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日本共産党

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赤旗

2016参議院議員選挙/各分野の政策

11、介護

――特養ホーム、介護保険料・利用料、介護労働者、認知症対策

2016年6月


介護保険の連続大改悪を許さず、高齢者も現役世代も安心できる公的介護制度をめざします

 社会保障予算の「自然増削減」を基本方針とする安倍政権のもと、介護制度のかつてない大改悪が次々と打ち出され、実行に移されています。

 ●「医療・介護総合法」=介護保険大改悪の中止・撤回を求めます

 安倍・自公政権が2014年に可決を強行した「医療・介護総合法」により、(1)「要支援1・2」のヘルパー・デイサービスの保険給付外し、(2)特養入所の「要介護3」以上への限定、(3)利用料の2割負担導入、(4)介護施設の食費・居住費にたいする「補足給付」の対象限定――など、介護制度の大改悪がすすめられています。

〔要支援者を介護保険の枠外に――サービス後退と「卒業」の強要〕

  「総合法」により、「要支援1・2」と認定された人は、ホームヘルパーによる訪問介護、デイサービスなどの通所介護が、介護保険の給付から外されました。これらのサービスを保険給付から外すかわりに、自治体が実施する地域支援事業に新しいメニュー(介護予防・日常生活支援総合事業=新総合事業)をもうけ、“代替サービス”を提供すると政府・厚生労働省は説明しています。しかし、「新総合事業」の予算には上限がつけられ、各自治体は大幅な給付費の抑制を求められます。

 厚労省が、2015年6月に策定した「新総合事業」の「ガイドライン」は、事業のなかに保険給付と同等の「現行並みサービス」を用意する一方、給付費の抑制策として、▽無資格者による“報酬単価の低いサービス”を用意し、利用者に普及をすすめること、▽新規の申請者は、簡単なアンケート(基本チェックリスト)に回答させてサービスを割りふり、要介護認定は省略すること、▽利用者に「自立」に向けた「目標」をもたせ、状態改善と判断されたら介護サービスを終了すること――を求めています。

 こうした、①低廉サービスへの置き換え作戦、②要介護認定を受けさせない水際作戦、③介護サービスからの卒業作戦という、3つの作戦を示したうえで、「ガイドライン」は、これまで「毎年5~6%」の割合で増えていた要支援者サービスの給付費の伸びを、後期高齢者の人口の伸び率である「毎年3~4%」に抑えこんでいくように指示しています。これが全国で実行されれば、要支援者の訪問・通所系サービスの給付費は2025年度で▲800億円、2030年度で▲1500億円、2035年度で▲2600億円という大幅な縮減になります。

 政府・厚労省はこれまでも、要支援者への在宅サービスの給付を白眼視し、ヘルパー派遣の回数制限や1回あたりの介護時間の短縮など給付抑制の改悪を繰り返してきました。今回の改悪は、そうした保険制度の枠内での給付抑制を踏み越え、要支援者を丸ごと保険の枠外に追いだし、「自立・非該当」と同じ扱いにしていくことで、給付費の抜本的削減を図ろうとするものです。

 「医療・介護総合法」は、2015年4月から2017年3月までの間に、各市町村の判断で要支援者サービスの地域支援事業化を実施するよう規定し、2016年4月時点で、全国で約3割の自治体が、「新総合事業」をスタートさせています。しかし、これらの市町村では、「介護サービスの申請にきた高齢者を、自治体の委託を受けた担当者が、要介護認定を受けさせないで追い返す」「要介護認定の更新時期を迎えた高齢者が、認定を更新しないよう担当者から説得される」「担当者が高齢者を説得し、強引に介護サービスを『卒業』させる」など、自治体が高齢者に介護サービスを受けないよう圧力をかけるケースが頻発しています。また、「新総合事業」を始動させた自治体のなかには、報酬単価の低さや人手不足から、“代替サービス”を引き受ける事業所が見つからず、事業所が要支援者サービスから撤退していくなど、新制度への切りかえを契機に“介護基盤が崩れる”事態も起こりだしています。

〔特養入所の「要介護3」以上への限定――「介護難民」を特養から排除〕

 「総合法」により、2015年度から特養ホームへの入所は原則として「要介護3」以上となりました。2013年時点の特養待機者は52・4万人、うち17・8万人は「要介護1・2」でしたが、それらの人は、“受け皿”の準備もないまま、特養入所から排除されました。

 厚労省は、▽虐待の被害者、▽知的・精神障害者、▽認知症で常時見守りが必要などの事情がある場合は、「要介護1・2」でも「特例入所」を認めるとしていますが、これらの人たちは本来、老人福祉法にもとづいて救済し、措置施設である養護老人ホームで救済するべき対象です。「特例入所」といっても、実態は「措置入所」の余地を残したというだけで、救済される人はきわめて限定されます。

