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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

16、農林漁業

――自給率向上、担い手育成、価格保障・所得補償、米価暴落対策、食の安全、BSE、農山漁村の再生

2016年6月


農林漁業の再生を国づくりの柱にすえ、国民の食料と

豊かな環境を守り、持続可能な社会をめざします

 国民の命を支える農林漁業と農山漁村は崩壊の危機が広がっています。基幹的農業従事者の47%以上が70代以上と極端な高齢化が進み、農林漁業従事者の減少も加速しています。食料自給率は先進国で最低水準のままであり、国土の荒廃も広がっています。

 今日の危機的事態は、大企業製品の輸出を最優先し、食料は輸入すればいいという、歴代自民党政権がすすめてきたアメリカ・財界いいなり政治に根本原因があります。一部の産地や品目を除いて大多数の農林漁業者の経営がなりたたなくされ、「農業・農山漁村で暮らしていけない」事態があまりにも長く続いた結果でもあります。

 安倍政権も、「企業が一番活躍しやすい国づくり」を公言し、農林漁業や農山漁村を切り捨てる路線をいっそう露わにしています。農林水産業の将来を奪う環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意・署名に突き進み、国民への十分な情報開示も説明もないままに国会批准を強行しようとするのは、その最たるものです。国内政策ではTPPによる農林水産物の全面自由化を前提に、外国産と競争できない圧倒的多数の中小経営・農山漁村を切り捨てようとしています。農業や農地を営利企業に開放するために農地・農協・農業委員会など家族経営を支えてきた戦後農政の根幹の解体に乗り出しているのもそれと一体です。

 このような農政を続けては、農漁業の崩壊が一気にすすみ、地方は衰退し、食料自給の基盤を失った国になりかねません。国民の生存を根本から脅かし、日本社会の持続可能性を失わせる重大な問題です。

 21世紀の世界は「食料は金さえ出せばいつでも輸入できる」時代ではありません。世界に貧困と格差を広げ、経済危機も深刻化させてきた自由貿易・市場原理一辺倒の政治もゆきづまり、転換が求められています。地球環境の保全も人類の死活的な課題となり、各国の国土や自然条件を生かした循環型の社会への転換が求められています。

 国連は、2014年の国際家族農業年にあたって、食料問題の解決と地域社会の安定に不可欠として家族農業の振興を世界に呼びかけました。家族経営とその共同を担い手として、農漁業を再生し、食料自給率を回復することは、国民の生存の根本にかかわるまったなしの課題です。人類社会の持続的な発展にたいする日本の責任でもあります。農山漁村の再生は、日本経済を内需主導、持続可能な方向へ転換するうえでも不可欠です。

 わが国には、温暖多雨な自然条件、すぐれた農林漁業技術の蓄積、世界有数の経済力、安全・安心を求める消費者のニーズなど、農林漁業を多面的に発展させる条件は十分にあります。必要なのは、そうした条件を全面的に生かす政治への根本的転換です。

 日本共産党は、アメリカ・財界いいなり政治を大もとから転換して、農林漁業の本格的な再建、食料自給率を早期に50%台に引き上げる課題を国づくりの柱に位置づけ、あらゆる手立てをつくします。2008年3月に発表した農業再生の総合政策「日本共産党の農業再生プラン」をはじめ、漁業や林業の再建についても、国政選挙政策で具体的な政策を提起してきました。今日の情勢に即した農林漁業や農山漁村の再生の政策を提案します。

 TPP協定の批准を阻止し、食料主権を尊重する貿易ルールの確立めざす

 わが国の農林水産業の再生にとって、直面する最大の課題は、TPP協定の批准を阻止し、TPPから撤退することです。農産物関税の全廃=輸入の完全自由化を前提とするTPPのもとでは、わが国の農林漁業の再生はありえません。

 今年2月、安倍内閣が調印したTPP協定では、わが国の農林水産品2594品目のうち2135品目(82%)の関税が撤廃されます。「聖域」とした米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物など重要農産物でも29%の関税が撤廃され、関税を残した品目でも、米、麦では特別輸入枠が設定され、牛肉・豚肉の関税が大幅に引き下げられます。農水大臣自身が「無傷なものは何もない」と答弁したように、史上最悪の農業破壊協定です。

 しかも、それは出発点にすぎません。TPP協定には締約国は順次「関税を撤廃する」と明記され、今回は撤廃とならなかった農産品もいずれ撤廃を迫られます。実際、日本は、発効7年後にアメリカなど輸出大国から農産物の関税、セーフガードの見直し要請があれば、協議に応ずると規定されています。「関税撤廃の例外を確保できた」(安倍首相)どころか、TPP協定の受け入れは「関税全廃」のレールに乗ることにほかなりません。

 「TPP断固反対、ウソつかない自民党」という自らの公約にも、重要農産物は「除外または再協議とする」とした国会決議にも反するのは明白です。

 許しがたいのは、安倍政権が、TPPによる農林水産業への打撃を“軽微”と描き出し、協定の批准を押し付けようとしていることです。政府は、3年前にはTPPによる農林水産業の生産減少額が3兆円になると試算していたのを、今回は1300億円から2100億円にとどまると約20分の1に縮小し、生産量は減らない、食料自給率も低下しないとする試算を発表したのです。米では、77万トンのミニマム・アクセス米に加えて特別輸入枠で7万8000トンもの輸入を増やしても、米価の下落も米生産量の減少もないといいます。このまやかしの影響試算に生産現場から厳しい批判が噴出したのは当然です。

 安倍政権は、あれこれの「国内対策」を打ち出し、農業への影響を回避するといいます。しかし、輸入自由化の打撃を「国内対策」なるもので防げないことは、過去にいやというほど経験してきたことです。まして、危機がかつてなく広がっている今日、TPPによる影響が農林水産業の将来に甚大な打撃をもたらすのは必至です。

 TPP協定の批准の断念、撤回を求める――TPP協定は、農林漁業だけでなく医療や雇用、食の安全を脅かし、経済主権も奪うもので、国民にとって「百害あって一利なし」です。

 協定に署名した国の多くでも、暮らしや雇用、権利を脅かすとして反対運動が広がり、批准の是非を含めた議会の本格的な議論はこれからです。アメリカでは有力な大統領候補が反対を表明しており、議会の批准は見通しが立っていません。安倍政権は、他国に先駆けて今国会での批准をねらいましたが、短時間の審議の中でも極端な秘密主義と国会決議違反が明白になり、継続審議にせざるを得なくなり次期国会に先送りされました。

 政府に情報の公開と徹底した国会審議を求めるとともに、その危険な内容を明らかにし、TPP反対の国民的共同と力を合わせ、批准の断念、TPPからの撤退に力をつくします。

