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日本共産党

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赤旗

2014年 総選挙各分野政策

16、環境

持続可能な経済・社会を実現するため、環境問題に真剣に取り組みます

2014年11月


 2011年3月に起きた東日本大震災による福島第一原発の事故は、放射能が広範な地域に飛散するという国民の安全と環境上の深刻な事態を引き起こしました。この放射能汚染への対応は、まさに差し迫った課題です。

 原発事故への対応だけでなく、21世紀の世界を持続可能な経済・社会とするためには、温暖化ガスの大幅削減を実現する対策など地球環境の保全の見通しをたてるとともに、国内の公害被害の早急な救済や、アスベスト対策や大気・土壌汚染対策など身の回りの環境対策に真剣にとりくむことが必要です。将来にわたって良好な環境を維持していくために、環境汚染を規制し、生態系を守るとりくみを強化します。そのためにも環境汚染問題の解決には、少なくとも、(1)汚染者負担の原則、(2)予防原則、(3) 国民・住民の参加、(4)徹底した情報公開──の視点が欠かせません。その立場で次のようなとりくみを強めます。

 改憲の口実に、「環境権」(良い環境を享受する権利)を憲法に盛り込むことが、挙げられています。しかし、憲法学会の通説では、環境権が現行憲法と矛盾するものではなく、第13条の幸福追求権や第25条の生存権から、環境権は導き出すことができるとされています。むしろ必要なのは、環境基本法に、国民の権利として、環境権とその内容を明確に規定することです。これは内閣が環境基本法の改正を提案すればすむことです。平和・基本的人権・民主主義の条項を改悪しようという自民党の改憲案には、「環境保全の責務」として、「国は、…国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない」と書いてあるだけです。これは、国民の権利ではなく、国の単なる努力義務にすぎません。

 

 原発の被害から国民・住民を守る

 原発問題については、今回の参院議員選挙の各分野政策、「14、原発問題」を参照ください。

 また日本共産党の提言、「福島原発事故による放射能汚染から、子どもと国民の健康を守る対策を」(2011年8月11日)、「福島第1原発の放射能汚染水の危機打開のための緊急提言」(2013年9月17日)を参照してください。

  2012年6月、「原子力事故による子ども・被災者支援法」が制定されましたが、すべての被災者・被害者を対象とすべきであり、福島県の全域を対象とするのは当然ですが、上からの「線引き」を押し付けるようなことはせず、支援すべきです。被ばく推計をする場合、放射性の全核種を対象とし、内部被ばくも含めます。とくに子どもたちが生涯にわたって健康診断をうけるさい、乳幼児健診や学校診断、定期健診のなかに、これにかかわる健康診断を組み入れ、診断に必要な情報の状況など、実施のためのバックアップ体制を厚くし、さらに精密な検査、専門的な検査も可能になるようにします。具体的な支援として、民間借り上げ住宅・公営住宅の提供の期間の延長、避難・保養・検診・家族と会うための移動費補助など、被災者の実情に合った支援をします。そのため、行政だけでなく被災者・支援者の代表を含めた恒常的な協議機関を設置すべきです。

 

 地球温暖化対策の深刻な遅れを克服し、外交交渉でも積極的な役割を果たす

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、今年11月初めに発表した第5次統合報告書で、現在のペースで温室効果ガスの排出が続けば21世紀末までに世界の平均気温は最大4・8度上昇し、人類や生態系に「後戻りできない影響を及ぼす可能性が高まる」と警告しました。地球温暖化は世界的な異常気象の発生や生態系の破壊など目に見える形で進行しており、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を減らし、温暖化を抑えることは、本当に全人類にとって差し迫った課題になっています。

アメリカのオバマ大統領と中国の習近平国家主席が11月12日、北京で会談し、地球温暖化を抑えるため、2020年以降の温室効果ガスの削減で合意しました。アメリカは2025年までに2005年比で26~28%削減(従来は2020年まで17%削減)、中国は二酸化炭素の排出量を2030年ごろのなるべく早い時期に頭打ちにし、全エネルギーにおける非化石燃料の割合を2030年までに約2割に高めるとのべ、それぞれの目標を公表しました。中国とアメリカは、温室効果ガス排出の1位、2位の国であり、2国だけで世界の温室効果ガス排出の4割以上を占めます。すでに欧州連合(EU)は10月に、2030年までに1990年比で40%削減の目標を決めており、米中の削減目標決定は、温暖化抑制には十分なものとはいえず問題を含んでいるにしても、国際的な合意づくりを促進するものです。ところが日本は、京都議定書の第二約束期間(2013~2020年)の取り組みを拒否し、安倍首相が2020年までに1990年比3.1%増(「2005年比では3.8%減」)という〃増加〃目標の表明したうえに、2020年以降の削減目標の検討が進んでいないという状況で、安倍政権の立ち遅れと無責任ぶりは世界的にも際立っています。

