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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

62、図書館政策

──図書館サービスの後退、「委託」を許さず、身近に使いやすい図書館を

2016年6月


はじめに

 図書館は、皆さんの読書、知りたい、調べたい、を保障することが役割です。生活、生業、学業のためには、資料、情報は欠かせません。図書館は「生存権の文化的側面である学習権を保障する機関」です。

 その図書館には必要な資料や情報を確実に提供できる仕組みがあり、それを活かす豊かな経験をもつ司書がいます。さらに、資料・情報を自ら適切に選択できるよう皆さんに協力、支援する役割を果たします。

 日本の図書館は「無料利用原則」が60年以上にわたって貫徹しているなど優れた制度をもっています。利用は大きく進展し、最も利用者の多い公共施設のひとつとなっています。

 ところが自公政権は、司書を削減し、資料費も激減させる政策を続けています。その結果、利用が減ることが続く、といった前代未聞の事態を招いています。その改善を求める声が広がっていますが、安倍政権はそれに応えるどころか、さらに図書館を疲弊させ、困難にさせる政策・方針を明らかにしています。図書館を削減するとともに、その運営を民間企業に委ねる指定管理の図書館を拡大させようとしているのです。

 このたびの参議院選挙に際して、図書館振興の基本となる政策を明らかにし、その実現を図るために奮闘します。

1 図書館サービスの後退、変質を招く指定管理者制度導入と、その促進を図る政府の施策の実施に反対します。

 指定管理者制度とは、図書館の管理運営を民間企業に「丸投げ」するものです。司書の専門性の蓄積、長期にわたるコレクション形成、読書の自由の保障などが危うくなります。雑 誌・文具の販売、喫茶などのスペースをかなり取り、図書館を営業活動の場とする動きもみられます。これでは、求められた資料、情報の確実な提供という図書館サービスの基本から外れたことを進めることになってしまいます。図書館に指定管理者制度を適用することはサービスの後退、変質を招くものであり、その充実の妨げになり不適切です。

 総務省は昨年8月「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項について」と題した通知を全国の自治体に出しました。自治体が実施している行政サービス全般にわたって、民間委託を進める内容となっていますが、図書館については指定管理者制度を導入することを強いています。それを具体化するために、地方交付税の図書館経費については直営ではなく、指定管理者制度を前提として積算することを明らかにしています。総務省が進めている「公共施設等総合管理計画」、国土交通省の「コンパクトシティ」構想は、いずれも図書館については「民間活力活用」など、指定管理者制度導入推進につながる計画策定を求めています。

 これらの政府の政策は、これまで自治体と利用者の皆さんが築きあげてきた図書館事業を後退させるものであり、つよく反対します。自治体においては、政府の政策をよりどころとすることなく自立して図書館充実の施策を進めるよう求めるものです。

2 身近な生活圏域に公立図書館を整備させます。

 増えてきた日本の図書館ですが、最近は新館設置の減少、廃館の増加が目立っています。そのおおもとのひとつに総務省の「公共施設等総合管理計画」があります。公共施設削減が基調となっている施策です。日常生活で利用される図書館は広い自治体に1館あればよいものではありません。身近な生活圏域にある必要があります。そのことは、とりわけ子どもや高齢者、障がいのある人たちにとって重要です。

 人口比でみると日本の図書館数は、世界の最低クラスです。伊勢志摩サミットに参加したG7各国は10万人あたり平均5.5館ありますが、日本は2.5館と最低です。いわゆる「平成の大合併」を経た今日でも、公立図書館のない市町村が4分の1も残されています。政令指定都市でも、広い行政区に図書館が一つしかないところが多数であり、まったくない行政区もあります。

 図書館未設置の市町村をなくすことを急ぐとともに、中学校区単位での設置を目標とするなど生活圏域に根ざした図書館設置をすすめます。そのために「公共施設等総合管理計画」による図書館削減に反対し、図書館法に基づく図書館整備の国庫補助金事業の復活、過疎地域自立促進特別措置法や離島振興法などに基づく財源措置の拡充などを求めます。

3 専任の司書、司書資格のある館長の配置を求めます。

 図書館サービスは図書館職員によって支えられています。司書が図書館業務に専念できる体制、豊かな経験を蓄積できることが図書館サービス充実の要諦です。皆さんの調べたい、知りたいことについて的確に捉え、資料、情報を提供するなどのお手伝いをすること、資料相談、レファレンスサービスはますます求められています。