 各国の食料主権を尊重する貿易ルールを確立する――自由化一辺倒のWTO体制のもとで世界各国の農業が荒廃し、環境や食の安全も脅かされ、貧困と格差が拡大するなどの矛盾が広がりました。21世紀の世界に必要なのは、各国の国土・資源を最大限に生かした食料の増産であり、それを可能にする貿易ルールです。

 農林水産業は国により自然・社会条件が異なり、生産条件に大きな格差があります。日本のように狭小な国土や高い人口密度のもと、農林水産業を守り、食料自給率を高めるためには、関税など何らかの国境措置は不可欠です。日本政府もかつてWTO新ラウンド交渉の中で「多様な農業の共存」が可能となる貿易ルールを提案していました。各国が自国民のための食料生産を最優先し、国境措置の維持・強化、価格保障などの農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をめざします。

 農業に打撃を与えるFTA・EPAに反対する――多国籍大企業による輸出や投資の拡大を最優先し、農産物を含めた輸入自由化をいっそう推進するFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が、農業の衰退に拍車をかけることは避けられません。二国間・多国間の貿易や経済連携にあたっては、各国の多様な農業の共存、食料主権を尊重するルールをめざします。

 ミニマム・アクセス米を廃止する――世界で米が不足している時に、輸入の必要のない日本に77万トンもの米輸入を強要するミニマム・アクセス制度はきっぱり廃止を求めます。ミニマム・アクセスは、WTO協定上は最低輸入機会の提供にすぎず、全量輸入は義務ではありません。当面、「義務」輸入は中止します。

農業の担い手の確保・育成に国をあげて取り組む

 戦後日本の農業を中心的に支えてきた世代の「引退」が加速し、農家や農業就業人口の減少に拍車がかかっています。農業就業者の超高齢化もすすみ、担い手の面から農業と農村が崩壊しかねない事態です。わが国の食料生産を誰が担うのか、国土や環境を誰が守るのか、農山村地域にとどまらず日本社会が真剣にむきあうべきまったなしの課題です。

 2014年、国連は、専業、兼業含む、家族経営にたいする援助をよびかける家族農業年を設定しましたが、安倍内閣はそれを無視して、「企業が一番活躍しやすい国づくり」を公言して営利企業に農業・農地を全面的に開放する農政「改革」を推進しています。家族農業とその共同を基本的な担い手とする戦後農政のあり方を根本から覆し、農業・農村をもうけ本位の場にするもので、地域農業も地域社会の維持も困難になります。

 国や自治体、関係団体が営農や暮らしの条件の根本的な改善と一体で農業・農村の現在と将来の担い手の確保・育成に特別な力を注ぐことが求められています。

 農家の選別をやめ、大小多様な農家経営を数多く維持する――歴代政府は農地の集積による農業経営の大規模化・法人化を一貫して進めてきました。安倍政権はその路線をいっそう露骨に進めており、各種補助金の配分や農地の利用・集積でも、それを条件にしているのがほとんどです。支援の対象から締め出され、「続けたい」と思っても経営をあきらめざるをえない中小農家も少なくありません。

 しかし、食料自給率の向上や国土や環境の保全など農業のもつ多面的な役割は一部の大規模経営や法人だけで担うことはできません。兼業・高齢者世帯を含む多くの農家が農村に定住し、営農を続けてこそ可能になります。大規模化がもっとも進んでいる北海道の畜産・酪農地帯ですら離農に歯止めがかからず、地域社会の崩壊の危機が広がり、残った大規模経営の存続さえ脅かされる事態がおきています。政府の担い手政策のあり方を転換し、「続けたい人はみんな担い手」と位置づけ、中小農家を含めて農地の利用、土地改良、機械・施設の維持・更新などに国・自治体が必要な支援を行い、現に農業に従事している農家を可能なかぎり多く維持できるようにします。

 集落営農や大規模農家の支援――専業の大規模経営や集落営農は、地域農業の担い手であり、引退する農家の農地や作業を引き受けるうえでも大事な役割を果たしていますが、米価暴落、資材価格の高騰などで経営が困難になっている例も少なくありません。地域農業を維持するためにも、そうした大規模経営への支援は不可欠です。

 大規模経営や集落営農などが機械・施設を導入・更新する際、助成や低利融資を行います。地域の自主性を尊重しながら、行政や農協などが一体で支援を強め、実務や資金管理、販路確保の負担を軽減します。集落の共同が困難な地域では、当面、自治体や農協などの出資する法人による農地の管理をすすめ、耕作放棄が広がらないようにします。

 新規就農者支援法を制定し、新たな担い手を増やす特別の努力を――農業就業者の高齢化と大量の離農が予想される中、新たな担い手の確保・育成はまったなしの課題です。農家の子弟や都市住民を含めて新規就農者を飛躍的に増加させる対策が必要です。

 近年、若者や定年退職者、都市住民の間で就農や農山村への移住希望者がふえ、農業への関心が高まっています。それを就農に結び付け、定着させるために国や関係機関、地域社会が一体となった長期にわたる本格的、総合的な支援を強めます。

 「新規就農者支援法」を制定し、就農希望者の研修・教育機関の整備、農地の確保、資金、販路や技術・経営支援、住宅の紹介など総合的な支援体制を整備します。中山間地や過疎集落での定住者、移住者にたいし、営農や暮らしの両面から特別の支援を行います。

 日本共産党は、新規就農青年に3年間、月15万円支給する制度を早くから提案してきましたが、政府も12年度から青年就農給付金制度(45歳未満の就農者に年150万円、最長5年支給)をスタートさせました。必要な予算を確保するとともに、親元就農の場合の5年以内に経営委譲するなどの要件を緩和して、一定期間の就農を前提として希望する青年すべてを対象にします。定年退職者など中高年の就農希望者に、農業技術の研修や農地のあっせんなどの支援を行います。

 新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農業生産法人や農家への支援も強めます。「農の雇用促進事業」の活用などを含めて、農業法人などに雇用される形で就農の道も広がっていることに対応し、行政や関係団体による雇用の安定や技術習得などを推進します。

 経営開始のための投資が多額になる畜産などでは、後継者不在で離農せざるをえない農家と新規参入希望者を結び付け、施設や機械、農地などをそのまま引き継げる仕組みを整備するなど、新規参入者の負担軽減をはかります。

 生業としての就農だけでなく市民農園や体験農業、学校・福祉農園、グリーンツーリズム、農業ボランティアなどさまざまなチャンネルで国民が農業・農村にふれ、生産に関わるようになっています。これらも農業と農村の多様な担い手として位置づけ、支援します。

 財界主導の農協改革を中止し、農業関係団体の役割を重視する――持続可能な社会を展望しても、東日本大震災の教訓からも、相互扶助を基礎とする協同組合や地域社会の共同の役割が改めて見直されています。国連は、2012年を国際協同組合年として設定し、その発展を呼びかけました。農協や各種の共同組織は、集落営農や担い手への支援、農産物の販路の確保、加工施設の運営など地域農業の振興と農村社会の維持に欠かせません。