来年3月までに、国連気候変動条約の加盟国は、2020年以降の削減目標を条約の事務局に提出しなければなりません。また全加盟国を対象にした2020年からの新たな国際協定の枠組みについて2015年までの合意をめざしての交渉と、温暖化の抑制をより確かなものにするために2020年までの各国の削減目標のかさ上げを図る交渉が続けられています。

  取り返しのつかない環境悪化を防ぐには、産業革命以来の気温上昇を「2度以内」に抑えるべきだということが世界的な合意です。その達成が年々困難になっています。世界で第5位の温室効果ガス排出国である日本(CO2で世界の3.4%、2010年)が削減の国際責任を果たすのは当然であり、それに見合う対策を早急にとることが不可欠です。

福島原発の重大事故を受けて、原発をただちにゼロにすべきことは譲れない前提です。原発が全面停止したもとで、緊急的・一時的措置として火力発電が拡大しますが、これは温暖化対策からみても持続可能なエネルギー供給のあり方ではありません。火力による電力確保は緊急避難的な措置とし、再生可能エネルギーの飛躍的な普及に最大限の努力を払い、エネルギー利用率の引き上げや省エネの徹底で、低エネルギー社会への移行を急ぐことは、まったなしの課題です。

日本は「2050年までに温室効果ガスを80%削減する」(2009年日米共同メッセージ)とすでに公表しています。その長期目標の着実な実施を考え、またIPCCの第5次報告書が指摘した緊急性と対策強化の必要性を考慮して、NGOが2030年までに日本が野心的に温室効果ガスを1990年比で「少なくとも40%~50%削減」すべきだと主張しているのは当然であり、その実現に努めます。2020年までに1990年比25%削減という温室効果ガス削減の中期目標は、温暖化対策のための重要な途中目標であり最大限追求します。日本の現状は、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。現在、再生可能エネルギーの大量導入を位置づけるとともに、2020年までにエネルギー(一次)の20%(電力ベースで35%程度)、2030年までに30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。

こうした削減の流れを実効あるものにするのは、138の大規模施設で日本の温室効果ガスの排出量全体の半分をしめ、発電所と鉄鋼で全体の4~5割、それに窯業、化学工業、製油所、製紙業を合わせた6業種で全体の6割を占めます(2011年度。気候ネットワーク調べ)。産業界が、削減に本気で取り組むことがカギです。そのために政府との公的削減協定の締結などで産業界の削減の目標と責任をはっきりさせます。日本の二酸化炭素排出の95%はエネルギー利用から生じるものであり(2012年度、環境省)、再生可能エネルギーの飛躍的な利用拡大によってこそ、温室効果ガスの大幅削減に道が開けます。技術的に未確立であり、放射性物質による新たな汚染が懸念され、安全性が不十分な原発の新増設にたよるという、自公政権が進めてきた道からキッパリと転換することが、再生可能エネルギーの本格化のためにも必要です。

 国内で日本の排出量に大きな責任を負う財界は、削減に強く抵抗しています。経団連は、「30年代に原発稼働ゼロ」という民主党政権の方針さえ「深刻かつ甚大な悪影響を及ぼす」と非難するなど、原発にしがみつき、原発ゼロの方針の放棄を要求してきました。この財界の要求を受け入れ、産業界は日本の温室効果ガスの総排出量の8割(家庭が使う電力分を電力会社の排出とすると9割)を占めています(環境省)。財界・経済界が、真剣に削減に取り組むことが、打開のカギです。

 5~10年以内に、再生可能エネルギーの大量普及に最大限の努力を払い、エネルギー利用率の引き上げや省エネの徹底で、低エネルギー社会への急速な移行を図ることで、国際公約だった2020年の削減25%を追求し、さらに2030年までに45%以上の削減をめざします。

 大型風力発電機、ヒートポンプや熱・電気併給システム(エコキュート)のコンプレッサーなどから発生した低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。低周波振動の健康への影響についてただちに調査・研究を行い、環境アセスを義務づけた風力発電のように他の施設についても影響調査を義務づけ、環境基準や設置・建設のさいの距離条件の設定、低周波を発生しない製品の開発など、本格的な対応が必要です。個別の被害の調査への補助をおこないます。

