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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

33、消費者

――食品安全、遺伝子組み換え、表示制度、悪徳商法対策、消費者団体

2016年6月


 「消費者の権利」を実現するために、消費者行政を抜本的に強化します

 食の安全、製品事故、不当契約や詐欺、偽装、個人情報の漏洩など、消費者の安心・安全を脅かす事件が後を絶ちません。消費者基本法は「消費者の権利」(「基本的な需要が満たされる権利」「健全な生活環境が確保される権利」「安全が確保される権利」「選択の機会が保障される権利」「必要な情報が提供される権利」「消費者教育の機会が提供される権利」「消費者の意見が消費者政策に生かされる権利」「被害者が適切かつ迅速に救済される権利」)を明記し、国に「消費者政策を推進する責務」を課しています。これらは、憲法で保障された基本的人権を消費者の分野で具体化したものです。

 しかし、「消費者の権利」は守られていません。国民生活センターへの消費者相談は2013年度以降増加に転じました。「危害・危険情報」も1万7000件にものぼっています(2014年度)。

 おおもとには、「市場への参入規制を取り払い、誰でも自由に市場に参入できるように」として進められてきた「規制緩和」路線があります。このもとで、「事前規制から事後チェック」の名で、国民の安全にかかわる規制までもが緩和されてきました。そもそも、「事後チェック」では、国民の生命や安全を守ることにはなりません。それさえも不十分なまま推移しています。さらに、「消費者重視」といいながら、「産業優先」の省庁からの骨抜きも繰り返されています。

 アベノミクスを標榜する安倍政権は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすとしてきました。そのために、消費者の安全・安心のための必要な規制さえ、「効率的な手法」で見直すとし、「一般医薬品のインターネット販売」や事業者の届出だけですまされる「機能性表示食品制度」が強行され、「医療関連業務における労働者派遣の拡大」「医薬品の承認期間の短縮」なども検討されています。

 重大なのは、TPP(環太平洋連携協定)の推進によって、関税の撤廃はもちろんのこと、食の安全、医療や保険をはじめ「非関税障壁」についても撤廃しようとしていることです。また、ISDS条項をはじめとした経済主権さえ放棄する政治を進めようとしています。すでに、BSE輸入規制を緩和し、アメリカの保険会社の営業利益を配慮してかんぽ生命の新規商品の販売中止を行っています。企業の「稼ぐ力」のために、消費者の安心・安全さえもないがしろにしようとするものです。

 いま求められているのは、こうした路線を転換して、「消費者の権利」をまもる立場に立って実効ある措置を講じることです。

 日本共産党は、企業や産業界から一円の献金をうけていません。アメリカにも堂々とものをいう政党です。消費者の安全・安心よりも、大企業やアメリカ業界のもうけを優先する政治を転換し、「消費者の権利」を実現します。

1、消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの地方移転に反対し、消費者行政を拡充させます

●消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの地方移転に反対し、中止を求めます。消費者・国民や消費者団体、専門家の意見に耳を傾けることなく一方的に移転することは許されません。消費者庁・消費者委員会・国民生活センターは、相互に連携しつつそれぞれ重要な役割があります。消費者庁は、消費者政策を企画・立案・推進し、利害が対立する他省庁、事業者団体などと調整・説得をする政府の「司令塔」です。消費者委員会は、消費者行政全般の監視、諮問事項への答申や建議をおこなう機関です。国民生活センターは、全国の消費生活相談を集約・分析・発信し、各省庁、事業者・団体に問題提起・要望し、ADRなども行っています。地方への移転がこうした機能を弱めてしまうことは明らかです。移転ではなく、抜本的拡充こそ必要です。そもそも地方活性化というのなら、中小業者や県民の懐をあたためるべきです。

●消費者にもっとも身近な地方の消費相談体制を強化する必要があります。そのためには、消費生活相談員の労働条件の改善は欠かせません。相談員は専門的知識が求められる仕事であるにもかかわらず、非常勤職員は77.4%にのぼります。労働条件を改善することは、消費者が「どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられる地域体制」をつくることになります。また、消費生活相談員の裾野の拡大と優秀な人材確保につながります。

