2014年総選挙政策

2014年 総選挙各分野政策

10、金融

バブルと格差を招いて破たんした「異次元の金融緩和」を止めさせ、国民の暮らし、中小企業を支える金融政策に転換します

2014年11月


1.深刻な消費不況を招いて破たんした日銀の金融緩和政策

 日本銀行は昨年4月より、「アベノミクス第一の矢」として、2年で130兆円もの資金を供給する「異次元の金融緩和」をすすめてきました。日銀が国債や株・土地を対象とする金融商品を大規模に買い進める中で、10兆円を上回る海外の投機マネーが一気に流入しました。株価が急騰して乱高下を繰り返し、債券・為替も含めて金融市場が不安定化しています。「消費者物価2%」を掲げたインフレ政策のもと、賃金を上回る物価上昇が国民生活を圧迫しました。個人消費が大幅に落ち込み、GDPは2期連続の大幅下落となりました。「夏以降に景気は回復する」としていた政府と日銀のシナリオは完全に崩れ、消費不況を認めざるを得なくなっています。

 「不況の原因は物価の下落(デフレ)」「物価を上げれば賃金も上がる」として、バブルで強引に物価を引き上げようとしたアベノミクス。その誤りと破たんは、今や誰の目にも明らかです。世論調査でも、安倍内閣の経済政策を「評価しない」が「評価する」を上回りました(11月 NHK)。不況の原因は、内需の大半を占める個人消費の低迷です。最低賃金引き上げ、安定雇用の拡大、中小企業支援など、庶民の懐をあたためる、まっとうな経済政策への転換が求められています。

急激な円安と資産バブルの恩恵を受けるのは一部大企業と富裕層だけ

 大規模な金融緩和で急激な円安がすすみ、穀物、原油など食糧・エネルギー価格が上昇、食品など生活物資の値上げが相次ぎました。賃金は大企業を中心にわずかな上昇にとどまったため、賃金アップが物価上昇を下回る「実質賃金」の下落が15ヶ月間連続し。個人消費の大幅悪化の原因となりました。生活必需品の価格引き上げで、所得の低い人ほど打撃を受け、消費の落ち込みはいっそう深刻です。

また、輸入原材料の価格上昇など円安を原因とする中小企業の企業倒産は、今年1月から10月までで238件、前年同期の2.2倍に急増。国内経済の土台である家計と中小企業は深刻なダメージを受け、需要不足による景気の悪循環に陥りつつあります。

 一方、トヨタが過去最高の純利益2兆円(2015年3月期)を見込むなど、一部の輸出大企業は円安による恩恵を受けています。企業の海外移転が急速に進んだため、円安による輸出拡大とそれを梃とした国内投資は低迷。2013年度の大企業の内部留保は前年度比で13兆円増え285兆円(資本金10億円以上)と、積み上がる一方です。

 投機マネーによる株価つり上げと大都市部などの地価上昇は、巨額の資産を持つ富裕層に大きな恩恵をもたらしています。その一方、金融資産ゼロ世帯も増えるなど格差拡大は、いっそう深刻化しています。

企業融資の低迷と投機マネーによる金融肥大化

 日銀が金融機関への巨額の資金供給を続けていますが、企業への貸出しは進んでいません。需要が落ち込み投資先がないうえ、大企業は手元資金が豊富で借り入れは必要なく、企業融資の低迷は日銀自身も認めています。実体経済に資金が回らない一方、世界的な金融緩和で投機マネーは肥大化しています。日本の株式市場の売買高の大半を海外の投機マネーが占め、為替市場にも投機マネーが流入。円相場は投機化がすすみ、実体経済に深刻な悪影響を与えています。

追加緩和は経済破綻への道

 景気低迷を受け、日銀は10月末にさらに年間の資金供給量を20兆円まで拡大し80兆円とし、リスク金融商品の購入を従来の3倍とする追加緩和を打ち出し、株価が急騰しました。これでは、いっそうのバブルと格差、景気の低迷を深刻化させるだけです。投機マネーの呼び込みではなく、家計と中小企業を支える内需拡大の経済政策への転換が必要です。この道でこそ、経済の安定的な成長と財政再建、金融の正常化を進めることができます。

 

2.中小企業と地域経済を応援する金融行政に転換します

 安倍政権は「異次元の金融緩和」をすすめる一方で、中小企業の資金繰りを支える制度は相次いで打ち切っています。緊急保証制度は2012年10月末、金融円滑化法は2013年3月末で打ち切られました。中小企業にとっては「金融緩和」どころか「金融引き締め」が実態です。