 また大型の太陽光発電に関しても、森林の伐採や、地滑り地域への建設、住環境への悪影響など、「乱開発」による住民との対立が起きています。環境規制の弱い日本では、事業化に当たってきちんとしたルールや規制を整備しないまま、利益追求を優先した乱開発が起き、環境保全や住民の健康・安全にかかわる問題を引き起こしています。事業者と地域住民の間で軋轢や紛争が生じることは、再生可能エネルギーの導入を、国民的な支持を得て進めていくのに、望ましい状況ではありません。事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その地域の環境維持と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにし、きちんとした法的な位置づけを明らかにし、環境基準を定めて、環境アセスメントの手続きの中に組み込んでいくことが必要です。十分に調査・検討した環境基準の早急に設定し、環境アセスメントの強化を図ります。

 再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度を改善し、再生可能エネルギーに普及を飛躍的に進めます。企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」は、原単位方式でなく、発電施設も含めた事業所の直接排出量の総量削減を定めます。

2012年10月から、「地球温暖化対策の課税」として、石油石炭税の上乗せ措置が実施され、2014年4月にも拡充されましたが、不十分なものにとどまっており、さらに拡充をはかります。同時に、原油の国際価格急騰などの際には、課税がなくともエネルギー消費抑制効果が十分にあることを考慮し、税率を柔軟に変動できる制度を検討します。

 

 水俣病被害者の全面的な救済に力をつくします

 国は2012年7月、「水俣病特別措置法」に基づき未認定患者に一時金と医療費などを支給する救済策の申請受け付け締め切りを、強行しました。環境省は締め切り期限に向け、「全ての被害者に救済申請してもらうよう周知広報を徹底する」としたものの、地域指定の範囲外にも多くの水俣病被害者が存在していて、県外に転出した水俣病被害者にとって情報不足は否めません。また水俣病に対する差別・偏見のなかで、いまだに共済申請ができず、残された被害者が残されています。

 「水俣病特別措置法」には、「国の責務」として、被害者が「あたう限りすべて救済される」ための努力義務を課しています(第4条)。一方で、この法律には、「救済措置の開始後3年以内を目途に対象者を確定する」(第7条2項)とはいうものの、あくまでも「目途」にすぎず、現状を見て「責務」を果たそうとすれば、昨年7月で申請受理を打ち切ることは許されません。国や加害企業(チッソ)の責任を放棄し、長年にわたり苦しんできた被害者を、切り捨てるものです。

 さらに最高裁(第3小法廷)は、2013年4月、これまで水俣病と認められなかった熊本県水俣市の女性の遺族が、県を相手に患者認定を求めた訴訟の上告審判決で、女性を水俣病患者と認定するように県に命じた福岡高裁判決を支持し、県側の上告を棄却しました。また、水俣市出身で大阪府の女性の遺族が認定を求めた訴訟の上告審判決で、患者認定しなかった大阪高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻す判決を言い渡しました。そのなかで最高裁は、1977年の国の認定基準について「複数症状の組み合わせがなく、手足の感覚障害のみの水俣病が存在しないという科学的な証拠はない」とし、「症状の組み合わせが認められない場合でも、証拠を総合検討した上で、個別の判断で水俣病と認定する余地」を認めました。これは、水俣病として認定されるべき患者が、厳しい認定基準によって切り捨てられてきたことを厳しく指摘したものです。

 国が2012年7月末に申請を締め切った水俣病特措法で「非該当」とされ、救済を拒まれた被害者らが国・熊本県・加害企業チッソに損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

 被害者からは、▼感覚障害だけでも水俣病と認める▼地域・年代による線引きを改める▼不知火海沿岸(熊本・鹿児島)、阿賀野川(新潟)流域での住民健康・環境調査▼介護保険料助成や療養手当引き上げ▼司法救済制度の具体的な検討▼加害企業チッソが保有するJNC(子会社の液晶メーカー)株の譲渡を承認しない――などを要望しています。当然の要求であり、その実現をめざします。
 水俣病の真の解決のためには、不知火海沿岸に居住歴のあるすべての住民の健康調査を、国と県の責任で行うこと、認定判断条件をあらため、司法による救済をはじめ、すべての水俣病被害者を救済する恒久的枠組みをつくることが不可欠です。日本共産党は、すべての被害者の救済のために、力を尽くします。

 

 大気汚染被害者を救済し、自動車メーカーに社会的責任を果たさせます

 世界保健機関(WHO)は今年3月、微小粒子状物質「PM2・5」など大気汚染を原因とする死者が2012年に世界で推計700万人超だったとの報告を発表しました。先進国、途上国を問わず、「大気汚染は環境健康リスクで最も深刻な要因」(ネイラ公衆衛生・環境局長)と警告、各国が連携し対策に取り組む重要性を訴えました。