 総合農協の事業からの信用・共済事業の分離、連合会の株式会社化、中央会の分離・解体などを打ち出した2015年の農協法「改正」は、そうした時代の要請に逆行し、農協の営利企業化を押し付けるものにほかなりません。安倍政権は引き続き、農協が地域住民にも各種サービスを提供し、農村社会のライフラインとして役割を担っている准組合員制度の見直しなどもねらっています。総合農協の実質的な解体につながるこのような「改革」の押しつけに強く反対し、農協の自主性・独立性を尊重し、組合員、役職員が力をあわせて協同組合としての役割をはたせるよう、国や自治体も協力し、支援します。

 農地法の改悪反対し、株式会社などの農地利用を厳しく監視する――この間の農地法「改悪」で農外企業の農地利用に道が開かれましたが、もうけ第一の株式会社が進出する対象は優良農地であり、そこで成り立っている農家や集落営農と競合し、追い出すことになりかねません。株式会社の農地所有の解禁や農業生産法人(農地所有適格法人)の企業比率を高める要件緩和には厳しく反対します。国家戦略特区の名目で、農地法を形骸化する農業特区は中止させます。農地の利用は、農家とその共同組織を優先し、株式会社一般の農地進出に厳しい監視と規制を強めます。

 農地中間管理機構を通じた農地の集積においても、地域の多様な担い手を優先するようにし、地域外の大規模経営や法人への貸し出しは制限します。中間管理機構の業務に、耕作放棄地の復旧と保全を位置づけ、機構の責任で一定期間管理できるようにし、自治体、農協、農業委員会と協力して農地の維持・利用改善に役立てるようにします。

 農業委員会制度の根幹を維持する――2015年に農業委員会法「改正」が成立し、2016年4月1日に施行されました。農業委員の公選制の廃止、業務内容からの「意見の公表、建議等」の削除など「農民の代表機関」としての役割を弱める改悪です。そのもとでも、農業者が委員の多数を占め、農地に関する一定の権限を持つ行政委員会として地域の農業者の声を農地管理や農政に反映させる取り組みを強めることが求められます。市町村長による農業委員の任命にあたって公募や推薦、議会での承認などの手続きを徹底し、農民の代表性、農地の自主的管理を担う機関としての役割が発揮できるようにします。農業委員会の事務局体制を強化し、委員手当ても引き上げるなど必要な予算を増額します。

安心して農業に励め、農村で暮らせる条件を抜本的に整える

――価格保障を中心に所得補償を組み合わせ、安心して再生産できる農業に

 農業や農村の担い手の確保にもっとも必要なのは、安心して農業生産に取り組め、農村で暮らし続けられる条件の確保です。歴代政府の農政の下でそれが長期にわたって損なわれてきたことが、担い手不足の根本的な原因です。対策の最大の柱は農産物の価格保障を中心に所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策をしっかり行うことです。

 豊凶変動や価格の乱高下が避けられない農産物の価格保障は、再生産を保障し、農家の意欲と誇りを高めるうえで決定的であり、食料自給率を向上させる基礎的条件です。農業大国であるアメリカでは、WTO(世界貿易機関)のもとでも主な農産物に生産費を農家に保障する仕組みを二重三重にもうけています。EUでも、手厚い所得補償とともに農産物の最低価格支持制度は維持しています。

 農畜産物の特性を踏まえて品目別の価格・経営安定制度の導入、あるいは現行制度の充実・改善に取り組みます。加えて、国土や環境の保全など農業の多面的な機能を評価して、農地面積などを対象にした各種の直接支払い(所得補償)を抜本的に充実します。

 安倍政権は、農業のもつ多面的機能を評価する「日本型直接支払い」や各種の「経営所得安定対策」を講じていますが、農産物の価格暴落や資材価格の高騰によるコスト割れを放置したままです。米に対する直接支払いを半減し、18年産からは全廃を打ち出しています。そのもとで、政府が導入を検討する収入保険制度も、生産コストを規準とするものでなく、価格低落が長期的に続いているもとでは経営安定を保障するものにはなりません。

 「経営安定対策」などが真に農業の多面的機能や農業者の経営安定に結び付くためには、主な農産物についても生産費がつぐなえ、努力すれば他産業なみの所得が得られる条件を保障することが不可欠です。

米価の暴落をおさえ、生産と価格の安定をはかる

 2014年産生産者米価の大暴落は、大規模稲作経営を含めて米の再生産を危うくし、地域経済にも深刻な打撃を与えました。15年産米価がわずかに回復したとはいえ、全国平均の生産コストを大幅に下回る事態に変わりはありません。政府が米の需給安定にたいする責任を放棄し、市場まかせにしていることに大きな原因があります。安倍政権がすすめる18年度から政府による米生産調整を廃止する方針は、米の生産や流通を完全な無秩序の世界においやり、生産者米価の大暴落に拍車をかけるのは必至です。「美しい田園」を将来に引き継ぐために米政策の抜本的転換が不可欠です。

 米の需給や流通の安定に政府が責任をはたす――国民の主食である米の需給と価格の安定に政府が責任を持つべきです。豊作や消費減などで余剰米が発生した場合には政府買い入れを増やすことで需給調整をはかります。

 備蓄米100万㌧以上を確保し、非常事態にたいする備えと同時に、需給安定にも役立てます。輸入米の主食用への流入を抑え、加工用も、国産米で対応するようにします。

 大手流通企業による買いたたき、産地・品種・品質の偽装表示など無秩序な流通を規制するルールを確立します。年間を通じて計画的に集出荷・販売する業者・団体にたいして金利・倉庫料など必要な助成をおこないます。

 米価に「不足払い」制度を導入する――米作農家の多くが家族労働費どころか経営費もまかなえない事態を根本から改善し、米作経営を安定させることは農業再生の出発点です。

 米価に過去3年の生産コストの平均を基準として販売価格との差額を補てんする「不足払い制度」を創設します。当面、安倍政権になって半額に減らした米直接支払いを元に戻し(10㌃1万5000円)、価格変動支払いも復活させます。

 あわせて水田のもつ国土・環境保全の役割を評価し、当面10アール1~2万円の直接支払い(所得補償)を実施します。

 主食用米以外の増産に力を入れる――米の生産調整は、水田における麦・大豆・飼料作物などの増産と一体で取り組みます。そのために、転作作物の条件を思い切って有利するなど、増産できる条件を整えることを優先します。当面、麦・大豆・飼料作物などの助成金を10アールあたり平均で5万円(現行3万5千円)増額し、地域農業の実態をふまえて配分できるようにします。米粉・飼料用米には、10アール平均8万円の助成、原料として受け入れる地場の加工企業などへの支援を強め、増産に見合って輸入を抑制するなど、安定した販路・需要先を確保します。