 要介護者から特養入所の申請権を奪うことで、見かけ上だけ待機者数を減らし、「介護難民」のまま放置するという、最悪の責任逃れにほかなりません。

 安倍内閣発足後、財務省の財政制度等審議会などでは、介護保険の全体の給付対象を「要介護3」以上に限定すべきということが議論されています。今回の措置は、それに先鞭をつける改悪ともいえます。

〔2割負担の導入――高所得といえない層に過酷な負担増〕

  「総合法」により、2015年8月から、介護保険の利用料に初めて2割負担が導入されました。対象は「所得160万円以上」(単身で年金収入280万円以上)の層です。この所得基準は医療保険の「現役並み所得」のライン(単身:年収383万円、2人世帯:年収520万円)よりはるかに低く、高所得とはいえない人が対象となっています。症状が重く、介護と医療の両方で自己負担をしている人、施設に入所して食費・居住費の全額負担をしている人などには、きわめて過酷な負担増であり、利用抑制が起こることは必至です。

〔「補足給付」打ち切り――家族の生活破壊とプライバシー侵害〕

 特養ホーム、老健施設、ショートステイ、デイサービスなど、施設サービスを低所得の高齢者が受ける場合に食費・居住費を補助する「補足給付」についても、改悪が実行されました。これまで、「補足給付」は利用者の所得に応じて適用されてきましたが、「医療・介護総合法」により、たとえ利用者が低所得でも、(1)世帯分離をしている配偶者が住民税課税である場合、(2)単身で1,000万円以上などの預貯金がある場合、(3)従来は所得認定をしなかった非課税年金(障害年金・遺族年金)を一定額以上、受給している場合は、「補足給付」の対象から除外し、食費・居住費の大幅な負担増を求めることになりました。これにより、たとえば、特養に入所する高齢者が、月5万円の国民年金しか収入がないのに、月13万円の利用料負担をせまられるなどの事態が起こってきています。妻が低年金で「補足給付」を受けながら特養に入所し、夫が課税ギリギリの所得で別世帯を営むケースなどの場合、大幅な負担増に耐えられず、“共倒れ”になる事態が起こります。低所得の高齢者に高額の負担を求めて“貯金を吐き出させ”たり、障害年金など“非課税の給付”を所得と扱うことは、社会保障のあり方をゆがめるものです。

 この改悪の発動により、「補足給付」を受給・申請するすべての人に、「貯金通帳のコピー」など、自分の資産を明らかにする書類を行政に提出することが義務づけられました。こうした、利用者のプライバシーを度外視したやり方に、高齢者・家族からは「“情け”を受けたければ、“丸裸”になれというのか」という憤りの声があがっています。昨年、利用者が認知症などで書類提出が困難にケースについて、行政が、施設職員やケアマネに貯金通帳のコピーを取らせようとし、現場は大混乱となりました。厚労省が、“資産を隠していた場合は、通常の利用料の2倍又は3倍にした課徴金をとる”と告知をしたため、本来、「補足給付」の対象となるはずの人が、恐怖にかられて申請をやめるなどのケースも続発しています。高齢者や家族のプライバシーに、行政が土足で踏み込んでいくやり方は、ただちにやめるべきです。

 「補足給付」は、2005年の制度改悪で、もともと保険給付だった施設の食費・居住費を全額自己負担にしたときに、低所得者の施設利用の道を閉ざさないため導入されました。貧困な入所者・待機者が激増するなか、拡充こそ求められています。制度を後退させること自体、重大な逆行にほかなりません。

〔医療・介護総合法による介護保険改悪は中止・撤回を〕

 「医療・介護総合法」による制度改変は、ひたすら国の介護給付費を抑制するために、公的介護サービスを利用できる対象を狭め、利用者に負担増を押しつけるというだけのものです。それが、利用者本人と家族を苦しめ、介護現場に混乱をもたらすだけであることは、法律が成立・施行されて以後の実態が証明しました。