 日本では、大気汚染による患者を先頭にした、長期にわたる運動により、道路公害における国・自治体・道路公団の責任がはっきりしました。自動車メーカーは健康被害を予見できたにもかかわらず、乗用車にまでディーゼル化をすすめたことなど、責任は明らかです。

 世論と運動に押され、東京都では都・自動車メーカー・国・首都高速道路株式会社の負担で、都内に1年以上居住する気管支ぜん息患者の医療費の自己負担分が2008年8月から無料となったのです。ところが、都は2015年3月末で患者の新規認定を打ち切り、18年4月から医療費の自己負担を導入する条例を、自民党、公明党、民主党、みんなの党の賛成多数で通しました。本来は、国と自動車メーカーの責任でこうした無料化を全国で実施すべきですが、国が1988年に公害健康被害補償法による患者の新規認定を打ち切ったことから、全国で多くの未認定患者が、ぜん息などで苦しんでいます。医療費の無料化とともに新たな救済制度を確立します。

 大気汚染公害の患者団体は、ぜん息などを引き起こす空気中のごく微小な粒子状物質「PM2・5」(微小粒子状物質。直径が2・5マイクロメートルの粒子。1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1)以下の微小粒子について環境基準設定を求めてきました。環境省が行った自動車排ガスの健康影響調査(「そらプロジェクト」)の結果では、NOx(窒素酸化物)やEC(元素状炭素。PM2.5の炭素成分)が健康への影響と関連が認められ、「持続性せきたん」(慢性気管支炎の症状)とも有意な関連が見られました。

 2009年9月にPM2.5の環境基準が設定されたことを積極的に生かして、各地での測定を国・自治体に迫り、PM2.5の汚染状況をあきらかにして、対策を要求していきます。しかし、いまだにこの環境基準を達成した測定局は、一般環境大気測定局で32.4%、自動車排出ガス測定局で8.3%にとどまっています。大幅な削減効果をあげるには、大都市部への基準不適合車の流入を抑え、幹線道路における汚染状況のひどい地域での大型車の走行規制など、総量規制による汚染対策をすすめます。くるま優先で自動車道路の建設を促進して公害を悪化させる行政の姿勢の転換を求め、行政・メーカーに必要な情報公開を義務づけ、自動車排ガス規制の強化や環境・製品アセスメントを強化します。自動車の交通量を減らすために、ロード・プライシングやパーク・アンド・ライドなどの手法を導入したまちづくりで、都市環境の保全を図ります。

 大気汚染防止の取り組みにとって、重大な支障となっているのが、「地域主権改革」の名で環境相による公害防止計画の策定指示が廃止されたことです。30地域で策定されていた公害防止計画が2011年度からは21地域へと大幅に後退しました。2011年8月に日本共産党以外の各党の賛成で成立した「地域主権改革」第2次一括法によって、都道府県の公害防止計画について、環境相の指示を廃止し、各知事が任意で「作成することができる」ことに変えてしまったのです。公害防止に対する国の役割の大きな後退であり、「地域主権」改革の名による公害行政の規制緩和は止めるべきです。

 

 アスベストなど、身近にある有害物質への規制を強め、化学物質政策基本法を制定します

 今年10月9日、最高裁は対策を怠った国の責任を認め、原告82人への賠償を命じました。大阪府泉南地域のアスベスト(石綿)加工工場で働き、肺がんなどの被害を受けた元労働者、遺族らが、国に損害賠償を求めて提訴したもので、2006年提訴の第1陣は大阪地裁勝訴、大阪高裁逆転敗訴。09年提訴の第2陣は地裁、高裁とも勝訴で、高裁判断が分かれていました。

しかし、今回の最高裁判決は、国が対策を怠った時期を1971年までと狭くとらえ、それ以降に被害を受けた原告3人の訴えを却下しました。提訴から8年半の間に14人の被害者原告が亡くなっています。 

 アスベスト問題では、製造企業と健康被害の因果関係を究明して明確にさせ、製造・使用を長い間放置してきた国の不作為の責任を明らかにすることが必要です。アスベスト関連企業の労働者や事業所周辺住民などの健康診断調査を継続して実施するために、費用を原因企業と国が負担するよう求めます。アスベスト対策法の施行後も、認定対象が狭く、救済数が余りにも少ないため、被害者の実態に合わせて拡充します。石綿の労災認定も抜本的に見直すとともに、被災者の見つけ出しをすすめ、建設労働者や「一人親方」も含めすべての健康被害者を救済し、周辺住民の被害認定でも、石綿肺や良性石綿胸水などを労災同様にすべきです。被害に対する救済水準を引き上げるなど、補償制度に早急に改善するよう政府に求めます。汚染者負担にもとづいて製造・使用企業の責任による基金創設を実現し、救済制度を強化します。石綿の特例使用が認められている分野を含め、早急に全面的な使用禁止を目指すとともに、アスベスト除去や解体に伴う二次被害を阻止するために、大気汚染防止法が改正されましたが、発注者の責任や立ち入り検査の徹底など改正の趣旨を実効あるものにするため、自治体の指導・監督を強め、国の補助の拡充を求めます。

