます。

 厚労官僚の「天下り」を根絶し、事務費などへの年金保険料の流用をやめさせます。

 

「消えた年金・消された年金」問題を、一人たりとも被害者を残さないよう、一日も早く、国の責任で解決し、年金行政の在り方を転換します

 5000万件を超える未解明の年金記録の発覚(2007年)に端を発した「消えた年金」問題は、引き続き、約2000万件の記録が解明できない状態が続いています。

 「消えた年金・消された年金」問題は、国が引き起こした問題であり、被害者には何の責任もありません。日本共産党は、“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、国が解決に責任を果たすことを求めます。

 年金記録が消えたり、消されたりしていないかどうか、一人ひとりの受給者・加入者にわかるよう、国が管理・保有している情報をきちんと提供するとともに、相談・問い合わせ、記録の照会・訂正、未払い分の支払いのスピードアップなどに対応できるよう、体制の抜本的強化を図ります。

この問題に対する国の責任放棄や“幕引き”を許さず、「分限免職」した職員の再雇用をはじめ、問題解決の体制をとり、解決に責任を持つことを求めます。

 「消えた年金」の発覚を契機に、記録の不備や行政側のミスで、年金が支払われていなかったケースが、本人や遺族の申立により、次々と発覚しています。今年9月には、情報システムの不備や事務処理のミスにより、1991年以後、元公務員の妻など約10万人に、総額598億円の「振替加算」が未払いだった事実も明らかとなりました。

 「消えた年金・消された年金」「年金の未払い・不払い」の大本には、国民の年金受給権をまもることには無関心で、保険料徴収と納入率アップのみを至上命令にするという、年金行政の大きなゆがみがあります。年金・社会保障は国民の権利であり、行政は国民の権利を守るために仕事をするという基本原則を、行政機関の上から下まで徹底することが必要です。この立場で、年金行政の抜本改革を進めます。

 

パート、派遣、契約社員など非正規雇用で働く人たちの厚生年金加入の権利を保障します

 厚生年金など社会保険に加入することは、本来、非正規雇用も含めた労働者の権利です。法人又は従業員数が常時5人以上の事業所は、正社員の4分の3以上の時間を働く労働者をすべて厚生年金に加入させる義務を負っています。ところが、この義務を果たしていない事業所が少なくありません。派遣社員も、派遣元企業に社会保険加入の義務が課されていますが、責任逃れや違法行為が蔓延しています。

 2012年の法改定で、①従業員数501人以上の企業、②週の所定労働時間20時間以上、③月額賃金8・8万円以上、④雇用期間1年以上という要件を満たす人は、厚生年金の対象とされました。さらに、2016年の法改定で、従業員数500人以下の事業所も、労使合意によって、上記②③④の要件を満たす人の、厚生年金加入が可能とされました。こうした改善措置を実効あるものとするためにも、低賃金や重い保険料負担の解決、雇主の違法・脱法行為の是正、低すぎる給付の引き上げなどが必要です。

 日本共産党は、経営が苦しい中小企業については社会保険料の軽減制度などをもうけて支援を行うと同時に、違法・脱法行為をなくし、非正規雇用で働く人たちの社会保険加入・厚生年金加入の権利をまもります。この問題を解決するためにも、年金制度充実の2段階の改革と、人間らしい雇用と賃金を確立する民主的経済改革に取り組みます。

 

公的年金等控除改悪など“高齢者増税”を阻止し、「天引き」をやめさせる

 安倍政権が2015年12月に閣議了解した「社会保障改革」の「工程表」には、公的年金等控除のさらなる縮小など、“新たな高齢者増税”を税制調査会で議論するという方針が明記されています。

かつて、小泉政権が強行した「高齢者増税」――公的年金等控除の縮小や老年者控除の廃止は、低所得の高齢者に増税を強いるとともに、国保料(税)・介護保険料など他制度の保険料や自己負担に波及して、“雪だるま式”の大負担増を引き起こしました。

 「下流老人」「老後破産」などの言葉がメディアの話題となることにしめされるように、いま高齢者の貧困が重大な社会問題となっています。高齢者には増税・負担増の追い打ちでなく、負担軽減こそ必要です。日本共産党は、65歳以上の公的年金等控除の最低保障額を140万円に戻すとともに、所得500万円以下の高齢者について老年者控除を復活します。

 介護保険料や住民税の年金「天引き」の強制をやめさせ、各人の希望で、普通徴収などに変更できるようにします。

 

「一元化」「積立金方式」を看板にした制度改悪に反対します

 2012年の法改定で、厚生年金と共済年金は「一元化」されましたが、厚生年金の給付や保険料負担は改善せず、共済年金受給者の一部が大幅な年金減額となっただけで、メリットは何もありませんでした。社会保障費削減路線の枠内で、保険者組織を統廃合するだけでは、“保険料は高い方に、給付は低い方に”という改悪が進むだけで、国民が願っている「公平な年金制度」はつくれません。

 厚生・共済年金の「一元化」によって生じた、受給者の不利益や矛盾の解決を図ります。年金制度間の格差をなくす、もっとも現実的な方法は、国民年金や厚生年金の低い部分の引き上げ、全体として格差を縮小していくことです。日本共産党が提案する低額年金の重点的な底上げと最低保障年金の導入は、この点でも有効な打開策となりえます。

 この間、財界の一部や日本維新の会などの勢力から、年金財政の「積立方式への移行」が叫ばれています。その中身は、公的年金を、民間保険会社の年金保険と基本的に同じ仕組みにするというものです。これが導入されれば、国民が受け取る年金は「自分で積み立てた金額+運用益」にとどめられ、いまでも“貧しい”年金給付はいっそう貧しくなっていきます。その一方、年金制度への国庫負担や企業の保険料負担は、縮小・廃止されていくことになります。

 有権者のなかに「積立金方式」への期待の声が出る背景には、“どうせ将来、まともな年金など受け取れない”“年金の保険料が官僚の食い物にされている”など、年金制度に対する強い不信があります。こうした不信を払拭するためにも、▽低額年金の底上げ、最低保障年金の導入で「頼れる年金」を実現する、▽「天下り」の根絶や投機的運用の中止で年金積立金を透明化し、計画的に取り崩して給付に充てる――という、本当の年金改革に取り組みます。正規雇用への転換、賃金の引き上げ、中小企業への支援強化など、現役世代の所得を増やす経済改革を実行し、“将来、年金を受け取れない若者”をなくしていきます。

 日本共産党は、「一元化」「積立方式化」などの名で年金支給を削減し公的年金への国の責任を後退させる制度改悪に反対します。年金制度の再建・拡充、経済の民主的改革を行ってこそ、安心できる老後保障を実現できるというのが、日本共産党の考えです。

 

 社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる共通番号(マイナンバー)の中止を求めます

 各分野の政策 13、「マイナンバー」参照

 

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