畜産、野菜、畑作、果樹などに価格・所得対策を充実する

 日本は、地域の条件に応じて畑作、畜産、果樹、野菜など多様な生産が発展してきましたが、外国産に押されて多くの作物・畜種で国内生産の低下傾向が続いています。安倍内閣は、TPP大筋合意で、多くの野菜・果樹・鶏肉・鶏卵などの関税を即時または、一定の年限後に撤廃することを約束しながら、影響は軽微として強行しようとしています。とんでもありません。TPPを断念させるとともに、品目ごとの生産や流通、加工などの実態に即した価格保障(価格安定・支持制度)と所得補償の拡充で、農家経営が安定して持続できる条件を整えます。

 酪農・畜産など――酪農・畜産は、高齢化や離農の増加による生産基盤の縮小に歯止めがかかりません。円安による飼料代の高止まりもあり、輸入飼料に依存し、大規模化に偏重した畜産は深刻な行き詰まりに直面しています。平均規模でEU水準を上回る北海道の酪農経営が、過重な労働負担、糞尿処理問題、負債の増大などで離農に追い込まれる例が後を絶たたないのは、その象徴です。政府の畜産政策を、規模拡大一辺倒から日本の大地に根ざした循環型の畜産経営を支援する方向に転換するのは急務です。

 酪農では、加工原料用の乳価に生産費を基準とする不足払い制度を復活させ、需要増大の見込めるチーズや生クリームまで対象を広げます。生乳の国内需給に影響を与えないよう乳製品のカレントアクセス輸入を規制します。生乳の需給調整や生産者価格の安定、新鮮な牛乳の安定供給に重要な役割を果たしている指定生乳生産者団体制度を維持します。生乳生産の持続に欠かせない乳用後継雌牛の確保に特別の支援を行います。

 肉用子牛補給金や牛・豚肉の価格・経営安定対策は、単価や補てん水準を引き上げ、再生産が可能になるよう改善・充実します。肉牛・豚マルキン制度はTPP関連法から切り離しての法制化をはかります。

 飼料作物の増産を支援するため、水田・畑・採草地への直接支払いを拡充するとともに、増産が計画されている飼料用米の保管・流通施設など飼料の広域流通体制を整備します。 円安がもたらした飼料価格の高騰よる畜産経営の破たんを防ぐため、配合飼料価格安定基金からの補てんを安定的なものにするために万全な財源を確保します。

 畜産クラスター事業は規模拡大や法人化が要件とされているため、施設や機械の過剰投資を招き、補助金が畜産農家の実質的な負担減にならないとの批判も少なくありません。要件を見直し、家族経営を含めて地域の多様な畜産経営が計画的に設備投資・更新などに取り組めるよう支援します。また資金調達や債務保証の仕組みの充実をはかります。

 野菜・果樹、甘味資源など――野菜や果樹は、作柄変動に伴う値動きが大きいうえに、増大する輸入品に圧迫され、国内生産が減少を続けています。景気悪化による消費減もあいまって物財費さえ下回る低価格が多くの品目でたびたび起きています。現行の野菜価格安定制度を、対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を引き上げる、大規模経営の多少による産地差別を廃止する、加入や支払いの事務を簡素化するなどの改善・充実をはかります。加工向け生産や自治体が行う特産物の価格安定対策に国が支援を強めます。ミカンやリンゴなど果実生産は、豊作時に加工に向けることで生果の需給調整が可能になるよう、輸入原料の規制とあわせて、加工向け果実価格安定対策を創設します。

 北海道や南九州・沖縄の基幹作物であり、国内で貴重な甘味資源作物であるてんさい・ばれいしょ、さとうきび・かんしょなどは、生産・製造コストと販売価格の差額を補てんする現行の経営安定対策を充実・強化し、再生産が可能となるよう支援を強めます。

 麦・大豆――自給率の極端に低い麦・大豆の増産は急務です。土地条件の改良や栽培技術・品種の改善、加工・流通への支援などとあわせて、麦・大豆に生産費と販売価格の差額を補てんする交付金制度を復活し、充実させます。水田での作付け増をはかるため、手厚い所得補償を実施します。国産を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大を支援し、国産麦や大豆の需要拡大にとりくみます。

 農業の多面的機能に着目した直接支払い(所得補償)を拡充する――農業生産の4割を担う中山間地など条件不利地域での農業を維持するためには、特別の援助が必要です。中山間地域等直接支払い制度を恒久制度として立法化し、高齢化が進む実態を踏まえて、集落協定の要件の緩和、対象地域の拡大、協定期間の弾力化、事務手続きの簡素化などを進めます。高齢者率の高い集落への支援や樹園地などには補償水準を手厚くします。

 農業のもつ国土や環境を保全などの多面的な機能は、農産物の価格には反映されず、農家の無償労働で国民に提供されてきたものです。これを正当に評価して、水田・畑地・樹園地など地目に応じた直接支払い(所得補償)を実施します。

 災害補償制度の充実をはかる――地震、台風、豪雨、豪雪、高温、日照不足など自然災害による農業被害が毎年どこかで発生しています。それが生産の減少や農産物価格の乱高下をもたらし、農家の営農意欲を後退させ、離農に追い込んでいます。農業災害補償制度は重要な制度ですが、共済組合の広域化や対象農家の限定、小規模な経営の除外などがひろがっています。地域農業を支えているすべての農家を対象にするとともに、加入率の低い果樹、施設などの共済を利用できやすく改善します。

 今年も熊本・大分地震が発生し、農地、機械・施設、農畜産物に甚大な被害がでています。甚大な被害を受けた農業経営が、早期の経営再開に乗り出せるよう、東日本大震災でとられたような全額国費による交付金制度(リース制度などを含む)など手厚い支援を行います。その際、中小規模も対象にするなど助成金の早期支給とともに、期間延長など、実情に合った援助を行います。

 農家の経営規模に見合った機械や施設の導入への支援――農業機械や施設の大型化の推進はコストを高め、農家の所得を減らす場合が少なくありません。経営規模に見合った機械の導入、共同利用の機械更新への支援、肥料の価格安定、軽油引取税減免の恒久化などで生産コストの低下、農家所得の増大、消費者価格の安定をはかります。

 品種・栽培技術の改良など試験研究を強化する――作物の増産と生産コストの削減には、品種改良・栽培技術など基礎的な研究と援助が不可欠です。効率優先による基礎研究の切り捨てではなく、食料の増産、農業経営の改善に役立てる方向で強めます。

 消費税増税を中止する――農産物の販売価格を自分で決められない大多数の農業者にとって、消費税は、生産費の上昇分を農産物価格に転嫁できず、赤字でも身銭を切って払わなければならない営農破壊税です。所得の低い人に重くのしかかる最悪の不公平税制であり、最悪の景気破壊税であることは、8%への増税後の経過で明白です。“軽減税率”の導入も農業者への負担を増やすだけです。消費税10%への増税断念を強く求めます。

