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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

31、障害者・障害児

――総合支援法、差別解消法、障害者権利条約

2016年6月


障害者権利条約、「基本合意」「骨格提言」にもとづいた障害者施策を実現します

障害者権利条約批准はゴールでなくスタート

 2014年1月、世界で141番目に日本でも障害者権利条約が批准されました。障害者権利条約の批准はゴールでなく新たなスタートだという立場にたち、国内の障害関連の法律や制度を抜本的に改革します。

 安倍政権は、5月に発表した「一億総活躍プラン」で、「障害者、難病患者、がん患者等の活躍支援」といっています。ところが、その一方で、「軽度」障害者からの家事援助のとりあげやインフォーマルサービスの奨励(財政制度等審議会)など、障害者福祉を介護保険改悪に合わせる制度改変を計画し、また、経費節減を最大の目的に、施設や人員の配置基準を緩和して“子ども・介護・障害者の福祉サービスを一つの建物で提供できる施設”の検討を開始する(厚労省)など、社会保障予算抑制のための制度改悪をねらっています。

 障害関連予算は毎年増えているといっても、もともと少なく、国際的にみればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1(国立社会保障・人口問題研究所平成 25年度「社会保障費用統計」)など低いものです。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という障害者運動が切り開いてきた流れを強くして、社会保障費のさらなる抑制や制度改悪を中止させるために力をあわせます。

Ⅰ障害者権利条約の批准にふさわしい国内法の見直しを

実態を反映した政府報告書へ

 今年6月、障害者権利条約批准後、初の政府報告書が国連に提出される予定です。政府報告の全体の基調は、法制度の説明に終始し、それによって障害者の生活がどう改善されたのか、障害のない人との格差がどう縮小したのか実態が見えてこないものです。

 国は、障害者の実態を反映させた政府報告書を国連に提出すべきです。国連・障害者権利員会ではNGOなど民間により提出されるパラレルレポートも重視され、政府報告とともに総合的に検討・審査し改善の勧告を含む総括所見を発行します。国は国際社会の監視に耐えうる障害者施策の抜本的改善をおこなうよう求めます。

障害者政策委員会の体制強化を

  障害者政策委員会は、権利条約の履行状況の監視機能を持つ機関です。国内法の整備をすすめていく上で、その役割にふさわしい事務局

 機能や予算の裏付けなどをともなう体制強化を求めます。障害者権利条約批准国に義務づけられている政府報告書に反映するためにも、継続的に国内外の基礎データや資料の収集・分析をおこない、国民にわかりやすい形で公表すべきです。その前身である「障がい者制度改革推進会議」の成果を踏襲し、情報公開をすすめ、委員の選出方法を見直して、障害当事者委員への合理的配慮がなされるようにすべきです。

(1)障害者基本法を見直す

  2011年に改正された障害者基本法は、障害者権利条約の水準からは不十分でしたが、「障害のあるなしにかかわらず基本的人権が尊重される」「共生社会の 実現」などが法の目的に盛り込まれたことや、史上初めて法律に、言語に手話を盛り込んだことなど、一定の前進がありました。障害の範囲については、国会の質疑で明確に難病を含むことを明らかにさせることができました。反映されていない権利条約の大事な柱の1つである「合理的配慮を行わないことは差別である」などを盛り込み、平等な社会参加のために「必要な支援を権利として保障する」ことを規定し、国と自治体の支援提供義務を明確化することを求めます。

(2)障害者差別解消法を実効性ある制度へ

 日本の差別禁止法制として、今年4月から障害者差別解消法が施行されています。すべての地方自治体に相談や支援の窓口となる差別解消支援地域協議会を設置し、相談窓口に法律の専門家や障害当事者などの人材を充てられるよう、予算措置などの国の支援を求めます。

 法に定められている3年後の見直しでは、差別についての定義や、「必要かつ合理的な配慮」は障害者権利条約の合理的配慮と同様であること、合理的配慮の不提供が差別であることなどの明記を求めます。

 事業者による合理的配慮の提供は「努力義務」とされましたが、「義務」とすべきです。紛争の解決や救済のしくみは、既存のしくみの活用が中心となっていますが、法の施行状況や差別事例の分析を通じて実質的な救済のためのしくみの創設・拡充をすべきです。女性障害者の複合的差別を解消します。