 現在、全国の7割の自治体は「新総合事業」を実施せず、従来の保険給付で要支援者に対応しています。“要支援切り”の改悪は今すぐ中止するべきです。

 「要介護1・2」を特養の入所対象に戻し、特養の抜本増設に舵を切る以外に、「介護難民」問題を解決する道はありません。

 昨年8月以来、負担増となっている人の利用料や食費・居住費負担を元に戻し、とくに、「補足給付」をめぐる人権無視の資産調査はただちにやめるのべきです。

 日本共産党は、「医療・介護総合法」による介護保険改悪の中止・撤回を求めます。

●安倍政権の介護報酬削減――報酬を引き上げ、元に戻すことを要求します

 「医療・介護総合法」で、公的給付の絞り込みと利用者負担増の大改悪を実施するのと同時に、安倍政権は、社会保障予算の「自然増削減」のため、2015年度予算で介護報酬の大幅削減を強行しました。報酬全体で▲2・27%、特例的な「加算」を除いた報酬本体は▲4・48%という空前の報酬カットにより、2015年、全国の介護事業所の倒産件数は最多を記録し、都市部を中心に、ホームヘルプやデイサービなど事業所の撤退が相次ぎました。大幅減収となったグループホームでは、人手不足とあいまって、「利用者をもっぱらベッドで寝かせておく」など深刻なサービスの後退が起こり、“防衛策”として利用者から追加負担を徴収する事業所も続出するなど、利用者が犠牲となる事態も起こっています。各地の特養ホームも軒並み1割前後の減収となり、「報酬削減への対応策」を尋ねた党地方議員団の調査に、多くの経営者が、「入所の制限」「職員の処遇の切り下げ」「食事や年中行事などのコストカット」と答えざるをえない状況となっています。

 政府・厚労省は、介護職の処遇改善を行う事業所には、報酬を「加算」したといいますが、報酬本体の削減による事業所の経営困難や「加算」自体の不十分さのために、労働組合の調査によれば、実際に賃上げとなった介護職員は少数に過ぎません。

 いま介護現場は、あまりに劣悪な労働条件のために職員が大幅に不足し、残った職員も過重負担に耐えかねて辞めていくという“負のスパイラル”におちいっています。安倍政権による介護報酬削減は、まさに、「介護崩壊」の引き金となりかねない重大な改悪です。

 日本共産党は、「介護崩壊」をくいとめるため、安倍政権によって削減された介護報酬を引き上げ、元に戻すことを要求します。

●安倍政権が計画する、介護保険のさらなる大改悪に反対します

 安倍政権は昨年12月、社会保障予算の「自然増」を毎年3000~5000億円削減するという「骨太方針2015」の目標を達成するため、社会保障の各制度をどういう内容・スケジュールで「改革」するかを定める「工程表」を決めました。

 その原案となった財務省案は、▽「要支援1・2」に続いて、「要介護1・2」の在宅サービスも保険給付から外し、生活援助や福祉用具貸与を「原則自己負担」にする、▽「要介護1・2」のデイサービスを地域支援事業化する、▽介護保険の利用料を一律2割負担とする、▽ケアプラン作成を有料化する――など、介護保険制度の大改悪案を列記しています。これらの内容を、参院選挙後に「検討」し、2017年の通常国会に法案を提出するというのが、安倍政権の方針です。

 「要介護1・2」は、要介護者全体の多数を占めます。特養入所枠から締め出されたのに続き、生活援助や福祉用具まで“いったん10割負担”となれば、施設でも在宅でもサービスを受けられない「介護難民」が大量に生みだされることは必至です。介護職員や福祉用具業者の団体からは、改悪の検討中止を求める要望書や署名がだされています。

 すべての高齢者から介護保険料を徴収しながら、「要支援1・2」に続き「要介護1・2」まで保険給付から除外していく改悪には、介護保険導入を主導した厚労省元幹部も、“このままでは介護保険は国家的詐欺になってしまう”と危惧の声をあげています。

 日本共産党は、要介護者を切り捨て、国民に多大な負担増を押しつけるとともに、介護保険の存在意義を失わせ、制度を空洞化させる大改悪に断固反対します。

●「介護の危機」を打開するため、介護・福祉・医療制度を立て直します

 会社などで働いている人が、家族の介護・看護を理由に仕事をやめる「介護離職」は、毎年8~10万人にのぼっています(総務省「就業構造基本調査」)。民間シンクタンクの調査によれば、家族の介護をしながら働く「介護社員」の割合は今後も増大し、2022年には24・5%、2032年には30・8%となる見通しです(東レ経営研究所・渥美由喜部長)。経済誌やビジネス誌が「介護特集」を連打し、「介護独身」がメディアの話題となるなど、介護問題が、高齢者はもちろん現役世代の大きな不安要因となっています。

 国の施策で病院を出され、介護施設にも入れない高齢者が、「お泊りデイサービス」などの脱法施設を利用したり、ホームレス用の宿泊施設を転々とするなど、メディアが「介護難民」「老人漂流社会」と呼ぶ深刻な状況も広がっています。「シニアマンション」などの看板で大量の高齢者を収容していた脱法的な住居施設が、多くの入居者を拘束・拘禁状態にしていたという悲惨な事件も報じられました。