 アスベストの飛散防止や適切な処理方法を早急に確立しなければなりません。アスベスト暴露による健康被害を防ぐため安全確保の規制を強化します。じん肺・アスベスト被害者の労働災害認定基準を大幅に緩和し、診断・治療のための医療機関への情報の提供を進めます。国と建材メーカーなどが拠出する資金で、裁判によらず簡易・迅速に救済する「被害者補償基金制度」の創設をめざします。その基金につながる「トンネルじん肺基金」を創設するトンネルじん肺救済法案には600人以上の国会議員が賛同しており、早急に成立を図って、被災者に補償を求めます。

 印刷会社の元従業員らが胆管がんを相次いで発症した問題は、改めて化学物質の健康被害を再認識させました。化学物質の安全性にかかわる規制は、分野ごとに設けられ、統一性がありません。2002年に南アフリカのヨハネスブルクで開かれた環境サミットでは、2020年までに、予防的取り組みに留意しながら、科学的根拠にもとづくリスク評価を使って、化学物質が、人間の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で、使用・生産されることをめざすという目標が合意されました。

 しかし政府の対応は、化学物質の環境リスクを2025年までに低減するという政府の第三次環境基本計画や、化学物質審査製造等規制法「改正」によるものであり、不十分です。同計画を前倒しして2020年に間に合わせることや、予防的原則を明文化し、化学物質の製造や使用量の削減、安全性のデータがない化学物質は市場での流通・使用を認めないなどの理念をもりこんだ化学物質基本法を制定します。

 化学物質審査製造等規制法で新たに禁止された物質については、本来使用すべきではありません。代替物質への転換を政府が責任をもって促すべきです。産業界の負担を軽減することを理由に、リスク評価の対象を約1000種の物質に絞った「スクリーニング型評価」ではなく、危険性評価が必要な全化学物質(約7000種)に対する網羅型評価を2020年までに終えるよう、取り組むべきです。また10億分の1メートル単位の微細粒子であるナノ物質については、健康被害を拡大したアスベストの苦い教訓を踏まえて、健康への影響について対策をとります。

 化学物質による環境汚染がひきおこすとされているアトピーや化学物質過敏症、ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンの悪影響、シックスクールやシックハウスなどへの健康被害の調査と安全対策を強化し、地球環境サミットでも確認された予防原則にたって、遅れている化学物質の有害性にかんする研究と規制を促進します。工場跡地や不法投棄が原因とみられる地下水の汚染などの環境汚染にたいして、住民の健康被害に関する調査と情報公開、新たな被害補償制度などを求めます。

 カネミ油症事件から45年になるにもかかわらず、被害者はいまなおPCBやダイオキシン類による身体被害に苦しんでいまます。2010年のカネミ油症患者に対する健康被害実態調査によって、様々な病状に苦しんでいることが明らかになりました。「PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物処理基金関連法」を改正し、この基金を改めて認定患者の医療費を補償していく方向で、被害者の救済に取り組みます。

 電磁波による健康への影響について、WHO(世界保健機関)は、07年6月、新たな環境保健基準を公表しました。各国での医学的調査を基に、平均3〜4ミリガウス(ガウスは磁界の強さの単位)以上の磁界に日常的にさらされる子どもは、もっと弱い磁界で暮らす子どもに比べ、小児白血病にかかる確率が2倍程度に高まる可能性を認めています。新基準は電磁波のうち、1秒間に50回または60回変動する送電線の電磁波など、強さが比較的ゆっくり変動する「超低周波」が対象です。動物や細胞の実験では発がんが立証されず、電磁波と発がんに因果関係があるとまでは言えないと指摘したものの、予防的考え方に基づいて磁界の強さについての安全指針作り、予防のための磁界測定などの対策をとるよう各国に勧告しました。日本でも、この勧告にもとづいて、電磁波に関する環境基準を早急に設定すべきです。そのさい、日弁連が9月に提言したように、電力・電波を利用する側の企業を所管する総務省、経済産業省から独立した組織として「電磁波安全委員会」を設置し、中立・公平な立場から電磁波にたいする安全規制を行い、予防原則にたった暫定規制、住民協議や電磁波放出組織に関する情報公開を制度化し、取り扱うという方式は、原発事故の痛苦の教訓からも妥当です。携帯電話用の無線基地の建設など電磁波の発生源が急増しているなかで、国民の不安にこたえるためにも、電磁波の健康への影響にかんする研究・調査を積極的にすすめるよう求めます。多くの国が国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によるガイドラインに準拠していますが、より低い電磁波による健康への影響を示唆する研究・報告も多数存在し、EU議会は2008年に電磁波に関する現在の基準が妊婦や新生児、子どもといった脆弱なグループには不十分だという決議を採択しています。高周波では、スイスが携帯電話中継基地局の規制値が日本の100分の1以下(電力束密度)であり、イタリアでは学校、病院、居住地域などに対する注意値がとくに設定されるなど、日本より厳しい規制がなされています。