高校、大学、専修学校などで、修学支援のための合理的配慮をすすめるために、国による補助金制度などの充実を図ります。

 さきの国会で障害者総合支援法の改正審議での参考人質疑において、ALS患者の出席取り消し問題は、差別解消の先頭に立つべき立法府であってはならないことです。再発防止と障害に配慮した措置を求めます。

(3)障害者総合福祉法制の実現を

 障害者総合支援法は先の国会で施行3年後の見直し法が可決(共産、社民、生活は反対)されました。「見直し」は総合支援法成立時に先送りされた「基本合意」「骨格提言」にもとずく課題を実現するために改正がおこなわれるべきでしたが、まともに反映されませんでした。法の廃止をめざし、障害者自立支援法違憲訴訟団と国が結んだ「基本合意」や、総合福祉部会がまとめた「骨格提言」にもとづいた障害者総合福祉法の制定に向けて以下のような見直しをすすめていきます。

応益負担はすみやかに廃止し、利用料は無料に

 「障害者は同年齢の市民と同等の権利を有する」――1981年「国際障害者年」以降、障害者権利条約にもこの理念は引き継がれています。障害を理由とした不利益は社会全体で支える、障害の有無にかかわらず、すべての人が安心して暮らせるよう、福祉サービスは無料で提供する――これが、国際社会の共通の原則です。

  政府は2010年に強引に「改正」した自立支援法「つなぎ」法によって、市町村民税非課税世帯は無料(自立支援医療費は除外)としましたが、法文上1割の定率負担は残されました。「応益負担」制度は廃止し、すみやかに無料化を求めます。また、食費等の自己負担制度の廃止を求めるとともに、配偶者の収入認定はやめて、本人所得のみの収入認定とします。

介護保険の優先原則の廃止を

 総合支援法第7条の介護保険優先原則はすみやかに廃止します。介護保険の対象年齢でも従来から受けていた支援を継続して受けられるようにして、障害者が障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるよう改めることを求めます。

 当面の間、厚労省の通知に自治体が機械的な介護保険優先をすすめるのでなく、個人の心身の状態とともに個別の状況(経済状況も含む)に応じて対応するよう政省令を定め、指導を求めます。

 介護保険と障害者福祉の「統合」は、障害者の実態と「基本合意」を無視したものであり、反対します。介護保険制度を「改革」し、すべての低所得者の利用料無料化を早急に求めます。

月額払いに戻し福祉労働者の処遇改善を

 日額払いから月額払いを基本とする報酬にし、正規職員の配置を中心とした雇用形態ができるよう、基本報酬の大幅な引き上げをおこないます。給食・事務・施設長など削減された職員配置基準を復活させます。

 福祉労働者の賃金の引き上げは、全額国庫負担により引き上げをはかります。

自立支援医療を無料化に

 自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についても無料化を求めます。自立支援医療の対象拡充をすすめます。

 更生医療制度はリハビリテーション医療の観点から身体障害者手帳所持を条件からはずし、障害の除去・軽減のみでなく状態を維持したり、これ以上の悪化や二次障害を防ぐための治療や予防も含めた治療にも適用できるよう対象を拡大します。

 「重度かつ継続」の対象範囲を拡大し、断続的であっても高額の医療費がかかる場合にも適用を求めます。また、「重度かつ継続」者の入院時食事療養費の負担をなくします。

 育成医療制度は「児童の健全育成」の観点から本来の児童福祉法に戻し、障害のある子どもとともに、「放置すれば将来障害が残ると予想される子ども」を今後とも対象に含むようにします。「経過措置」とされている育成医療の中間所得層の負担軽減措置を2017年度で打ち切らせず、恒常化した制度にします。

支給決定は障害者の希望の反映を

 現在のサービス支給量抑制のためのしくみから、障害者参加で区分認定の制度内容を協議し、支援の必要量や希望が保障されるしくみに転換すべきです。

障害制度の谷間をなくす

 障害者基本法の障害者の定義にもとづき、依然として支援が必要にもかかわらず福祉利用の対象からもれてしまう、または対象であるにもかかわらず適切な支援を受けることができない内部障害、発達障害、高次脳機能障害、難病などのあらゆる障害者をなくすよう、障害認定や手帳制度のあり方を含めて見直します。

地域生活支援事業の自治体間格差の解消を

 地域生活支援事業の予算を義務的経費化し、必要なサービスの量と質を保障する抜本的な改正をめざします。利用料やメニューの地域間格差をなくします。移動支援事業、意思疎通支援事業などの利用料を無料化し、国の制度として位置付けます。