山村地域の基幹的産業として林業・木材産業の再生をはかる

 国土面積の67%を占める森林は、再生産可能な木材の供給とともに、中山間地域の維持と国土・環境の保全、水資源の涵養、生物多様性のなど国民生活に不可欠な役割をはたしています。また健全な森林の育成・管理は、CO2の吸収・固定による地球温暖化防止への寄与など「低炭素社会」の実現にも欠かせません。

 わが国の森林は、蓄積量が49億㎥を超え、毎年、年間消費量を上回る約1億㎥が増大しています。国産材の利用と森林の公益的機能の持続的な発揮は、森林・林業者だけでなく、国民共通の願いです。

 森林・林業の持続的な管理経営のために、外材依存の加工流通体制を改めて、地域の実態に即した国産材の生産・加工・流通体制を構築し、林業・木材産業の再生をはかります。

外材依存政策を転換し、TPPの批准をやめ撤退する――TPP協定では、かろうじて残されていた製材品や合板の関税が撤廃されます。「国内の温暖化対策や木材自給率の向上のための森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮すること」をもとめた国会決議違反です。国産材の利用拡大と森林・木材産業の再生に逆行するものであり、TPPからの撤退を要求します。

自主権を尊重した林産物貿易を提起する――丸太や製材品などの林産物は、WTO(世界貿易機関)協定では、自動車や電化製品と同じ「鉱工業製品」扱いになっています。多くの国が環境保全や林産業育成などのため、丸太の輸出規制を行っており、実質的に自由貿易品目でなくなっています。森林生態系や自然環境は、人間の生存にかかわる問題であり、木材の生産・流通を強い者勝ちの市場まかせにする時代でありません。

 輸出国主導のWTO体制を見直し、各国の自主権を尊重した林産物貿易、森林・林業政策を保障することを世界に提起します。

熊本地方震災による森林・林業被害の復旧に全力でとりくむ―山腹崩壊や地滑りなどによる林地崩壊や林道・施設などの被害が発生しています。林地や林道、各種施設の全面的な復旧、地域材を活用した仮設住宅や復興住宅の建設に力を入れるなど森林・林業の再生のとりくみを支援します。

地形や自然環境に配慮した林道・作業道の路網整備など生産基盤の整備をはかる――生産基盤となる林道や作業道の路網整備が大きく立ち遅れています。路網整備では、生態系や環境保全に配慮した技術を確立し、地域の実態に即して整備ができる助成制度にします。また、日本の地形や森林にあった林業機械の開発を国の責任ですすめます。

森林所有者に再造林できる価格を保障する――国の林業政策の目的に、「林産物の需給および価格の安定」を位置づけ、国有林と公有林による需給調整や搬出コストの削減など、政府が責任をもって再造林できる原木価格を保障するとりくみをすすめます。

地籍調査・境界確定を促進し、地域の実態に即した産地づくりにとりくむ――わが国の森林は、亜熱帯から亜寒帯間まで分布し、植生も多様です。地域ごとに異なる歴史や自然的、社会的条件を持っており、林業活動も画一的、効率一辺倒ではなりたちません。森林管理の基礎となる林地の地籍調査は4割台にとどり、事業の障害になっています。地籍調査と境界確定を促進し、森林所有者や素材生産、製材・加工、工務店など川上と川下が連携した地域の実態に即した産地づくりを支援します。

架線系システムの技術の継承、発展をはかる――急傾斜地では、林地保全などから架線集材システムが有効です。集材機の開発や技術者の養成と技術の継承、発展をはかります。

国産材のカスケード利用にとりくむ――良質材から低質材まで、建築や木製品、紙製品、エネルギーなど、100%有効に利用するカスケード利用にとりくみます。エネルギー利用は、「材として利用できないもの燃料に」の原則を確立します。

公共建築物や土木事業、新たな木材製品の開発すすめ、国産材の利用を広げる――「公共建築物木造利用推進法」が施行されて6年、毎年の実績は木造化の促進に該当する公共建築物の1割台にとどまっています。不足している木造の設計・建築技術者の育成や難燃化など、木造建築技術の開発・普及にとりくみ需要を計画的につくりだすなど、可能な限り木造化を推進します。また、土木事業での利用拡大など新たな木材製品の開発をすすめ、国産材の需要拡大にとりくみます。

木質バイオマスの推進と発電の適切な配置と熱電併給をめざす――木質バイオマス利用は、林地残材等の活用による収入確保や雇用の確保など林業の再生にとっても大事なとりくみとして積極的に推進します。木質バイオマス発電では、一部地域で製紙用向けなどが燃料になっている状況があります。発電施設は、地域の資源量に即した適切な配置とし、エネルギー効率を高めるために排熱を利用する熱電併給を推進します。

シカなど野生獣による食害や病虫害害対策をすすめる――シカなどによる食害やナラ枯れなどの被害拡大が生態系の破壊など人間生活にも影響を与えています。野生獣の防除と捕獲、個体数の管理や病虫害の効果的、効率的な防除技術の開発をすすめます。捕獲した野生獣の食肉流通対策を支援します。

林業就業者の計画的な育成と定着化の促進、就労条件の改善をはかる――林業には,森林の多面的機能や生態系に応じた育林や伐採などの専門的知識や技術が必要です。基本的技術の取得を支援する「緑の雇用」や「緑の青年就業準備給付金」事業の拡充、事業体への支援を強め、系統的な林業労働者の育成と定着化にとりくみます。

また、安全基準などILOの林業労働基準に即した労働条件や生活条件の改善にとりくみ、安心して働ける環境をつくります。

森林組合など林業事業体への支援を強める――森林組合員の所有面積は、私有林面積の7割を占めており、森林組合は森林所有者の協同組織として、地域の森林整備の中心的役割を担っています。市町村行政や素材生産業、製材業などと連携し、地域林業の確立のために積極的な役割を果たすよう支援を強めます。

林業女子会などボランティア団体等への支援を強める――森林づくりにとりくむ女子会やボランティア団体は全国で3000を超え、国民の森林・林業への関心を高める大きな役割をはたしています。技能の習得や必要な資材の貸し出し、森林・林業者との自主的な相互協力・交流などを支援します。

地域資源の活用や都市住民との交流などで就労機会の確保をはかる――菌茸、山菜、薬草など地域資源を活用した特産品の生産振興や加工・販売などのとりくみ、自然環境を活用したレクリーション,保健・休養などを通じた都市住民との交流などのとりくみをすすめることとあわせて就労機会を増やします。

森林のCO2吸収力を評価した排出量取引で、山村地域と都市部の連携を強める――国内のCO2排出量の削減を促進するために、森林整備によるCO2の森林吸収量と、化石燃料の木質バイオマスを使うことによるCO2排出量の削減量を評価して、都市部の企業や自治体による排出削減のとりくみにカーボン・オフセット(炭素排出量の相殺)を活用する制度を本格的に導入し、植林・間伐などの森林整備の資金を生み出します。