 「独居老人」や「老老介護世帯」が急増し、高齢者の貧困・孤立が進行するなか、65歳以上の「孤立死・孤独死」も年間2万人にのぼると推計され(ニッセイ基礎研究所調査)、介護を苦にした殺人・殺人未遂が、年間に約50件、1週間に1件のペースで起こる状況も続いています(警察庁調査)。

 こうしたなか、安倍内閣はにわかに「介護離職ゼロ」を叫び、介護の“受け皿”の増設や介護職員の賃上げを言い出しましたが、政府が「一億総活躍プラン」で打ち出した“受け皿”整備は、低所得者が利用できないサービス付高齢者住宅などを含んだものであり、介護職員の処遇改善をいう一方、無資格者の活用や外国人介護職の登用など“介護労働の低廉化”をすすめる改悪も推進がうたわれています。

 そもそも、要支援者の切りすて、「要介護1・2」の特養締め出し、2割負担の導入など、介護保険を「サービスを受けにくい制度」にする改悪を連発し、介護事業所を経営危機に追いやる介護報酬の大幅削減を強行しながら、「介護離職ゼロ」を叫ぶなど欺まんでしかありません。安倍政権が来年の法改定を狙っている、「要介護1・2」の在宅サービスの「原則自己負担化」や利用料の一律2割化が実行されれば、「介護離職」は「ゼロ」になるどころか、増えるばかりです。

 日本共産党は、安倍政権が推進・検討する介護制度の連続大改悪に反対するとともに、いまや日本社会の大問題となっている「介護の危機」を打開するため、介護・福祉制度の再建・充実をすすめます。

〔特養ホームの待機者をゼロに――国策転換で「介護難民」を解消します〕

 介護保険導入後の13年間に、全国の特養ホームのベッド数は1・7倍に増えましたが、入居希望者はそれをはるかに上回る規模で増え続け、待機者が52万人を超える状況となっています。このように特養待機者が爆発的に増え続ける大本には、“高齢者の貧困化”があります。現在、国民年金のみを受給する人の平均受給額は、月5万1千円、厚生年金でも、女性の平均受給額は基礎年金部分を含めて、月10万2千円です。こうした低年金の人が要介護状態になったとき、最期まで入居できる施設は特養ホームしかありません。

  ところが、政府は、給付費抑制のために特養ホームの増設を抑え、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、利用料の平均でも月12~15万円かかる、“低所得者が利用できない施設”の整備ばかり応援してきました。

 「介護難民」を解消するには、特養ホームの抜本的な増設に舵を切るしかありません。日本共産党は、待機者解消の「5カ年計画」を策定し、国の責任で特養ホームの抜本的増設を図ることを提案します。廃止された特養建設に対する国庫補助を復活させ、都市部での用地取得を支援するなど、「待機者ゼロ」の実現に向けて、あらゆる施策を動員することが必要です。この間、資材高騰や人手不足で「入札不調」が相次いでいる各地の特養建設も速やかに着手できるよう、国からの支援を行います。

 「介護難民」増加の引き金となっている、病院や老人保健施設からの“追い出し”政策を中止します。強引な退院や、老健施設からの“早期退所”を誘導・促進する診療報酬・介護報酬のあり方を抜本的に見直し、「漂流高齢者」を生まない仕組みに改善します。

 小規模多機能型施設、グループホーム、宅老所など特養ホーム以外の多様な施設についても基盤整備を進め、食費や部屋代への公的補助など、低所得者が利用できるよう改善をすすめます。

〔サービスとりあげ中止、利用料・保険料減免――「必要な介護が保障される制度」に〕

 介護保険制度は、16年前、「家族介護から社会で支える介護へ」というスローガンをかかげて導入されましたが、実際には、要介護度に応じてサービス内容や支給額が制限され、スタート当初から「保険あって介護なし」と言われてきました。

 さらに、歴代政権の社会保障費削減路線のもと、負担増やサービス取り上げの制度改悪が繰り返され、「介護保険だけで在宅サービスを維持できない」状況はますます深刻化しています。給付削減の改悪は、利用者・家族を苦しめるとともに、“いざというとき使えない制度”という国民の不信を高め、制度の存立基盤を危うくするだけです。利用者からサービスを取り上げる改悪や機械的な利用制限の仕組みを撤廃し、介護保険を「必要な介護が保障される制度」へと改革していきます。

