2014年総選挙政策

2014年 総選挙各分野政策

44、ヘイトスピーチ

民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない

2014年11月


――日本共産党は、国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止の理念を明確にした特別法の制定をめざします。

――ヘイトスピーチに関連する勢力や極右勢力と政権与党幹部との〝癒着〟がヘイトスピーチの温床になっています。日本共産党は、自民党政権がこうした関係を反省してきっぱりと手を切るとともに、政府としてヘイトスピーチに毅然として対処するよう求めます。

――日本共産党は、地方自治体がヘイトスピーチに毅然として対応することを求めるとともに、ヘイトスピーチをくり返す団体にたいし適切な対応をとることを求めます。

 

民族差別をあおるヘイトスピーチを許さない社会の建設を

 この間、在日韓国・朝鮮人などにたいする、デモ、集会が全国各地で開かれ、聞くに堪えない差別表現と扇動活動がくりかえされてきました。韓国・朝鮮出身者やその家族が多く居住する東京や大阪などで、「韓国人は出ていけ」「ソウルを火の海にしろ」「いい朝鮮人も悪い朝鮮人もいない、皆殺しにしろ」などの罵詈雑言(ばりぞうごん)を叫び、関係者と周辺住民の不安と恐怖心をあおってきました。インターネットなど一部のメディアには、そうした言葉が横行しています。

 特定の人種や民族にたいする常軌を逸した攻撃は、「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と呼ばれます。差別をあおるこうした言葉の暴力は、「ヘイトクライム」(人種的憎悪にもとづく犯罪)そのものであり、憲法が保障する「集会・結社の自由」や「表現の自由」と相いれません。

 

司法に断罪されたヘイトスピーチ

 ヘイトスピーチは自由や民主主義と相いれず、健全な市民社会と両立しません。国連の人種差別撤廃条約に違反することは、司法の場でも認定されています。

 2009年以来、京都の朝鮮学校にたいし、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などの一部勢力が、授業中にもかかわらず校門前を占拠し、大音量で「朝鮮学校、こんなものはぶっ壊せ」「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮半島へ帰れ」などと叫びたてました。こうした暴挙によって、学校の授業が成り立たなくなっただけでなく、幼い子どもたちはもとより教師にさえにも恐怖感をだかせ、心に深い傷を負わせるほどの苦痛を与えてきました。

 京都地裁は2013年10月、「拡声器を使用し、又は大声を上げるなどして、原告を非難、誹謗中傷するなどの演説をしたり、複数人で一斉に主義主張を大声で唱えること」を禁止しました。判決はまた、朝鮮学校での教育についても、「母語教育及び民族教育は、普遍的人権として『教育に対する権利』の一部であると同時に、民族的、宗教的、言語的少数集団に属する人々の持つ権利である」と指摘し、さらに、こうした教育が「全ての人に平等に保障されるべき人権としてだけでなく、少数集団に特有な権利として二重に保障されるべき権利なのである」として少数者の権利として特別に保障されるべきことをうたっています。

 裁判の控訴審判決(大阪高裁、2014年7月)でも、地裁判決を支持した上に、そこでは一審判決では認定されなかった一連の差別発言についても、「在日朝鮮人をあざけり、日本社会で在日朝鮮人が日本人その他の外国人と共存することを否定する内容であり」「在日朝鮮人を嫌悪・蔑視するものであって、その内容は下品かつ低俗というほかない」と断罪しています。

 さらに国連人種差別撤廃条約の精神を踏まえ、「専ら在日朝鮮人を我が国から排除し、日本人や他の外国人と平等の立場で人権及び基本的自由を享有することを妨害しようとするものであって、日本国籍の有無による区別ではなく、民族的出身に基づく区別または排除であり、人種差別撤廃条約第1条第1項にいう『人種差別』に該当する」としています。

 最高裁(第3小法廷)は2014年12月9日、5人の裁判官全員が一致して在特会側の上告を退けることを決定。これによって約1200万円の賠償と朝鮮学校周辺での街頭宣伝の禁止を命じた一、二審判決が確定しました。

 この間、ヘイトスピーチに反対する運動も急速に強まってきました。そうした国内世論が、京都地裁や大阪高裁、最高裁でのヘイトスピーチを断罪する判決につながりました。

 