 さらに、消費者行政の予算を拡充することが不可欠です。ところが地方の消費者行政予算(狭義)は、年々減らされています。その大きな原因が、国からの交付金がこの5年間で20億円以上削減されていることにあります。早急に元に戻すべきであり、消費者被害の実態、相談の増加にともなって、さらに増やしていくべきです。

2、食品の安全をないがしろにするTPP参加ストップ。食品安全行政の抜本的強化をはかります

●TPPに参加すれば、日本の農水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩します。食の安全のための規制も「非関税障壁」とされ、撤廃・削減されてしまいます。米国政府は、残留農薬や食品添加物などの規制緩和を要求し、輸入牛肉の規制見直し問題では、日本政府はさらに緩和しようとしています。

 食の安全をはじめ、暮らしと経済のあらゆる分野に「アメリカ型ルール」を押し付けるTPPに断固反対します。食料主権、経済主権を尊重した貿易ルールの確立をすすめます。

●福島原発事故を受けて、食品の放射能汚染にたいする不安が高まっています。行政として食品の安全検査を徹底しておこなうこと、生産者の検査への行政支援を強化すること、こうした情報の徹底開示を進めます。

 原発ではなく、再生可能エネルギーを選びたいとの願いを実現するために、電気小売事業の全面自由化において、電源構成の開示については努力規定ではなく、義務化すべきです。全面自由化後の電気料金、ガス料金、水道料金、鉄道料金、電話料金など公共料金については、その根拠となる情報の公開とともに、消費者委員会や消費者団体の関与によって、透明性や料金の適正性を確保します。

●輸入食品の検査体制について、人員の抜本的増員をはかるなど強化し、子ども・妊婦・病弱者への影響を最大限配慮した安全基準の設定、消費者へのすばやくてわかりやすい情報の提供など、食品衛生法を強化、改定します。

 食品安全委員会は「国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下に、食品の安全性の確保」をはかるために設置されました。しかし、BSE問題をはじめ政治的な圧力にたいして、独立性・中立性を確保しているとはいえません。現行の食品安全行政を、独立性・中立性のあるものとして国民の立場に立って機能させ、実効あるものとします。

●食品の表示は、消費者が商品やサービスを正確に知るための権利であり、とりわけ、食品の安全を求める権利、食品の内容を正確に知る権利、食品選択の自由の権利などを実現していく必要があります。食品の安全性が確保されるとともに、消費者に役立つ表示こそ重要です。

 機能性表示食品は、事業者の届出制ですまされるなど、安全性を確保する措置や担保がきわめて不十分です。また、特定保健用食品でも消費者に著しい誤解を招く広告がなされた例もあります。普通の消費者には、特定保健用食品も栄養機能食品も機能性表示食品も、その区別は分からず、「体にいいのではないか」と購入・飲食する場合が少なくありません。ですから、こうしたいわゆる健康食品は、一般の食品と比べてもより安全性が求められるとともに、その「効果」についても客観的に検証されるべきであり、消費者の誤解や過信を招くような表示や広告・宣伝は許されません。

3、消費者の生命・身体の安全を確保するための施策を強化します。悪徳商法や悪質な取引から消費者をまもります

●消費者被害や事故などの情報は、国民全体が共有できるようにしなければなりません。情報収集の強化とともに、情報開示を一段と進めます。

●欠陥製品による消費者被害は後を絶ちません。被害者の救済は不十分です。製造物責任法(PL法)を抜本的に改正し、企業責任を追及しやすくし、公正で迅速な被害者救済へと道を開く必要があります。欠陥や因果関係の推定規定の導入、企業側による立証責任、リコール隠しをするような悪質企業には懲罰的賠償を命じる、内部告発者の保護、消費者団体訴権の導入などの改善をおこないます。

●日常生活用品や遊具・建造物などの安全確保に努めます。日常の生活用品での死傷事故、エレベーター、エスカレーター、プール、ジェットコースターなどの設備による事故や建物の耐震強度の偽装などが相次いでいます。消費者庁の消費者安全調査委員会に事故情報が一元的に収集されるようになりましたが、原因調査の件数が少なすぎ、報告も遅いと批判されています。事故情報のさらなる収集、分析、公開のためには、体制の充実が必要です。事故分析の上に立って、行政と企業の責任による安全基準のいっそうの厳格化をはかります。