介護とりあげの改悪の中止……軽度者にたいする訪問介護・通所介護・福祉用具などの厳しい利用制限、「介護とりあげ」をやめさせます。2012年の介護報酬改定で導入された、生活援助の基準時間の「60分」から「45分」への短縮など、この間、続けられてきた在宅サービス切り捨ての改変を抜本的に見直します。「給付適正化」の名を借りて、国と自治体がすすめている利用抑制、国の基準にてらしてもいきすぎた、自治体の「ローカル・ルール」による給付制限をただちにやめさせます。“究極のローカル・ルール化”ともいうべき要支援者サービスの保険給付外しを中止させます。

利用料・保険料の減免制度を確立……高齢者のサービス利用をはばむハードルとなっているのが自己負担の重さです。低所得者の利用料を減額・免除する制度をつくり、経済的な理由で介護を受けられない人をなくします。施設の食費・居住費負担の軽減をすすめ、自己負担から保険給付へと戻していきます。2割負担の導入・拡大や、「補足給付」の縮小など、もってのほかです。

 高齢者の3人に2人は住民税非課税であり、65歳以上の介護保険料(第1号保険料)の負担が生活圧迫の大きな要因となっています。高齢者本人や家族の貧困が深刻化するなか、保険料が「年金天引き」の対象とならない年金が月1万5千円以下という人の保険料滞納が急増しています。国として実効性のある保険料の減免制度をつくります。

国庫負担引き上げで安心できる制度に……現在の介護保険は、サービスの利用が増えたり、介護職の労働条件を改善すれば、ただちに保険料・利用料の負担増に跳ね返るという根本矛盾をかかえています。厚労省の見通しによれば、「医療・介護総合法」による過酷な給付削減が実行されたとしても、現在、全国平均で月5,500円程度となっている65歳以上の介護保険料は、2025年には月8,200円となります。保険料・利用料の高騰を抑えながら、制度の充実や介護の提供基盤の拡大を図り、本当に持続可能な制度とするには、公費負担の割合を大幅に増やすしかありません。

 自民党と公明党は、消費税増税の実施前、“増税で財源を得られたら1兆円の国費を投入し、介護保険の公費負担割合を現行の50%から60%に引き上げる”と主張していましたが、増税が決まったとたん、その公約は反故にされました。消費税増税で得られる財源の一部を使い、第1号保険料の低所得者軽減をおこなうという措置も、ごく一部が実施されただけで、安倍首相の二度にわたる10%増税の延期で、本格的な実施は先送りされたままです。仮に、この軽減策が実施されても、保険料がうなぎ上りに上がっていくことには変わりはありません。

 日本共産党は、介護保険の国庫負担割合をただちに10%引き上げ、将来的には、国庫負担50%(公費負担75%)に引き上げることを提案します。その財源は、国民生活にも日本経済にも大打撃となる消費税ではなく、(1)富裕層や大企業への優遇をあらためる税制改革、(2)国民の所得を増やす経済改革――という「消費税とは別の道」で確保します。

 こうした公的介護制度への国庫負担の引き上げとあわせ、65歳以上の介護保険料を全国単一の所得に応じた定率制にあらためる、要介護認定や利用限度額など機械的な利用制限の仕組みを撤廃して、現場の専門家の判断で適正な介護を提供する仕組みに転換するなど、制度の根本的改革をすすめていきます。

〔介護・福祉労働者の労働条件改善、介護報酬の増額――提供体制を強化します〕

 介護労働者の平均月収は、全産業平均を約10万円も下回っています。こうした低すぎる賃金と長時間労働・サービス残業のまん延、福祉への初心を生かせない労働環境など劣悪な処遇のために、介護現場は深刻な人手不足におちいっています。歴代政権は、介護を“新たな雇用創出分野”などと宣伝しながら、介護従事者の劣悪な労働条件や低すぎる社会的評価などの問題を放置してきました。「福祉は人」と言われるように、介護・福祉の提供体制を強化するには、労働条件の抜本的改善、担い手の育成・確保が不可欠です。

国費の投入で賃金アップを実現……保険料・利用料の引き上げに連動させることなく、緊急かつ確実に介護・福祉労働者の賃金アップを図るため、介護報酬とは別枠の、国費の直接投入による賃金引き上げの仕組みを創設します。第一歩として、今年の通常国会に、野党共同で法案提出した、国費による月1万円の賃上げ案の成立をめざします。

介護報酬の削減反対、抜本的な底上げを……劣悪な労働条件の根本原因は、介護報酬が低すぎることです。かつて小泉内閣が強行した介護報酬の連続削減(2003年度:▲2・3%、2005~06年度:▲2・4%)、安倍政権が強行した介護報酬の削減(2015年度:▲2・27%〔本体▲4・48%〕)は、介護事業所・施設の経営に大打撃を与え、介護職の賃金・待遇の劣悪化、人手不足の加速、特養の整備抑制・入所制限による待機者急増など深刻な事態を引き起こしています。こうした路線を根本的に転換し、介護基盤の再建のため、削減分を元に戻すことが必要です。