ヘイトスピーチは国連の人種差別撤廃条約に違反する

 また、国連の人種差別撤廃委員会が2014年8月に発表した「総括所見」で、日本の状況に懸念を表明し、日本政府にたいして以下のような措置をとるよう勧告しました。

 (a)集会の場における人種差別的暴力や憎悪の煽動、また憎悪や人種差別の表明について毅然とした対処を実施する。

 (b)インターネットを含むメディアにおけるヘイトスピーチの根絶のため適切な対策を講じる。

 (c)調査を行い、適切な場合には、そのような言動の責任の所在する組織及び個人を起訴する。

 (d)ヘイトスピーチの発信及び憎悪への煽動を行う公人及び政治家について、適切な制裁措置を実行する。

 (e)人種差別的ヘイトスピーチの根本的原因についての取り組みを行い、人種差別に繋がる偏見を根絶し、国家・人種・民族グループ間の相互理解や寛容、友愛の情を育むための指導・教育・文化・情報発信における方策の強化を行う。

 

人種差別禁止の理念を明確にした特別法の制定をめざします

 日本共産党は、言論・出版の自由や結社の自由、表現の自由など憲法で保障されている基本的人権を全面的に擁護するとともに、それと矛盾・抵触しないような形の法整備のために積極的に対応します。国内外で高まる「社会的包囲でヘイトスピーチ根絶を」の世論と運動を踏まえ、ヘイトスピーチを許さないために、人種差別禁止を明確にした理念法としての特別法の制定をめざします。

 

政権与党幹部ら一部政治家と極右勢力の〝癒着〟の一掃を

 ヘイトスピーチを規制する法律の制定を待たずとも、国政上の問題としてただちに解決すべき課題もあります。

 この間、ヘイトスピーチをくり返してきた団体や「ネオナチ」など極右勢力の幹部と政権与党幹部との〝癒着〟が明らかになりました。ヘイトスピーチを広める公人や政治家への制裁は、国連からも勧告されており、差別をあおる団体の幹部と自民党政権幹部など一部の政治家との〝癒着〟を追及し、断罪することが必要です。

 高市早苗・現総務相、稲田朋美・現自民党政調会長(前行革担当相)らが、2011年にナチス・ドイツの主義主張を信奉する「ネオナチ」(新ナチズム)の団体の代表とともに、「日の丸」をバックに写真に納まっていたことが明らかになりました。高市氏は、ヒトラーをたたえる本に推薦文を寄せていたことも判明しています。

 この問題について、元駐日英国大使のヒュー・コータッツィ氏は、「イギリスの閣僚がもしホロコーストを引き起こした犯罪者を支持すると取られかねないような発言をすれば、大衆から抗議が沸き起こって問題の閣僚は辞職させられることだろう」(「ジャパン・タイムズ」2014年10月31日付)と指摘し、次のようにのべています。

 「日本政府内で過激論者の影響が明らかに高まった結果、海外における日本のイメージと威信は傷ついている。修正主義者たちによる虚偽の歴史の宣伝を食い止め、日本の民主的な手続きが反民主的過激論者の個人や団体によって脅かされないようにすることは、ひじょうに日本の国益にかなうものになる」

 一方、山谷えり子・国家公安委員長(拉致問題担当相兼任)が、2009年2月に在特会関西支部長らとならんで写真を撮っていたことが判明しました。2014年9月、山谷氏は外国特派員協会で会見をしましたが、本来のテーマが拉致問題であったにもかかわらず、質問の大半が在特会との関係に集中。外国人記者からは、「在特会やその理念を否定するべきでは」などの質問がくりかえされたにもかかわらず、山谷氏は「いろいろな組織についてコメントをするのは適切ではない」などとのべるだけで、追及した記者からは「在特会を一度も正面から否定しなかったことに驚いた。米国なら『大臣と問題団体の関係について疑惑が深まった』と大きく報じられる」などの批判があがりました。

 自民党幹部や閣僚が極右団体の幹部と写真に納まっていたことは、日本の政治の時代錯誤性を象徴する問題として、欧米各紙で大きく報じられています。

 また、安倍政権になってから、戦後50周年の「村山談話」の見直しや、日本軍「慰安婦」についての軍の関与と強制性を認め謝罪した「河野官房長官談話」(1993年8月4日)の見直し論が浮上してきました。日本政府が、過去の侵略戦争と植民地支配を直視するどころか、肯定・美化するような動きを強め、安倍首相が侵略戦争を美化する靖国神社に参拝していることが、極右勢力を勢いづかせていることは明白です。「歴史修正主義」を許さない世論と運動を広げることは、ヘイトスピーチ根絶への確かな一歩となります。