●政府が、商品先物取引法における不招請勧誘禁止規制を省令改正で緩和したことは、被害の実態からも、国際的な規制強化という流れに逆行していることからも許されません。直ちに、元に戻すべきです。事業者と消費者の間には、情報の質量や交渉力に差があります。そのため、消費者が求めてもいない不意打ち的な勧誘によって、不当・不正な契約を結ばされる被害も後を絶たず、悪質商法の温床ともなっています。悪質な電話勧誘や訪問販売をストップさせるためには、不招請勧誘の規制は有効です。

 同時に、クーリングオフ期間のさらなる延長やネット上の広告の改善など、事後についても消費者を守る施策を進めます。

 事業者の情報提供義務の明記、「適合性の原則」(消費者の知識・経験・財産の状況を事業者が配慮する)の導入、契約取り消し期間の延期、誤認して結んだ契約の取り消し範囲の拡大など、消費者契約法を改正します。

●悪質商法には「過去の消費者被害者」「サラ金利用者」「高齢者」などの名簿が使われて2次被害も増えています。この背景に、悪質な「名簿屋」の存在も指摘されています。これらは詐欺幇助で立件できるものであり、取り締まりを強化すべきです。

 「マイナンバー制度」について、個人情報の流出、情報管理における膨大な負担、国家による情報管理など、不安・不信や批判が広がっています。制度の中止・廃止もふくめて抜本的に検討します。

●改正貸金業法ではグレーゾーン金利は廃止されましたが、法定金利そのものが高すぎます。利用者の7割が20代~30代であり、非正規労働者がふえるなかで、「生活費のため」に借りるケースが多くなっています。法定金利の引き下げが必要です。また、多重債務者にたいする相談体制の強化、生活福祉資金の改善などで生活の建て直しが図れるようにします。

●クレジット会社による加盟店の厳密な審査、クレジット会社と加盟店との連帯責任の強化など、割賦販売法の運用をすすめます。

4、消費者、消費者団体への支援を一段とつよめます

●消費者団体は、消費者問題の解決のためには欠かせない存在であり、公益性の高い団体でもあります。消費者被害が多発し、被害救済が求められているにもかかわらず、たとえば適格消費者団体でも会員からの会費とボランティアなどによって支ええられているのが現状です。「消費者庁及び消費者委員会設置法」では、付則で、「適格消費者団体による差止請求関係業務の遂行に必要な資金の確保」を掲げています。また、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」では、付則で、政府にたいして、特定適格消費者団体にたいする必要な資金の確保、情報の提供、その他の支援を求めています。消費者団体の自主性を尊重しつつ、相応の財政支援、事業者からも含む情報の提供など早急に具体化します。

●消費者団体をはじめとした関連団体の長年の努力によって、集団的消費者被害回復訴訟制度(消費者裁判手続特例法)ができたことは画期的なことです。これを実効あるものとしていくためには、消費者の利益に配慮しつつ、特定適格消費者団体にとって使い勝手のいいもの、自主的な裁量を生かせるものにしていく必要があります。たとえば、消費者庁は、特定適格消費者団体による「事件の選定」まで監督するとしていますが、本来は、消費者団体の自主的な判断に任せるべきです。また、特定適格消費者団体と事業者との和解や事業者への申し入れなどの情報を消費者に提供することは被害を回復する上で重要です。「公表されることにより事業者に与える影響」をことさら強調し、情報提供を躊躇させるようなことがあってはならないと考えます。

●NPOの自主的な活動は、国民生活を豊かにする上でも、社会全体の発展のためにも重要な役割をもっています。NPOの自主性を尊重し、行政との対等の関係を保ちつつ、活動資金の助成や活動に必要な施設・設備の提供、寄付が受けやすくする制度への改善など、支援を強化します(分野別政策「NPO・NGO」をご参照ください)。

●スマートホン、携帯電話やインターネットを使った消費者被害が広がっています。学校での体系的な消費者教育をすすめます。公的機関による消費者教育の充実はもちろん、社会教育活動として、地域の住民や団体を対象にした、自主的な消費者教育運動への支援を強化します。

 

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