 日本共産党は、自公政権が削減してきた介護報酬の抜本的な増額・底上げを推進します。それが保険料・利用料の負担増とならないよう、国庫負担割合の引き上げ、保険料・利用料の減免に同時に取り組みます。

介護職の常勤化、人員配置基準の改善をすすめる……歴代政権の介護報酬抑制路線のもと、多くの事業所は経営難に苦しみ、介護分野は低賃金の非正規労働が主流となっています。介護報酬を引き上げながら、事業所の雇用管理や法令順守を図り、正規化・常勤化の流れをつくります。サービス残業の根絶、長時間労働の是正をすすめます。

 高齢者の尊厳を大切にした介護を行うためにも、介護職の人員配置基準を改善し、介護報酬で評価することが必要です。現在は利用者3人につき職員1人(3対1)となっている特養ホームや老健施設の職員配置基準を、実態にふさわしい「原則2対1」に引き上げる、24時間・365時間の介護体制を確立するため、夜間の訪問介護を職員が安心して働ける「2人体制」にするなど、改善をすすめます。

 介護保険導入前にいくつかの自治体で実施されていた、施設や事業所の職員確保、人員配置に対する公的助成制度をつくり、労働環境の改善を支援することも重要です。

介護職の地位向上に逆行する改悪に反対……介護現場の深刻な人手不足を受け、安倍政権も「介護人材の確保」を言いだしましたが、その主な内容は、規制緩和によって無資格者や外国人を登用するなど“安上がりな労働力”をかき集めようというものです。

 安倍政権は、「一億総活躍プラン」で「経済連携協定(EPA)に基づく専門的介護人材の活用を着実に進める」と宣言し、「外国人技能実習制度」の対象に介護分野を加える出入国管理及び難民認定法改定案の早期成立を叫んでいます。介護は、高度な専門性を要する知的労働であり、利用者とのきめ細かなコミュニケーションを抜きに適確なサービスは提供できません。介護の質を二の次にし、安い労働力への置き換えをねらった“外国人への開放”は、利用者・国民の願いに逆行し、介護職の低賃金、労働条件の悪化に拍車をかけるものです。

 また、安倍政権は、介護の質と介護職の社会的地位を向上させるため、2007年の法改定で決められた介護福祉士の資格取得方式の「一元化」(すべての養成ルートにおける国家試験の義務化)を、累次にわたる法改定で“棚上げ”にし続けています。その背景に、社会保障予算の抑制のために、介護職の賃金・待遇を“安上がり”にとどめようという意図があることは明瞭です。

 介護労働の専門性の確保、介護職の社会的地位の向上、それを正当に評価する処遇改善がはかられてこそ、介護分野への入職意欲も高まり、人材確保も前進します。

 日本共産党は、介護の質を担保する規制を弱め、介護職の低賃金や劣悪な労働条件を放置しながら“安上がりな労働力”に置き換えていく、あらゆる改悪に反対します。介護の質を高め、介護職の技能と社会的地位を向上させるため、資格取得「一元化」の早期実施、研修事業の充実と機会保障、介護職のキャリアアップに向けた職員・事業所への支援をすすめます。

介護職による医療行為の代替は見直しを……たん吸引、経管栄養など医療行為が介護職の業務として解禁されました。政府の意図は、本来、医療従事者が行うべき業務を介護職に担わせることで給付費の抑制を図ることにあります。現場からは、患者の安全や介護職の不安・負担などを指摘する声が引き続き出されています。再検討・見直しを求めます。

〔現行制度の不合理をただし、介護保険・介護報酬の改善をすすめます〕

 ヘルパーの生活援助の時間短縮、「7時間以下」のデイサービスへの報酬削減、特養ホームの「多床室」やベッドの回転が遅い老健施設に対する報酬削減など、この間、繰り返されてきた、サービス利用制限のための報酬改悪を見直します。

 安倍政権が検討するケアプランの有料化に反対します。高齢者の身近な相談相手・専門家としてケアマネジャーの育成をすすめ、介護報酬での評価や研修の保障などを行います。

 介護報酬の制限などにより、介護施設では医療が十分に提供できず、医療を多く必要とする高齢者が特養ホームやショートステイなどを利用できない事態が問題となっています。介護施設でも、医療行為については医療保険の適用を認めるなど、どこでも必要な医療と介護が受けられるように改善します。介護従事者が医療制度にかかわる知識を持つための研修や、高齢者の退院時におけるケアマネジャーの相談などを介護報酬で評価し、医療・介護の円滑な連携を推進します。