 低水準にある小規模作業所と地域活動支援センターに対する補助金を、当面就労継続支援事業の水準に引き上げます。地域活動支援センターを最低定員5人からの設置・運営を可能にするとともに、「骨格提言」が示す新たな事業体系の検討に位置付けます。 

 身体障害者手帳をもたない聴覚障害者など、必要とするすべての人に手話通訳や要約筆記の派遣をうけられるようにします。

 高い専門性に見合った手話通訳者やコーディネーター、要約筆記者などの身分保障を求めます。

すべての障害者の相談支援を確実に

 障害者・障害児のサービス等利用計画(ケアプラン)づくりが義務付けられています。相談支援が、その人らしい人生設計をするための大事な支援という位置づけにふさわしい事業とするために、抜本的な報酬の引き上げをはかるとともに、相談員の量と質の向上をはかります。

障害がはっきりしていない時期であっても、子どもが療育を受ける場合は計画の提出が求められます。事業者に独自の専門性をふまえた支援を保障する研修を拡充すべきです。

 (4)虐待からまもる体制整備を

 2012年から障害者虐待防止法が施行されています。2014年度、虐待の被害を受けた障害者は2703人にのぼります(厚労省調査)。あらゆる虐待をなくすために、 市町村障害者虐待防止センターに専門知識を持つ職員の配置を促進し、緊急対応できる保護施設が確保できるよう、国の対策をすすめます。通報義務を学校や病院などにも広げます。

被虐待者のケアとともに、事例を検証し虐待者・施設への支援を強めます。勘案されている法の見直しの実施を求めます。

(5)社会福祉法人の本来の役割の発揮を

 さきの国会では社会福祉法人法「改正」法が強行されました。社会福祉事業とは別に、国や自治体の仕事を法人に肩代わりさせるような無料・低額サービスを提供する「地域における公益的な取り組み」の責務を課すことは、公的責任の縮小・後退につながるものです。「公益的なとりくみ」の強制を中止します。

 人材確保に逆行する障害者施設職員の退職共済への公費助成廃止を撤回するとともに、社会福祉事業に従事するすべての福祉労働者に対する老後保障を確立します。

(6)成年後見制度の見直しを

 成年後見制度は、精神上の障害などで“判断能力が不十分”とされた障害者や高齢者の法律行為、財産管理などについて、後見人に幅広く代理権を認め、代行させる仕組みです。2000年の制度導入以来、障害者や高齢者の権利擁護に一定の役割を果たしてきましたが、その一方、弁護士など専門職の後見人による不正事件が急増し、後見人がつくことで公務員の欠格事由とされて仕事を奪われるケースも起きるなど、制度の問題点が指摘されるようになっています。また、障害者の法的権利の尊重と法的能力の行使に対する最大限の支援をうたった障害者権利条約(第12条)の批准を受け、現行の成年後見制度の見直し・改革を求める議論も起こっています。

 家庭裁判所の後見監督体制の強化など、不正の防止・根絶に向けた取り組みをすすめます。障害者権利条約第12条にもとづき、さまざまな団体・有識者の意見も聞きながら、ある程度自己主張できる人も、まったく意思表示できない人も権利が守られ、当事者の意思決定を支援する制度となるよう、現行制度の全面的な検討・見直しをすすめます。

(7)発達障害者の特性をふまえた支援に

 2005 年に発達障害者支援法が施行され、先の国会で10年ぶりに改正されました。新設される都道府県・指定都市においての発達障害者支援地域協議会に当事者やその家族の参加をすすめます。発達障害者支援センターをすべての都道府県に複数配置し、民間団体やハローワークなどと連携して相談・支援体制を拡充します。

 障害者総合支援法にも発達障害が位置付けられていますが、発達障害に対する社会的な理解や支援体制の整備はいまだ不十分です。成人になってはじめて発達障害と診断されるケースも増えています。全世代の問題として、生きづらさを抱えた人たちの自己実現や社会参加を可能にするよう、二次障害を予防する医療や、雇用、教育などすべてにわたって支援を拡充します。