 高速道路の騒音、振動、低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。高速道路床全体の振動を抑える制振装置を設置し、低周波音の健康への影響については、調査・研究を強め、環境アセスメントでの影響調査に反映させるなど、本格的な対応が必要です。

 米軍や自衛隊の基地からは、艦載機や自衛隊機などのたえがたい爆音・騒音が、周辺の住民の生活を脅かしています。2011年4月に那覇地裁沖縄支部への第三次嘉手納基地爆音訴訟の提訴には、原告が2万2000人に達するなど、過去に例がないほどの大規模な訴訟となりました。身体的被害や精神的被害、生活破壊、航空機の墜落事故、さらには地域発展の阻害など、基地が存在することによる様々な被害を被っています。「爆音は住民の受忍限度を超え、違法状態にある」という明確な司法判断があるにもかかわらず、爆音を放置しています。基地撤去を求める沖縄の島ぐるみのたたかい、欠陥機であるオスプレイの低空飛行訓練の強行への全国の反対の声など、基地に反対する新たな国民運動の高まりが生まれています。「爆音のない平和で静かな生活環境」を一日も早く実現するために、「航空機の飛行差し止め」など爆音音源対策を、早急に講じさせます。

 

 ごみの“焼却中心主義”から脱却し、ごみを出さないシステムを製造段階から確立します

 全国のごみ排出量は、2002年度と2012年度を比較すると、10年間で16.6%(898万トン)減少しました。しかし、09年度以降は減少傾向が鈍化し、削減は停滞気味です。なかでも、事業系のごみは微増をつづけ増加傾向にあります。地サイクル率が低下し、分別・資源化してきたプラスチック系ごみなどの資源化をやめ、〃燃やせるものはすべて焼却炉で燃やしてしまおう〃という流れが強まり、焼却量が増えています。そのさい、「高効率エネルギー利用」という名目で、高効率ごみ発電施設をつくるよう政府が誘導している問題があります。発電用と称し燃料となるごみを集めようとして、ごみの減量・リサイクルの取り組みが弱まり、ごみの発生量が増えるのでは、本末転倒です。自治体のごみ処理コストも膨らみます。

 ごみ焼却施設の建て替え時期を迎えて、ごみの発生抑制、減量・リサイクル化を踏まえた適切なごみ処理とその計画に基づいた焼却施設建設が必要です。大型焼却炉によるごみの"焼却中心主義"からの脱却をはかります。ごみの発生を設計・生産段階から削減するためには、自治体と住民に負担を押しつける現行制度を、OECDも勧告している「拡大生産者責任」の立場で抜本的に見直すことが必要です。政府がダイオキシン対策として導入を急いだ大型廃棄物処理施設の建設・運営の高コスト負担や、処理施設の爆発事故やトラブルに、自治体は頭を痛めています。国は、自ら誘導した処理施設の過大な負担の軽減策をすすめるとともに、自治体は、国の誘導策にのって大規模施設の建設に走ることをやめるべきです。事故やトラブルについてはプラントメーカーに改善と補償を要求するとともに、国の指導を求めます。家電製品のリサイクル費用については、廃棄時の不法投棄をなくし、ごみになる部分を減らすために、商品の販売時に徴収すべきです。

 有害物質が混入した安定型処分場や、土壌汚染処理施設、産業廃棄物の不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけます。違法行為の「やり得」を許さないために、都道府県が徹底した立ち入り検査を実施し、違反者への厳格な監督と行政処分をおこないます。不法投棄のルートと関与者の解明、違反者など排出者の責任による撤去を実施させます。財源確保のための制度見直しを行い、早期処理を進めます。

 容器包装リサイクル法によるペットボトルリサイクルも、自治体負担の軽減措置など制度見直しを求めます。家電リサイクルでは、大手量販店などによる不適正な引取・引渡が問題になっており、早急に小売業者が遵守すべき基準の設定などの規制強化や、回収・リサイクル料金の見直しを求めます。住民がごみになるものを買わない、使わない、出さない、分別を徹底するなど、住民の意識・取り組みの向上、自治体と住民の協力が欠かせません。

