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日本共産党

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赤旗

2014年各分野政策

43、危険ドラッグ・薬物依存症

危険薬物の実効ある規制、薬物依存症の治療・回復をすすめます

2014年11月


 国内における覚せい剤、大麻、MDMA(合成麻薬)、コカインなどの使用経験者は推計で200万人を超え、薬物乱用と依存症の拡大が日本社会の大問題となっています。

覚せい剤事犯の検挙人数は毎年約1万2000人と高止まりを続け、再犯者率も6割を超えて過去15年間で最高水準となるなど覚醒剤の被害は深刻です。国外からの流入防止や警察による販売組織の摘発と同時に、乱用薬物を許さない社会的な取り組みが求められます。

  この間、「合法ハーブ」「脱法ドラッグ」などと称して販売されてきた薬物の使用者が、犯罪を引き起こす事件が多発し、国民に衝撃を与えています。これらの 薬物は、覚せい剤や麻薬に類似した幻覚作用と強い常習性・依存性がありながら、別の化学物質が使われているために取締法の対象外となり、商店やインター ネット上で販売されてきたものです。その使用経験者は40万人にのぼると推計されます。

 今年7月、政府はこれらの薬物を「危険ドラッグ」 と総称することを決め、11月、「危険ドラッグ」規制に向けた薬事法改正が国会で成立しました。“指定薬物と同等以上の精神毒性を持つことが疑われる物 品”を広く規制対象とし、販売停止命令やインターネットでの広告規制が法定されたことは重要な一歩です。ただし、この規制は緊急的な措置であり、現在、 「危険ドラッグ」とされる薬物を禁止していくには、これらの薬物を検査・検証し、有害性を立証していくことが必要となります。

 日本では “薬物依存は犯罪”という側面だけがクローズアップされ、「薬物に手を出してはいけない」という啓発(第1次予防)が盛んな一方、早期発見・早期治療(第 2次予防)、社会復帰(第3次予防)の体制がきわめて弱いのが実態です。薬物依存症を扱う医療機関はきわめて少なく、薬物依存症者の多くは刑務所で“治 療”を受けています。薬物依存症者の回復・社会復帰は民間リハビリ施設が献身的に担っていますが、薬物依存症者とその家族の多くは、社会から孤立し疎外さ れ、家庭崩壊や自殺に追い込まれるケースも少なくありません。

日本共産党は、覚せい剤や「危険ドラッグ」、大麻などによる薬物被害をくい止めるため、実効ある規制の実施、検査体制の拡充をすすめます。薬物依存症を治療する医療・福祉の体制整備をすすめます。

検査体制の拡充……薬 物を法律で規制するには、どういう薬物が入っているかを明らかにする「同定」、その薬物を鑑定するための「標準品」合成、「標準品」による薬理データの採 取、その薬理データに基づく禁止の判断――というプロセスが必要です。ところが、日本で「同定」を行える機関は国立医薬品食品衛生研究所(衛研)と一部の 研究機関しかなく、少人数体制で膨大な検査に追われています。「危険ドラッグ」が急速に拡大した背景にも、検査体制の不足で「指定薬物」の指定が追いつか ないまま、新たなドラッグが次々と開発されたことや、検査体制が整っていないために、所持者や販売業者を逮捕しても違法薬物を検出できず、立件に至らない などの事情があります。

米国には国立の薬物乱用研究所があり、百人以上の研究者が働いています。ヨーロッパでもEUが費用を出し、各国の薬物情報を共有する機関を持っています。

危険薬物の検査体制の拡充を図ります。「衛研」など専門機関の予算増額と研究員の増員、分析体制の強化に向けた他分野の研究者への協力要請など、緊急の手立てをとることが必要です。

 薬事監視員の増員、販売業者の摘発強化……麻薬取締部と連携して、「危険ドラッグ」の販売店の取り締まりに大きな役割を果たしている薬事監視員の増員をすすめます。

店舗販売への取締りが強化されるなか、販売業者がネット販売に潜行する動きを見せています。ネット販売・虚偽広告への規制をさらに強めます。

 薬物依存症の治療の推進……「WHO 診断基準」や精神保健福祉法にも定義されているとおり、薬物依存症は精神障害の一つです。薬物依存症者の対応がもっぱら刑務所に任されている現状をあらた め、治療・リハビリ・社会復帰の体制を強めます。医療機関が薬物依存症者を入院治療で受け入れる際の診療報酬を加算し、薬物依存症を治療する病院を増やし ます。「認知行動療法」を用いた治療・回復プログラムの普及など、治療・回復支援策の開発をすすめます。精神保健福祉センターの機能強化を図り、民間リハ ビリ施設との連携を推進します。薬物依存症患者の多くが利用する生活保護の削減・改悪に反対し、改善を求めます。

 薬物への正しい知識普及、社会的克服の取り組みをすすめる……覚せい剤、麻薬、「危険ドラッグ」などの危険性や薬物依存症についての正しい知識の普及をすすめます。

  ネット上では、「日本以外の国で大麻は自由」など誤った情報が氾濫していますが、実際には、大麻の有害性はWHO(世界保健機関)でも確認され、大麻所持 を規制する国際条約に加盟する国は180カ国を超えています。米国は連邦法で大麻を禁止しており、ヨーロッパにも「嗜好用」の大麻所持を合法化している国 はありません。UNODC(国連薬物犯罪事務所)は、大麻の有害性は他の植物性薬物と大差なく、大麻を「ソフトドラッグ」と扱うのは誤りであると指摘し、 加盟国に実効力ある禁止措置を求めています。

 この間、乱用薬物が急速に拡大する背景について、多くの論者が、職場や学校におけるストレス 増大、弱いものいじめの風潮のまん延、貧困と格差の拡大など、日本社会に歪みがあると指摘しています。長時間・過密労働や成果主義の是正、職場におけるメ ンタルヘルスの改善、過度な競争主義教育の是正、社会保障の充実など、人間を大切にする社会への転換をすすめながら、乱用薬物の社会的克服をめざします。

 

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