もともと、中小企業向け貸出は減少傾向にありました。民間金融機関による中小企業向け貸出残高は、2001年3月の約293兆円から、2012年12月には221兆円へと72兆円も減少しています(『中小企業白書2013年版』)。とくに3大メガバンクは、3大メガバンク体制になった2005年以降、中小企業向け貸出を減らし、2014年3月期の決算では国内貸し出しに占める中小企業融資の割合が初めて60%を割り込みました。今回の金融円滑化法などの打ち切りは、この傾向に拍車をかけるものにほかなりません。

 民間金融機関は、短期的な利益を最優先して、「直近決算期の売上高」など、限られた数値だけをモノサシにして機械的に融資の可否を決定するようになっています。金融機関が本来発揮すべき「目利き」能力、審査能力の喪失は深刻です。

 「頼みの綱」となるべき政府系金融機関も、短期的な「効率化」を迫られて審査基準を厳格化しています。信用保証制度では、部分保証(責任共有制度)導入によって「一般保証」が激減しています。保証料率も、中小企業の経営状況に応じて格差がつけられました。

 いま必要なことは、民間金融、公的金融ともに、その本来の役割を発揮できるように金融行政をおおもとから転換することです。日本共産党は、企業の99%、雇用の7割を支える中小企業を支え、地域経済に円滑に資金が供給されるよう金融行政を転換します。

―――金融円滑化法を復活し、さらに使い勝手の良い制度につくりかえます。中小企業の機械設備のリース代の支払猶予など条件変更についても、経産省の通達(2010年4月16日以来、最近では13年3月29日まで累次出されて、措置継続中)の趣旨をいかして中小企業の実態に即した柔軟な対応を求めるとともに、遅延損害金を求めないこと、遅延があってもリース物件を引きあげないこと、金融機関と同様にリース会社にも情報開示を求めることなどの改善をすすめます。

―――金融機関、とりわけメガバンクによる貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。

―――金融の公共性と金融機関の「目利き」能力を回復し、社会的責任を果たすことのできる仕組みをつくります。「地域金融活性化法」を制定し、金融の公共性の発揮と円滑な資金供給に関する国、自治体、金融機関の責務を明らかにします。中小企業向け融資について、独自の検査マニュアルや監督行政のしくみをつくります。国による地域金融機関への合併押しつけをやめさせます。信金・信組などの協同組織性を変質させる動きを許さず、協同組織金融機関が本来の役割を発揮できるよう支援を強めます。協同組織金融機関については、BIS規制の画一的な適用を見直すことを検討すべきです。

―――投資ファンドが主導し地銀などが出資した企業再生ファンドが多数立ち上げられ、銀行の中小企業債権の買い取りを進めています。「再生」に名を借りた強引な転廃業の押しつけや、不良債権処理を許さず、中小企業本位の再生をすすめます。

―――商工中金の完全民営化をやめさせるなど、政策金融全体のあり方を総合的に見直します。公的金融にふさわしい融資基準をつくるとともに、予算、人材を含め、中小企業向け政策金融を抜本的に充実させます。貸し付け条件の変更や、さらなる融資相談などに対する冷たい窓口対応を改めさせます。

―――アベノミクスがもたらした円安であらゆる原材料が高騰し、中小企業の経営を圧迫しています。中小企業の資金繰りを支えるため、全業種対象の「緊急保証」制度の復活を求めます。また、「一般保証」制度に導入された「部分保証」制度を廃止し、全額保証に戻します。小規模企業への保証料の差別的な引上げをやめさせます。信用保証協会への財政援助をおこなうなど、信用保証制度を抜本的に強化します。保証協会による「保証しぶり」をやめさせます。

―――不況の中で中小業者の自殺が続いています。この痛ましい事態の要因の1つが、中小企業融資における個人保証制度です。現在、金融機関が中小企業融資を行う際に、経営者自身や知人に対して保証・連帯保証を求めるケースがほとんどです。この制度のもとでは、会社だけでなく経営者自身も保証人も全財産を失うことになり、家族や保証人に迷惑をかけないようにと生命保険をあてにした自殺が多発しています。欧米では、数十年前に金融機関の個人保証制度は廃止されています。中小企業融資における個人保証制度について、家族など第三者を対象とする連帯保証は即時禁止とし、経営者自身の個人保証も原則廃止とします。また、個人保証の一律的な規制により銀行融資の貸渋・貸剥が懸念されることから、移行期間において信用保証制度の特例的拡充や政府系金融機関の融資制度の拡大を図ります。2014年2月に公表された「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業医者の立場に立った運用の改善を進めます。