 「地球温暖化対策税」の使途に、森林吸収源対策を位置づけ、森林・林業における地球温暖化対策の実行に必要な財源にあてるようにします。

国有林の持続的な経営管理にとりくむ――国有林は、国土面積の2割、森林面積の3割を占め、奥地山岳地帯や水源地帯に広く分布し、9割が保安林に指定され、国土保全や環境保全など国民生活にとっても重要な役割を果たすべき地位にあります。「国民の共有財産」として、①林産物の計画的・持続的供給、②国土保全、水源涵養、自然環境の保全などの公益的機能の発揮、③地域振興への寄与等を確実に実行していくため、技術者の育成確保、自治体・住民との連携による地域の経済や雇用に配慮した、持続的な管理経営にとりくみます。木材販売にあたっては大企業優先でなく、地域産業との結びつきを強め、適正価格での適切定量な販売に努めます。

漁業者の経営安定と資源管理型漁業で水産物の安定供給をはかる

 四方を海に囲まれ、変化に富んだ海岸線をもつ日本の漁業は、沿岸、沖合を中心に多様な形態で営まれ、豊かな魚食文化をはぐくんできました。しかし、漁業資源の減少と漁業生産量の減少傾向は依然続いています。また、海水温の上昇、潮流の変化など地球温暖化の影響は、漁類の生育、回遊にも変化をもたらしています。

 なかでも、東日本大震災による津波被害は、沿岸漁業と水産関連施設を壊滅させ、東電福島原発事故による放射能汚染は解消のメドがたたないため、いまだに操業を再開できないうえ、度重なる汚染水の流出で、国民の水産物の安全への不信は払拭されていません。被災後5年たちましたが、復旧の速度は遅く、とくに、漁業と水産業一体の復旧の遅れは深刻です。しかも、政府と東電は、被災5年を経てこれからを復興・創生期間に位置づけ、営業、生業への賠償を打ち切ろうとしています。

 国民による水産物の消費減退は、消費税の8%への増税でさらにすすみ、輸入との競合や低価格競争を利用した大手量販の買い叩きなどによって生産者魚価は低迷し、アベノミクスがもたらした円安で燃油や資材価格の上昇による経費増大などで、漁業経営の困難は深刻さを増し、担い手の減少も止まっていません。TPP大筋合意が約束した水産物の関税撤廃・削減は、こうした漁業・水産業の困難に拍車をかけずにおきません。TPPからの撤退は焦眉の課題です。

 世界的にも、海洋をめぐる国際環境の変化、利益優先の開発による漁場の悪化、世界的な水産物の需要増大と発展途上国を中心にした漁獲能力の拡大などにより、水産資源の減少が続いています。漁獲を抑える資源管理の必要性が強まっており、水産物を輸入に頼ることが困難になっています。

 世界有数の漁場である東日本太平洋沿岸の漁業・水産業の復旧を急ぎ、適切な資源の保全・管理をすすめながら、沿岸・沖合漁業と水産業を振興し、国内生産を中心に水産物の供給を安定させることがきわめて重要になっています。

魚価の安定、燃油・資材経費の引き下げなど漁業経営安定対策を確立する――漁業経営を安定させ、乱獲を防ぎ、資源の保全をはかる資源管理型漁業をすすめ、政府の責任で魚価安定対策を強化します。一律な漁獲削割り当てを見直し、沿岸つり漁業など資源に負荷の少ない持続的な漁法が続けられるよう、漁獲割り当て、操業区域などで配慮ができるようにします。

 調整保管や下落時の補てんなどの漁価の下支えとあわせて、漁業共済・積み立てプラス制度の拡充などで、漁業者の所得対策の確立をはかります。水産資源保全のための休漁・減船による減収補償を国の責任で充実させます。

 省資源型漁船や漁法にたいする援助を強めるとともに、現在、時限立法で措置されている燃油(軽油引取税など)の免税措置を恒久化します。アベノミクスによる円安誘導や消費税増税がもたらした燃油、漁船・漁具、養殖用飼料の価格高騰による経営困難にたいする補てんなど、漁業者の経営安定と消費者価格を安定させる対策をつよめます。

 卸売市場の公正な運営につとめるとともに、相対取引でも大手量販店などが生産コストを無視して水産物価格を買い叩くなどの優越的な地位利用を規制する公平な取引のルールづくりを進めます。

TPP参加をやめ、資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざす――世界の水産物消費量が増え、漁業資源の減少があきらかなもとで、関税の撤廃・削減を受け入れようとしているTPP協定が漁業生産に重大な困難をもたらすことは明らかです。TPP協定の批准を断固阻止するとともに、貿易拡大一辺倒のWTO協定を見直し、適切な輸入規制と漁業者の所得確保など、各国の主権を尊重した資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざします。

 クロマグロ、クジラなど遠洋漁業について、国際的な資源管理を尊重しながら、日本の魚食文化を守る方向での外交的努力をすすめます。

漁業と水産業を一体にした震災復旧を早急にすすめる――東日本大震災からの復旧・復興は、漁業と漁場とともに、漁港、冷蔵庫、水産加工、流通など水産業を一体に復興することが、地域経済と地域社会の維持にとっても極めて切実です。グループ補助金の適用期間の延長、共同化や効率を優先した採択条件など選別的な要件を見直し、地域・集落での計画・合意を前提に、漁業と水産業を一体で復旧できるよう復興計画、復興予算のあり方を改善します。漁業者や地域住民がのぞまない巨大防潮堤などを押しつける復興計画を見直し、漁業活動や住民生活、景観との両立をはかる津波対策、沿岸づくりをすすめます。

放射能汚染対策を強化する――東電福島原発事故が引き起こした放射性物質による海洋汚染のため、福島県沖ではいまだに試験操業にとどまっています。禁漁が続いている河川・湖沼も少なくありません。放射能調査をきめ細かく行うとともに、国が責任をもった情報提供などで魚介類の安全を保障し、漁業再開の条件をひろげます。漁業関係者にたいしては、東電による休漁の保障、施設の復旧費用の賠償とともに、操船・漁獲・加工技術の維持・継承などへの国の助成対策をつよめます。

新規漁業就業者支援制度を創設する――各地の自治体で新規就業者にたいするさまざまな対策を実施しています。国の新規漁業就業者総合支援事業を希望者が受けやすい内容に充実・改善するとともに、自治体などが行っている若い新規就業者に一定の期間、生活費を補てんする制度を国の制度として確立し、漁業への若い人の就業と定着をはかります。

大型開発をやめさせ、漁場の保全、操業の安全をはかる――沖縄県名護市辺野古沖への米軍基地の建設をはじめ干潟を破壊する大型開発をやめさせ、諫早湾への海水導入による干潟の再生など漁場の保全・改善をすすめます。潜水艦、巡洋艦による海難事故の根絶、操業を規制する米軍の爆撃訓練海域の廃止・縮小など、漁船操業の安全をはかります。