医療・支援機関に足を運べない青年に、専門家が自宅を訪問する相談支援活動を広げます。

Ⅱ地域でのゆたかな生活の保障を

(1)くらしの場の保障

 日本の障害福祉施策が長い間前提としてきた家族介護を脱却し、必要な支援を受けながら障害者がのぞむ場でくらせるよう、基盤整備をすすめます。「障害福祉基盤の緊急整備5カ年計画」を策定し、特別立法を制定します。

バリアフリー対応の公営住宅を確保・建設し、待機者が増え続けている入所施設やグループホームなど住まいの場を公的責任で計画的に増やします。公有地の活用が積極的にできるよう国や自治体に求めます。

 くらしの場における必要な支援を保障するために、グループホームをはじめ障害福祉サービスにかかる基本報酬を大幅に引き上げます。

 在宅支援のためにも、家族の休息を保障するためにも、ショートステイの増設や、「医療的ケア」を必要とする人たちへの支援策を拡充します。

 ホームヘルプサービスや移動支援の拡充など、在宅支援を保障します。

 障害者・障害児世帯の孤立死や孤独死を防止し、スケジュール化された支援では対応できない緊急時に適切な支援を提供するために、日常生活における緊急時の支援システムを確立します。

同行援護の利用時間の地域間格差をなくし、視覚障害者に対応できるヘルパーの養成を拡充し、十分な支給量を保障するよう求めます。

(2)年金の保障

 障害基礎年金を1・2級とも大幅に引き上げ、各種手当を引き上げます。最低保障年金制度の実現で、年金の底上げをはかります。

 初診日認定の制度は一部改善がはかられてきましたが、支給要件をさらに緩和し、実態に即して年金を支給されるようにします。

 精神障害者・知的障害者の障害年金の認定率の地域間格差是正が発端となり今年の秋から導入予定の障害年金センターで一元化した審査が始まる予定です。「症状が変わらないのに障害年金が受給できない」などの事態を招かないよう、新たに作成された等級判定ガイドライン制度の見直しや、認定医を抜本的に増員するなどの改善を求めます。

 厳しい認定基準を根本的に変えて、内部障害・疾病に共通した「一般状態区分」を早急に見直します。

 無年金障害者への特別障害給付は障害基礎年金と同額に引き上げるとともに、国籍要件のために加入できなかった在日外国人など、支給対象をさらに広げるよう改善をすすめます。特別障害給付金制度はあくまでも福祉的措置であり、年金制度の枠内での根本的な解決が必要です。国の不作為や年金制度の不備を認めて、障害基礎年金の支給を行うべきです。

(3)労働の保障

 法定雇用率の厳守を徹底し、さらに法定雇用率を引き上げます。

 精神障害者の雇用義務化の実施は2018年4月からであり、そこからさらに5年間の猶予をもうけて雇用率を低く設定する予定です。早急な義務化を求めます。

 障害者雇用促進法における障害者への差別禁止と合理的配慮は法定義務です。事業者は障害者のはたらく権利を保障し、障害の特性に配慮した職場環境の改善をすすめるべきです。

 事業主が、求人・採用や賃金の決定、待遇など障害者であることを理由に不当な差別的扱いをしてはいけないという規定に、断続的、周期的に障害が出て職業生活上相当制限がある難病患者などが含まれることが明確になっています。引き続き障害者手帳のない難病・慢性疾患患者も法定雇用率や雇用の義務化の対象になるよう求め、働き続けるためのさまざまな支援をすすめます。

 ジョブコーチ制度などを充実させ、労使への支援を拡充します。病状や障害が進行しても働き続けられるよう、通院や病気休暇を保障します。産業医療職に対して障害の特性の理解や具体的援助をすすめるための研修等を義務付けます。

 職業訓練や資格取得の支援制度を拡充します。

 障害者、難病患者の移動支援において、通勤のためのヘルパー利用をすみやかに認めるべきです。

 保護雇用制度を創設し、所得保障をおこないます。

 視覚障害者の読み書きをサポートする職場介助者を配置し、業務が遂行できるようにします。

 あんま・はり・灸の資格者のはたらく場を保障します。

 自治体の採用試験に点字・音声試験を位置づけます。

 (4)被災時や復興の支援

 東日本大震災では、障害者の死亡率が住民全体の2倍以上であるという調査が出されています。国として被災障害者の実情をすみやかに調査し、震災にそなえての対応を話し合う検証委員会などの設置を求めます。