―――病気や事故などに備える「自主共済」は、2006年施行の保険業法により、保険会社に委託するか少額短期保険業者に移行するか選択が迫られました。しかし、多くの自主共済が、準備金の積み立てや外部監査導入などの負担ができず、制度廃止に追い込まれる事態も生まれています。社会保障の改悪などで国民の不安が増しているいまこそ、自主共済を守り発展させることが必要です。助け合いのためにつくられた自主共済については、保険業法の適用除外とします。

 

3.貧困をなくすセーフティーネット貸出を抜本的に拡充します。

 リストラや経営難、事故・病気などから生活苦に陥り、高金利の消費者金融(サラ金)に手を出す人が後をたちません。政府や自治体の施策、サラ金被害者団体などの努力で多重債務者は減っていますが、利用者の数は国民の10人に1に上り、高金利と過剰融資を是正した貸金業法改正前と変わりません。近年は、特に若者の利用が増え、新規利用者の6~7割を占めています。若者への過剰融資の広がりが問題となっています。

 本当に資金を必要とする人が、安心してお金を借りることのできるセーフティーネット貸出制度を緊急に拡充・強化することが必要です。

 ―――貸金業法の円滑な施行をすすめるとともに、形を変えて暗躍しているヤミ金、偽装質屋などに対する取締りを抜本的に強化します。警察、金融庁、金融機関などによる総合的なとりくみをすすめます。

―――だれでも利用できる身近な金融相談窓口を整備します。低利の生活福祉資金貸付制度や緊急小口資金貸付制度を抜本的に拡充するなど、個人向け、離職者向け、個人事業者向けのセーフティーネット貸出制度を拡充・強化します。その際、生活再建のためのカウンセリングと組み合わせるなど、制度の運用改善をすすめます。

―――自民党など貸金業法の改悪を狙う動きを許さず、現行20%の上限金利の更なる引き下げを求めます。

 

4.金融自由化路線の根本的見直し、金融被害の根絶、金融機関に社会的責任を果たさせるルールつくります

 世界経済を混乱と不況に陥れたアメリカ発金融危機から6年。投機マネーの規制、バブルの防止、金融危機への対応策をめぐって、欧米各国においても、「先進国」の枠を超えたG20、IMF(国際通貨基金)などでも国際的な議論が進められてきました。

 EUでは、投機的取引の規制と金融機関への社会的責任を求め、株、債券、デリバティブ(為替取引を含む)取引など幅広く金融取引に課税する金融取引税の議論が進んでいます。既にフランス、イタリアでは一部を先行導入し、ユーロ圏(17か国)での部分的導入に向け着実に議論を進めています。

 しかし、全体として、アメリカでヘッジファンドや銀行の投機的取引に抜本的な規制を加えるボルカー・ルールが骨抜きにされるなど、「金融自由化路線」の抜本改革にはほど遠い状況です。欧米・日本の中央銀行の金融緩和政策とも相まって、投機マネーは肥大化し、世界のヘッジファンドの資産総額は過去最高の2兆6300億ドル兆円(290兆円 2014年1月民間調査)となり、金融危機前を上回っています。アメリカや日本では、バブルの危険が再び指摘され、金融規制の及ばないシャドーバンキングの拡大による金融不安定化の懸念も高まっています。

金融規制の緩和をすすめる安倍政権

 日本では、アメリカ型の金融自由化・規制緩和が進められ、1990年代の「日本版金融ビッグバン」以降、自民党も民主党も金融規制緩和を競いあってきました。安倍政権も、銀行・証券業界の後押しを受け、金融自由化、「貯蓄から投資へ」と庶民の零細な金融資産を含め、投機的な金融市場に誘導する政策を、いっそう強化しています。深刻な金融被害が広がる一方、政府の対策は後手に回っています。

―――2013年1月には、個人投資家の信用取引をやりやすくする規制緩和を行い、さらに、「日本再興戦略」(今年6月改訂)には、株式、債券などを対象とする金融商品取引所と穀物や原油などの商品(先物)取引所を一体化する「総合取引所」を「可及的速やかに実現する」ことが明記されました。これらは、いっそうの投機マネー呼び込みを進めるものであり、抜本的な見直しを求めます。

―――昨年の預金保険法等の改正では、銀行のみならず、証券会社、保険会社、ファンドなども含めた金融機関に公的資金の導入を可能とする仕組みが導入されました。1990年代から「住専問題」、長期信用銀行の破綻処理、大手銀行への公的資金投入が、「金融システム不安」を口実に相次いで実施され、10兆円に上る税金負担を招きました。日本共産党は、銀行の破たん、金融危機への対応策として、国民負担につながる公的資金投入に反対し、投機活動に走った金融機関・金融業界への自己責任と自己負担を求めます。