 尖閣列島、竹島、北方領土など、領土問題に関連して、日本の漁民が操業の自粛や縮小を余儀なくされる状況をなくすため、政府に、領土問題での道理ある主張とともに、日台漁業取り決め、中国漁船のサンゴ密漁問題などについて、政府の責任で主権の擁護と漁民の権利を守る立場での交渉がすすめられるようにします。

漁業・漁村を維持する地域活動を支援する――沿岸漁業の再生につとめるとともに、漁業集落、水産業集積地の再建を、地域の計画・合意を基本に、国が責任をもってすすめます。離島を含む、漁業・漁村の環境や国土保全にはたしている役割を正しく評価し、交通網の整備、「離島漁業支援再生交付金」の充実など、多面的機能を維持・増進するための地域活動への支援制度をつくります。国の予算の使い方を、漁業者の所得補償や販路の確保、地産地消の推進、産地における水産加工の振興などを重視するようにします。

 東日本大震災・原発放射能災害からの復興を急ぐ

 東日本大震災と原発・放射能災害は農林漁業と地域社会に甚大な被害をもたらしました。そこからの復旧と復興は、被災者の暮らしや地域経済の回復の柱であり、わが国の農林水産業の再生にむけても欠かせない一歩です。

 営業再開を望むすべての農家・地域を引き続き支援する――震災後5年が経過し、原発・放射能被害の深刻な地域を除いて、農地や施設の復旧・整備が進み、大規模農業法人が設立され、営農が再開される地域は広がっています。しかしその過程で、多数の中小農家が支援を得られず営農の断念に追い込まれ、条件の悪い地域の農地整備が後回しにされ、営農再開が遅れている経営も少なくありません。営農再開しても農地の排水不良や地力不足などによる生産の不安定、失われた販路の確保など課題も山積しています。

 今年度から「復興・創生期間」に移行しますが、農地や施設、機械の整備が必要というところがまだ少なからずあり、新たに誕生した大規模農業法人への支援も引き続き求められています。支援の対象を大規模経営や共同事業に限定するのでなく、希望する農家すべてが営農を再開するか、集落営農法人等に参加できるよう支援します。

 「先端農業の育成」が強調され、民間企業が参加した大規模野菜工場の建設などに巨額の補助金が投入されていますが、復興支援はあくまで被災農家が主体となった地域農業の再建を中心にし、施設や機械の投資も過大にならないようにします。

 原発事故による農林漁業被害に全面的な賠償を求める――原発・放射能災害は、福島県を中心に農地や森林、海を汚染し、住民がふるさとを追われ、農林漁業の再生どころかスタートにもつけない地域が広範囲に残されています。森林の除染もほとんど手がついていません。農林漁業者の損害のすべてを国と東電の責任で全面的に賠償することは、農漁業の経営を再生する最低の条件です。

 国や東電による賠償打ち切り、“福島切り捨て”の動きを許さず、農林水産物の価格低下や販売不振などの“風評被害”、事故に伴う諸経費の増加、使用できない農林地や農業施設の損失、汚染・除染に伴う精神的被害をふくめて、東電に全面的な賠償を行わせます。賠償金について非課税扱いにし、賠償請求の手続きも簡素化させます。 

 農用地について詳細な汚染マップを早急に作成するとともに関係機関の英知を結集して除染方法の開発・実証をすすめ、除染を急ぎます。森林の除染方法についての実証をすすめ可能な除染をすすめます。放射能に汚染された牧草、稲ワラ、堆肥などの処理方法が決まらず、依然として農地や作業場などに滞留しています。政府の責任で早急に処理方法や処分地を決定し、あらたな生産の開始を可能にします。

 農林漁業者・消費者の共同を重視し、「食の安全・安心」をひろげる

 輸入食品への農薬残留、遺伝子組み換え食品の横行など食の安全・安心を脅かす事態が後を絶ちません。「安全な食料は日本の大地から」の実現をめざしつつ、食品の検査体制・安全基準を強めます。

 食の安全を脅かすTPP協定から撤退する――TPP協定は、遺伝子組み換え食品の「貿易の促進」をうたい、食の安全基準は貿易の障害にならないよう“科学的根拠”にもとづいて決定し、決定過程に透明性を確保するため外国企業の注文を受け付ける、などを参加国に求めています。遺伝子組み換え食品のように科学的判断が分かれる問題で独自の基準や表示を行うことが困難になります。食の安全への懸念を広げるこのような協定を認めるわけにはいきません。この点からもTPPからの撤退を強く求めます。

 BSE対策を堅持し、牛肉の安全を確保する――TPP参加のための日米事前交渉で、BSE(牛海綿状脳症)対策がずさんなアメリカ産牛肉の輸入拡大のために月齢制限が緩和されましたが、政府は全廃しようとしています。率が低いとはいえ、発生メカニズムもわからない非定型形BSEが存在し、定型でも48か月齢まで発症する牛が存在する以上、食の安全上も、BSE根絶という世界的な課題の達成のためにも、BSE全頭検査は維持します。特定危険部位の除去など現行のBSE対策を堅持し、牛肉の安全を確保します。

 口蹄疫や鳥インフルエンザの発生防止に万全を期す――口蹄疫や鳥インフルエンザ、豚流行性下痢症、ヨーネ病など各種感染症の発生の影響を最小限にとどめるよう、国の責任で監視体制を強め、感染拡大防止を講じ、獣医師など人的資源の確保をはかります。被害農家には、殺処分した家畜の評価額を再生産可能な価格とし、埋却までの間のエサ代の補償、出荷規制期間の減収保障や新たに導入する家畜が販売できるまでの期間の所得などの直接支援をおこないます。

 水際での検査体制を強化する――輸入食品の水際での検査体制を抜本的に強化し、食品衛生法違反の輸入食品の国内流通を根絶します。食品の原料・原産地表示をすべての加工品に実施します。食品に関する表示制度を一本化し、製造年月日表示を復活させます。

 遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。

 安全で環境にやさしい食料の生産・流通を広げる――「効率化」一辺倒で農薬や化学肥料に過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。食の安全や環境に配慮した有機農業に一定の基準で所得補償を実施します。

 卸売市場の公正な運営をはかる――公設の卸売市場が公正で適正な流通に資するよう、大手産地と大手スーパー中心の相対取引に偏重しないよう、地方産地、中小業者の参加を保障する条件を強めます。相対取引や予定価格の押しつけなど、優越的地位を利用し、コストを無視した低価格での納入を強要する大手スーパーなどの横暴、大手集荷者による指値の強要などを規制し、産地、中小小売が対等な立場で交渉できるようにするための協議会設置など、公正な流通ルールを実現させます。中央卸売市場をはじめ、多くの施設の改築・移設などがおこなわれていますが、人口・取引量の減少などから、自治体が過大な負担を負わざるを得ない状況が出てきます。将来見通しをふくめ施設規模や運営費用などが過大にならない整備計画がたてられるよう国の整備方針の見直しをはかります。