 被災地や避難先で暮らす障害者の制度やサービスの利用、移動支援、仮設住宅や復興住宅などのバリアフリー化をはじめとした住環境の整備などの支援を、緊急かつ継続的におこなえるようにします。

 障害者や高齢者などを受け入れるための「福祉避難所」指定施設が災害時、いつでも力を発揮できるよう、今年4月の熊本地震の教訓にも学び、自治体への支援を早急にすすめます。

 被災による障害者事業所・施設の減収を補償するよう求めます。そのためにも、日割により矛盾が生じている報酬制度は月割に戻すべきです。

 防災、復興の部局に障害当事者が参加できるようにします。また自治体の防災や災害時の避難などの計画づくりを促進するよう支援を強めます。

  (5)障害者の医療の拡充を

 日本共産党は憲法25条や障害者権利条約25条の立場から、障害・疾患の区別なく、窓口負担ゼロで医療を受けられる日本をめざします。当面、現行の窓口負担を「子ども〈就学前〉=無料、現役世 代=2割、高齢者=1割」へと引き下げます。そのなかでも、障害者や難病患者の医療費は、優先してすみやかに無料にすることが当然です。

重度心身障害者医療費助成制度を国の制度に

 重度心身障害者(児)医療費助成制度における窓口負担無料化を実施する自治体への、国保の国庫補助金を減額するペナルティー制度の廃止を求めます。重度心身障害者(児)医療費助成制度を国の制度として確立します。また、身体障害者手帳のない難病・長期慢性疾患をふくむすべての障害者を対象にします。

病院でのヘルパー派遣の拡充を

 重度訪問介護利用者で支援区分6の人に限って病院での日常生活を支えるヘルパー派遣が可能になりますが、看護師などに指示するだけで実際に介助はできません。重度者に限らず、通院や入院時の介護保障について、障害児者のコミュニケーションや日常生活を支えているホームヘルパー等が病院内での介助ができるよう、医療と福祉の垣根をはずし、実態的な支援がおこなえるよう求めます。

 (6)精神障害の医療・福祉の向上を

 子どもから高齢者まで全世代の問題としてメンタルヘルスにとりくみ、精神疾患・障害への理解と対応をすすめ、精神医療や福祉の向上をはかります。当事者・家族への支援を強めます。

 精神科病棟の居住系施設への転換はやめて、地域にグループホームなど住まいの場を増設し、在宅での訪問支援を拡充します。「社会的入院」をなくすために、相談支援を拡充し、就労支援をはじめとした所得保障などをすすめます。

 自立支援医療の低所得世帯のすみやかな無料化を実施し、低所得世帯以外についても無料化を求めます。

 薬物依存症者の治療体制や社会復帰の支援を強めます。

  精神科病院への医療保護入院の「保護者制度」の撤廃は当然であるものの、「家族等の同意」は保護者制度の弊害を引き継ぎ、家族の過重負担を解消することは できません。また、安易な強制入院も危惧されます。患者の思いを代弁する「代弁者制度」を導入し、精神保健指定医2名による判定や第三者機関として精神医 療審査会の機能拡充などを合わせ、患者の権利擁護のための制度の拡充を求めます。

 Ⅲ 差別解消と合理的配慮をあらゆる施策で実行を

 障害者権利条約と障害者差別解消法の施行にともない、以下のすべての施策を実施し、障害種別間の差別をなくし、制度の不備を見直すよう求めます。

(1)交通、バリアフリーの保障を

精神障害者の運賃割引制度の改善を求めます。

 制度から排除されているてんかん・難病などの障害者・患者を運賃割引の対象にすることを求めます。

 JR・航空運賃や高速道路の通行料金の割引制度の改善・拡充にとりくみます。

 駅のホームドア、可動式ホーム柵の普及や、ノンステップバスの導入をすすめ、交通や建物などのバリアフリー化をすすめます。障害者用・オストメイト対応のトイレを普及し、ユニバーサルシートをあわせて設置します。