 ヘイトスピーチを叫ぶ勢力が跋扈できる背景には、こうした政治的温床があります。日本共産党は、ヘイトスピーチを一掃するためにも、政権与党幹部ら一部政治家が極右勢力や反動勢力との関係を反省し、きっぱりと関係を断ち切ることを求めます。

 また、民主党政権以来、日本政府が高校授業料無償化から朝鮮高校を排除してきたことも重大です。これは日本政府による外国人差別にほかなりません。国連の人種差別撤廃委員会はヘイトスピーチへの法規制を求めるとともに、朝鮮学校を授業料無償化(旧制度)の対象から除外してきたことについても懸念を表明し、「朝鮮学校が『高校授業料就学支援金』制度の恩恵を受けられるよう奨励する」ことを求め、これを「特に重要な勧告」と位置づけています。

 

自治体としてヘイトスピーチへの毅然とした対応を

 この間、ヘイトスピーチをくり返す団体にたいし、自治体などが独自の判断で会場使用を認めてこなかった例があります。

 公益財団法人「山形県生涯学習文化財団」は、同財団が指定管理代行事業者として請け負っている複合施設「遊学館」(生涯学習センター、男女共同参画センター、図書館)について、在特会の地元支部から使用を求めるメール申請があったのにたいし、2013年6月、山形県生涯学習センター条例3条2の「センターの管理上適当でないと認めるとき」に該当するとして、利用申請を不許可としました。

 その根拠として、指定管理代行事業者の「管理要綱」に、「集団的又は常習的に暴力行為又は不法行為を行うおそれがある団体の利益になると認められる場合」に該当すると判断したためです。申請直前、在特会が参加する東京・新大久保のヘイトスピーチデモで逮捕者が出たこともあり、「過激、暴力的な言動をおこなう危険性が否定できず、センターを利用する子どもたちに悪影響を及ぼすおそれがある」ことから不許可にいたったとされます。

 不許可にたいし、在特会側は審査請求を県教育委員会に提出しましたが、使用希望日時が過ぎていたために却下。再審査請求が総務省に出されましたが、やはり希望日が経過していたことから、行政不服審査法上不適当と判断され、却下されました。

 また、大阪・門真市でも2014年5月、いったん許可していた市民文化会館の使用を、「利用許可取り消し」の通知によって、あらためて拒否した例があります。

 これは、主催団体の排外主義グループが、特定の民族を侮蔑する目的で集会を開こうとしていたことが明らかになったためです。申請段階から、集会の内容として「朝鮮の食糞文化」とありましたが、いったん使用を認めました。しかし、他の多くの市民から、当該団体に会場使用を認めるべきではないとの声が寄せられたため、市として申請団体のホームページを確認したところ、食糞文化にかかわる差別的・侮蔑的記載があることを確認。あらためて当該団体に確認したところ、侮蔑的内容で集会を開催する予定であることが明らかとなりました。

 そのため、市民文化会館条例の規定――「公の秩序又は善良な風俗を害する恐れがあると認めるとき」――に該当するとして不許可にいたったものです。

 以上のような事例からも、ヘイトスピーチをくり返す団体にたいし、住民の安全を守り、民主的な権利やルールを擁護する観点から、自治体が独自の判断で会場の使用規制など適切な対応をとることは可能です。

 なお、最近、「九条の会」などにたいし、「政治的」だということを理由にして、会場使用を事実上拒否したり、あるいは、公民館便りに憲法を詠んだ俳句を掲載することを拒否したりする例が相次いでいます。市民による自主的な活動を、行政当局が「政治的」という理由をつけて一方的に自粛・抑圧する行為は、きびしく退けなければなりません。

 山形や門真市の例は、特定の団体が開催するということだけから会場使用を拒否したのではなく、利用者市民の安全を考慮した管理上の問題として、また、条例と照らし合わせて、集会の内容が明らかに「公序良俗を害する」と確認されたためです。

 

 (c)日本共産党中央委員会