―――国連やG20で進められている国際的なルールづくりにおいて、積極的なイニシアチブを発揮します。巨大金融機関の投機活動を規制して、公的責任を果たさせるルールづくり、ヘッジファンドなどの投機筋やデリバティブなどの投機的取引の規制、バブルの防止と金融危機への対応策の強化を進めます。国際連帯税(通貨取引税など)など、投機を規制するしくみを検討します。IMFの意思決定のあり方を含め、「先進国」とくにアメリカ主導のしくみを改めます。

―――AIJ事件やMRI事件など、年金や個人の金融資産をねらった悪質な金融事件が相次いでいます。個人年金保険や外国為替証拠金取引(FX)などの金融商品で被害を受ける人も増えています。郵便局での投資信託などのリスク商品による被害も増えています。FX業者による証拠金の流用や詐欺的勧誘も相次いでいます。銀行、証券、保険などすべての金融商品について、「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性原則」(消費者の財産、知識や目的などに合わない取引の禁止)の徹底など、国民が不当な金融被害を受けないような仕組みをつくります。

―――金融被害の温床となっている金融商品販売担当者に対する過大なノルマのおしつけをやめさせます。

―――FXや商品先物を組み合わせた投資信託など、個人の資産運用に適さないハイリスクな金融商品について、総合的・抜本的に規制を強化します。一般投資家に販売が禁止されている未公開株を解禁する「投資型クラウドファンディング」が新たに創設されますが、行政による監視と制度の改善を求めます。

―――無登録金融業者による未公開株詐欺など金融犯罪を取り締まるため、証券取引等監視委員会の人員、権限を抜本的に強化します。

―――裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の更なる充実や、被害回復給付金支給法の改善など、金融被害を受けた方への救済制度を拡充します。

―――高齢者などをねらった「振り込め詐欺」などの「特殊詐欺」とされる件数が、史上最悪の件数にのぼっています。こうした被害は、警察、自治体、関係団体と連携し、ただちに根絶します。

 

5.災害被害者の「二重ローン」問題の解決を急ぐ

 東日本大震災で被災した住民や事業者の「二重ローン」の解消は、地域再生のためにもいよいよ重要になっています。

 現在、中小企業庁の産業復興機構と復興庁の事業者再生支援機構が、事業ローンの買い取りをすすめていますが、再建の意欲のあるすべての中小事業者を救済するために、さらに買い取り基準を改善し、金融機関への指導を強化するように求めます。

 個人事業者・個人の銀行からの負債を軽減し再生を目指す「私的整理ガイドライン」は、日本共産党や地元弁護士の要望を受け、一定の基準の見直しがすすんできましたが、被災者の生活再建のために、いっそうの制度の運用と内容の改善をすすめます。

 

6.大資産家優遇の証券税制を改めます

 証券優遇税制が期限切れとなり、所得税・住民税あわせた税率は20%となりましたが、欧米の富裕層の株式配当への最高税率は、アメリカ(ニューヨークの場合)32.7%、イギリス42.5%、ドイツ26.375%、フランス60.5%(2013年1月現在)であり、日本は依然として低い状況が続いています。こうした金持ち優遇税制を改めることが、経済危機の中で必要な財源を確保するためにも、格差と貧困の是正に向けて税制による所得再分配機能を再建・強化するためにも、不可欠です。

──世界に例を見ない大資産家優遇の配当や株式譲渡所得の税率軽減措置を改めます。株式配当は少額の配当や低所得者の場合を除き、勤労所得などとあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率が適用されるようにします。譲渡所得についても将来的には総合課税とすることを検討しますが、分離課税が続いている間も、欧米諸国の水準にあわせて高額所得者には30%以上の税率が適用されるようにします。

──証券優遇税制の廃止にともない、毎年100万円、最高500万円までの株式投資から得られる配当や譲渡所得を非課税とする「少額投資非課税制度(NISA)」が創設されました。小規模な投資を行う「庶民投資家」への課税を富裕層より軽減するのは必要なことですが、モデルとされたイギリスの個人貯蓄制度(ISA)が預金利子も非課税の対象となっているのと違って、日本の制度は株式投資だけに限定された歪んだものです。対象を狭めない小口投資の非課税枠をつくり、投資先は投資家の判断にゆだねるようにすべきです。

 

 

 (c)日本共産党中央委員会