 産業からの廃棄物の投棄によって引き起こされた土壌汚染の問題も深刻です。東京の石原都政が進める築地市場(東京都中央区)の移転計画で、移転先の江東区豊洲の東京ガス工場跡地が高濃度の有害物質で汚染されていて問題になりました。全国各地で土壌や地下水の汚染が発見されています。2009年に改正された土壌汚染対策法では、3000平方メートル以上の土地を改変する場合に調査を義務づけることなどが盛り込まれましたが、依然として、法改正以前に廃止された事業所には適用されないなど不十分なものになっています。操業中の工場敷地や、工場敷地を別の工場に売却した場合にも、調査を義務づけるよう改正すべきです。

 

  大型開発による環境破壊をやめさせ、生物多様性を守ります

 今年10月に韓国・平昌(ピョンチャン)で開かれた国連生物多様性会議第12回締約国会議(COP12)で、生物の遺伝資源を利用した医薬品などの開発によって得られた利益を、資源の提供国と利用国で配分するルールを定めた名古屋議定書が発効しました。この議定書は53カ国と欧州連合(EU)が批准したにもかかわらず、日本は産業界との調整が終わっていないといって批准できずにいます。COP12では、絶滅危惧種の保護など生物多様性を保全するため2020年までに締約国が達成すべき20の個別目標を掲げた「愛知目標」について、進捗(しんちょく)状況を中間報告しましたが、日本に関しては、達成が見込まれるのは20項目中3項目のみで「進展は不十分」と指摘し、批准が間に合わなかったことも含め、日本の遅れが目立ちました。本格的な取り組みが求められています。

 湿地も森林と同様、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の吸収に重要な役割を果たしています。湿原では、植物の死がいが積み重なり、炭素が泥炭の形で蓄積されます。しかし温暖化がすすめば、湿地の乾燥と分解がすすみ、CO2やメタンといった温室効果ガスが排出され、いっそう温暖化が促進されるという悪循環に陥る可能性があります。

 これまで開発の対象と思われてきた湿地は、水の浄化など、自然の恵みをもたらすものだと再認識されるようになり、地球温暖化対策のうえでも、その保全が重視されてきています。登録ずみの湿地の保全にとどまらず、ラムサール条約を通して広い視野で、環境について考えることが求められています。諫早干拓計画を撤回し、水門の開放で有明海の豊かな海を回復するよう、政府はただちに実行すべきです。

 日米両政府が狙う沖縄県名護市辺野古への米軍新基地の建設について、日本生物学会など国内19の学術団体は今年11月、要望書を国と沖縄県に提出しました。要望書は名護市辺野古・大浦湾一帯が世界でも極めて生物多様性の高い貴重な地域であり、「その保全は、生物多様性条約の締約国である日本の責務」だと強調し、新基地建設を進めれば、「この海域に残されている、かけがえのない生態系の豊かさが永久に失われてしまう」と警鐘を鳴らしています。辺野古沖や、泡瀬干潟など貴重な干潟の保全のために力をつくします。

 瀬戸内法ができて以降も埋め立ては続き、瀬戸内海の生態系に重大な影響を与えています。法律を改正して、国の責任で「埋め立ての禁止」「海砂利採取の全面禁止」「廃棄物の持ち込み禁止」をしていくことが重要です。あわせて、生態系の回復・復元を計画的に進めていきます。その際、回復・復元の過程での影響をよく検討し、住民もふくめた関係者(ステークホルダー)の英知を集め、たとえば藻場、干潟、砂堆などの形成過程や条件、それが生態系でどのような役割をもっているのかなどの基礎的な調査・研究とモニタリングを繰り返し、その結果を一段と新しい計画に適切に生かしていきます。

 人類生存の基盤である生態系を守るため、環境破壊をひきおこすような大規模開発をやめさせるとともに、改定された環境アセスメント制度に、欧米で導入されている「政策の検討段階からの環境アセスメント(戦略的アセスメント)」の完全導入を求めます。電力業界の圧力に屈して、発電所を戦略アセスメントの対象からはずすべきではありません。干潟などの保全法をつくるとともに、環境NGOが求めている「野生生物保護基本法」の制定を目指します。諫早湾や長良川などの水門をあけ、自然の維持と回復をはかるべきです。住民のたたかいで川辺川ダム建設中止は勝ち取りましたが、民主党政権が工事を再開した八ツ場ダムや、多数の必要のないダムの建設はきっぱりと中止すべきです。ユネスコ(国連教育科学文化機関)がエコパーク(生物圏保存地域)の登録を決めた南アルプス国立公園の地下にリニア新幹線を通す計画によって、貴重な山岳自然環境の破壊も懸念されています。大型開発による環境破壊をきっぱりとやめるべきです。