 いわゆる「院内介助」の規制が、自費サービスなどを生み、高齢者の医療を受ける機会を阻害しています。医療機関内での介助は「院内のスタッフにより対応されるべき」という国の通知を撤回させ、必要ならば、利用者の受診時に介護職が医師の指示を一緒に聴くことなどを含め、要介護者の通院介助を保障するようにあらためます。

 現行の地域計数と人件費率をかけあわせる介護報酬の算出式は、とりわけ、大都市部の物価や賃金水準からかけ離れたものになっており、地域の物価や賃金水準を反映した介護報酬にあらため、中山間地でも大都市部でも安心して介護が提供できるようにします。

 「コムスン事件」のような“儲け本位”の営利企業による不正の発覚、廃業が相次ぎ、そのたびに利用者が犠牲となっています。問題が起きた後に事業者を処分するだけの「事後規制」の仕組みをあらため、適切な介護を提供できるかを事前に審査する「事前規制」へと、参入規制の在り方を転換します。

 グループホームでの火災事件などを受け、すべての高齢者施設にスプリンクラーなどの初期消火設備や、自動火災報知装置の設置が義務づけられました。これらを実効ある措置とするため、国の補助を抜本的に拡充します。「そもそも火事を起こさない」「緊急時には入所者をすみやかに避難させられる」など、高齢者施設の安全確保に向け、夜間の職員配置の改善などをすすめます。

 利用者と介護事業者に手間と困難を押しつけ、介護現場の矛盾を広げる、マイナンバーの使用の押しつけに断固反対します。

 ⇒各分野政策の13、「マイナンバー」参照

〔貧困・病気・孤立など高齢者の困難を解決する福祉・医療体制を構築します〕

 「介護の危機」を打開するには、介護保険制度の改善にとどまらず、さまざまな制度・施策を総動員することが必要です。

 政府・厚労省はこの間、「身近な地域で、住まいを基本に、医療や介護、生活支援サービス、介護予防が切れ目なく提供される体制」をめざす、「地域包括ケア」の構想をかかげ、介護・医療・福祉などの制度改変をすすめています。しかし、その看板のもとで安倍内閣が提出した「医療・介護総合法」は、国の社会保障予算の抑制のため、医療や介護サービスの対象を限定し、病院や介護施設をできる限り使わせず、提供するサービスを“安上がり”なものに置きかえていく改悪法でしかありませんでした。給付費削減を前提にした「連携」「再編」では、介護をめぐる危機的状況は解決されず、逆に、矛盾が深まるだけです。2025年の高齢化のピークに備えるというなら、医療・介護は「自然増削減」ではなく、抜本的拡充が必要です。

 日本共産党は、介護・福祉・医療の拡充と連携を国の責任で推進し、地域全体で高齢者を支えられる体制づくりをすすめます。

自治体の高齢者福祉を立て直す……虐待、貧困、社会的孤立など「処遇困難」の高齢者の救済は本来、老人福祉法にもとづく自治体の仕事ですが、介護保険導入後、多くの自治体で福祉事務所や保健所が担っていた高齢者福祉は縮小され、“介護保険任せ”にされてきました。福祉職の削減、保健所の統廃合、養護老人ホーム運営費の一般財源化など、国の制度改変もそれに拍車をかけています。未曽有の貧困が日本社会を覆い、生活・病気・家族関係などで複雑な問題をかかえた高齢者が急増するなか、自治体の「措置控え」がメディアでも問題視され、厚労省も「指導」せざるを得ない状況となっています。今こそ自治体の福祉・保健・公衆衛生の再生が必要です。

 自治体の福祉職を増員し、介護保険や民間では対応しきれない困難をかかえた人を自治体が直接救済して、支援や介護を提供する体制を再構築します。地域の高齢者の実情をつかむ拠点として、地域包括支援センターを老人福祉法に位置づけ直し、国の責任で人員・体制の構築を図ります。“立ち枯れ状態”になっている各地の養護老人ホームに財政支援をおこない、機能を回復・拡充させます。

低所得で身寄りのない高齢者に住まいを保障する……日常生活は自立しているが体調に不安があり、同居家族がいない高齢者を低廉な費用で住まわせる「軽費老人ホーム(ケアハウス)」の増設、低所得者・高齢者・障害者などが、住み慣れた町でくらせるよう、国と自治体の責任で住宅整備・家賃補助を実施する「地域優良賃貸住宅」の拡充など、“孤立高齢者”“漂流高齢者”をつくらない施策を推進します。