(2)情報アクセス、コミュニケーションの保障を

 障害者のコミュニケーション手段の自己選択・自己決定を尊重し、社会参加を保障する「情報・コミュニケーション法」を制定します。

 各地で手話言語条例が制定されてきており、手話言語法を求める意見書がすべての自治体で採択されています。手話言語法の制定を求めます。

 読書や文字の読み書きに困難がある高齢者や障害者の「読書権」を保障し、公的機関などに読み書き(代読・代筆)情報支援員の配置ができるよう求めます。

 アクセシブルな情報通信技術(ICT)の調達を政府に義務づけるとともに、「新技術」の開発段階からの障害者の参加保障を求めます。

 障害者対応のATMの普及や、窓口対応の改善をすすめます。

 紙幣について、サイズの差別化をはかり、さわってわかりやすくするなどの改善を求めます。

 テレビとラジオが聴取できる携帯品「テレビラジオ」を日常生活用具へ指定するよう求めます。

 人工呼吸器を装着した難病患者や重度障害者のコミュニケーションツールとして機器の開発を促進し、これらを補装具や日常生活用具の対象とするよう求めます。意思伝達装置の入力スイッチ設定支援制度を創設し、専門機器が支援できる体制を整備します。

 テレビの解説放送や手話・文字放送を拡充します。

 文化・スポーツ・レクレーションに誰もが親しめるよう、施設整備や環境づくりをすすめます。

(3)参政権の保障、司法の場における権利保障を

 障害者の参政権を保障するため、手話や字幕をすべての政見放送に義務づけるとともに、点字による選挙広報などの改善、在宅投票制度の拡充、投票所のバリアフリー化などをすすめます。

 被後見人の選挙権の回復を認めた判決により、国会は公職選挙法を改正して回復を認めました。被後見人が支障なく選挙権が行使できるよう、国や自治体の環境整備を求めます。

 障害者が裁判を傍聴する場合や、原告・被告として裁判の当事者となる場合に不利益を生じることがないよう、意思疎通への配慮、障害者をまじえた職員研修など、司法当局として手立てをとることを求めます。

 裁判での点字文書の拡充や手話通訳費の公的負担を求めます。

 Ⅳ障害児の療育・教育の保障を

(1)契約制度・応益負担の廃止を

 障害児の福祉施策は、児童福祉法から障害者自立支援法に代わり、また児童福祉法に戻るという経過を経てきましたが、療育や福祉利用は契約制度であり、応益負担を強いられることに変わりはありません。障害を自己責任にする契約制度や応益負担はやめ、無料で療育や福祉を利用できるよう、子どもの権利の保障を求めます。

(2)療育の保障を

障害が確定していない子どもたちを含めて、必要なときに身近な地域で、療育を受けられるよう、通所施設の整備を求めます

 国は実態を調査し、量的な整備計画をたて、支援の中核的な役割が求められる児童発達支援センターの機能強化を保障すべきです。

 保育所等訪問支援事業の保護者負担をなくし、自治体ごとの巡回指導も引き続き保障します。

 障害児の保育所入所や保育条件の保障を求めます。

 放課後等デイサービスは、公的責任の所在を明らかにし、放課後生活をゆたかにするためのとりくみをすすめます。少なくとも児童発達支援事業なみに報酬を引き上げて専門性のある正規の指導員の配置が可能になるようにします。

 被虐待児の入所の増加などから、入所施設の子どもたちの障害の幅が広がっています。施設空間や生活集団の編成の困難を解決する職員配置などを求めます。

 発達・障害・生活を総合的に支援し、専門性を担保できるよう障害児相談支援事業所の研修を改善します。

 保護者の子育てやレスパイトを保障するための、障害児のショートステイやホームヘルプに対応できる施設・事業所を増やします。

(3)教育の保障を

 この10年で特別支援学校の生徒は1・3倍に、特別支援学級は1・8倍、通級で2倍増加しています。児童生徒の激増に見合う、人的・物的な教育条件は整備されておらず、深刻化しています。

 特別支援学校の行き届いた教育保障のために定数基準を引き下げます。

 異常な過大・過密を解決できるよう、「学校設置基準」を策定します。

 通常学級における特別支援教育の充実を図るため、学級定数を引き下げます。障害のある子どもたちへの「合理的配慮」を保障する教職員の配置や通級指導教室の整備計画、施設整備の充実をはかり、教員定員基準を新設します。

 教職員の増員や施設設備のバリアフリー化など、十分な教育予算をとり、子どもに最適・最善の教育がなされるよう教育環境をととのえます。

 病児学級・院内学級での病児の教育の保障をすすめます。

 過重な負担になっている医療的ケア児の保護者の支援をおこない、在宅・学校などにおいての教育の権利を保障します。自治体まかせになっている福祉・教育・医療の垣根を取り払った支援を国の責任で強めます。

 

 

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