 国土の3分の2を森林が占める日本は、世界でも有数の「森」の国ですが、その荒廃が進んでいます。絶滅が心配されているオオワシ、イヌワシ、ツキノワグマ、サンショウウオや北海道のナキウサギ、ヒグマなどを、開発から守り保護に力をつくします。森林の荒廃や気候の変動によって、野生の熊やイノシシ、シカ、サルなどが森から里に近づいて、農作物を荒らし、人間に捕殺されるケースが急増しています。貴重な自然を保全し野生生物と共存するためには、捕殺だけの対応ではなく、野生動物の生息する頭数や状況の把握、森林の保護・管理、野生動物による被害の防止と救済に総合的にとりくみます。

 日本は外来種生物の大量輸入国であり、それが自然界に出て日本の固有種の生息を脅かしています。動植物の輸出入検疫を強化するとともに、内外の知見にもとづくリストを作成し輸入を規制すべきです。輸入業者の立入り検査の強化も必要です。米軍の岩国基地で繁殖した毒グモが基地外にまで広がったように、港湾や空港、基地などでは意図せず付着などで入り込む外来種があり、こうした施設の周辺の監視を強めるとともに、固有種を脅かす外来種の駆除をいっそう積極的におこなうべきです。

 

 ペットの不妊手術や譲渡促進で殺処分を減らし、動物実験に替わる方法の普及を図る

 犬や猫などのペットは、こんにちでは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。ところが、最近では、ペット業界の関係者が多数の小型犬を遺棄する事件があいつぎ、またさまざまな事情からペットの飼育を途中で放棄する人も少なくなく、心ない人たちによる盲導犬をはじめ動物虐待もしばしば報道されます。一部の無責任な飼い主のために、近隣の住民が迷惑に感じ、ペットとなっている動物を快く思わなくなってしまう人たちもおり、人間社会で暮らす動物たちを取り巻く状況はきびしくなっています。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は年間21万件(2012年度)にもなるといわれています。

 殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、ペットが死ぬまで飼いつづけることが基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが重要です。場合によっては犬猫の不妊手術をすることも求められます。子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。人をかむなど矯正できない問題がある場合をのぞき、譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、必要な矯正をし、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難ですが、愛護団体やNPO、地域の住民の協力なども得られる仕組みをつくります。政府は、市町村による動物との共生の地域ビジョンの作成を支援し、不妊手術への助成制度の創設や、譲渡促進のとりくみへの支援などに乗り出すべきです。

 2012年9月、動物愛護管理法が改正されましたが、順調な成育を妨げないために、出生後56日を経過しない子犬や子猫の親からの引き離しを禁じている一方、付則で施行後3年間は出生後45日としており、業者の利益優先ではなく動物の命と健康、予防原則の立場から、一日も早く本則の実現を図ることが大切です。

 今回の法改正で、犬猫のインターネット販売時の現物確認や、書面による対面説明が義務化されましたが、業界や自治体に徹底を図ることが必要です。

 東日本大震災の教訓からも災害対策での避難計画にペットの避難を位置づけることが必要になっています。災害対策基本法の地域防災計画などとの連携を図るとともに、同計画にペットの同行避難を加えることを検討すべきです。

 先進各国では、動物実験に替わって、動物を使用しない試験方法(代替法)の開発がすすめられています。OECDなどにおいても、試験ガイドラインのなかに代替法を採用することで動物実験を削減しようという動きもあります。代替法の採用を進め、動物実験を可能な限り回避するよう努めます。

 こうした内容を、動物愛護法の改正に反映させます。

 

 日本にも影響が及んでいる東アジアの環境保全のために協力します

 日本海や東シナ海を越えてくる黄砂や窒素酸化物が、日本国内の自動車排ガス対策の遅れと相まって、日本の国民ののどや鼻に影響をあたえ、酸性雨や光化学スモッグの原因になっています。モンゴルや華北地域の砂漠化がすすんでいることや、急速な経済発展をすすめる中国での大気汚染の悪化が、国境を越えて日本にも影響を与えているといわれています。

 東アジア全体の環境を保全するために、政府は、公害防止の経験や技術・研究の成果を生かし、緑化事業や東アジア諸国の人びとの健康を守るとりくみを提起し、実効性のある支援を強めるべきです。東アジア諸国に進出して活動している日本企業も、その国の環境にかかわる規制を遵守するだけでなく、適正な環境基準の設定に積極的に応じることで、社会的に貢献すべきです。

 

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