 図書などをそのままでは利用できないなど障がいをもつ人たちの読書、情報アクセス権を保障することは図書館の大事な役割です。司書は、その人にあった方法を考えサービスをしています。図書館員には多様なスキルが求められているのです。

 しかし正規雇用の図書館員は図書館員の3分の1に過ぎず、そのうち司書有資格者は半分です。司書資格を要件として採用することは稀になり、定期的な人事異動を基本とする地方公務員の人事管理方針により、経験豊かな図書館員が極めて少なくなっている状況が続いています。図書館サービスの進展拡充を図ることが極めて困難な職員体制となっているのです。図書館法の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を、司書配置をより明確にするよう改正するとともに、その裏付けとなる財政上の措置をおこない、司書の増員・正規化をすすめます。

 図書館長は、図書館事業を長期的視野に立ってすすめる責任者であり、地域の読書環境整備に中心的役割を果たすべき職です。司書資格をもつ館長を配置することを原則とし、その業務にふさわしく、安定的継続的に業務に専念できるようにします。

4 図書館で働く非正規雇用職員の雇用安定、労働条件の抜本的改善を図り、専門性が蓄積される雇用を支援します。

 自治体の「経費削減」の掛け声とともに、図書館職員は次々と非正規雇用に替えられ、非常勤・臨時雇用の職員や委託事業者、指定管理者から図書館現場に派遣されている職員は図書館員全体の3分の2を越えています。司書資格をもち図書館の根幹的業務を担うなど重要な役割を果たしていながら、低賃金で、雇用継続の保証もないなど、その労働条件はたいへん劣悪です。このことは図書館事業の質の向上のうえでも看過できません。

 非正規雇用の図書館員が人間らしく安心して働けるように、国・自治体に労働法令を守らせるとともに、公契約法・条例を制定し、図書館で働く非正規雇用職員の待遇を抜本的に改善します。

5 資料費の増額を図ります。

 図書館の資料費が年々減り続けていることは深刻です。利用が減っている要因のひとつです。印刷部数の少ない図書や短期間で廃棄されてしまう雑誌を購入、保存し、後の利用者にも供することは出版文化の進展にもかかわる図書館の重要な役割です。

 各自治体で資料費増額をすすめるとともに、それを支えるため、国の地方交付税交付金の資料費措置額を明確にし、増額をすすめます。

 都道府県立図書館は、市町村の図書館が所蔵していない資料の提供ができるよう、少なくとも国内出版物のほとんどが購入収集できる規模の資料費増額を求めます。

6 図書館協議会の拡充を図ります。

 図書館は地域の拠点であり、その運営に地域住民が参加することは図書館の活性化にもつながります。図書館法に規定されている図書館協議会の設置は6割程度に過ぎません。すべての図書館に設置するよう求めます。市町村の図書館協議会経費の地方交付税措置について今年度から実現することになりました。長年にわたる運動の成果であり、それを確実に活かすようにします。

7 読書の自由、図書館の自由を守る図書館を求めます。

 読書の自由は人間の精神的自由のひとつとして尊重、守られるべきことです。

 資料収集の自由、資料提供の自由、利用者の秘密を守る、すべての検閲に反対する、図書館の自由が侵されるとき団結してあくまで自由を守る、という「図書館の自由に関する宣言」は、人々の読書の自由を守るうえでも重要なものであり、これを基調とした図書館運営を求めます。

 特定の資料を排除したり、図書館が教育機関として自立して判断した資料選定に対して、当局や外部から干渉する動きは絶えません。どのような立場の出版物であっても提供することは図書館の重要な役割です。読書の自由、図書館の自由をおびやかすことに強く反対します。そのためにも、教育委員会を教育の自主性を守る住民自治の機関として確立し、政治的介入を許さないことを重視します。

8 図書館の連携協力を進める措置を求めます。

 求められた資料を確実に提供するためには、他の図書館との連携協力が不可欠です。とりわけ都道府県立図書館の役割は重要です。市町村の図書館が所蔵しない資料を収集し、求められたとき迅速に提供する仕組みは、図書館サービスの充実に合わせて進展してきました。しかし資料費の激減などを理由として、市町村の図書館から求められた資料の「貸し渋り」が見られるようになっています。都道府県内の図書館間の資料の相互貸借については、都道府県立図書館が協力の役割を果たすよう、地方交付税などの財政措置を求めます。

 利用者が求める資料は多様です。全国の図書館が所蔵する資料を国民的な財産として利用できるような仕組みがますます求められています。都道府県を越えた流通については政府が行うべき事業として、制度化を求めます。

 

 

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