 保険給付の肩代わり”ではなく、地域福祉の本来の役割発揮を応援する……「独居老人」や「老老介護世帯」が急増するなか、ボランティアや民生委員による訪問活動、自治会による行事や交流、社会福祉協議会による様々な支援活動が高齢者に張りあいを与え、孤立を防ぐ貴重な役割を果たしています。安倍政権は「医療・介護総合法」で、要支援者への介護サービスに代わる“代替サービス”をこれらの多様な実施主体に任せるとしています。しかし、地域の高齢者を支えるボランティアやNPO、民生委員や自治会、社会福祉協議会などは、慢性的な予算と人手の不足、担い手の高齢化、後継者の不在などに悩まされており、過重負担の押しつけは新たな疲弊の要因となりかねません。実際、一部の自治体では、老人会が要支援者サービスを担うことに伴い、行政から、これまで取り組んできた年中行事に予算や人手を割かないよう要求されるなどの“本末転倒”が起こっています。強引なサービスの切り替えは、利用者の願いにそむき、福祉の現場に混乱と矛盾をもたらすだけです。

 日本共産党は、地域の高齢者を支える自主的組織に対する、要支援者サービスの“肩代わり”の押しつけをやめさせ、多様な実施主体の本来の役割発揮を応援します。これらの取り組みを、地域のコミュニティを支える社会的資源と位置づけ、連携の促進、財政的な支援、後継者づくりへの協力などを推進します。

医療・介護の連携をすすめる……「介護難民」増大の引き金となっている、病床削減・「患者追い出し」政策を中止し、すべての患者に必要な医療・介護を保障する体制を確立します。介護保険と医療保険の“併給禁止”のルールが現実にあわず、必要なケアが受けられないなどの問題の改善をすすめます。

 2006年の「医療改革法」で決められ、その後、実施が「延期」されてきた「介護療養病床の廃止」をめぐっては、政府・厚労省もその機能の必要性を認めざるを得なくなっています。安倍内閣の「社会保障改革」の「工程表」は、「介護療養病床等の効率的なサービス提供体制への転換」について「2016年末までに結論」を得るとしていますが、介護型療養病床の機能の重要性を認めるのであれば、病床廃止方針の誤りを認めて存続させ、医療的ケアを必要とする要介護者の貴重な“受け皿”として強化・拡充を図るべきです。

 在宅医療を担う診療所や訪問看護に対する報酬を改善し、在宅生活を支える拠点として公的支援を強めます。

 政府が鳴り物入りで導入しながら、多くの自治体で整備が滞っている24時間体制の「定期巡回・随時対応訪問介護看護サービス」の普及にむけ、報酬の改善や人員体制への支援を行います。

認知症対策を促進する……いまや認知症の高齢者は462万人とされ、軽度認知障害のある人も400万人いると推計されています(2012年時点・厚労省調査)。高齢者の3~4人に1人は認知症か、軽度認知障害という状況です。ところが、現行の介護保険では利用できるサービスに限度があり、“認知症のお世話はもっぱら家族任せ”という高齢者が膨大な数にのぼっています。徘徊症状のある認知症の男性(愛知県在住)が電車にはねられて死亡し、JR東海が、「監督が不十分」と遺族を訴えた訴訟については、最高裁でJR東海側の訴えを退ける判決が確定しましたが、認知症の高齢者を支える家族が、同様の状況に追い込まれる危険は依然として解消されていません。

 認知症の高齢者に対応する公的介護サービス・介護基盤を抜本的に拡充するとともに、認知症の早期の発見・診断、初期の相談と家族への支援から、終末期のケア・看取りまで、切れ目なく治療と支援を行う、医療・保健・福祉の連携体制の構築をすすめます。

 2012年9月、厚労省が、認知症の初期対応の重要性を強調する「認知症施策推進5ケ年計画(オレンジプラン)」を発表したことが、関係者から歓迎されています。その一方で、同プランが、精神科病院に入院している5万2000人の認知症の人を「できる限り短い期間での退院をめざす」と強調し、「ある月に入院した人」の50%を退院させる目標期間を、現在の「6ケ月」から「2ケ月」に短縮したことに、「受け皿もないままの追い出しになるのではないか」という不安、疑問が広がっています。

 給付費削減のための「追い出し」ではなく、安価に利用できるグループホームや介護施設の計画的増設など、認知症の人が地域でくらせる基盤の緊急整備をすすめながら、在宅復帰をすすめていきます。

認知症対策に真っ向から反する、“要支援者切り”“軽度者切り”“介護とりあげ”の制度改悪に反対します。

 

 

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