 農林水産予算を大幅に増額して、食料自給率50%をめざす

 日本の農林水産業を再生するには、長く続いた一次産業つぶし政治の傷が深いだけに、長期の見通しによる計画的な取り組みと関連予算の思い切った増額が必要です。とりわけ、 長年"猫の目農政"に苦しんできた農家が、将来にわたって農業に安心して励めると確信を持てるようにするためにも、政策の一貫性、持続性が不可欠です。

 日本共産党は、食料自給率の早期50%達成を目標に掲げていますが、そのために、価格保障や所得補償の充実などに必要な農林水産予算を大幅に増額します。

 一般歳出に占める農林水産予算の割合は2000年度の7.1%から2016年度には4.0%に低下しています。現在の国の予算規模を前提にしても、農業を「国づくり」の柱に据え、予算上の位置づけを16年前の水準に戻すだけでも約1兆円は確保できます。

 TPP協定が発効すれば、牛肉・豚肉の関税引き下げや国家貿易による麦の売買差益(マークアップ)の削減などで、畜産や麦作振興に充てられる予算が2000億円前後失われ、その分一般の農林予算を圧迫することになります。農林水産振興のための安定した財源を失うという点でも、TPP協定は撤退すべきです。

 食料の増産には、湿田の乾田化、用排水施設の維持・補修、山間地域の圃場整備などの土地改良事業が欠かせません。土地改良や施設の建設などは、大型事業中心ではなく、維持管理・補修を重視し、農家や地元負担が少なく、経営改善につながる事業に予算を重点的に配分します。 

農林漁業に基盤をおいた農山漁村の再生に取り組む

 農林漁業の衰退を放置し、企業誘致や公共事業、原発などの大型開発に依存した地域づくりは、企業の海外進出、公共事業の激減、原発事故などでゆきづまり、各地で破たんしています。農山村の人口減少、地域崩壊の危機が広がる中、安倍政権は、雇用創出や移住促進、子育て支援などをうたった「地方創生」を打ち出していますが、「選択と集中」の名で拠点都市・拠点集落への人や投資の集中、農林漁業を破壊するTPPの推進では、農山村、国土の崩壊は止められません。

 いま国民の中には、農林漁業のもつ多面的な価値に共感し、都会から農山漁村に移住する “田園回帰”の動きが強まっています。こうした国民の願いにこたえた農山漁村再生には、農林漁業を基盤としながら、生産者・地域住民・消費者との共同をひろげ、地域資源をフルに生かした循環型の経済で、就業や雇用の場を確保することが重要です。

 地産地消を重視した地域づくりをすすめる――わが国の農林漁業は、地域ごとにきわめて多様であり、再生の取り組みは地域の自主性を尊重すべきです。「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などをかかげる自治体が各地に生まれています。直売所や産直がにぎわい、高齢者や女性、兼業農家などが元気に参加した都会の消費者との交流もさかんです。地産地消や食の安全を重視した地域農林業、沿岸漁業の振興をはかります。

 農林漁業の「6次産業化」はあくまで農林漁業者主体に――農林水産物の生産・販売とともに地域の資源を生かした加工や販売に力を入れることも、農林水産物の需要を拡大し、地域の雇用を増やし、農漁家の所得を増やすうえで重要です。地域資源の有効利用、農家や協同組織による農産物の直売、加工、観光、農家レストランなどの取り組みを積極的に支援します。民間企業と連携する農業の「6次産業化」はあくまで農業者主体を貫き、連携する企業も可能な限り地場企業を重視します。

 太陽光、バイオマス、小水力発電など自然エネルギー開発に力を入れる――地球温暖化対策の一環として、世界ではいま、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発が進んでいます。過酷な原発事故は、その本格的な普及を切実に求めています。原発ゼロを決断し、農山漁村に豊富にある再生・自然エネルギー資源の積極的な活用を、農山漁村経済や雇用の重要な柱として位置づけ、開発・普及に力を入れます。その際、資源の利用が乱開発や地域環境の破壊につながらないよう大規模開発を規制し、地域の住民や団体の共同した取り組みを支援します。

 過疎集落への支援を思い切って強化する――地域資源を生かした第一次産業の振興とともに、「山の駅」(仮称)など地域にあった生活拠点をつくり、集落を結ぶコミュニティバスの運行、高齢者集落への「集落支援員」の配置などにより、地域住民の買い物や医療、福祉、教育など生活に不可欠な最低条件の整備に努めます。こうした対策を講ずる自治体に対し、国の支援を強めます。

 近年、農作業や伝統行事の支援、都市住民との交流などに取り組む「地域おこし協力隊」(政府が3年間財政支援、自治体が都市の希望者に委嘱)の活動が過疎地域で刺激を与え、注目されています。派遣される隊員も年々増え、期間終了後も地域に定住し、就農する例も増えています。この関連予算を増額し、「協力隊」員を思い切って増員します。

 有害野生生物対策を抜本的に強める――増え続ける鳥獣被害は、農林漁業者の生産意欲を失わせ、集落の衰退に拍車をかけ、それが鳥獣害への対抗力も弱める、という悪循環をもたらしています。根本的には、農林漁業が成り立ち、農山漁村で元気に暮らせる条件整備が不可欠ですが、当面、該当する鳥獣の生態や繁殖条件の調査を国の責任で行い、増えすぎた鳥獣を適正な密度に減らす地域や自治体の取り組みを支援します。鳥獣が里山に下りずに生息できる森林環境を整備するとともに国の鳥獣被害対策交付金を大幅に増やし、防護柵・わなの設置、捕獲物の利用など農林家や自治体の取り組みへの支援を強めます。

 大型クラゲ、ザラホヤ、トドなど新たに増えている漁業被害をなくすため、発生メカニズムの解明、駆除方法の開発に取り組みます。

 都市づくりに農業を位置づけ、農地税制を抜本的に改める――昨年の国会で、都市農業のもつ多面的な役割を評価し、都市農地の保存や農業振興のために国や自治体、関係団体に役割の発揮を求めた都市農業基本法が成立しました。その理念を本格的に定着させるために、市街化区域内農地の存続を原則的に否定する現行の都市計画制度を早急に見直し、農業を都市づくりの大事な柱に位置づけます。固定資産税、相続税における課税評価を、現に農業が営まれている農地は農地評価を基本にして農地利用の存続をはかり、作業場なども農地に準じた課税にします。当面、生産緑地の要件の緩和、相続税納税猶予制度の維持、農地評価の市民農園や屋敷林などへの適用拡大をすすめます。直売所、地産地消、学童農園、体験農園などの取り組みを支援します。

                                                                       

 

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